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2024年5月10日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 大谷の元通訳、水原一平被告を巡る一連の賭博スキャンダルが、早くも米国でテレビドラマ化されることが決まった。映画「ソウ」シリーズなどの製作で知られる米ライオンズゲートは9日(日本時間10日)、ドラマ化の制作を発表。タイトルや放送時期は未定。制作チームのアルバート・チェン氏はリリースで「これはピート・ローズ以来のメジャーリーグ最大のスポーツ賭博スキャンダルであり、その中心にはMLBの今後を左右するスーパースターがいる。我々はストーリーの核心に迫る。信頼と裏切り、そして富と名声に捕らわれた物語だ」とコメント。 

 

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 ■ 球界情報

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アーロン・ジャッジ外野手:

◯  日本時間5月10日、5連勝中のヤンキースは本拠地ヤンキー・スタジアムでのアストロズ3連戦の最終戦を迎え、1点差まで追い上げたものの、3対4で惜敗。3連戦のスイープを逃し、連勝は5でストップした。この日、ジャッジが一発を放つ。8回裏、ジャッジが放った一発は飛距離473フィート(約144.2メートル)を計測し、マイク・トラウトと並ぶ今季メジャー最長の一発に。開幕から低空飛行が続いていたジャッジだが、直近15試合で打率.327、6本塁打、OPS1.166とようやくエンジンがかかってきた。シーズントータルの打撃成績も打率.236、9本塁打、25打点、OPS.855まで上昇している。

 

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平が1カ月強でドジャースに溶け込めた背景を現地取材 ブレーブスとの3連戦の舞台裏

奥田英樹氏/情報:webSportiva)

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メジャーリーグも開幕から1カ月強。ロサンゼルス・ドジャースは5月上旬、ナ・リーグの覇権争いのライバル、アトランタ・ブレーブスとの今季初の3連戦をスイープで圧勝。その原動力となったのは、大谷翔平だった。移籍1年目、MLBを代表するスーパースターでも新しい環境に適合するには時間がかかるものだが、それは大谷には当てはまらなかった。

 

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 大谷がいかにドジャースの一員としてチームに溶け込んでいるのか。現地ロサンゼルスからレポートする。

 

【圧巻の活躍で3連勝に導く】

 

 5月3日~5日(日本時間は+1日)、ロサンゼルス・ドジャースがドジャースタジアムにアトランタ・ブレーブスを迎えた3連戦は、のちのち大谷翔平のキャリアのなかでも、特別なシリーズだったと振り返られるに違いない。

 

 14回打席に立ち、12打数8安打2四球、3本塁打、6打点、2盗塁。今季最大のライバルと目される強豪に対し、打って、走って、圧倒。チームを3連勝のスイープに導いた。

 

 5日の試合後、クラブハウスの入り口に近い通路で行なわれる日米記者の囲み取材。大谷は、「(ブレーブスは)すばらしいチームですし、みんな気合も入っていたんじゃないかと思います」と胸を張った。移籍の多いメジャーリーグで、新しい選手が心からチームの一員になれたと感じられるのは、期待に見合ったパフォーマンスを見せられた時。大谷は、この3連戦の活躍で7億ドル(約1050億円)の価値を証明できたと思った。

 

 デーブ・ロバーツ監督も「翔平が初回にカーブを打って2点本塁打、チームを勢いづかせてくれた。(相手投手の)マックス・フリードはメジャーでもトップレベルの投手。その彼から本塁打を打った。おかげで3つ勝てた。とてもいいチーム相手にね」と満足そうに話した。

 

 代名詞であるケタ外れのパワーも見せた。8回、センター左への461フィート(約141.4m)弾。ドジャースタジアムで数えきれないほど試合を見てきたが、左打者があそこまで飛ばしたシーンは、記憶にない。

 

 ロバーツ監督も、目を丸くする。

 

「翔平は、我々が見たこともないことを、次々とやってのける。とてもよいスイングで打球速度は、111~112マイル(時速約178~179キロ)は出ていた。普通あそこまで行くものじゃないし、本当に遠いところまで飛んでいった。しかも風は左から右に吹いて打球も押し返されたはずだよ」

 

 ホームランだけではない。シリーズの流れを作ったのは、3日の第1戦。延長10回裏一死2塁、2対3と1点リードされた状況。大谷はブレーブスのクローザー、ライセル・イグレシアスのボールになる外角低めのチェンジアップを腕いっぱいにのばし、右手一本でとらえると、打球はダイビングする遊撃手と二塁手の間を抜けていった。背番号17番は一塁ベースを回ると両手を上に挙げ、「カモン!」と絶叫。昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝・メキシコ戦で見せた時のようにチームを鼓舞した。

 

 あれだけ感情を表に出す大谷は珍しい、と関係者もファンも、驚きを隠せなかった。ドジャースは10月のポストシーズンに勝つために大谷を獲得したが、その前哨戦で大谷は躍動し、チームをけん引する姿を見せた。

 

【ロバーツ監督の机の上のポルシェの真相】

 

 フィールドの上だけではない。ドジャースのチームメートはもとよりスタッフ、取材者たちとの絆も日に日に深まってきている。4日、ダグアウトで行なわれた試合前の会見、ロバーツ監督は質疑応答に応じたあと、「実はね......」と子供のような笑顔で大谷にポルシェをもらったと明かした。

 

「昨日、翔平が照れくさそうに監督室に入ってきてね、ニコッと笑って車をくれた。私の机の上に置いてあるよ」

 

 伏線は4月24日。大谷がドジャースの日本生まれの選手の本塁打数記録で、ロバーツ監督の記録(7本)にあと一本と迫っていた時のこと。遠征中のワシントンDCの球場で、担当記者に「記録を抜かれたら(大谷に背番号17を譲ったジョー・ケリー投手の奥さんのように)ポルシェでももらうのか」と冗談で聞かれ、監督は「いいアイデアだね、私には新しい車が必要だ」とジョークで答えていたのだ。

 

 それが大谷本人に伝わったのは、ドジャースの地元局『スポーツネットLA』の女性レポーター、キルステン・ワトソンさんがいたから。5日の試合前、ワトソンさんがにこやかに経緯を明かしてくれた。

 

「ロバーツ監督がワシントンDCで、『車が~』と冗談で言ったけど、あのあとにクラブハウスに行ったら翔平とウィル(・アイントン)通訳がいたから、『前もって知らせるけど、監督は車が欲しいと言っていた、準備しておいたほうがいいよ』と伝えたの。彼らは『新しい車? なぜ?』と返してきたんだけど、正直言って、私も誰かの記録を抜いて、その人に贈り物をあげるなんて、意味がよくわからないと思った。ただ、この話を楽しくするには、おもちゃの車をあげたらどう? って提案したの。結果的にすごくいいアイデアになった」

 

 とはいえ大谷が本当に実行するとは、ワトソンさんも考えていなかった。3日に大谷がポルシェのミニカーを贈呈。ワトソンさんはロバーツ監督に「私が余計なことを言っちゃったみたい。本物の車じゃなくてごめんね」とユーモラスに謝っている。

 

 大谷はその翌日、「本人に喜んでもらえてよかったです」と説明。「そういう冗談が好きですか?」と聞かれると「そうですね、笑ってもらうのが好きなので。また何かあればやりたいと思います」と気さくな面を見せた。

 

【名実ともに大谷のチームに】

 

 そのうえでロバーツ監督はどういう存在か? と問われると、大谷は真剣な表情で答えた。

 

「基本的には選手に寄り添うタイプの監督かなと思いますけど。よくないプレーに対して、しっかり、改善点もそうですけど、どの選手にもアプローチを含めて話し合える関係性がある。メリハリのある監督かなと思います」

 

 4月中旬、大谷は得点圏で気負い、ゾーンを広げ、打つのが難しい球にも手を出し、凡打を重ねていた。ロバーツ監督はスーパースターである大谷にも遠慮せず、話し合う機会を持った。5月のブレーブス戦、大谷は本塁打をかっ飛ばすだけでなく、得点圏に走者を置き2度の適時打と、質の高い打席が増えてきている。

 

 加えて、大谷はロバーツ監督率いるドジャースがなぜ毎年好成績を残せているのか、その理由をチーム内にいて体感した。こう明かす。

 

「連敗はしていましたけど(4月12日から21日の本拠地3シリーズは3勝6敗)、何かあればチームで選手だけでミーティングをしたり、出ている選手、出ていない選手に関係なく、全員で意見を出し合ってやる雰囲気は、僕は1年目ですけどすばらしいなと思います。みんなプロ意識を持って、一人ひとりが試合だけでなく、練習もそうですし、毎日やるべきことをやっている。そういう選手が多いなというのは思います」

 

 大谷はクラブハウスでもダグアウトでも、英語でコーチやチームメートと頻繁に話している。記者会見で流暢にとはいかないかもしれないが、メジャー7年目で日常会話や野球のことなら困らないし、普通にやりとりできる。よく笑顔も見る。

 

 ロバーツ監督は、こう目を細める。

 

「ドジャースでの居心地が、どんどんよくなっているのだと思う。そして勝つ野球ができていることにエキサイトしている。彼は我々の世代で最高の野球選手のひとりになれる可能性を持っているが、それ以上に、チームとして栄冠を勝ち取りたい。ドジャースやファンの期待を背負いながら、それがプレーに反映されている。これまで以上に野球をしていて楽しいのではないか」

 

 筆者は夜7時が試合開始の場合、午後2時ごろには球場に入る。その時間帯はファンの球場ツアーの時間帯で、背番号17番のファンを本当にたくさん見かける。

 

 開幕から1カ月ちょっとだが、ドジャースは名実ともに大谷翔平のチームになってきたと感じるのである。

 

奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

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◆ 打者・大谷翔平の進化をデータで分析 規定打席に達した2021年から大幅に改善してきたふたつの数字とは?

井本佳孝氏/情報:webSportiva)

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【過去3年の成績との比較で見えたアップデート】

 

 大谷翔平がロサンゼルス・ドジャースの一員として迎えた2024年シーズンも1カ月が過ぎた。10年総額7億ドル(約1050億円)という北米スポーツ史上最高額の契約でチームに加わった日本のスーパースターは、5月に入ってその真価を見せ始めている。

 

 大谷の存在感は、世界一を目指すドジャースの強力なチームメイトの中でも群を抜く。打者専念のシーズンで指名打者として、過去最高と言っていい好スタートを切った。

 

 大谷は38試合(日本時間5月9日)に出場した時点で、打率.355、11本塁打、27打点。首位打者は同僚のムーキー・ベッツ、本塁打ではアトランタ・ブレーブスのマルセル・オズナらと激しいトップ争いを繰り広げている。さらに、54安打、14二塁打、OPS(出塁率+長打率)1.103でもナ・リーグ首位に立ち、盗塁は早くも9個(ナ・リーグ9位)を決めるなど俊足ぶりも光る。

 

 大谷の数字を語るうえで言及したいのが、年々凄みを増す成長ぶりだ。

 

 ロサンゼルス・エンゼルス時代の2021年は投手として9勝を挙げ、打者として46本塁打を放ち、タイトル争いを演じてメジャーでは自身初のMVPに輝いた。そこから1年ずつ、打者としてアップデートした姿を見せてきた。

 

<大谷翔平 2021年以降の38試合を消化した時点の主な打撃成績>

 

●2021年シーズン

 

152打数40安打、打率.263、13本塁打、32打点

 

48三振、8四球、6盗塁、出塁率.313、長打率.612、OPS.925

 

●2022年シーズン

 

153打数40安打、打率.261、8本塁打、27打点

 

38三振、13四球、5盗塁、出塁率.319、長打率.471、OPS.790

 

●2023年シーズン

 

147打数42安打、打率.288、8本塁打、25打点

 

32三振、14四球、5盗塁、出塁率.364、長打率.521、OPS.885

 

●2024年シーズン

 

152打数54安打、打率.355、11本塁打、27打点

 

33三振、20四球、9盗塁、出塁率.425、長打率.678、OPS 1.103

 

 初の規定打席を達成した2021年の開幕38試合の成績を見てみると、打率.263、13本塁打、32打点で、ホームランと打点は2024年を上回るペースで推移している。一方で確実性は低く、48三振と粗さも目立つ。四球もわずか8つと、相手に与える脅威が今に比べると小さかった(今シーズンは同33三振、20四球)。エンゼルス打線との兼ね合いもあるが、「ホームランもあれば三振あるバッター」という印象もあった。

 

その後の3年間の数字も見てみたい。46本塁打を放ってタイトル争いに絡み、MVPを受賞して迎えた2022年シーズンは、開幕から38試合で打率.261、8本塁打、27打点。打率や本塁打、打点に大きな変化は見られないが、注目したいのは三振数と四球数だ。三振は38で前年より10個減らし、四球も13と5つ増えている。

 

 大谷はこのシーズン、年間の本塁打は34本に減らしたものの、トータルの打率は.273と前年の.257から大幅に上げ、三振数も161個と189個から大きく減らしている。粗さもあるパワーヒッターから、確実性も備えたバッターへと成長していった。

 

 2023年になると、その傾向はより顕著になる。このシーズンは開幕38試合で打率.288、8本塁打、25打点。三振の数は32で四球の数は18とさらなる改善が見られた。

 

 大谷は2023年シーズン、44本塁打で日本人初のホームラン王のタイトルを獲得したが、打率も.304と、規定打席に到達したシーズンのなかではプロ入り初の3割を達成。メジャーに渡った日本人選手ではイチロー(2001年から10年連続)、松井秀喜(2005年)しか成し遂げてない領域に足を踏み入れた。

 

 そして今シーズンは、打者に専念するという過去3年にはないアドバンテージはあるものの、安打を積み重ねて高打率をキープし、本塁打も量産態勢に入っている。大谷が打者としてより高みを求め、取り組んできた成果がひとつの形になり始めている。

 

【強力なチームメートのおかげで負担が軽減】

 

 もちろん、大谷の好調を語るうえで、新たなチームメートの存在は欠かすことができない。1番を打つベッツは開幕から5試合で4本塁打を放つロケットスタートを切り、3月、4月は打率.377、6本塁打、OPS1.101で自身3度目の月間MVPを受賞した。大谷も「ほぼ間違いなくムーキーが塁に出てくれるので、ポジティブな形で打席に立てている」と語るが、この驚異の1、2番コンビは引き続きドジャースの武器となるだろう。

 

ベッツ、大谷とともに「MVPトリオ」呼ばれる3番のフレディ・フリーマンは、打率.301、3本塁打、21打点とベッツや大谷に比べると数字は見劣りする。だが、2022年は打率.325、昨年は打率.331と安定感ある打撃を見せているだけに、シーズントータルではよりよい数字を残すことが期待される。

 

 ほかにも、正捕手を務めるウィル・スミスは打率.331、6番または4番で起用されるテオスカー・ヘルナンデスが10本塁打を放つなど、誰かが不調に陥ったとしても少々のことでは崩れない質、量ともに十分な選手が揃っている。昨シーズンまで所属したエンゼルスは、大谷とマイク・トラウトのふたりに依存することが多く、そのトラウトも故障離脱が多かったため、大谷にマークが集中していた。しかし、ドジャースではその負担が軽減され、自身の好結果につながっている。

 

 打者・投手として結果を残してきた2021年からの3年間を経て、打者に専念する移籍1年目で最高の滑り出しを見せた大谷。リーグをまたいでの2年連続本塁打王やMVP獲得、トリプルスリー達成にも期待が膨らむ。ドジャーブルーのユニフォームを身にまとった大谷の躍動から目が離せない。

 

井本佳孝●取材・文 text by Imoto Yoshitaka

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◆ 松井の記録に並び、抜いたことは「日本球界にとって大きい」 大谷が考える日本人打者の可能性とは?

丹羽政善氏/情報:スポナビ)

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「日本の野球界にとっても大きいことじゃないかなと思います」

 

 4月12日、大谷翔平(ドジャース)は左中間に本塁打を放ち、MLB通算本塁打を175本とすると、これまで松井秀喜さん(ヤンキースなど)が持っていた日本人メジャーリーガーの最多記録に並んだ。試合後、そう話した大谷だが、やや漠然としていて、解釈に困った。

 

 その場で確認できればよかったが、その日は試合が終わってすぐに囲み取材が始まり、指定された場所にたどり着いたときにはすでに二重、三重の人垣ができ、そこからではそもそも、何を言っているのかはっきり聞き取れなかった。

 

 大谷の囲み取材は米メディア、日本メディアで分けて行われる。米メディアの囲みに日本メディアが参加してもいい。質問は出来ないが、それによって同じことを聞く必要がなくなり、大谷が同じことを2回答えなくてもいい。

 

 取材ルールといえるのはそれぐらいだが、聞けるのはせいぜいひとり1〜2問。みんな質問をしたいので、ひとりで5〜6問もしてしまうと、時間に限りがあるため聞けない人が出てくる。通常、10分もすると、広報が「あと1問!」と通告する。7分ぐらいで突如打ち切られるときもある。

 

 聞いたことに対して大谷がどう答えるかわからないので、確認や関連することなら、さらにもう1問——つまり、2問ぐらいまでならという暗黙の了解が、いつからか出来上がった。もちろん、強制ではないが、ある程度は仕方がない。

 

大谷を取材する記者が抱く葛藤

 

 さて、となると、何を聞くか。パターンは2つ。自分なりにテーマを固めて、それに沿った質問をするか。あるいは、流れの中で大谷が話した内容を掘り下げるか。ここは葛藤である。後者の質問は他の人が聞いてくれるかもしれないが、その保証はない。一方で自分の聞きたいことを聞き逃したら、次にいつ聞けるか分からない。ということで基本的には前者を優先するのだが、松井さんの記録に並んだ夜は、なぜ日本球界にとって大きいのか、その真意を聞きておきたかった。メッセージが含まれているような気がしたからだ。

 

 今後、聞けるタイミングが訪れるのだろうか。そんなことがしばらく頭から離れなかったが、今回のようなケースではもう一度チャンスがある。超えたときである。その日は9日後のメッツ戦で訪れた。紫電一閃。右翼のスターリング・マルテ(メッツ)は腕を後ろに組んだまま一歩も動かず、打球方向を振り返ることもなかった。

 

「打った瞬間にホームランだとわかったから」

 

 マルテは通訳を通じてそう話したが、実際、打った瞬間にそれとわかる豪快な一発だった。

 

 今回も、大谷の会見は早く始まった。廊下で待機していると、30mほど先にある会見用のボードの前にユニホーム姿の大谷が現れた。広報の合図で、一斉にメディアがポジション取りのため小走りになる。なんとか最前列に陣取ると、ほとんど間を置かずして米メディアの質問が始まった。ここで、「なぜ日本球界にとって大きいこと」という質問が出れば、自分の番になったとき、その解釈をさらに質したり、別のことを聞けるが、そういう質問は出なかった。

 

 よって、米メディアの時間が終わると、真っ先に聞いた。

 

「松井さんに並んだ日、『日本の野球界にとっても大きいこと』と話したが、それはどういう意味なのか」と。

 

 すると大谷は、「そうですね〜」と一呼吸置いてから、「やっぱ、長打を持ち味にして打っていくスタイルというのは、サイズがないとなかなか難しいところ」と答え始めた。

 

 続く言葉を待つ。

 

「なので、そういう意味では、幅が広がるのかなというか、バッティング自体の目標の幅自体が、広がっていくんじゃないかな」

 

 バッティング自体の目標の幅。これがキーワードだった。

 

本塁打は打撃の可能性を広げる

 

 咀嚼(そしゃく)を加えるなら、サイズがあって長打力もあるなら、その持ち味を大切にすべき。メジャーリーグに行ったら日本人選手のパワーでは通用しないという思い込みがあるとしたら、それは違う。日本人選手がメジャーリーグでホームランのタイトルを取るなんて、誰も予想していなかった。自分で可能性を狭める必要はない。自分が本塁打の数を伸ばしていくことは、あとに続く選手の道標になる。だから、本数にこだわっていくーー。

 

 本塁打の位置づけに関しては、「バッティング自体は、可能性を広げていく作業」とも話した。

 

「フォアボールもあるし、単打もあるし、二塁打もあるし、ホームランもある。可能性を広げるなかで、ホームランがあるかないかでは、相手にかかるプレッシャーも違う。来るボール自体にも多少は影響を出せるので、そういう意味では大事。自分の長所でもあるので、大事にしていきたい」

 

 もちろん、だからといって誰もが大谷に続けるわけではない。しかし、誰かが超えていかなければ、レッテルは貼られたままである。ひいては二刀流も同じこと。大谷が失敗していたら、ジャイアンツが2022年、23年と、2年連続で二刀流選手を1位で指名することはなかった。今年のドラフトで1巡目——トップ5での指名が有力視されるフロリダ大のジャック・カグリオーンが、メジャーリーグで二刀流を目指すこともなかったのではないか。

 

「日本の野球界にとっても大きいこと」

 

 ずっと靄のかかっていた言葉が、すっと腑に落ちた。

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◆ 水原一平元通訳の賭博スキャンダルが早くもドラマ化へ「信頼、裏切り、富と名誉の罠のストーリー」

(情報:スポーツ報知)

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 ドジャース・大谷翔平投手(29)の通訳を今年3月まで務め、大谷の口座から約1700万ドル(約26億4400万円)を盗んだとする銀行詐欺などの罪を認めた水原一平被告(39)の一連のストーリーが、米国でテレビドラマ化されることが9日(日本時間10日)、分かった。複数の米メディアによると、映画製作会社の「ライオンズゲート」が制作構想を掲げているという。

 脚本家や放送日程などはまだ決まっていないと言うが、主題は「信頼、裏切り、富と名誉の罠のストーリー」で決まっているという。水原元通訳は、日本ハムで通訳を務めていたが、大谷のメジャー挑戦とともに18年から大谷をサポート。通訳業だけではなく、練習相手や運転手も務めるなど、二刀流で2度のMVPに輝いた大谷を支えていた。

 だが、違法スポーツ賭博に関与し、大谷の口座から多額の金を盗んで送金していたことで、銀行詐欺と虚偽の納税申告で訴追された。ドジャースの今季開幕戦だった韓国・ソウルでの3月20日のパドレス戦ではベンチに入って大谷をサポートしたが、同試合の後に事件が明らかとなり、2戦目からはチームを離れて姿を消した。

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◆ ドジャースタジアム名物オルガン奏者ルールさんを直撃「ファンの方々に楽しい経験を提供したい」

柳原直之氏/情報:スポニチ)

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 4月のドジャースタジアム。ドジャースの大谷が打席に入る度に、映画「ゴジラ」のテーマ曲がオルガン演奏された。松井秀喜(ヤンキースなど)に並ぶ日本選手最多175号本塁打、そして新記録更新を迎えるまで、何度も演奏され、その度に球場のボルテージは最高潮に達した。
 「翔平は我々の想像を超える活躍をいつもやってのけます。ゴジラの曲はみんな気に入ってくれていたでしょうか?翔平のプレーを見るのがいつも楽しみです」

 演奏していたのは7代目のオルガン奏者ディーター・ルールさん(55)。16年に前田(現タイガース)とともにドジャースに“入団”し「ゴジラ」以外にも「上を向いて歩こう」、「セーラームーン」、「進撃の巨人」、「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」など人気アニメのテーマ曲もレパートリーの一つだ。

 「日本メディアからいつも意見を聞いて参考にしている」と語り、「ゼルダの伝説」、「ドラゴンクエスト」など人気ゲームのテーマ曲もお手の物。7日のマーリンズ戦では山本の愛称「ヨシ」にちなみ「スーパーマリオ」のキャラクター「ヨッシー」のテーマ曲を演奏して場内を盛り上げた。現在、練習中の曲は大谷の好きなアニメの一つ「鬼滅の刃」のテーマ曲だという。

 「ある曲を認識できないファンがいたとしても、次の曲を認識する可能性があります。いろいろなジャンルの曲や楽しい曲を演奏するように意識しています。一緒に手拍子したり、いつもファンの方々に球場で楽しい経験を提供できることを願っています」。ルールさんはオルガン演奏だけでなく、チャンス時の「Clap Your Hands」などの演出音も操作。勝った後に流れる「I Love L.A.」もルールさんがスイッチを入れている。ドジャースタジアム以外にも、カブスの本拠地リグリー・フィールドなどオルガン演奏が名物のメジャー球場は複数あり、ルールさんは「どんな演奏でしたか?」と記者への“逆取材”を行うなど、日々研究を怠らない姿が印象的だ。

 ドジャースは7日(日本時間)時点で今季最多の貯金12の地区首位と絶好調。「素晴らしいレギュラーシーズンを送っていますが、プレーオフは何が起こるか分かりません。ただ、今年のチームはワールドシリーズに行く可能性は高いと思っています」。20年以来、4年ぶりのワールドシリーズ制覇へ。選手だけでなく、ルールさんのようなスタッフも一丸となって戦っている。(記者コラム・柳原 直之)

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 ■ NOTE