image

 

2024年5月6日

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 試合データ

-------------------------------------------------------------

 

米国時間:2024年5月5日

日本時間:2024年5月6日(祝月曜日)

5時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対アトランタ・ブレーブス

@ドジャースタジアム

 

image

 

【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月6日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムでのブレーブス3連戦の最終戦を迎え、大谷翔平の4安打3打点の活躍もあって5対1で勝利。強豪ブレーブスとの3連戦を見事にスイープし、連勝を4に伸ばすとともに、貯金を今季最多の10とした。ドジャース先発のジェームス・パクストンは7回途中まで5安打1失点に抑え、4勝目(0敗)をマーク。ブレーブス先発のマックス・フリードは7回4安打4失点で今季初黒星(2勝)を喫した。

 

 ドジャースは初回先頭のムーキー・ベッツが四球を選んで出塁すると、続く大谷が9号2ランを放って先制。先発のパクストンがブレーブスの強力打線を相手に好投を続けるなか、6回裏一死1塁からテオスカー・ヘルナンデスに8号2ランが飛び出し、リードを4点に広げた。パクストンは7回表にマーセル・オズナの10号ソロで1点を失ったが、今季最長となる6回2/3を投げて5安打1失点の好投。8回裏には大谷が10号ソロを放ち、5対1でブレーブスを破った。

 

 ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場し、9号2ラン、レフトへのヒット、センターへのヒット、10号ソロで4打数4安打3打点の大活躍。メジャートップに並ぶ10号アーチは飛距離464フィート(約141.4メートル)を計測し、今季自己最長かつ今季メジャー2位の飛距離となった。今季の打撃成績は打率.364、10本塁打、25打点、OPS1.111となり、打率とOPSはメジャー1位に。「バッティング自体の状態もいいですし、試合運び自体が全体として素晴らしいので、自分の打席もいいリズムで入れています」と打撃好調の要因について語った。

 

imageimageimageimageimageimage

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

-------------------------------------------------------------

 

【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 4安打 3打点 2得点 2本塁打(9・10号)

通算打率・364

OPS1・111

 

◆第1打席:

(結果)ホームラン

(状況)1回無死1塁

(投手)マックス・フリード左

※四球のベッツを一塁に置き大谷は初対戦の左腕・フリードの真ん中に入ってきたカーブを呼び込んで強振。打球はセンター方向に高々と上がり、バックスクリーンに飛び込んだ。会心の一撃に右手を突き上げてガッツポーズを決めた。この時点でナ・リーグトップのオズナ(ブレーブス)に並ぶ2試合連続の9号2ラン。打球速度167・9キロ、飛距離125・6メートルの大谷らしい豪快なアーチだった。

 

 

 

image

 

◆第2打席:

(結果)レフト前ヒット

(状況)3回2死走者なし

(投手)マックス・フリード左

※158キロのフォーシームを逆方向に弾き返し、右寄りに守っていた三塁手・ライリーの左をあっという間に破ってマルチ安打。

 

◆第3打席:

(結果)センター前ヒット

(状況)6回無死走者なし

(投手)マックス・フリード左

※1ボール2ストライクから、フリードの外角低めのスライダーを中前に運び、T・ヘルナンデスの2ランでホームに生還した。

 

◆第4打席:

(結果)ホームラン

(状況)8回無死走者なし

(投手)A.J.ミンター左

※打った瞬間の当たりだった。3点リードの8回先頭。ブレーブスの2番手左腕・ミンターの初球、93・8マイル(約151キロ)直球バックスクリーン左へ放り込んだ。打球速度110・6マイル(約178キロ)、打球角度26度。飛距離464フィート(約141メートル)は今季最長、自身3番目の“特大弾”だった。4打席で今季初の4安打。ド軍移籍後初の1試合2発で、エンゼルス時代から4年連続の2ケタ本塁打。本塁打王争いでも両リーグトップに並んだ。打率3割6分4厘で首位打者争いでもリーグトップのボーム(フィリーズ)を捉えた。

 

 

 

image

image

image

 

【コメント】

試合後

(球場内ヒーローインタビュー)

ーー3連戦の初戦の延長10回に同点打を放ち、その後の2試合では9打数7安打の大当たりとなった。同点打でなにかきっかけを掴んだんですか

「自分的には大きいヒットでしたし、勢いに乗るのには十分な打席だった」

 

ーー3安打を放った先発フリードの印象は

「初めての対戦だったのでどういう感じで来るのかわからなかったので、まずは自分のスイングをしようと思っていきました」

 

ーー2本目の本塁打は大谷にとって3番目の飛距離だったこともあり、ボールはどう見えているのか

「振るべきボールを振れているのがいいところかなと思いますし、あの方向に飛距離が出るのはいい証拠だなと」

 

ーー強豪アトランタに対して3連勝したが

「ディフェンスも含めてピッチャー陣がよかった。オフェンスはもちろん。先発投手、中継ぎも素晴らしかった。強いチームにそういう野球ができているのは自信を持っていい。また明日からの励みにしたい」

 

 

(メディア取材)

――調子の良さは要因は。

「バッティング自体も状態いいですし、試合運び自体が全体として素晴らしいと。ディフェンスも含めて。なので、自分の打席もいいリズムで入っていけていると思っています」

 

――逆方向への本塁打はいい時の兆しか。

「そうですね、よくいい動きで入れているのもそうですし、あそこにホームランが打てるという自信があれば、もっと他の球種に対しても自信をもってアプローチをできるんじゃないかと思うので、いいサインかなと思います」

 

――460フィート打てる人はあまりいない。大谷選手がそれを表現するなら。

「なんですかね……長打が持ち味だと思っているので、そこを極力試合の中で表現できたらいいと思っていますし、チームのバランスとしてあそこで長打をしっかり打てるというのも大事なことだと思うので、自信を持っていきたいと思います」

 

――雰囲気。

「素晴らしいチームですし、みんな気合いも入っていたんじゃないかなと思うので。素晴らしい打線を相手にまず、投手陣が素晴らしいピッチングをしていたのが印象的だったと思います」

 

――1本目の感触は。

「1本目はちょっと詰まり気味というか、遅い球に対してちょっとポイントが後ろ気味だったかなと思いますけどギリギリ入ってくれればいいかなという感じでした」

 

――詰まった当たりが飛ぶ、打球速度も本塁打にしては速くないが入るという進化は。

「今日はデーゲーム特有の風もあったので。打感的にはどうかなというくらいですが、比較的しっかり入っていたのでデーゲームの力もあったのかなと思います」

 

――休養日挟んでから本塁打が出ている。

「休養日も休前日だったので結果的に2日休んでフレッシュな状態で打席には立てているかなと思います」

 

――アリゾナでの2試合からここまでの技術的な修正点は。

「良くても悪くても毎日チェックと改善はするものなので、そこが分岐点になったとは思っていないですけど、毎日毎日、今日よかったかといって明日いいかもわからないので、また明日は明日でいつも通りの調整をしたいと思います」

 

――試合後にロバーツ監督から声を掛けられていた。

「ナイスジョブだ、というだけでした」

 

――2本目は自身でも過去3番目に大きな本塁打。

「2本目はもう完璧でしたね。比較的真ん中らへんの球をいいタイミングで打てていたかなと」

 

――フリードと対戦して。

「ビデオも見ましたし初めての対戦だったので、素晴らしい投手だなという印象は変わっていないですし、打ったからと言って何か変わるわけではないですけど、入れどころと抜きどころち、メリハリをつけてトータルでしっかり最少失点には抑えていた印象なのでやはり素晴らしい投手だなという印象です」

 

――中前打のとき一塁ベース上で打撃フォームを確認する作業があった。

「あれはあれでよかったんじゃないかと。基本的にはボールは見送るべきなので、結構プレートからも離れていましたし待てれば一番よかったですけど、追い込まれていたので色んなボールをケアしながら、あのコースに対しての最大限のアプローチはできたかなと思います」

 

――オズナも打ったが周りの選手の数字は気になるか。

「周りは特には気にはなっていないです。自分自身の数字も今年はほぼ見てはないですし、今までのシーズンの中で一番、まあ別に、どのくらい打っているかもそうですし、あまり見ることは少ないかなと思います」

 

――その理由は。

「ほかにやることがたくさんある。まずチームの打線、今2番打っていますけどその流れを理解して打線になれるということが一番やるべきこと。打った打たないにかかわらず、そのアプローチの仕方を一番に考えています」

 

――開幕から内角高めを攻められているが対応している。

「内角高めの数字は昨年もすごくよかったのであまり攻められることもなかったですし、今年に関してもいいアプローチはできているのかなと思う」

 

――逆方向へ打てる自信があればああいう打球がいくというのは構えかスイング軌道か。

「単純にあそこに本塁打がしっかり入る打球が打てるという確認がとれるということが、ほかの球に対するアプローチが変わってくるので、あれが1本出るかどうかというのが気持ち的にもアプローチ的にも大事。練習でも打てればいいが基本的には試合で打てるのが大事かなと思います」

 

 

【NEWS情報】

◯ 9号のボールを手に入れたのは17年からのシーズンチケットホールダーで、熱心なドジャースファンのダニエル・ダーリングさん。ホームランボールを集めるのを趣味のようにしていて、この日もセンターの、ホームランが手に入りやすいセクションに座っていた。「これまでウィル・スミス、コディ・ベリンジャー、キケ・ヘルナンデス…などのホームランンボールを手に入れ、これが6個目」と嬉しそうに語った。「翔平のホームランボールを手に入れられてすごくエキサイトしている」と笑顔。実はこの日も上着の下は大谷Tシャツで、写真撮影の後に見せてくれた。

 

シートの値段は試合によって変わり、200ドル(約3万円)から300ドル(約4万5000円)と高いが、出費をいとわない。ホームランがセンターに飛んでくると、自分の席から階段を下りていく。センターの横幅約20メートルほどの大きなネットに当たって落ちたボールを拾う。そこに座っているファンはいないから警備員との戦いになる。「今日は幸運だった。警備員に負けなかった。彼らは僕のことを怒っているだろうけど」と会心の笑みだった。

 

 

◯ ブラウリオ・ベルトランさん(18)が、争奪戦の末にドジャース大谷の10号アーチのホームランボールをゲットした。パドレスの本拠地があるサンディエゴ在住だが、家族の影響でドジャースファン。学生で、この日は友人3人で試合を観戦した。「20人くらいの争奪戦だったよ」と苦笑しながら、右肘にはその時についた傷が残った。友人とともに取材に応じたベルトランさんは「とても気分がいいよ。まだ震えているよ」とボールを手に興奮気味に話した。

 

 

◯ MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、スタットキャストによる飛距離計測が始まった2015年以降、G・スタントン(マーリンズ)144・78メートル(15年5月12日)、F・タティス(パドレス)142・34メートル(21年9月30日)に次ぐ、ドジャースタジアムで3番目の飛距離だった。スタットキャスト導入前の1969年8月5日、パイレーツのウィリー・スタージェルが右翼に506フィート(154・2メートル)の場外本塁打を放った記録が残っており、これは現在も同球場での最長弾とされている。

 

◯ 大谷は今季初の1試合4安打をマーク。試合前の打率.345から同.364まで一気に上昇。トップにいたフィリーズのアレク・ボーム内野手を抜き去って両リーグの“首位打者”となった。35試合を消化。安打(52)、二塁打(14)、長打(25)、塁打(98)、長打率(.685)、OPS(1.111)、本塁打(10)、打率(.364)、そして打者の長打力を表す指標で、長打率から単打を除外する形で計算されるISO(.322)でトップに立っている。

 

◯ 同僚のムーキー・ベッツが、大谷について言及。「ショウヘイのことを聞かれてもコメントするのをやめたんだ」と笑みを浮かべ、理由も語っている。ベッツが登場したのは、野球の話題を扱う米インフルエンサーのバット・ボーイズの公式インスタグラム。

 

ーーこのメディアの数、毎日これだけ来るんですか?

「毎日だよ、毎日」

 

ーーショウヘイとプレーすることや、ショウヘイに関することはどのくらい聞かれますか?

「最初は結構毎日だったよ。だからコメントするのをやめたんだ。誰かにショウヘイのことを聞かれてもコメントしないようにした。みんな彼を見ているだろうし、世界中の他の人と違って僕だけに見えることは何もない。ただ『ショウヘイだ』と思うだけで、『オーマイガッシュ。ショウヘイ・オタタニだよ!』と思うことはない」

 

「みんなと同じようには彼を見ない。そうすべきなんだろうけど、そういう風に彼を見るのは僕たちが現役を終えてからにするよ」

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

-------------------------------------------------------------

 

【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

ーー初回の2ランについて

「翔平が初回にカーブを打って2ランでチームを勢いづかせてくれた。トーンをセットしてくれた。ムーキーの四球の後にね。(相手先発)フリードは調子がいいときはメジャーで誰にも負けない投手。その彼からうちは2本2ランを打った。シリーズを制するだけではなく、3つ勝てた。とても良いチーム相手にね」

 

ーー8回の大谷の移籍後最長弾について

「翔平は我々が見たこともないことをやり続ける。真ん中の直球に対して本当にいいスイングをした。とてもいいスイングで打球速度は111マイルから112マイルは出ていた。本当に遠いところまで飛んだし、あそこまでは行くもんじゃない。右打者であろうが、左打者であろうが、デーゲームであろうが、ナイトゲームであろうが。しかも風は左から右に吹いていて打球も押されたはず。今日は打撃の質の高さを見せてくれた。フィールド全部を使って打ち返す。しかもよりボールを見極めている。これからもっと行けるだろう」

 

ーー大谷はビジター9連戦の最終戦となった1日のダイヤモンドバックス戦を休養日にあて、欠場。その後の本拠3連戦は12打数8安打と大暴れしているが

「これからも私としてはそこは考えていく。彼が休みが必要な時に2日連続で休めるようにしてあげるのが彼にとって大きいと思う。休む前と、この2日間とでは彼は違うプレーヤーだ。リセットさせることがいいと思う」

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 球界情報

-------------------------------------------------------------

 

ニューヨーク・ヤンキース:

◯ 日本時間5月6日、ヤンキースは本拠地ヤンキー・スタジアムでのタイガース3連戦の最終戦を迎え、5対2で勝利。悪天候のため8回途中でコールドゲームとなった一戦を制し、3連戦をスイープするとともに、首位オリオールズとの1ゲーム差をキープした。ヤンキース3番手のビクター・ゴンザレスが2勝目(1敗)をマークし、4番手のデニス・サンタナは2セーブ目を記録。タイガース2番手のシェルビー・ミラーは4敗目(3勝)を喫した。

 

 ヤンキースは初回にアーロン・ジャッジの7号ソロで先制し、2回裏にはオスワルド・カブレラのタイムリー二塁打で1点を追加。序盤に2点のリードを奪ったが、タイガース先発のタリック・スクーバルの前に12個の三振を喫し、その後は追加点を奪えなかった。ヤンキース先発のネスター・コルテスは6回までタイガース打線を1安打に抑える好投を披露。しかし、7回表に一死1・2塁のピンチを招き、リリーフ陣に後を託した。

 

 ヤンキース2番手のイアン・ハミルトンはスペンサー・トーケルソンにタイムリー二塁打を許し、さらに四球を与えて一死満塁のピンチに。ここでハビアー・バイエズのショートゴロが併殺崩れとなり、2対2の同点に追いつかれた。しかし、3番手のゴンザレスがピンチをしのぐと、7回裏にヒットと2つの四球で一死満塁のチャンスを作り、ソトがライトへのタイムリー二塁打を放って一挙3点を勝ち越し。8回表を4番手のサンタナが無失点に抑えたところで雨天コールドとなり、タイガース3連戦をスイープした。

 

image

 

筒香嘉智外野手:

◯ DeNA・筒香嘉智外野手が6日のヤクルト戦(横浜)に古巣復帰後初のスタメン出場。「6番・左翼」でプレーし、8回には1号逆転3ランを放つ大活躍で6―5の勝利に貢献した。3点ビハインドで迎えた8回だった。佐野の適時打で2点差まで迫り、なお二死一、二塁。それまで四球、中飛、二塁打としっかり感覚を取り戻していた筒香は、ヤクルト4番手エスパーダの初球を一閃。打球は右中間スタンドに飛び込む逆転3ランとなり、本拠地は復帰を待ち望んでいたファンの熱狂的な歓声で包まれた。試合後のヒーローインタビューでは「まだ点差がありましたので、強い打球を打つことを心掛けて打席に入っていた」とした上で「入るかなと思っていた」と自信に満ちた顔で語った。

 

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 注目記事&コラム

-------------------------------------------------------------

 

◆ 大谷翔平、相手バッテリーの配球上回る「読みと修正能力」投手の経験で強豪の“裏技”攻略し2発

久保賢吾氏/情報:日刊スポーツ)

###

<ドジャース5-1ブレーブス>◇5日(日本時間6日)◇ドジャースタジアム

 

 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)5日(日本時間6日)=斎藤庸裕、久保賢吾】ドジャース大谷翔平投手(29)が、今季初の1試合2発&4打数4安打をマークした。ブレーブス戦に「2番DH」で出場し、第1打席で9号先制2ラン、第4打席で飛距離464フィート(約141メートル)の特大10号ソロを放ち、4年連続で2ケタ本塁打に到達した。4打席で4打数4安打はサイクル安打をマークした19年6月13日以来5年ぶり。真美子夫人と愛犬デコピンが観戦する前で大活躍し、プレーオフ前哨戦とも言えるブ軍との3連戦で全勝のスイープに貢献。本塁打、打率など打撃9部門でリーグトップに浮上した。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 ドジャース大谷が、強豪ブレーブス3連戦でバッテリーの配球を上回る読みと修正能力の高さを示した。1回無死一塁、カウント1-2と追い込まれた後、カーブを一塁側にファウル。タイミングを外され、相手バッテリーはカーブを続けたが、中堅バックスクリーンに9号2ランを運んだ。

 

 「遅い球に対して、ちょっとポイントが後ろめだったかなとは思いますけど。ギリギリ入ってくれたらいいなという感じでした」

 

 相手先発のフリードとは初対戦だった。大谷の言葉からひもとけば、直前に崩されたカーブが待ち球の1つだったと思われ、直前の球より高かったとはいえ、ミスショットせずに見事に対応。前夜のブレーブス戦の8号ソロ同様にやや詰まりながら、打球を悠々とスタンドに入れた。

 

 昨季までナ・リーグ東地区6連覇の強豪の強みの1つに、捕手陣の巧みなリードが挙がる。元阪神のジョンソンは「彼らはスイングを読む。打者のスイングを理解し、各投手がどういう投球をすべきかが分かっているので、チートコード(裏技)を得たようなもの」と説明。初戦では守護神イグレシアスの4球連続チェンジアップ攻めを同点打。投手で配球も組み立てられる大谷だからこそ、“裏技”もしのぐ読みと修正力を兼ね備える。【久保賢吾】

###

 

◆ 大谷翔平、規格外の「つなぐ」意識 ランナーがいても…“ドジャースの2番”として辿り着いた「セオリーにとらわれすぎない思考法」

四竈衛氏/情報:NumberWEB)

###

 ユニフォームの色が赤から青に替わっても、大谷翔平の本能が変わることはない。

 

 ただ、チーム状況、試合展開次第で、これまでは意図せずとも鎮めてきたはずの欲求が、ドジャースへ移籍したことに伴い、目に見える形のプレーや表情、細かな仕草として、無意識のうちに表に出る光景が増えているとしても、不思議ではない。

 

WBCを彷彿とさせる「カモーン!」

 5月3日、本拠地でのブレーブス戦。タイブレークとなった延長10回裏、エンゼルス時代の同僚でもあるクローザーのライセル・イグレシアスから中前へ同点適時打を放った大谷は、一塁ベース上で、腹の底から「Come on(カモーン)!」と雄叫びを挙げた。ベンチの同僚を鼓舞するかのような、ハイテンションな姿は、昨年3月のWBCでの激戦を彷彿させるような気迫に満ちていた。その後、ドジャースは延長11回裏、新人アンディ・パエスの適時打で今季初のサヨナラ勝ち。ナ・リーグ東地区で首位を快走するブレーブス相手の「プレ・プレーオフ」とも言われた3連戦の初戦を劇的な勝利でものにし、大谷は3戦目でも2本の本塁打を放つなどカード3連勝に大きく貢献した。

 

活躍をよそに淡々とルーティンをこなす日々

 昨年9月、右肘を手術し、今季は打者に専念する大谷が、昨季までのように投手として完封し、次の試合で打者として本塁打を打つようなことは、現時点ではかなわない。

 

 だからといって、大谷にすれば、次の試合、次のステージへ向けて、最善を尽くす生き方は変えられない。調子を落とすと、室内ケージでクリケットのバットで気分転換のスイングを繰り返すこともあれば、投手としてのリハビリとして1日置きのキャッチボールを繰り返す。無駄にアクセルを踏み過ぎることなく、地道な作業を繰り返すしかない。たとえ、豪快な本塁打を打ったとしても、翌日には新たな1日が始まる。

 

 目映いばかりの脚光の裏で、大谷の頑固にも映る愚直な作業は変わらない。自らのパフォーマンスを上げ、ドジャースが目の前の試合に勝つため、そして今後も勝ち続けるため、常に「次の試合につながれば」が口癖のようになった大谷は、日々、悔いを残すようなことはしない。

 

本能が向かうベクトルは、勝つこと以外にない

 昨年12月14日、ドジャースへの入団会見に臨んだ大谷は、「勝つことが今の僕にとって一番大事なこと」と、真正面を見据えて言い切った。今年7月5日で30歳。「僕自身、野球選手としてあとどれくらいできるか、誰も分からない」とも言った。日米を問わず、ファンやメディアは、常に大谷の個人成績に注目し、一喜一憂する。もちろん、大谷にすれば、周囲の期待に応えたい気持ちは誰よりも強い。だが、本能が向かうベクトルは、勝つこと以外にない。

 

「優勝することを目指して、そこで欠かせなかったと言われる存在になりたい」

 

 エンゼルス時代と同じ思いだとしても、大谷の言葉のニュアンスは、確実に変わっていた。

 

セオリーを超越した「つなぎ」の意識

 打者として飛距離140メートル、打球速度190キロの豪快弾、投手としても球速160キロ越えなど、投打にわたって能力が傑出していることは、いまさら言うまでもない。

 

 ただ、大谷ほど、チームの勝利に固執している選手も多くはない。ドジャース移籍以来、大谷のチーム打撃への意識は、より顕著になった。1番ムーキー・ベッツがメジャートップの出塁率.459(5日終了時)を残していることもあり、シーズン序盤は「引っ張り」の進塁打を意識するあまり、打撃フォームを崩す傾向も見られた。だが、デーブ・ロバーツ監督との話し合いを経たことで、セオリーにとらわれすぎない思考に活路を見出した。必ずしも外角球を強引に引っ張って走者を進めるのではなく、コースに対応する打撃スタイルもOK。ロバーツ監督が「ストライクゾーンをコントロールできるようになった」と評価する通り、四球を含め、大谷の「つなぎ」の意識が、打線全体の得点力アップにつながり始めた。

 

走者・大谷に見える「次の塁」への強い意識

 バットだけでなく、これまで以上に、大谷の走塁への意識が高まったのも、偶然ではない。4月29日の敵地ダイヤモンドバックス戦では、1回1死一、二塁の状況で、二塁走者として盗塁を三度試みた。結果的にファウル2回と併殺打で遂行はされなかったものの、先制点を狙う意識と相手バッテリーを揺さぶる動きは、昨季までとは明らかに違っていた。

 

 そもそも大谷、ベッツにはチームから「グリーンライト(盗塁許可)」が与えられている。エンゼルス時代から大谷を知るディノ・エベル三塁ベースコーチは、 状況判断の秀逸さに絶対的な信頼を置く。

 

我々は、翔平が仕掛けたようなプレーを求めている

「翔平を含め、彼らは賢い。試合状況、相手投手によって走るタイミングを判断できる。だから、ストップのサイン以外は、彼らの判断次第。我々は、翔平が仕掛けたような、ああいう細かいプレーを求めている」

 

 右肘手術後のオフ期間、下半身中心の強化トレーニングを続けていた大谷は、横ぶれの傾向があったランニングフォームを改良し、キャンプ中には元ブルワーズ監督でもあるロン・レネキー氏による特別講座を受けつつ、リード幅、構えなども修正した。その結果、5月5日終了時点で、成功率100%の7盗塁。数だけでなく、質を伴う走塁で、試合の流れを動かしてきた。

 

MVP選手が必死に練習する姿

 試合開始数時間前、人影もまばらなグラウンドで今季からコンバートされた遊撃で黙々とノックを受けるベッツ、不振に陥れば早出特打で逆方向への打撃を繰り返すフリーマン……。

 

 開幕以来、ナ・リーグ西地区首位を快走する中、大谷1人だけが目立っていないことこそ、何よりもドジャースの強みと言っていい。

 

「みんなプロ意識を持って、1人1人が試合だけじゃなくて、その前の取り組みも練習も、毎日やるべきことをしっかりやって出る結果じゃないかと思う」(大谷)

 

 豪快弾で浮かべる笑み、快足を生かした盗塁、チームを鼓舞する雄叫び……。

 

 グラウンド上で感情豊かな表情をのぞかせる大谷の姿こそ、多くのファンが待ち望んでいた光景ではないだろうか。

 

(「メジャーリーグPRESS」四竈衛 = 文)

###

 

◆ 大谷翔平がシャワー後に山本由伸を“出待ち”…山本由伸「本領発揮」のウラにあった「日本人同士の支え合い」「妥協なき頑固さ」

四竈衛氏/情報:NumberWEB)

###

 勝ってはしゃぐこともなければ、負けて落ち込むこともない。

 

 ドジャース山本由伸は、メジャー1年目とは思えないほど、どんな状況でも表情を変えることなく、マウンドに立ち続けてきた。

 

3勝目の後に語った「十分に慣れてきました」

 5月1日のダイヤモンドバックス戦で6回無失点と好投し、3勝目を挙げても、試合後の口調は、いつもと変わらないトーンだった。

 

「しっかり落ち着いて自分の投球をできるようになっているので、それがいい投球につながっているかなと思います。細かいところにたくさん違いがあるんですけど、十分に慣れてきましたし、それが自分の投球につながっているかなと思います」

 

 シンプルな言葉を、淡々とつなぐ山本の表情からだけでは、本音はうかがい知れない。ただ、常に先を見据えているからこそ、目の前の結果に一喜一憂することのない姿勢と、自らを客観視し続ける「頑固さ」は、おそらくオリックス時代から変わっていない。

 

450億円超えの期待値を背負った開幕

 メジャーで1球も投げていないにもかかわらず、昨オフ、投手史上最高額となる12年総額3億2500万ドル(約463億円=当時レート)の巨額契約を結んだ山本に対しては、高い期待値だけでなく、「お手並み拝見」とばかり、興味本位な視線も向けられていた。

 

 デビュー戦は、散々な内容だった。韓国・ソウルで臨んだ3月21日の初登板では、制球が定まらず、1回5失点とKOされた。キャンプ地アリゾナから太平洋を越える長距離移動に加え、登板前日の試合後には、大谷翔平の通訳だった水原一平氏の違法賭博事件が明るみに出て、チーム全体に激震が走った。その後、山本は当時の心境などを語ってはいない。だが、ただでさえ緊張するはずのデビュー戦のマウンドが、心身ともに万全の状態には程遠かったことは想像に難くない。

 

 周囲の雑音は結果でかき消す以外になかった。

 

メジャー7年目の先輩・大谷との共同作業

 米国本土初戦となった同30日のカージナルス戦では白星こそ逃したものの、5回無失点と上々の投球を披露した。その後、4月6日のカブス戦で初勝利を挙げると、25日のナショナルズ戦で2勝目をつかみ取り、試合後は「ここまでで一番の投球」と、確かな手応えを口にした。さらに3勝目を挙げた5月1日の時点で15イニング連続無失点と、韓国での登板を除けば、米国での6試合で防御率1.64。開幕から1カ月が経過し、「十分に慣れてきた」の言葉通り、着実に3年連続沢村賞の底力を発揮し始めた。

 

 戸惑いの多い1年目の山本にとって、新天地ながらメジャー7年目を迎えた大谷の存在が支えになっていることも間違いない。遠征先のシカゴで山本が初勝利を挙げた試合後、ひと足早くシャワーを浴び終えた大谷は、その日のヒーローとなった山本への日米メディアからの取材が終わるのを、椅子に座って待っていた。その後は、他の日本人スタッフと一緒に同地で人気の焼肉店へ向かい、気兼ねすることなく、初勝利を祝った。

 

 他の遠征先の試合前後の食事にしても、各地の日本料理店へ手分けして弁当をオーダーするなど、グラウンド外でも同じ日本人選手として支え合ってきた。ドジャース入団会見の際、山本は「大谷さんがもし他のチームを選んだとしても、僕はドジャースを選んでいたかなと思います」と言った。その一方で、大谷の移籍が「決断のひとつの理由となりました」と、素直な胸中も明かした。

 

山本の移籍を本当に助けてくれた

 昨オフの交渉以来、2人の関係をつぶさに見てきたドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、本領を発揮し始めた山本の活躍の一因に、大谷のサポートを挙げた。

 

「山本の移籍を本当に助けてくれた。見ていて楽しいね」

 

 山本にしても、大谷に対する直接的な言葉はなくとも、周囲への感謝を忘れてはいない。

 

「ドジャースはサポートをすごくたくさんしてくれているので、本当に助かっています」

 

大谷への“注文”

 山本が3勝目を挙げた1日、大谷は今季初めてスタメンから外れ、完全休養となった。それでも、大量の援護を受けて白星を手にした山本は、試合後、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。

 

「多少は大谷さんが出てないという違和感はありますけど。僕が投げる試合で打ってほしいなと思います。僕の試合はあまり打ってないので、これから」

 

山本と大谷の共通点

 開幕後、まだ1カ月あまり。

 

 オリックス時代から変わらない独自のやり投げ調整、遠投など、日々のルーティンを最重要視する山本の頑なさは、「二刀流」を全うするメニューで譲ることのない、大谷と似通っていると言っていい。目先の結果だけにとらわれない姿勢、妥協することのないプロ意識など他にも共通点は多い。

 

 ともに20代ながら、実績だけでなく、「頑固さ」をも互いにリスペクトし合える関係。

 

 この2人に関して、「両雄並び立たず」は、おそらく当てはまらない。

 

 山本の快投を、大谷が豪快なアーチで援護する試合が増えれば増えるほど、ドジャースの快進撃も長く続いていくに違いない。

 

(「メジャーリーグPRESS」四竈衛 = 文)

###

 

-------------------------------------------------------------

 ■ NOTE