2024年5月2日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年5月1日

日本時間:2024年5月2日(木曜日)

10時40分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対アリゾナ・ダイヤモンドバックス

チェイス・フィールド

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間5月2日、ドジャースは敵地チェイス・フィールドでのダイヤモンドバックス3連戦の最終戦を迎え、投打が噛み合って8対0で快勝。同地区ライバルとの3連戦を2勝1敗の勝ち越しで終えた。今季7度目の登板となったドジャース先発の山本由伸は6回94球を投げて被安打5、奪三振5、与四球2、失点0と安定したピッチングを見せ、3勝目(1敗、防御率2.91)をマーク。ダイヤモンドバックス先発のジョーダン・モンゴメリーは3回6安打6失点で降板し、2敗目(1勝)を喫した。

 休養のため今季初めて大谷翔平をスタメンから外したドジャースは2回表に打線がつながり、アンディ・パヘスの3号2ランなどで一挙5点を先制。3回表にはウィル・スミスにも4号ソロが飛び出し、山本に6点の援護をプレゼントした。山本は6イニングを投げ、ダイヤモンドバックス打線に三塁を踏ませない安定したピッチングを披露。7回表二死満塁から二者連続四球で2点を追加すると、7回以降はJ・P・ファイアライゼン、ガス・バーランドとつなぎ、3投手による完封リレーを完成させた。

 山本は6回5安打無失点で3勝目をマーク。直近6試合では防御率1.64と好投を続けており、シーズン通算の防御率も2点台に突入した。今日は前田健太(タイガース)と今永昇太(カブス)も勝利投手となっており、日本人投手が同日に3勝を挙げるのは5度目のこと。ただし、過去4度はリリーフでの1勝が含まれており、日本人先発投手の同日3勝は初めてとなった。なお、スタメンを外れた大谷は大量リードの試合展開もあり、最後まで出場機会がなかった。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

ベンチスタート

 

【出場成績/打者】

出場機会なし
※開幕からの連続スタメン試合は32でストップ。2番にはフレディ・フリーマン内野手が入った。

 

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 試合前のキャッチボールも公の場では確認できなかった。試合前にはベンチでヒマワリの種をほお張るなど積極的休養に努めた。

 

◯ 大リーグ公式サイト「MLB.com」は1日(日本時間2日)、月間のベストナインに相当する「今年最初のチームオブザマンス」を発表。大谷がDHで選出された。大谷は3、4月は32試合に出場し打率・336、7本塁打、19打点をマークした。チームオブザマンスは両リーグのベスト9、ユーティリティを加えた野手10人、先発投手5人、救援投手2人が選ばれる。

 

◯ ヒューゴボスジャパンは、大谷が昨年着用したスタジアムジャンパーのレプリカ版を、限定100着で59万4000円で抽選販売すると発表。ボス公式LINEアカウントから応募できる。昨年WBCの侍ジャパン時の背番号16が袖に入っている。ドジャースは大谷のユニホームをオークションにかけ、試合での実使用品は3万8000ドル(約589万円)、サイン入りは2万ドル(約310万円)の値がついている。締め切りは8日。

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

(試合前)

「(大谷のスタメン外しについて)10日間で9試合戦ったことを私はよく理解している。彼は毎試合出場する訳ではない。日程を見たら、今(休養を与えること)が一番理にかなっていると思った。何かがあって休養日を与えた訳ではない」

「(2日は移動日)毎試合出場していたから、2日間の休養日を与えることは(彼にとって)助けになる。ただ、終盤の場面で起用することも可能だ」

「(大谷に休養日を告げたときの反応について)彼は大丈夫だった。シーズンが長いことを理解していると思うから、何度もやりとりをした訳ではない。自分のためになることだと理解しているだろう」

 

(試合後)

「(山本について)自信だ。ヨシノブは自信を築き続けている。自信を持って、全ての球に磨きをかけている。速球はノビがあり、よく制球されていた。カーブもとてもよく、スプリットもそうだった。(捕手の)オースティン(バーンズ)がとてもいい仕事をしてくれた。彼を導いてくれた。いいリズムで投げてくれた。並外れた投球だった」

 

山本由伸投手:

「しっかり落ち着いて、自分のピッチングをできるようになっているので、それがいいピッチングにつながっているかなと思います」

 

「(大谷は今季初の欠場で、開幕からの連続試合出場は32でストップ。大谷からは何も言われなかったと言い)多少は大谷さんが出ていないっていう違和感はありますけど、点もたくさんとっていただきましたし。また大谷さんが僕が投げる時にはいてほしいなと思います」

 

【NEWS情報】

ランドン・ナック投手:

◯ ドジャースは1日、26歳の右腕ランドン・ナック投手をオプションでマイナー降格させたと発表。前日4月30日の敵地・ダイヤモンドバックス戦では5回1失点の好投を見せていた。代わってJP・ファイアライゼン投手がメジャー昇格。ナックは4月17日の本拠地・ナショナルズ戦でメジャーデビュー。ここまで3試合に登板し、1勝1敗、防御率2.81の成績をマーク。4月30日には蜂の大量発生で試合開始が1時間55分遅れる珍事もあったが、5回1失点と試合を作った。

 

31歳のフェイエレイセンは2022年オフにトレードで加入。今季は2試合に登板し、0勝1敗、防御率40.50となっている。チームはブルスダー・グラテロル投手やライアン・ブレイシア投手らが故障者リスト入り。救援陣が不足し、苦渋の決断となった。

また、地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」のドジャース番ジャック・ハリス記者は「ウォーカー・ビューラー投手が来週ローテーションに復帰する良い前兆となるだろう」と自身のX(旧ツイッター)に投稿した。

 

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 ■ 球界情報

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今永昇太投手:

◯ カブス・今永が1日(日本時間2日)、敵地・メッツ戦に先発し、初の中4日ながら、7回87球を投げて3安打無失点、7奪三振の好投を見せて、5勝目をつかんだ。開幕から先発で無傷5連勝は、日本人では6連勝した2002年石井一久(ドジャース)、14年田中将大(ヤンキース)に続き、3人目の快挙。防御率は0・78で両リーグトップに躍り出た。試合後の主な一問一答は以下の通り。

ーー試合を振り返って。
「まっすぐの球速がそこまで出ている訳じゃなかったけど、うまくアマヤ捕手とコミュニケーションを取って、相手の狙いをそらしたのが良かった。弱い球が相手のストロングポイントにいかないように。そうすると相手の術中にハマるので、それを避けながら。何球か助かったボールもありましたが、結果的にゼロに抑えられて良かったです。球威がそれほど出ている感じではなかったので、その分制球に気をつけて投げました。イニングを追う毎に良くなったことは、僕にとっていいポイントだと思います」

ーー5回以降良くなった要因は。
「少しリリースが早くなって、スムーズでないところがあったので、気持ちちょっと、リリースしたいところより持った方が、いいのかなと思って。自分の推測がハマって良くなった」

ーー6試合で防御率0・78。デビュー前に想像できましたか。
「数字は僕が想像していたより良い数字が並んでいますが、1試合1試合振り返ってみると、紙一重の勝負どころでたまたま拾ってきたところがある。そうじゃない試合もこれから来る。そういう紙一重のところを自分のものに出来るように頑張りたい」

ーーメジャーで圧倒している。
「今は僕のデータが少ないですし、データが上振れしているだけ。これを一年間やれたら最高だけど、そうもいかない場所(メジャー)だと思っているので。よりレベルの高い相手が現れた時にそれを乗り越える努力をしていきたい」

ーー9回1死二、三塁で左飛で本塁に返球された際どいタイイングでアウトとなった最後の本塁の判定、チャレンジを待つ心境は。
「同点になっても負けた訳じゃない。1点入っても2アウト二塁。逆転されないで、次のイニングに行けばいいと思っていた。結果的にアウトになって勿論嬉しいけど、まだ負けていないという気持ちでした」

ーーピンチでのメンタルは。
「自分がやりたいことと、出来ることは違う。三振取りたいけど、今取れるのかどうか。出来ることと、やるべきことを分けて考えるのが僕のマインドです」

ーー初の中4日で結果を出した。
「登板の間、少し疲れていて大丈夫かな、と。登板中もそれ程良くなかったけど、何とかしのいで、しのいで、しのいで。もう1回これ、やれと言われたら、なかなか出来ないと思う」

ーー完封したかったか。
「6回で代わるかな、とも思ったが、『もう1イニングどう?』と聞かれて、このタイミングで監督が『中4日で行ってくれ』と言った意図も感じていて、背景も理解しながら、もう1イニング行けたので、7回で十分だと思う」

ーー主砲のアロンソはほぼプラン通りの攻略だったか。
「低めを打つのがうまい選手。1打席目のファウルが打球速度113マイル(約182キロ)出ていた。これをフェアゾーンに飛ばせると必ずいい打球になってしまう。打球速度を弱めるためにどうすればいいかを考えた。チェンジアップをストライクゾーンに残さないように投げた。何度もいいますけど、紙一重のところで抑えられた」

ーーニューヨークの感想は。
「ホテル(の窓)から、スパイダーマン(映画)で見た景色が広がっていたので、あぁ、スパイダーマンだと思っていた。(米メディア爆笑)」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 「オオタニが話すようになった」米名物記者が驚いた…ドジャースで“なぜ変化”? それでも大谷翔平に手厳しいニューヨークメディアの謎

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 メジャーリーグの開幕から1カ月が経った。日本人選手で最も注目されているのは、やはり大谷翔平だ。

波乱の開幕…不安視されたメンタル
 スプリングトレーニング中に突然の結婚発表で世間を驚かせ、韓国での開幕シリーズ中には元通訳・水原一平容疑者による違法スポーツ賭博スキャンダルも起こった。

「ショウヘイ・オオタニの周りでは常に何かが起こる」

 

 ミラー氏はそう笑いながら続けた。

「このシーズン序盤、MLBで誰よりも注目を集めたのがオオタニだったのは間違いないね。もちろん彼にとっては喜ばしくない注目のされ方もあった。長年にわたって通訳兼相棒だったミズハラがあのスキャンダルによって解雇されたことは、オオタニを取り巻く世界を確実に揺るがしたと思う。ただあの騒動についての対処の仕方は見事で、間違った対応や言動はなかったし、その中でも自身の関与がなかったことをはっきりさせたことが何よりも良かった。

 

 新天地で一歩を踏み出す期待の高まる時期だっただけに、スキャンダルがパフォーマンスにどれだけ影響するだろうかと多くの人が見ていたと思う。メンタル面はどうなのだろうかと不安視する向きもあった。しかしそれは杞憂に終わった。シーズン序盤のこの段階で、オオタニはすでに記憶に残るパフォーマンスをいくつもやってのけている」

エンゼルス時代から「何が変わった?」
 数字以外では、開幕からここまでの約1カ月でエンゼルス時代との大きな違いに驚いたという。

 

「エンゼルス時代より、メディアと話すようになった。チームメートのフレディ・フリーマンやムーキー・ベッツと比べたらまだまだかもしれないが、それでも以前より少しオープンになったと思う。メディア対応というのは意外と大事だから、いい傾向だ。特に、米国でも1、2を争うくらい多くのメディアが集まるドジャースのような人気チームでプレーする選手は、メディアに対してオープンになることが自身にとってもプラスになると思う。気軽に話ができるということは、チームの中でごく普通のメンバーの1人という印象を与えるからね。オオタニはチームの中で特別な存在ではなく、ワンオブゼムでありたいと思っているだろう。

 

 私は30年以上もMLBの記者を続けさまざまな選手を見てきたが、スター選手でもメディア対応の仕方は人によって違う。一番印象に残っているのは、ジャイアンツのバリー・ボンズが通算本塁打数で714本のベーブ・ルースや755本のハンク・アーロンの記録に迫っていたときのことだ。彼はめったにメディアと話さないことで有名だったし、話さないことも選手の正当な権利とでも思っていた節があるが、記録がかかっていたのでメディアが大勢取材にきていてクラブハウスが記者でごった返していた。ボンズがしゃべらないので他の選手がコメントを求められ、うんざりしていた選手もいてチーム内の雰囲気はあまりよくなかった。それを考えると、オオタニが今話すようになったのはいいことだし、そうあるべきだと思う」

 

なぜ変化? アメリカ記者はこう見た
 ドジャースに移籍してからの大谷のメディアに対する変化。そこにはどんな理由があったのか。米メディアの1人として、どう見ているのか。

 

「その理由については、実は米国でいくつかの噂がささやかれている。日頃からドジャースを取材しているメディアは、エンゼルス番記者たちよりもはるかに人数が多いし、図太くて押しが強いヤツがそろっている。クラブハウスにオオタニがいて話を聞きたいと思ったら、広報から取材の許可を取る前にまず話しかけるというのがドジャースの記者だから、同じロサンゼルスでも全然違う。この記者たちが球団にかなり圧力をかけたのではないかというのが、一つの可能性だ。

 

 もう一つささやかれているのは、誰かチームメートに助言されたのではないかということだ。オオタニの記事を書く必要があるときにオオタニがしゃべらないと、記者たちは他の選手にオオタニのことを聞きにいかなくてはならなくなる。オオタニは良きチームメートでありたいという意識が強い感じがするし、彼らに負担をかけないように自分が話す方がいいと考えたのではないか」

ドジャース広報は喜んでいるだろう


 エンゼルス時代は球団広報が大谷の意向を最大限に尊重していたように感じられたが、ドジャースとエンゼルスの違いについてはどう感じているのか。

「ドジャースの広報部は、オオタニが取材対応をするようになって喜んでいるだろうね。オオタニはもちろん、球団全体が株を上げたような感じになるから。MLBにとってもいいことだと思う。オオタニが何をし、何を考え、何を言うか、多くのファンが興味を持っているから。

 

 ドジャースという球団は、上から下まで組織すべてが一流だと評されている。野球界の中でも、間違ったことをしない球団。だからオオタニがドジャースに移籍してから、メディア対応が増えたことは驚きではない。エンゼルスの広報部はいい人たちだし親切だが、気難しいオーナー、アート・モレノの下ではどうしても二流組織からは抜け出せず、コストカットや見てくれにばかり気を使い、オオタニにはただやりたいようにやらせるだけだった」

 それでも、まだ大谷に対して辛口なメディアも存在する。米東海岸、特にニューヨークのメディアがそうだ。ヤンキースの試合の実況アナウンサーで、スポーツ専門局のESPNラジオでもパーソナリティーを務めているマイケル・ケイ氏は「ヤンキースのアーロン・ジャッジやフアン・ソトといったスター選手は、自分たちが活躍しなかった試合の後でもしゃべる」と大谷と比較して語り、ニューヨーク・ポスト紙のベテラン記者ジョン・ヘイマン氏は4月25日付の記事で「オオタニは過去最大級の、最も記事になり報道される選手。しかし我々は依然として、彼の成績と野球愛の強さ以外は何ひとつ彼について知らない」とし、大谷へのアクセスが依然として限られていることに苦言を呈していた。実際、そう考えている米メディア関係者は多いのだろうか。

 

手厳しいニューヨーク…なぜ?


「確かに、オオタニよりもっとオープンにメディアと話すスター選手もいる。記者との言葉のやり取りを楽しむタイプの選手もいるからね。でもそれは、それぞれの性格にもよるし、環境にもよる。ヤンキースのジャッジやソトはとてもフランクに話をするが、それは彼らがニューヨークでプレーしているからというのも大きいと思う。メディアの数もファンの数も球界トップなので、しゃべらないという選択肢は彼らにはないといっていいかもしれない。

 オオタニはそこまでオープンになる必要はないと、個人的には思う。選手それぞれ、負担を感じない程度にやっていく方がいいのは当然だ。彼が投手として復帰してまた本来の二刀流に戻ったら、やるべきことがその分増えるし投打両方で成功するためにルーティーンは大事になるので、メディア対応が減っても理解されると思う」

 手厳しくも、東海岸はニューヨークのメディアから言及される事実が、大谷の存在感を示している。ではここまでの成績はどう評価されているのか。大谷に加えて、山本由伸、今永昇太、松井裕樹の「採点」を聞いた。

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◆ 「イマナガは100点…素晴らしい」米記者が今永昇太を“最高点”絶賛…では山本由伸と松井裕樹は? ズバリ語る“日本人選手の本音評”

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平の成績についてここまで「満点に近い」というのがミラー氏の評価だ。

「打撃成績を見ても、二塁打や塁打数で両リーグトップを走り、本塁打、打率、長打率、OPSなどでも上位に入る」

大谷の得点圏…どう見る?
 4月3日の本拠地でのジャイアンツ戦で移籍1号本塁打を放ち、ファンがキャッチした記念のホームランボールにも注目が集まった。とんでもない打球速度を出して周囲の度肝も抜いた。4月21日のメッツ戦で日本人の通算最多本塁打更新となる176号を記録。23日のナショナルズ戦で118.7マイル(約191キロ)の自己最速本塁打となる今季6号を放てば、27日のブルージェイズ戦では今季メジャー最速で自己最速の打球速度119.2マイル(約192キロ)の強烈なタイムリー。確かに記憶に残るパフォーマンスの連続だった。

 

「ただ1つ不思議だったのは、得点圏に走者を置いた状況で開幕から19打数1安打と苦しんだことだ。ヒットを量産していたのに、打点を挙げる機会では音無し。クラッチ(重要な)場面で相当なプレッシャーを感じていたのかもしれないし、もしかしたらミズハラのスキャンダルの影響がここに出ているのではと考えた人もいたと思う。オオタニは言い訳や細かいことは言わないので、理由を正確に知ることはできないけれどね。

 全体的にはいい開幕1カ月だった。今の打撃の調子とこれまでのスタッツを見ると、得点圏に走者のいる状況で打ち出すのも時間の問題。これまでの数字をカバーする勢いで数字を上げるかもしれない」

 

「85点」山本由伸の評価
 では、今季から新たにメジャーでプレーする日本人3投手についてはどうか。

 

「85点」を与えられたのは、山本由伸である。オリックスからポスティングシステムを利用し、メジャーの投手史上最高額となる12年総額3億2500万ドルでドジャースに入団した右腕だ。

 

「韓国の開幕シリーズでのデビュー戦は4安打5失点でわずか1回しかもたないという悲惨な結果だったが、その後は立て直し、昨オフのFA市場であれほどの争奪戦を巻き起こした投手だけあるという、ポテンシャルの片りんも見せた。最初の1カ月はやや安定感に欠けた印象だが、日本から米国に来てさまざまな違い、例えばMLBの公式球は日本のものより大きくて滑りやすいといったようなことに適応しなければならないと考えれば、適応期間はあってしかるべきだし、仕方がない。ただ最初の6試合で被打率.224、28イニングで37奪三振と、この2つのスタッツは優秀。夏に向かって調子を上げるだろうと期待できる」

今永を最高評価…際立つ「頭の良さ」
 つづいて今永昇太の評価。DeNAからポスティングシステムで、自身のたっての希望でカブスに4年総額5300万ドルで入団した。メジャー最初の1カ月で無傷の4勝をマークした今永には、「100点満点」の最高評価をつけた。

 

「デビューから18.1イニング連続で自責点ゼロは見事だった。カブスはイマナガを獲得したときに当然、活躍を見込んでいたが、これほど素晴らしい投球を続けるとは想像もしていなかっただろう。ここまでの投球で最も印象的なのは、ほとんどまたは全く対戦したことのない打者が何を狙ってバットを振ってくるかを察知する能力が非常に高いということだ。4月13日のマリナーズ戦での登板を観たが、敵の打線がみんなストライクゾーンの低めに落ちるスプリットに手を出さず見送っていたが、彼はすぐにそれを察した。さらに5.1回の登板イニングの間に戦略を立て直して速球主体の組み立てに変え、最終的には90球中で速球を60球も使い、チームを4-1の勝利に導き2勝目を挙げている。デビュー1カ月の投球は、本当に素晴らしいものだった」

 

「95点」松井裕樹の適応力
 では、松井裕樹はどうか。楽天から海外FA権を行使しパドレスに5年総額2800万ドルで入団。山本、今永とは役割の違うリリーフだが、ここまで好投を続けている松井も採点は95点と高評価だ。

「開幕からチームの最初の25試合でナ・リーグ最多タイの12試合に登板し、リリーフとして2勝0敗、防御率は1点台をキープしていた。メジャーでの最初の一歩としては文句なしの働きだったし球団も満足だと思う。マイク・シルト監督は『彼は今季来たばかりで、我々チームは昨年までの彼のことは何も知らなかったが、私が強く感じるのは、彼は慣れない環境やどんな場所でも自分自身をその場に適応させ、自分の実力を発揮できるタイプの選手なのだということだ。これは口で言うほど簡単なことではない』と言っていた。新しいリーグに来て1年目というのは、誰にとっても難しいもの。しかしマツイはここまで冷静沈着にすべてのことに適応しているし、今後さらにレベルを上げるかもしれないという可能性を感じた」

 メジャーで新たなスタートを切った日本人4選手の滑り出しはいずれも順調。今シーズンはこれからさらに上昇気流に乗るのか、注目される。

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◆ 山本由伸25歳と「ドジャース捕手の相性問題」“打てるが強気すぎスミスより守備型バーンズ”の現状…DH大谷翔平も“パズルの要素”なワケ

広尾晃氏/情報:NumberWEB)

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 ドジャースの山本由伸(25)は現地4月25日のワシントン・ナショナルズ戦で6回を零封し、2勝目を挙げた。

 防御率は3.54、ナショナル・リーグの平均防御率は4.13前後だから、ようやく「平均以上」になった。4月30日終了時点で規定投球回には達していないが、防御率ランキングに当てはめると22位だ。

 ここまで、山本はやや苦労している印象がある。3年連続沢村賞を受賞した「NPB最高の投手」が、ここまで苦労をするとはやや予想外ではあった。

ここ2試合の登板で上り調子ではある

 

もともと山本は「立ち上がりがやや弱い」投手ではあった。オリックス時代の2023年も27失点のうち13点は3回までに記録している。それがMLBに移籍した今季はさらに極端に出て、12失点はすべて3回までに喫している。

 もちろん、この極端な数字は3月21日の開幕2戦目のパドレス戦で、1回に5失点したのが響いているのだが……。

 今季ここまで登板した6試合を振り返ろう。

 3月21日 パドレス戦 ●
 1回43球4安0本1四1死2振 責5/捕手:スミス
 3月30日 カージナルス戦
 5回68球2安0本0四5振 責0/捕手:スミス
 4月6日 カブス戦 〇
 5回80球3安0本2四8振 責0/捕手:バーンズ
 4月12日 パドレス戦 
 5回91球4安2本1四6振 責3/捕手:スミス
 4月19日 メッツ戦
 6回99球7安1本1四9振 責3/捕手:スミス
 4月25日 ナショナルズ戦 〇
 6回97球4安0本1四7振 責0/捕手:バーンズ

 

 ここ2試合はQS(6回以上投げて自責点3以下)という先発投手の最低限の責任を果たしている。明らかに上り調子ではある。

スミスとバーンズ…ハッキリと違う個性とは
 この戦績を見ていると、捕手との相性はどうなのか、という点が気になってくる。

・スミス 4試0勝1敗
 17回17安3本3四1死22振、責11率5.82
・バーンズ 2試2勝0敗
 11回7安0本3四15振、責0率0.00

 正捕手のウィル・スミスより、控え捕手のオースティン・バーンズと組んだ時の方が、圧倒的に成績が良い。

 2人はハッキリと個性が違う捕手だ。

 

 29歳のウィル・スミスは、2023年WBCではアメリカ代表で出場し、通算打率.267、OPS.845。当代屈指の「打てる捕手」ではあるが、やや弱肩で盗塁阻止率、フレーミングでも優秀との評価はない。昨年、リード面では新人投手ボビー・ミラーの持ち味を引き出したとされるが……。

 これに対して34歳のオースティン・バーンズもWBCのメキシコ代表。ただ通算打率は.219、OPS.665。ウィル・スミスより見劣りする。肩はそれほど強くはないが、大エース、クレイトン・カーショウとのコンビで知られる「リード、守備のよい捕手」である。

オリックス時代は若月と“黄金バッテリー”だった
 山本由伸はオリックス時代、当初は伏見寅威、若月健矢の2人の捕手と組んでいたが、2021年後半から若月と組むことが圧倒的に多くなった。若月はこのころから「無双状態」になった山本の球種をよく知り、持ち味を生かすリードができるようになったのだ。

当然ながらMLBでは、そこまでの相方は今のところ、いない。

 山本のここまでの全投球478球のボールの組成についてみていこう。

・フォーシーム183球(38.3%)
 ストライク135(73.8%)空振16(8.7%)安打12、凡打22

・カーブ135球(28.2%)
 ストライク95(70.8%)空振17(12.7%)安打8、凡打7

・スプリッター130球(27.2%)
 ストライク75(57.3%)空振22(16.8%)安打3、凡打15

・カットボール29球(6.1%)
 ストライク19(65.5%)空振4(13.8%)安打1、凡打3

・スライダー1球(0.2%)
 ストライク0(0%)空振0(13.8%)安打0、凡打0

 総投球数478球(100%)
 ストライク324(67.8%)空振59(12.3%)安打24、凡打47

 先発投手のストライク率は60%で合格点。70%に達する投手はほとんどいない。山本由伸の制球力はトップクラスだ。

 フォーシームの平均球速は153.5km/h前後。「山本はMLBに行ったら球は遅い方になる」という有識者がいたが――MLBの平均が152km/h前後とされるから、決して遅いわけではない。またフォーシームのストライク率73.8%は非常に優秀である。

なぜ「カーブ急増、カット減少」しているのか
 NPB時代との投球組成の大きな違いは「カーブが増えて、カットボールが減少した」ことだ。

 

 ここで紹介した投球データはMLB公式サイトの「スタットキャスト」による。トラッキングシステム「ホークアイ」を基幹とするシステムが球種を判断している。

 NPBの球種データとは、球種の解釈が異なるために単純な比較はできない。ただ、NPB時代の山本はフォーシーム40%、フォーク(スプリッター)25%、カーブ15%、カットボール10%前後という感じだった。MLBに来てカーブの比率が急増しているのだ。

 実は初戦である韓国でのパドレス戦は、フォーシーム14球についでカットボールを11球投げていた。カーブは10球だったが、2戦目のカージナルス戦ではフォーシーム29球、カーブ17球に対しカットボールは1球だけ。カットボールは以後も1試合で数球しか投げていない。

 

 MLBではカーブが有効で、速球やスプリットに、カーブを織り込むことで効果的な投球の組み立てができるようになったからだろう。

2人の捕手でかなり違う投球の組み立てとは
 実はウィル・スミスとオースティン・バーンズという2人の捕手は、投球の組み立てもかなり違っている。

 スミスは301球を受けた中で、フォーシーム(109球36.2%)についでスプリッター(89球29.6%)を投げさせ、カーブ(80球26.6%)の順だが、バーンズは177球を受けてフォーシーム(74球41.8%)についでカーブ(54球30.5%)、スプリッター(42球23.7%)の順だ。

 山本のフォーシームは平均153.5km/h、スプリッターは144km/h前後、カーブは125km/h前後だが、バーンズのほうが緩急をつけていることになる。

 

 筆者は背番号「43」時代から山本由伸を見ているが、彼の最高の球は途中までフォーシームとほとんど軌道が変わらないフォーク(スプリッター)ではないかと思っている。千賀滉大や平野佳寿のような落差の大きい「おばけフォーク」ではなく、小さな変化量でバットの芯を外す球だ。

 日本では空振りもたくさん奪ったが、MLBの各打者はこの球にあまり手を出さずボールを見極める。だからストライク率57.3%と良くない。またカットボールも見極められる。

 そこでカーブということになるのだろうが、速球と見間違うことが少ないカーブが常に通用するとは思えない。スプリッターやカットボールなどを活用するときが来るだろうし、捕手には柔軟なリードが求められるだろう。

“打てるが強気すぎるリード”とDH大谷
 ウィル・スミスとオースティン・バーンズの配球を見ていて、もう一つ気になったのは、スミスの「強気すぎるリード」である。

 

 スミスと組んだ時に、山本由伸は「3球三振」を7つも記録している。バーンズはカブス戦で1つあるだけ。もともと3球三振はMLBではNPBよりも多い傾向にあるが、山本由伸はNPB時代のように1球待ちたいかもしれない。

 

 ここまで見る限り、NPB時代同様、山本のマウンドに関しては「捕手との相性」の問題が存在するようだ。

 それだけを考えれば、バーンズを「山本専用捕手」にしたいところだが、ウィル・スミスはベッツ、大谷翔平、フリーマンに続く4番打者として圧倒的な存在感がある。山本の時だけDHに、と言いたいところだがDHには大谷がいる。つまり、どう配置するかが悩ましい「パズル」のようになっている。

グラスノーとともに中心投手になるために

 

 山本は今後、スミスとのコンビでも「ベストの配球」を模索する必要が出てくるだろう。そのためには捕手や投手コーチとのコミュニケーションが大きな課題になる。

 ここまで山本は中5、6日で投げているが6回を投げたのはここ2試合だけ。すべて100球に届かず降板している。

 NPB時代のように完投することはないだろうが、タイラー・グラスノーとともにローテの中心投手になるためには、7回は投げたいところだ。今後も安定感のある投球を見せてほしい。

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 ■ NOTE