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2024年5月15日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年5月14日

日本時間:2024年5月15日(水曜日)

10時45分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対サンフランシスコ・ジャイアンツ

@ドジャースタジアム

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月15日、ドジャースは敵地オラクル・パークでのジャイアンツ3連戦第2戦に挑み、大谷翔平の12号ソロを皮切りに打線が10点を奪うと、投手陣もジャイアンツ打線を2得点に封じ10対2で快勝。延長タイブレークを制した前夜に続く勝利で3連戦勝ち越しを決めた。ドジャース先発のギャビン・ストーンは6回1失点の好投で4勝目(1敗)をマーク。ジャイアンツ先発のキートン・ウィンが4回5失点で6敗目(3勝)を喫している。

 

 3回までジャイアンツ先発ウィンの前にノーヒットと苦しんでいたドジャースだったが、4回表に打線が繋がった。先頭の大谷が初球を右中間スタンドへ運ぶと、テオスカー・ヘルナンデスのタイムリー、マックス・マンシーの犠牲フライ、ギャビン・ラックスのタイムリー三塁打で一挙4得点。さらに5回表に1得点、7回表にも1得点と小刻みに加点すると、9回表にも4点を奪いジャイアンツを突き放した。

 

 「2番・DH」でスタメン出場した大谷は、第2打席の先制ソロ以降、センター前ヒット、レフトへのタイムリー二塁打と当たりが止まらず、最終打席はセカンドゴロに倒れサイクル安打達成とはならなかったものの、5打数3安打1本塁打2打点の大活躍。今季の成績はこれで打率.361、12本塁打、29打点、OPS1.107と圧巻の数字で、61まで伸ばした安打数も同僚のムーキー・ベッツを上回りメジャー単独トップと、大谷の驚異的な打棒が常勝軍団を牽引している。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

5打数 3安打 2打点 1得点 1本塁打(12号)

通算打率・361

OPS1・107

 

◆第1打席:

(結果)レフトフライ

(状況)1回1死走者なし

(投手)キートン・ウィン右

※カウント2―1からの4球目、内角高めの97・6マイル(約157キロ)のフォーシームに押し込まれて平凡な左飛に倒れた。

 

◆第2打席:

(結果)ホームラン

(状況)4回無死走者なし

(投手)キートン・ウィン右

※初球、真ん中のやや内角よりの88・7マイル(約142・7キロ)のスライダーを豪快に振り抜き、右中間席の通路に運んだ。角度26度、打球速度113・4マイル(約182・5キロ)で飛距離446フィート(約135・9メートル)の超特大弾だった。12号先制弾でナ・リーグトップタイに並んだ。ジャイアンツ戦での一発は4月3日以来、2本目。オラクル・パークでは初アーチだ。これで本塁打を放ったのは25球場目で日本選手最多を更新した。

 

 

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◆第3打席:

(結果)センター前ヒット

(状況)5回無死1塁

(投手)キートン・ウィン右

※1ストライクからの2球目、92・3マイル(約148・5キロ)の真ん中低めのシンカーを強打。109・4マイル(約176キロ)の痛烈なライナーは中前で弾んだ。マルチ安打は2試合連続、今季19度目。

 

◆第4打席:

(結果)レフト線2塁打

(状況)7回無死3塁

(投手)ランディ・ロドリゲス右

※1ボールからの2球目、外角高めの97・6マイル(約157キロ)のシンカーを逆方向にはじき返した。

 

◆第5打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)9回無死2塁

(投手)ニック・アビラ右

※三塁打が出れば自身2度目のサイクル安打達成。マウンドは3番手の右腕アビラ。カウント1―2からの4球目、外角低めの88・5マイル(約142・4キロ)のカットボールを強打したが、痛烈なゴロは二塁手の正面に飛ぶと客席からタメ息がもれた。昨季は7度も王手をかけ、そのうち三塁打が残っていたのは3度だった。

 

【コメント】

試合後テレビ中継

ーードジャースのライバルチームの雰囲気は

「クラシックですてきな球場というか、好きな球場の1つですし、ファンの人たちの熱気もすごくて。良いゲームだったと思います。」

 

ーー本塁打の感触は

「初球から比較的ボールをしっかり振れたので、良い結果につながったのかなと思います。」

 

ーー三塁打1本でサイクル安打だったが狙っていた

「三振だけしないようにというか、結果的に1死三塁は作れたので、最低限の打撃だったかなとは思います。」

 

ーー13安打10得点と打線が好調

「ヒットで点を取れてるのももちろんそうですけど、良い野球ができてるかなと思うので、全体的にみんな良い打席が多かったんじゃないかなと思います。」

 

ーー先発ストーンら投手陣の投球はどう見えた

「攻撃につながる素晴らしいリズムでみんな投げてたと思うので。打ってる方としてもすごい攻撃に入りやすい、素晴らしいディフェンスだったなと思います。」

 

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試合後メディア取材

――オフ明けに結果を残してるが状態は。

「まだ100(%)ではないですけど。(日本時間13日のパドレス戦は)僕は出るつもりでしたけど、大事をとって。良い結果につながっているんじゃないかなと思います」

 

――オラクルパークでのドジャースとジャイアンツのライバル関係については。

「歴史的な球場。そういうスタイルの球場で、僕個人的にはすごい好きですし、本当に綺麗な球場だなというイメージなので。ドジャースとジャイアンツもそうですけど、バリー・ボンズさんがいっぱい本塁打打っている映像とかを見ていた球場でプレーできてよかったです」

 

――ボンズ氏には会ったか。

「今日は会っていないですね」

 

――ボンズ氏はたくさんスプラッシュヒットを打っていたが、自信はあるか。

「今日、打った瞬間に行くかなと思ったんですけど、行かなかった。ちょっと残念ですけど、またチャンスがあれば頑張りたいと思います」

 

――開幕から色々対応しないといけないことがあったが、打撃で好成績を残してる。

「最初の方は色々あったので、ちょっと睡眠が足りてないなって日がちょっと続いてましたけど、最近は時間にもだいぶ余裕ができて、1日1日、大事にプレーできているかなと思います」

 

――いい成績を残しているが、今までで一番良い状態か。

「状態は良い方だとは思いますけど、6年間で1番いいかと言ったら、ちょっとわからないですね。みんな打席の中で工夫しながら良い打席ができているんじゃないかなと思うので。その中の1人として良い打席が送れているんじゃないかなと思います」

 

――打者として改善したポイントは。

「シーズン中にも打ちにくいなというか、結果が出ていないなということもあるので。それを1年1年改善していこうと。シーズンの中で1打席1打席で修正したいと思っているので。いつ、というよりは毎打席毎打席進歩しているかなと思います」

 

――いつから眠れるようになったのか。

「色々と物事が進展して、新しいことがわかって、自分のやるべきことを出して。一旦、解決した段階では、僕の方からやることは無くなったので。その段階でかなと思います」

 

――打てない期間を短くできるのは何を掴んだのか。

「調子の波を、周期もあれば深さもあるのでまだ調子が一番悪い、深い波がきていないだけなのかも分からないですけど、自分が感じが悪いなと思ったときに改善できる引き出しは毎年、歳を重ねているごとに、経験するごとにやればこうやって改善されていくんだなと分かってくるので」

 

――引き出しが増えている。

「最初感じが悪くても何が原因なのかある程度早い段階で、もちろん日本の1年目とかよりは歳を重ねるごとに自分の傾向も分かってくるので、これが悪いとどうなるよねというのがちょっとずつ分かるんじゃないかなと」

 

――佐々木麟太郎とやり取りは。

「テキストはずっとしていましたね。今日来るって、練習が休みみたいな感じでした。僕は元々表にはあまり出ないので。本人が色々な人の打撃練習を見て勉強したいみたいな話をしていたので、それは多分見たら勉強になるんじゃないのというやり取りはしていました。今日? 会ってはいないです」

 

――形状が特殊な球場、環境面は打撃で考えるか。

「気にしないですね。たとえいい本塁打性の当たりで戻されたとしても、それは運でしかない、左右できないですし、いい打席を積み重ねていくだけです」

 

――ボンズ氏のスプラッシュヒットをどう見ていたのか。

「本当にメジャーリーグの打者というか、今よりも動き方だったりが日米で凄く差があった時期だと思うので、米国人らしい打ち方というか、洗練されたパワーヒッターのイメージなので格好いいなと思って見ていました」

 

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【NEWS情報】

◯ 右中間スタンド後方で大谷のホームランボールをゲットしたのは、ボストン出身の大学生サム・セルビーさん(20)。左手を上げて大はしゃぎする姿がテレビ中継でも映し出されたが、その後に通りがかった子供にプレゼント。心優しい「神対応」だったが、実は「僕はレッドソックスの大ファンなんだ」。そして「吉田正尚は素晴らしいプレーヤー。大谷翔平は吉田よりほんのちょっといい選手かな」と笑顔でジョークを飛ばした。

 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

ーーフィールド内外の問題にとらわれず好成績を維持し続ける大谷について

「とても印象的ですごいこと。ただ、彼は長い間、勝てる、優勝を狙うチームでプレーしたかった。エンゼルスのことを悪く言うわけではないが、ドジャースでプレーすることでレベルを上げ、毎日打撃に焦点を絞っている。結果、我々は彼が何をできるのか目撃している」

 

「彼は常にスラッガーだったし、積極的にバットを振っていく打者だった。しかし今の彼は打者として、さらにレベルを上げていると思う。今日は反対方向に打った二塁打、中前打もよかった。そして進塁打も打てるし、四球も選ぶ。トータルで見てより良い打者になっていると思う」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平の苦悩「睡眠が足りていない日も」 昨季は見せなかった弱音…取材で感じた変化

川村虎大氏/情報:Full-Count)

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 ドジャース・大谷翔平投手は14日(日本時間15日)、敵地・ジャイアンツ戦に「2番・指名打者」で出場し、今季12号ソロを含む3安打を放った。試合後の取材では「睡眠が足りていないなって日がちょっと続いていました」。開幕から激動の2か月を振り返り、本音を漏らすこともあった。

 

 この日、元通訳の水原一平被告が罪状認否で出廷。記者からは間接的に騒動についての質問が飛んだ。大谷が睡眠不足を明かすのは珍しかった。12日(同13日)の敵地・パドレス戦前の取材で、新生活後も睡眠は「比較的取れている」と話していた。そのため、睡眠が足りないという悩みはないと思っていた。

 

 5月に入り取材対応はすでに5回目。昨年まで、取材は登板終了後に限られ、右肘の靱帯損傷が発覚して以降はシーズン終了まで話すことはなかった。取材対応の時間が長くなっただけでなく、大谷自身の言葉にも変化が見えた。

 

 12日(同13日)の取材では自ら腰の状況について説明。「大事をとって、という感じです」。この日も「まだ100ではない」と話していた。常に出場することを考えていた昨季は「チームに迷惑をかける状態じゃない」と自身の体の状況を詳しく説明することは少なかった。

 

 エンゼルスの球団関係者も「大谷さん、よく話しますね」と変化を実感していた。記者と話す場面も昨季よりも多くなった。ドジャースと10年7億ドル(約1071億円)の契約を結び、結婚に、水原被告の騒動。新天地で大谷自身も変わりつつある。

 

川村虎大 / Kodai Kawamura

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◆ 大谷翔平の接待で“厳戒態勢”に 米国の日本食レストランに走った緊張「ブラインドも下げた」

(情報:THE ANSWER)

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 米大リーグで活躍する大谷翔平投手は、今季からドジャースに加入。FA争奪戦に敗れた同地区のライバル・ジャイアンツを相手に13日(日本時間14日)から連戦が始まったが、米メディアはFA交渉時に大谷が訪れたというサンフランシスコ市内の日本食レストランを紹介。山本由伸投手も訪れたことを明かした日本人オーナーは「でも2人ともドジャースに行ってしまった」と語ったという。

 

 今回、米サンフランシスコのニュースメディア「SFGATE」で紹介されたのは、市内の日本食レストラン「Akari Japanese Bistro」。ドジャース戦に合わせてか「フリーエージェント中のドジャースのショウヘイ・オオタニをもてなした、サンフランシスコのレストランの内側」との見出しで報じられた。

 

 記事では「このレストランは、モリと料理長の”マコ”マコト・カネマルによって2022年にオープンした。最高に新鮮な食材を使用した、料理長特製の伝統的な日本の味わいを提供する懐石料理を専門としている。しかし、ただのお寿司ではない。Akariの通常のディナーコースでは、和牛、天ぷら、鍋、刺身などが提供される」と紹介。ベイエリアのフードメディアやインフルエンサーが同レストランを紹介することはあまりないとも言及している。

 

 そんな中で「しかしMLB界では、創業してわずか2年しか経っていないサンフランシスコの懐石レストランが、この街が提供する最高級の日本食レストランの1つであると知られている」と指摘。「ここは、このオフシーズンに彼ら(ジャイアンツ)が2人の日本生まれの大物フリーエージェントとの重要な交渉の場として選んだレストランである」と伝えている。

 

 2人の日本生まれの大物フリーエージェント、とは大谷と山本。記事では、ジャイアンツがレストランを貸し切り、「ブラインドも下げた状態」の“厳戒態勢”で交渉していたとされている。ちょっとした緊張感が走ったようだ。

 

 記事ではオーナーが「残念ながら、2人ともドジャースに行ってしまいましたけどね」と笑いながら語った事も紹介。同レストランが、吉田正尚のレッドソックスがアストロズ戦で遠征してきた際にケータリングを行っていたことも紹介され「たとえこのオフシーズンにジャイアンツがオオタニやヤマモトの獲得に貢献できなかったとしても、彼らの目標の最も強力な基盤は野球界にあることは明らかだ」と評価。MLB選手に愛される店であるとした。

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◆ 大谷翔平と会わない極秘交渉でも「人柄は伝わってきた」 伊藤園広告、TV展開しなかった粋な理由

(情報:THE ANSWER)

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 飲料大手メーカーの伊藤園は米大リーグ・ドジャースの大谷翔平投手と極秘に交渉し、主力ブランド「お~いお茶」においてグローバルアンバサダー契約を締結して世間を驚かせた。社内でもほぼ誰も知らない中で始まった大谷とのプロジェクト。国内外の新聞60紙に全面広告を展開し、その写真も広告業界ではタブーとも言われた大胆な手法が注目の的となった。伊藤園広報部がTHE ANSWER編集部に語った契約の舞台裏。連載最終回となる今回は、伊藤園がプロジェクトを進める中であえてこだわった広告の掲出手段について。本人不在でも伝わってきた大谷の人柄と「応援したい」気持ちの本音に迫った。

 

 水面下での「一部の者しか打ち合わせをしていなかった」という中で進められていった伊藤園と大谷の契約交渉。当然、4月30日の発表の際には社内でも驚きの声が上がり、ネット上での反響やニュース報道を見たことで“事の重大さ”を感じる社員、関係者も多かったという。

 

 今回の交渉において、伊藤園が大谷と直接会ってプロジェクトについて話し合うような機会はなかったという。

 

「それでも、いろいろな話を進めていくうえで大谷選手の人柄というのは伝わってきました。大谷選手は野球においてはもちろん凄いですけど、人として素晴らしい方、人格者ですよね。弊社に限らず、多くの企業が契約を結んでいるのも、そういったところに共感しているんだと思います。スコア(成績)が良くて、凄い賞を獲ったという選手は過去にも多くいらっしゃいましたが、その中でも、人として、日本人としてのマナーやモラルといったところにおいて勉強になるところがあると思います」

 

 大谷の人柄を「お~いお茶」を通じて世間に伝えたい。それに加え「今回の発表に至る過程で、大谷選手の周りでいろいろなことが起きていました。そういう状況もあり、我々としては大谷選手の『応援をしたい』という思いが第一にありました」という思いが強かった伊藤園。それが強く出たのが、国内外の新聞60紙に掲出した全面広告だった。

 

 青空が広がるスタジアムに置かれた1本の「お~いお茶」のペットボトルの写真に「拝啓 大谷翔平様」で始まるメッセージが添えられた広告。ペットボトルは「商品の顔」ともいえるロゴを背にした異例のスタイル。ラベルの背には「いつの日も 僕のそばには お茶がある」という俳句とともに「カリフォルニア州ロサンゼルス・29歳・大谷翔平」と書かれている。

 

 実は、この広告を紙媒体に掲出したことにも理由があった。「出し方についてはいろいろな考え方がありました。テレビ広告というのも考えましたが、やはり新聞は外せないなと。(全面広告の)現物をアナログで残すことができる。手元に置いておけるというのは大きい。『お~いお茶』が大谷選手のそばにあるように、この広告を皆さまの手元に置いておけるような環境を作りたい、というのはありました」。広告のラベルに書かれた大谷の俳句は、消費者に対する伊藤園の配慮の一つでもあった。

 

 ちなみに、広告に掲載された大谷の一句が書かれたペットボトルの商品について「欲しいという声はたくさんいただいているのですが、残念ながら販売の予定はございません」と伊藤園広報部の担当者は笑いながら答えた。「弊社はもともとが『お茶屋』なので、お茶において世界でも負けるわけにはいかない。大谷選手ともども、世界で一番を目指す。そんな姿勢を続けていきたいと思います」。活躍を続ける大谷を応援し、ともに歩む未来予想図は確かに出来ている。

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◆ 出廷した水原一平被告とエレベーターに乗り合わせたMLB担当記者 20秒の長い沈黙の末に 襟足長い髪はつやつや

小林信行氏/情報:デイリースポーツ)

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 ドジャースの大谷翔平選手(29)の銀行口座から金を盗んで不正送金したとして、銀行詐欺などの罪に問われた元通訳の水原一平被告(39)が14日、罪状認否のためロサンゼルス連邦地裁に出廷した。既に罪を認める司法取引に応じているが、手続き上の理由から形式的に無罪を主張。司法省によると、次回審理で罪を認める見通しだ。約50人の報道陣が集まり日米で大きな注目を集めた中、水原被告とエレベーターに乗り合わせたデイリースポーツ・小林信行記者が、現地の様子や混乱などを追った。

 

  ◇  ◇

 

 黒いスーツにノーネクタイの白シャツ。肩と肩が触れそうな距離に水原被告が立っていた。ロサンゼルス連邦地裁640号法廷で罪状認否を終えた被告とフリードマン弁護士を、約50人の日米報道陣が追う。6階から降りるエレベーター。一瞬、ためらったが、2人に続いて十数人の記者たちと一緒になだれ込んだ。

 

 同被告と最後に言葉を交わしたのは3月20日、韓国開幕戦の試合前。他愛もないあいさつだった。試合後のクラブハウスでは大谷の通訳をする様子も間近で見ていた。「私はギャンブル依存症です」。その直前に行われたミーティングで告白していたことを米報道で知った。

 

 エレベーターの中では右隣に立つ水原被告の顔をずっと観察した。2月にキャンプ地で会った時ほど痩せた印象は受けなかった。襟足の長い髪は整髪料なのか、つやつやしていた。生気のない、うつろな目はずっと遠くを見ていた。何も視界に入っていないようだった。

 

 真一文字に結んだ口に強い意志を感じた。話し掛ける絶好の機会。しかし、言葉が見つからない。なぜこんなことを…。ただただ悲しかった。法廷からエレベーターまでの約20メートルの間に、質問攻めにしていた記者たちも、なぜか黙ったまま。長い長い20秒だった。

 

 開廷30分前には、法廷の前に並んでいた報道陣が、地裁担当者に690号法廷への移動を命じられた。傍聴を認められず、廷内の音声のみを聴くことを知らされた一人の米記者が「報道の自由の侵害だ」と猛抗議。急きょ、報道陣46人の署名を集めて異議申し立てを行った。治安判事とみられる人物は「安全上のリスクがあり、対応するための人員が足りない」と説明。結局、法廷に立つ被告を見ることはできなかった。

 

 4月12日の初出廷の際、法廷以外では報道陣の目を避けて、裏口から出入りした同被告。しかしこの日は、道路に横付けにした黒いバンから建物までの約200メートルの距離を歩いた。報道陣に囲まれ、口は開かずとも、背筋を伸ばして、堂々と歩き続けていた。

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◆ 通訳時代の水原一平の姿ではない 何も見ていないようなうつろな表情と消えたタバコのにおい…2度目の出廷を追って

村山みち氏/情報:スポーツ報知)

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 大谷翔平投手(29)の銀行口座から約1700万ドル(約26億4400万円)を盗んだとする銀行詐欺などの罪を認め、司法取引に応じた水原一平被告(39)が14日(日本時間15日)、罪状認否をするためにカリフォルニア州ロサンゼルスの連邦地裁に出廷した。

 

 大谷選手が6年間所属したエンゼルスに続き、今年2月からドジャースの担当記者の一人として取材を続ける私にとって、水原被告が関わる一連の事件は「知らない誰かが起こした詐欺容疑」ではない。 私にとって水原被告は、何年にもわたり試合のある日は毎日のように「おはようございます」「お疲れ様です」と声を掛け合った人であり、ときには「今日のコーヒー、いつもと違うところのですね!」なんて雑談を交わした、血の通った人だった。

 

 彼のあのちょっとモソモソした口調で秀逸な通訳をする様子や、クラブハウスでアメリカ人の選手たちとトランプのポーカーを楽しむ様子、球場のダグアウト裏から外に通じる通路の端っこに立って誰かと電話をしながらタバコをスパスパ吸っている姿などを、何年にもわたって目にしてきた。

 

 だから、彼の名前の後に「容疑者」がつき、「被告」と呼ばれる今の姿が、私には現実のものとは捉えにくく、どうしても今の彼の様子を自分の目で見たくてロサンゼルス地裁に向かった。連邦地裁ビルの前は日米のテレビ局などメディアが集まっていたが、カメラは法廷がある地裁の建物には入れない。カメラを持たない記者は建物に入れるので(しかし持ち物検査は厳重)急いで6階の法廷に向かった。

 

 開廷の数時間前に着いたので、当然扉は閉まっていたが、すでに並んでいる人もいた。扉の前に張り付くように立っていた長身の女性は、水原被告の容疑発覚後、唯一単独インタビューをした米スポーツ専門局「ESPN」のティシャ・トンプソン記者だった。この日のためにワシントンDCから飛んできたそうだ。私はシアトルから来たと言うと、それを聞いたNBCの記者も入ってきて「水原被告の表情を見るには傍聴席のどのあたりに座るのがベストか?」という話題になり、法廷スケッチをする画家を仲間に招いて、いい席を教えてもらったりしながら、開廷時間の午前11時30分になるのを待った。

 

 審議が始まる30分前。法廷警備員が廊下に出てきて大きな声で「メディアは全員690号室へ入るように」とアナウンスした。そこにいた約50名のメディアが瞬時に小走りでその法廷に駆け込んだが、中はがらんどう。明らかに様子がおかしい。それぞれが横にいる者同士顔を見合わせて「一体、何が起きているんだ?」と話していると係員が、「今日はメディアは法廷に入れません。この部屋に隣の法廷の音声を流すので、それを聞くように。判事の判断です」と言ったことで、場内は騒然となった。

 

 アメリカの有名通信社の記者が「判事と今すぐ話をさせてください。これはジャーナリズムの権利の剥奪です」などと即座に反論してくれたが、係員には何もできない。その記者が代表になり、そこにいたメディア全員による抗議文をすぐに判事に提出したが、残念ながら状況は変わらず、隣の法廷から流れてくる音声を聞くという前代未聞の事態になった。

 

 決して聞き取りやすいとはいえない音声が聞こえて来たのは11時43分。判事による水原被告への質問は6問。従って水原被告が発した言葉は “That’s right.” (合っています) “Yes I did.”(はい、署名しました) “Yes, ma’am.” (はい) “Yes, ma’am.” (はい) “Yes, ma’am.” (はい) “Not guilty.”(無罪です)という、6センテンスだけだった。法廷は5分ほどで終了し、判事が閉廷を口にした瞬間、メディア全員が廊下に飛び出し、水原被告が出てくるのを待ち受けた。

 

 法廷の扉が開き、マイケル・フリードマン弁護士の背中に隠れるように現れた水原被告。廊下をふさぐように立ちはだかるわれわれメディアの方に目をやったが、「こちらを見ているのに何も見ていない」ような、うつろな表情だった。身体はそこにあるのに中身は入っていないというか、生気のようなものが感じられない。まるで、「かぶりもの」を着ているかのような、生身の人間のような姿ではなかった。

 

 能面をつけたような固まった表情で弁護士に促されてエレベーターに向かった水原被告に、何か声を掛けたくて追いかけた。そして扉が閉まる直前に飛び乗ることができ、弁護士の背中に隠れるように立っていた水原被告の隣に立つことができた。気をつけの姿勢でエレベーターの扉の方をまっすぐ見つめている身長180センチ台、背の高い水原被告の顔を見上げたが、外界をすべてシャットアウトしているように感じられた。表情は能面のようでも、シャットアウトするぞという強い意志によって動いているようだった。

 

 エレベーターの中には「ESPN」や米3大ネットワークの一つ「 NBC」の敏腕記者たちも乗っていたが、6階から1階に着くまでの数十秒間は完全なる沈黙だった。誰もが質問したいのに、誰も口を開かない。いや、その重い空気の圧迫感で、開けなかった。私の腕から10センチも離れていないところに立っている水原被告に、私も何度か「一平さん」と声を掛けようとしたが、思いとどまった。きっと彼には真横にいる私の声も聞こえないだろう、と確信したからだ。

 

 そして真横に立つ水原被告からは、タバコのにおいがしなかった。ヘビースモーカーだった彼は、球場ですれ違うたびにいつもタバコのにおいがしていたのに…。この事件発覚を機に、好きだったタバコをきっぱりとやめたのだろうか。それとも出廷のために我慢していただけか。どうしてにおわなかったのかはわからないが、タバコのにおいがしなかったことは「何も見ていないような目」をした彼の姿と相まって、なんだか動揺してしまった。私が知っていた「ナイスな水原通訳」と、私の横に立っている「巨木のように動じない背の高い男性」は全く別人なんじゃないか―。そんな風に思えて仕方ない。

 

 そもそもこの事件は、大多数の人にとって信じられないような事件である。だから少しでも水原被告のことを知っている人にとっては、その信じ難さは2倍、3倍にふくれ上がる。私はこれまで水原被告の何を見ていたのか―。自分に問いながらモヤモヤした気持ちの中で久しぶりに彼を見たら、自分が彼のことを何一つ知らなかったことを実感した。

 

 通訳だった「水原一平」と、ベースボールカードを売っていた「ジェイ」(スターバックスのコーヒーを頼むときの名前でもある)のどちらが彼なのだろう。そして「被告」になった今、彼は何を考えて、どんな日々を送っているのだろうか。その答えを探しに行ったのだが、今日その答えは見つからなかった。

 

 次回の出廷は6月14日に予定されている。今度はどんな表情で現れるのだろうか。

 

(村山 みち通信員)

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◆ 無言を貫こうとした水原一平被告(39)がつい反応した「ある質問」 英語で「イッペイ」と問いかけられ、左手で体の一部を…

岡村美奈氏/情報:文春オンライン)

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 少しやつれただろうか。髪は伸びてボサボサ、頬がこけたというより緩んで下がってきたのか、その顔に緊張感は感じられなかった。

 

 3月に事件が発覚して以来、カメラの前に初めて姿を見せたのは、ドジャース・大谷翔平選手の元通訳、水原一平(39)被告。黒いスーツの中に白いシャツを着て、遠くを見るような目と表情のない顔は、メディアの質問に反応しないように感覚を麻痺させているような印象だった。

 

 違法賭博の借金返済のため、大谷の通訳という立場を利用し、彼の銀行口座から金を盗んで不正送金したとして、銀行詐欺などの罪で起訴されている水原被告。

 

 5月14日に、罪状認否のためにロサンゼルス連邦地裁に出廷した。待ち構えていた60人ほどのメディアは、なんとか反応を引き出そうと次々と質問を浴びせかけるが、水原被告は終始無表情で無言を貫いた。

 

 ネットやニュースなどで確認できる映像は、現地にいる記者たちによって撮られたものだ。メディアによって撮影位置も違えば、アングルも異なる。ほぼ全ての映像を見ると、無表情を貫こうとする中でも、水原被告がわずかに反応を見せた質問が目に留まった。

 

 連邦地裁前で車を降りた水原被告はまず、居並ぶ記者たちにちらりと視線を送る。しかしメディアが待ち構えていることは予想していたようで、表情ひとつ変えることなく弁護人とともに建物へと歩き始めた。

 

「イッペイ、本を書くつもりはありますか?」に強く反応

 記者たちは当然マイクを突き出しながら追いかけたが、弁護人が「今日はコメントしません」と告げる。本人の意思だったのか弁護人の指示だったのかはわからないが、1つの質問に答えてしまえば矢継ぎ早に畳みかけられることは目に見えていた。それを回避するための無言だろうが、怪訝な表情すら見せない徹底した態度だった。

 

 建物の入口で3分ほど待たされた時も、周囲をぐるりと記者たちに取り囲まれた水原被告。

 

「翔平は本当に何も知らなかったのですか」という質問には、顔を上げ視線を遠くに飛ばす。

 

「ドジャースに対して」「大谷選手と連絡は取ったのか」と聞かれても何も反応しない。「大谷選手に今、何か言いたいことがありますか」と聞かれると、唇を噛んだようにも見えた。

 

そんな水原被告が顕著な反応を見せたのは、英語で「イッペイ、本を書くつもりはありますか?」と聞かれた時だった。

 

 水原被告は発言こそしなかったものの、左手で顎先を撫でるように触った。

 

『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(河出書房新社)の著者として有名なジョー・ナヴァロ氏は、人がこの仕草をするのは何かを評価している・深く考えているときだと述べている。だとすれば、水原被告は“本”の執筆を考えているのかもしれない。

 

 続けて記者は「みんな何が起きたのか知りたがっています」と問うた。すると彼は本当にかすかだが、何度か首を縦に、頷くような仕草を見せたのだ。

 

 裁判所の入口ではセキュリティーのために靴を脱いで預け、ベルトを外し、上着を脱いでゲートを通る必要がある。水原被告がゲートを通る時、シャツの裾はズボンから出たままだった。以前なら自らの立場と人の目を気にしてすぐさま身だしなみを整えただろうが、今は自分のことには無頓着になっている印象が強い。

 

「コメントはないんですか? 大谷選手に」という言葉にも反応

 裁判所での罪状認否自体は5分で終了した。

 

 すでに司法取引に応じて罪を認めているが、この日は形式上、無罪を主張。退廷すると再び記者たちの前に姿を現したが、やはりその問いかけに応じることはなかった。

 

 ただ一度、「コメントはないんですか? 大谷選手に」と問いかけられたとき、わずかに眉根を寄せ、さらに「大谷選手に謝罪したいというコメントを出されていましたが」と聞かれると、下唇をまき込んで噛むような仕草を見せたのだ。

 

 唇を噛むのは、ストレスを感じた時に自分の感情や気持ちをなだめるための行動だといわれている。すべての質問に対して、水原被告がどのように反応したのか確認する術はない。だがメディアに無言を貫いても、内面では大谷選手に対する何らかの感情が揺さぶられたのだろう。

 

 次回の裁判は6月14日の予定、水原被告は正式に有罪答弁を行う見通しだという。捜査に対しては罪を認めているが、無言を貫いている。彼が自分の言葉で説明をする日は来るのだろうか。

 

岡村 美奈

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