2024年5月11日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年5月10日

日本時間:2024年5月11日(土曜日)

10時40分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対サンディエゴ・パドレス

ペトコパーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月11日、7連勝中のドジャースは敵地ペトコ・パークでパドレスとの同地区対決3連戦がスタート。その初戦はタイラー・グラスノー(ドジャース)とマイケル・キング(パドレス)の両先発が好投し、歴史的な投手戦となったが、1対1の同点で迎えた9回裏にルイス・アライズがタイムリーを放ち、ドジャースは1対2でサヨナラ負けを喫した。パドレス3番手のロベルト・スアレスが2勝目(0敗)をマーク。ドジャース3番手のマイケル・グローブはサヨナラ打を浴び、2敗目(1勝)が記録された。

 

 3回裏にルイス・キャンプサーノの3号ソロで先制されたドジャースは、パドレス先発のキングを攻略できず、7回まで無得点。8回表にパドレス2番手の松井裕樹から無死2・3塁のチャンスを作り、フレディ・フリーマンの犠飛で追いついたが、ウィル・スミス敬遠のあと、マックス・マンシーが併殺打に倒れ、勝ち越すことはできなかった。そして、1対1の同点のまま迎えた9回裏にアライズのタイムリーでサヨナラ負け。なお、グラスノーは7回1安打10奪三振、キングも7回2安打11奪三振の快投を見せたが、両先発が「7イニング以上・10奪三振以上・被安打2以下」を記録するのは1900年以降の近代野球において史上初のことだった。

 

 ドジャースの大谷翔平は「2番・DH」でスタメン出場し、4打数2安打。3回表の第2打席でレフト前ヒット、8回表の第4打席では松井からチャンスを広げる二塁打を放った。今季の打撃成績は打率.359、出塁率.427、OPS1.106となっている。一方の松井は、1点リードの8回表に2番手として登板したが、先頭のムーキー・ベッツの打球が足を直撃。続投するもピンチを招き、同点に追いつかれた。1回2安打1失点で2試合連続のリリーフ失敗となり、今季の防御率は4.08に悪化している。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 2安打 1三振

通算打率・359

OPS1・106

 

◆第1打席:

(結果)空振り三振

(状況)1回無死走者なし

(投手)マイケル・キング右

※初回一死無走者で「ショウヘイ・オオタニ」とコールされると大ブーイングに包まれた。チェンジアップを意識させらたカウント1―2からの4球目、外角高めの93・6マイル(約150・6キロ)のシンカーに空振り三振。

 

◆第2打席:

(結果)レフト前ヒット

(状況)3回1死1塁

(投手)マイケル・キング右

※1ストライクからの2球目、外角の92マイル(約148キロ)のシンカーを強打せずに大きなフォロースルーで逆方向に押し込んだ。ライナー性の打球は左翼線際に落ちて、安打となった。

 

◆第3打席:

(結果)ファーストゴロ

(状況)6回無死走者なし

(投手)マイケル・キング右

※カウント1―1からの3球目、外角低めの85・9マイル(約138・2キロ)のチェンジアップを引っ掛けて一ゴロに倒れた。一塁ベースを駆け抜ける際に、一塁手のクロネンワースに右腕が軽く接触し、周囲はヒヤリとするも相手を気遣うそぶりを見せた。

 

◆第4打席:

(結果)左中間2塁打

(状況)8回無死1塁

(投手)松井裕樹 右

※マウンドは2番手の左腕松井。先頭ベッツの強烈なゴロが左スネ付近を直撃して右前に抜けた。ここで大ブーイングを浴びて4度目の打席に入った。カウント1―1からの2球目、外角低めの87・1マイル(約140・2キロ)のスライダーを逆らわずに左中間へ。107・2マイル(約172・5キロ)の弾丸ライナーはスライスしながら左中間を破った。二塁打は今季15本目、メジャートップ。無死二、三塁で続くフリーマンは左翼へ犠飛を打ち上げて1―1の同点とした。

 

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 大谷はパドレス戦前の練習で、昨年9月の右肘手術後最多となる70球のキャッチボールを行った。外野の芝生部分でトレーナーを相手に、感覚を確かめるようにじっくりと投球。動画を撮影しながら、ボールの握りが各方向から見えていないかどうかのチェックも欠かさなかった。セットポジションで30球を投じるなど、体の動き、感覚も確認。5月5日(同6日)には67球を投球。それを超える球数で、また一段階、練習の強度を強めた形だ。投球後にはプライアー投手コーチ、ボールを受けたトレーナー、ブルペン捕手と話し合い。状態の確認などを行ったと見られる。

 

◯ 大谷が故郷に新たなムーブメントを起こしつつある。9日に自身のインスタグラムのストーリー機能で紹介したドジャースカラーグッズが大きな反響を呼んでいる。大谷はドジャースカラーの青、白を基調とした夫婦湯呑みや、鉄瓶など3種類の画像をアップ。写り込んでいた容器から大谷の故郷でもある岩手・奥州市で創業し、175年の歴史を誇る「南部鉄器工房」の製品と判明した。さっそく“大谷効果”がでているようで同工房の9代目、菊地海人氏は9日にX(旧ツイッター)に「恐らくですが、遅くとも明日中に一時受付停止になるかと思いますのでご検討中の方はおはやめにお申込みください」と投稿。注文が相次いでいることをうかがわせていた。

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「9回は二塁打の後、キム(ハソン)を三振に取り、その先はアラエス、タティス、クロネンワースの誰と勝負するかだった。そこは決断しなければならなかった。そこでアラエス相手に注意深く投げれば良いと決めた」

 

「タティスもクロネンワースも良い打者でバットも振れていたからね。しかし、うまくいかなかった」

 

「(息詰まる投手戦に)今日はプレーオフのような雰囲気の試合だった。満員のお客さんが入っていたし、マイケル・キングは今季最高のピッチングをした。これ以上ないという内容だった。球は速いし、全てコーナーに行っていた。うちの打線は打ち崩す答えを見つけられなかった。一方、うちのタイラー・グラスノーもここ数試合良いピッチングを続けている。我々は負けたけど、良い試合だった」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平が松井裕樹から貫禄二塁打 パドレス3左腕いずれも苦にせず「対策」機能させず

斎藤庸裕氏/情報:日刊スポーツ)

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<パドレス2-1ドジャース>◇10日(日本時間11日)◇ペトコパーク

 

 【サンディエゴ(米カリフォルニア州)10日(日本時間11日)=斎藤庸裕、久保賢吾】ドジャース大谷翔平投手(29)が、パドレス松井裕樹投手(28)から貫禄の二塁打を放った。「2番DH」で出場し、8回無死一塁から左中間へ二塁打。3試合ぶりのマルチ安打をマークし、打率を3割5分9厘に上げたが、第3打席の一ゴロで一塁手と交錯し、ヒヤリとする場面もあった。チームは9回にサヨナラ負けを喫し、連勝は7で止まった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 大谷が松井を崩す華麗な二塁打を放った。8回無死一塁、3球目の外角スライダーを捉え、流し打ちで左中間を破った。つなぐ意識のスイングで二、三塁とチャンスメーク。3番フリーマンの犠飛につなげた。4月12日の対戦ではスプリットを捉えて右翼線へ二塁打を放ち、この日はスライダーに対応。左打者対策で起用されている松井との対戦成績を3打数2安打とし、相性の良さを発揮した。

 

 接戦の終盤で一時は同点とし、粘りを見せた。パ軍にとっては、「大谷封じ」で起用している松井だが、相性の悪さは今後の継投策にも影響が出る。左腕はペラルタ、モレホン、松井の3人。大谷はペラルタに対して7打数2安打で打率2割8分6厘、モレホンとは2打数2安打1本塁打で数字上でも優位に立っている。松井との対戦で前回から2打席連続となる長打を放ったことで、左腕をぶつける「大谷対策」が機能していないことを示した。

 

 3試合ぶりのマルチ安打で打率を上げたが、第3打席ではヒヤリとする場面もあった。打ち損じの一塁ゴロで全力疾走。打球を処理し、ベースを踏んだ一塁手クロネンワースに右腕が当たって交錯した。幸い問題はなかったようだが、順調にリハビリを続けている右肘を負傷すれば投手復帰のプランにも影響が出る。この日は試合前、術後では最多70球のキャッチボールを行い、強度も上がってきただけに、負傷につながりかねないアクシデントはとっさに回避する必要がある。

 

 試合は9回、サヨナラ負けでド軍の連勝は7でストップ。パ軍の先発右腕キングから11三振を喫し、打線がつながらなかった。球審のストライク、ボールの判定も不安定だったが、ロバーツ監督は「序盤、選手たちはストライクか、そうでないか迷っていたように思うが、キングを称賛すべき。ボールがよく動いていた」と潔く完敗を認めた。

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◆ 大谷翔平がMLB初のDH選手としてMVPを受賞する上で重要になりそうなOPS+200超え

菊地慶剛氏/情報:スポナビ)

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【早くも注目を集めるベッツ選手とのMVP争い】

 

 開幕当初は「なかなか本塁打が打てない」とか「得点圏打率がかなり低い」等々、メディアが要らぬ心配をするのを他所に、一時は打率、本塁打数、長打率等々多くの打撃部門でMLBトップを立つなど、現在の大谷翔平選手は無双状態に入りかけている。

 

 ドジャースも4月24日のナショナルズ戦以降、15試合を13勝2敗の快進撃を続け、早くもナ・リーグ西地区で独走態勢を整えようとしている。

 

 大谷選手ともにチームの快進撃を支え、シーズン開幕から打撃好調を維持し続けるムーキー・ベッツ選手の2人は、ナ・リーグMVP争いで先行している状況にある。

 

 FOXニュースが最近発表したMVP予想オッズでも、2選手が突出した存在になっているのが理解できるだろう。

 

【MLB初のDH選手がMVPを受賞するには】

 

 すでに本欄では、今シーズンの大谷選手は三振率と空振り率が大幅に改善され、より確実性の高い打撃に変化していると説明させてもらっていたが、現在は空振り率がややMLB平均を下回っているものの、三振率は今も改善方向に向かっており、ますます穴のない打者に変貌しようとしている。

 

 このまま無双状態を続け、ケガなくシーズンを乗り切れれば、大谷選手は間違いなくMVP有力候補に残り続けることになるだろう。

 

 ただ本欄だけでなく各所で報じられているように、これまでMLBでDH専門の選手がMVPを受賞したことは一度もない。守備の貢献度が加味されないDH選手は、守備や走塁等も加味されて総合的に判断されるMVP争いでどうしても不利になってくるからだ。

 

 しかも大谷選手とともにMVP争いで先行するベッツ選手は、シーズン開幕直前にプロ入り後初めて本格的なショートにチャレンジし、ここまで無難な守備を披露しており、それだけも評価も上がってくる(ただし選手の各種データを紹介しているMLB公式サイト「savant」では、ベッツ選手の守備指標はMLB平均以下になっている)。

 

 それを裏づけるように、MLBのデータ専門サイト「FanGraphs」によれば、現時点(5月9日現在)のWAR(野手、打者に関係なく試合における貢献度を比較する指標)では、ベッツ選手が3.0でMLBトップを走り、大谷選手は2.6で3位(ナ・リーグ2位)につけている。

 

 こうした劣勢を覆していくには、打者として他を圧倒する打撃を披露していくしかない。

 

【打者の突出度を確認できるOPS+に注目】

 

 これまで本欄では、選手の貢献度を確認する指標としてWARやOPS(出塁率と長打率を足したもので強打者の指標として使用される)などを紹介してきたが、今回はOPS+を取り上げてみたい。

 

 OPS+とは、OPSをすべての打者と比較ながらMLB全体でどの位置にいるかを確認できる指標だ。MLB平均を100とし、それぞれの選手を数値化する。つまり数値が高ければ高いほど、MLBで突出した存在になっていることを意味する。

 

 ちなみに昨シーズン2度目のMVPを受賞した大谷選手のOPS+は184で、MLBトップだった。それだけ打者単体でも突出した存在だったことを示している。

 

 また今シーズンの大谷選手もOPS+が209となっており、ここまでMLBトップを走っている。

 

【2000年以降OPS+200超え選手はすべてMVPを受賞】

 

 実はOPS+が200を超えるのは、打者にとってかなり至難の業なのだ。

 

 実際2000年以降でOPS+が200を超えた選手は、2001~2004年のバリー・ボンズ選手、2022年のアーロン・ジャッジ選手の2人しか存在していない(2020年にフアン・ソト選手も超えているが短縮シーズンなので除外)。また2選手は200を超えただけでなく、2位以下の選手に圧倒的な差をつけている(2位以下は200を下回っている)。

 

 そして忘れてはいけないのが、ボンズ選手はOPS+200超えをしたシーズンすべてでMVPを受賞し、ジャッジ選手も大谷選手を上回りMVPを受賞しているのだ。

 

 それだけOPS+が200超えは打者としての金字塔であり、MVP争いで高評価を得られる重要な指標だと考えていいのだ。

 

【MVP投票で同僚が1、2位を独占できればMLB史上7度目】

 

 改めて断っておくが、このまま大谷選手がOPS+200以上を維持するのは決して簡単ではないし、200を超え続けたからといってMVPを確実に受賞できるわけでもない。あくまでMVP争いを予想する指標として考えてほしい。

 

 いずれにせよ大谷選手、ベッツ選手のどちらがMVPを受賞しようとも、ドジャースファンからすれば歓迎すべきことに変わりはない。またこのまま2選手がMVP争いを先行する活躍を続けられれば、チームはそれだけ念願のワールドシリーズ制覇に近づけることになる。

 

 MLB公式サイトで記録や歴史を専門に扱うサラ・ラングス記者によれば、チームメイト同士がMVP投票で1、2位を独占したのは、過去に6例ほどあるそうだ。

 

 1971年のアスレチックス(ビダ・ブルー投手とサル・バンド選手)、1976年のレッズ(ジョー・モーガン選手とジョージ・フォスター選手)、1983年のオリオールズ(カル・リプケンJr.選手とエディ・マーレー選手)、1989年の(ケビン・ミッチェル選手とウィル・クラーク選手)、1990年のパイレーツ(バリー・ボンズ選手とボニー・ボニーヤ選手)、2000年のジャイアンツ(ボンズ選手とジェフ・ケント選手)──の6チームだ。

 

 そして6チームはすべて地区優勝を果たしポストシーズンに進出し、うち3チームがワールドシリーズまで駒を進め、オリオールズとレッズは世界一に輝いている。

 

 果たして大谷選手とベッツ選手のいずれが、MVPを受賞できるのか。そして2人は、チームをワールドシリーズに導くことができるのだろうか。

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◆ 「僕には直球しかありませんから」大谷翔平に打たれた菊池雄星が、それでも満足していた理由…MLBでも“ツーシームを使わない”鉄人の自信

笹田幸嗣氏/情報:NumberWEB)

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 現地5月9日現在、今季日本人最速の直球を投げ込んだ投手は誰かご存知であろうか。答えは菊池雄星。球速は98.2マイル(約158.00キロ)。4月27日のドジャース戦の2回に岩手花巻東高の後輩・大谷翔平へ投げ込んだ1球だった。

 

 その渾身の直球を3つ年下の大谷がメジャー自己最速の打球速度119.2マイル(約191.79キロ)で弾き返す右前適時打。野茂英雄の挑戦から30シーズン目、世界最高峰の場で日本人同士が繰り広げる『力と力の勝負』はなかなか想像することができなかった。だが、その見応えある力勝負をふたりは成し遂げた。取材者として喜びが込み上げると同時に、当事者である菊池も結果を忘れ満足感を抱いていた。

 

「僕には直球しかありませんから。その直球を思い切り投げて勝負できている。その点では良かったですね」

 

大谷と菊池“登板間隔の違い”

 救援投手の世界では今や100マイル(約160.9キロ)越える投手の存在は珍しくない。先発投手では23年、エンゼルス時代の大谷が最速101.3マイル(約163キロ)を投げ、平均では96.8マイル(約155.75キロ)をマークした。菊池の平均球速は今季ここまで95.5マイル(約153.65キロ)。昨季の大谷には追いつかないものの、ふたりの登板間隔には違いもある。菊池は基本中4日、大谷は中5日以上。あるア・リーグのデータ分析担当者が教えてくれた。

 

「中4日と中5日の登板で球速には大きな違いが生まれてきます。平均で0.8マイル(約1.29キロ)から1マイル(約1.61キロ)ほど中4日の方が球速が落ちるというデータが出ています。ほぼ例外はありません」

 

 菊池もそれを実感しているという。

 

「中4日と5日では大きく違いますね。僕の場合は平均球速が中4日だと0.8マイルくらい落ちるんですよ。防御率も1点くらい落ちる。今までの5年間の数値を見ても一緒です。僕が知っている限り、どのピッチャーでも同じ数値が出ています」

 

 日本から海を渡った投手はNPB時代の「週1先発」だった過去もあり、メジャー1年目は最低でも中5日以上の間隔を空ける例が増えてきた。昨季の千賀滉大であり、今季の今永昇太、山本由伸だ。大谷は二刀流であるが故、それはずっと続いた。

 

中4日でも怪我をしないための“ルーティーン”

 狙いは怪我の回避、健康維持。投手の仕事というのは過酷だ。自分の体を代償とする投球動作は負傷が絶えない。それでも、中4日の先発を続ける菊池の体はこれまで異常を訴えたことがない。それはなぜか。彼に聞いた。

 

「シーズン中のトレーニングは体調、筋量のキープしかできないですからね。あくまでも落ちないように頑張るというだけです。僕は幸運にも怪我をしたことがない。大事なのは睡眠と栄養。トレーニング量もありますけど睡眠と栄養が一番大事です」

 

 バランスと規則正しい食事に加え最低でも8時間以上の睡眠、できれば9時間、10時間は欲しいという。同時に気を遣っていることがある。現代人の必須アイテムに関することだ。

 

「テレビを見過ぎない。デバイスを控える。パソコンや携帯を見過ぎないように気をつけています。光の情報は神経系に良くないので携帯はなるべくいじくらない。そういう細かいところに気を遣っています」

 

 携帯やタブレットでのゲームは今やメジャーリーガーの息抜きの大きなひとつだが、菊池は極力遠ざけている。幸運か、ゲームはもともとしない。大好きな読書も実際に本を手に取り読んでいる。「睡眠、栄養、デバイス削除」。これが菊池流・中4日の大原則だ。

 

「僕は不器用」菊池がツーシームを投げない理由

 ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督は鉄人菊池の安定した投球を讃えている。

 

「彼はプロフェッショナル。自己管理も徹底している。その中で安定した投球で我々のローテーションを支えチームの勝利に貢献してくれている」

 

 ここまでの成績は2勝2敗も防御率は2.72と安定。奪三振率9.8は今永の9.3を上回る。そんな菊池だが、これまでは決して順風満帆ではなかった。先発として不安定な時期もあり、マリナーズ時代もブルージェイズ移籍後も先発の座を奪われ、中継ぎに配置転換された。その都度、周囲から指摘された同じ言葉もあった。

 

「ツーシームを覚えろ。左打者の内角にも右打者の外角へも有効だ。ツーシームがあれば打者は考え、意識する」

 

 しかし、菊池は決してその言葉に首を縦に振らなかった。

 

「器用だったらツーシームとかいっていたかもしれないけど、僕は自分が不器用なのを知っているので。僕には直球しかなかった。自分の得意なものを磨くしかなかった。それしかできないから腹を括っただけなんですよ」

 

「僕は力で行ってなんぼなんで」

 とは言うものの、直球で生きていける確信もあった。それは98マイルの直球だ。日本時代にも21年のマリナーズ時代にも計測したという事実が彼を支えた。

 

「98マイルが1球投げられるということは、100球投げられると僕は思っているんです。あとは確率の問題。日本の時も97.8マイルが何回か出たんです。平均はそこに行ってないけど、まずはそこを意識することが大事だと思った。95マイルしか投げたことがない人に98マイルを投げろと言っているわけじゃない。1回でもあるならば、あとは再現性の問題です。メジャー1年目は6勝できているわけだから、あとは確率の問題だった。0勝じゃないんで。それをあげるためにどうしようと考え続けた」

 

 頑固であり、愚直。そして、自分の可能性を信じ、あきらめない。菊池にはそんな強さがある。彼は力強く言った。

 

「中4日の登板は1年を通して問題なくできるでしょう。体力には自信がありますから。登板後も身体はまったく痛くならないです。筋肉痛もないです。強いて言えば、背中の張りには気を遣っています。投げるということは肩がぶっ飛ぶわけですよ。それを背中で止めているので、背中はブレーキ。僕は力で行ってなんぼなんで。1マイル球速が落ちるのは致命的なんで。そこは徹底的にケアしています」

 

 中4日で1年間を投げ続ける「パワー投手・菊池雄星」の勇姿をこれからも期待したい。

 

(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)

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 ■ NOTE

 

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