2024年5月3日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 大谷は2日(日本時間3日)、ドジャースタジアムで行われた「ブルー・ダイヤモンド・ガラ」に出席。ブランドアンバサダーを務める「BOSS」の黒いジャケットで今年2月に結婚を発表した真美子夫人とともにブルーカーペットに登場した。

「ロサンゼルス・ドジャース基金」主催のチャリティイベントで今年で8回目。ドジャースナインはそれぞれの家族とともに登場した。グラミー賞を4度受賞している歌手のエド・シーランさんがライブを行った。

取材には一人で応じた。

 

「伝統的にやってる(イベント)みたいなので、楽しみに来ました。コンサート自体、来るのが初めてなので。それ自体をまず楽しみたいなと思います」

 

「まだシーズン始まって間もないので、本当にきつくなってくるのはこれからかなと思いますけど、生活のリズムというのも徐々にできてると思うので、もっともっと慣れてくればやりやすかったりするのかなと思います」

 

屋外でのフォトコールでは大谷が真美子さんの腰に手を回し、ステージに登場した際には、大谷のたくましい左腕に真美子さんが右腕を絡ませ、客席へと降りる階段では、大谷が左手をさっと差し出し、真美子さんが右手でギュッと握りしめた。手を差し伸べた大谷は、真美子さんの方を振り返ったまま笑顔で話しかけ、真美子さんは足元に視線を落とし、一段一段、慎重に階段を降りる。ステージでエスコートした際、真美子さんの指は、キュッキュッキュッと合図を送るように大谷の腕を軽くつかんでいるようにも見え、仲睦まじい様子が伝わってきた。

 

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◯ MLB公式サイトが1日(日本時間2日)、今季3度目の打者パワーランキングを発表し、大谷は前回の4位から2位に浮上した。同サイトの記者やアナリストら13人の投票によるランキングで、大谷は4月4日(同5日)は7位、同18日(同19日)の2回目は4位だったが、ここ数週間の活躍で2位に上がった。同サイトは「大谷が新しいチームで少し遅いスタートを切ったのを覚えているかい? 最初の8試合で比較的静かだった時から、この24試合で彼は打率3割6分7厘、出塁率4割3分2厘、長打率7割1分4厘、7本塁打、16打点を記録している」と絶賛するも課題を指摘した。

「ただ彼のシーズンの唯一の奇妙な癖は、OPSが走者なしだと1.281、1人以上の走者がいると7割7分5厘、さらに得点圏に走者がいるとわずか4割8分7厘であることだ」。得点圏では38打数7安打、打率1割8分4厘だ。1位は3回連続でドジャースのムーキー・ベッツ内野手(31)。同サイトは「チームメートらが最新の打者パワーランキングで1―2位」と題している。

 

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 ■ ロサンゼルス・ドジャース情報

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◯ デーブ・ロバーツ監督は、日本時間5月7日に本拠地ドジャー・スタジアムで行われるマーリンズ戦に右腕ウォーカー・ビューラーが先発する予定であることを明らかにした。ビューラーは2022年8月に自身2度目となるトミー・ジョン手術を受け、昨季は全休(マイナーでの1登板のみ)。チームは復帰を急がせることなく、今季も開幕から故障者リストに登録してマイナーでのリハビリ登板を行わせていた。6度のリハビリ登板を経て、メジャー復帰の準備が整ったとの判断に至り、マーリンズ3連戦の初戦に先発することが決定された。

 

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 ■ 球界情報

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上沢直之投手:

◯ レッドソックス上沢が2日(日本時間3日)、本拠地・ジャイアンツ戦で2点ビハインドの8回から5番手で救援登板してメジャー初登板を果たし、2回無安打無失点1奪三振で、6人をパーフェクトに抑える鮮烈デビューを飾った。試合後の主な一問一答は以下の通り。

ーーデビュー戦を終えて、率直な感想は。
「すごく緊張しました。3Aでずっとチームから言われて、やってきたことを試合で出すことが出来たと思います。まずは、点を取られなかったこと。ああいう展開で、流れよくチームの攻撃につなげられたことはよかったと思います。すごく興奮もしましたし、そんなに緊張しないかなと思っていたけど、(マウンドに)上がってみたら、不思議な感覚におちいりました。やっぱり、緊張するよな、って思いながら投げていた。ステキな経験でした」

ーー7回にブルペンの電話が鳴った。
「もうちょっと負けてる展開かと思っていた。若干刺されました。でも、皆こうやって中継ぎの選手は(肩を)作ってるんだ、と思いながら準備していました。とりあえず肩を作ることしか、考えてなかった。右(打者)とか左とか関係なく」

ーーご自身の投球を振り返って。
「スプリットをストライクゾーンに投げることを練習してきた。3Aでやってきたことが(試合で)出来たと思います。こっちに来て、真っ直ぐでは勝負出来ない。速い球で勝負しようと思っていない。僕の球速でこっちの選手と勝負出来ないので、他の球種を使いながら、いかに直球を速く見せるかというところ。そういう作業が大切だと思う。スプリットの使用率を増やして、まっすぐも他の球種も生きてくるという部分を(3Aでは)やってきた」

ーースプリットの手応えは。
「ゴロになっているうちはいいと思う。打球が上がると、こっちの打球速度は速いので。やってきたことを徹底してやることが大事だと思った。3Aで過ごした時間は無駄じゃなかった。スプリング・トレーニング(春季キャンプ)から色々あったけど、あの期間が今生きていると思います」

ーー試合前にブルペンで投げた意図は。
「最後の3Aの登板から、さすがに登板間隔が空いていたので、自分で投げさせてくれと言いました」

ーー招待選手、移籍、マイナーと回り道をして、たどり着いた。
「色々あったので、なんかもう、楽しまなきゃ、キツいなと思って。こっちにいる間は、楽しんで野球をすることを、こっちの選手から教えてもらっている気がする。そういう部分を大切にしていきたいと思います」

ーー昇格からデビューまで4試合かかった。長かったですか。
「長かったです。ただ、ブルペンでひまわりの種を食ってるばっかで(笑い)」

ーー今後に向けて。
「イニングの途中から投げることも期待されていると思うので、どんな展開でも長いイニングを投げられるように頑張りたいです」

ーー記念のボールは
「第1球のボールと、三振を取ったボールをもらいました」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平はドジャースの“聖域”ではない…「もう少し落ち着いて」ロバーツ監督の苦言が示す“健全な関係性”「むしろ笑いに変えるぐらいの…」

阿部太郎氏/情報:NumberWEB)

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 4月23日、首都ワシントンDCでのナショナルズ戦前の監督囲み。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は記者から大谷翔平とのコミュニケーションのアプローチについて聞かれた。いつものように、ゆっくりと大きな声で答えた。

「アプローチは他の選手と同じだ。彼がもっと打撃でうまく対応できるように、答えの手がかりを与えて彼に気づかせること。それが手助けになればいい」

大谷のミスをきっぱりと指摘したロバーツ監督
 伏線はあった。

 1週間前のナショナルズ戦、大谷は得点圏で3打席連続初球を打ち損じて凡退した。監督は試合後、「もう少し、走者を背負っている場面で落ち着いて、球数を稼ぐ必要もある」と苦言を呈し、「彼とそのことについて話し合うだろう」と語った。

 すぐに指揮官は動いた。大谷とコミュニケーションを取り、「得点圏の時、ストライクゾーンが広がっているんじゃないか」と助言した。大谷はその会話について、「アグレッシブなのが悪いとかではなくて、(得点圏で)アグレッシブなゾーンが広がっている。スコアリングポジションではないところではしっかりとできているので、それを継続していこう」と言われたことを明かした。

 本拠地開幕戦の3月28日にも、大谷の走塁ミスについて、監督は指摘することを忘れなかった。

 初回。1番のムーキー・ベッツが四球で出た後、右翼線への二塁打を放った。大谷は打球を見て三塁にいけると確信し二塁を蹴ったが、ベッツは三塁でストップ。大谷は挟まれてアウトとなった。ボーンヘッドだ。指揮官は「彼は足が速いが、前に走者がいることを理解しないとね」と笑わせた後、きっぱりとこう言った。

「次の打者に(強打の)フリーマンが控えていた。一塁走者(のベッツ)をホームでアウトにさせたくない。そのことも頭に入れないと」

“ドジャースの大谷翔平”は聖域ではない
 昨年、一昨年とエンゼルスが大谷に対して、何かを指摘するようなことはなかった。それはFAを控える大谷の引き留めとも密接に絡んでいたと思うが、やはり健全ではなかった。

 マイク・トラウトと大谷翔平は別格で、聖域。そんな雰囲気を常に感じた。フィル・ネビン監督やペリー・ミナシアンGMは「翔平が一番、自分のことをわかっている」が口癖だった。

 だが、ドジャースは今のところ、大谷を「スター扱い」していないように見える。監督が言うように、「他の選手と同じ」ように大谷と接している。

 監督をよく知る米国の記者は「ベッツやフリーマン、カーショーらの目もあると思う」と話す。

「仮に大谷をスター扱いすれば、『なんであいつだけ』となるのは目に見えている。『勝利より大切な選手はいない』というのを、ロバーツ監督は全員に示す必要があるから、大谷に対しても言うべきことは言うだろう」

 大谷が大ブーイングを浴びたトロントでのブルージェイズ3連戦。岩手・花巻東高の先輩・菊池雄星から自己最速の打球速度で適時打を放った後、大谷がベンチに戻ると、ロバーツ監督が何やら大谷に激しい言葉をかけている姿がテレビで映し出された。

「『いいアプローチができている』と再確認して伝えただけ」

 監督は敵地の監督室でそう語った。

 スター軍団を束ねるのは簡単ではない。その中でコロナ禍の短縮シーズンを除けば、4年連続で100勝以上。チームとしての成熟度が高い。

 

ダルビッシュ、菊池雄星が語るドジャース打線の脅威
 ドジャースの宿敵であるパドレスのダルビッシュ有は以前、ドジャース打線についてこう語っていた。

「一つ一つのプレーに集中している。走者が三塁なら、変に引っ張るとかじゃなくて、ちゃんと逆方向に打つとか、フライボールを打つという目的意識が一人一人ある。何をしないといけないというのが場面場面でわかっている。隙がない」

 先日、ブルージェイズの菊池雄星もドジャース打線について同じような言葉を口にした。

「バントとかも含めて、抜け目のない打線。そして、点の取り方、勝ち方を知っているなと感じた」

「最初の1カ月が1カ月だっただけに…」
 大谷自身が、監督の接し方に対して実際どう感じているのかは分からない。助言をありがたく享受しているかもしれないし、もっと自由に打たせてほしいと感じているかもしれない。いずれにしろ、今はドジャースの勝ち方、やり方を学んでいる最中だろう。

 監督との関係についてはこう口にした。

「最初の1カ月が1カ月だっただけに、僕からしたら(監督に)気にしないでほしいというか。むしろ笑いに変えるぐらいのコミュニケーションというか。そこは別にグラウンドに持ち込んでほしくもないと思っている。そこはそこで自分で処理すればいいだけ」

 水原問題で揺れた1カ月を経て、ようやく健全な状況になりつつある。

 ドジャースの野球に染まる過程で紆余曲折はあるかもしれないが、優勝を切望する男にとっては望むところ。グラウンド内での話が、大谷の心を乱すことはないだろう。

(「メジャーリーグPRESS」阿部太郎 = 文)

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◆ 大谷翔平ドジャース戦で大騒ぎ「蜂と駆除員」がカードになったが「乱入リスや猫、あの映画」「オオタニが座ったイス」も…MLBの商魂がスゴい

AKI氏/情報:NumberWEB)

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 蜂の大量発生で大谷翔平、山本由伸が所属するドジャース戦が遅延した一連の“騒動”が話題になった。メジャーリーグではこのような珍事も素早くグッズ化するようだ。メモラビリアに明るいAki氏にトリビアを教えてもらった。

 

「Bee Delay(蜂による遅延)」

 

 野球ファンの中でも耳慣れない試合開始遅延だっただろう。

 

 4月30日(日本時間5月1日)ダイヤモンドバックスvsドジャース(チェイスフィールド)の試合直前にバックネットの上段に蜂が大量発生しているのが見つかり、開始が遅延したのだ。

 

蜂発生→業者が対応→始球式だけでもエンタメなのだが

 ドジャースの大谷翔平、山本由伸も困惑した表情で当初は事態を見守り、ムーキー・ベッツもブーイングならぬ「ビーイング」するなどして時間は過ぎていったが――業者を手配しているのか暫くは何の進展もないままベンチ裏に下がってしまった。

 

 ただこの時間もじっと待つファンを飽きさせないためか、スタジアムには、恐らく「蜂(BEE)」にかけたと思われるビートルズの「Let it be」が流れて球場を和ませていた。

 

 1時間を過ぎたあたりだろうか、ようやく蜂駆除業者のマット・ヒルトンさんがカートに乗って球場に登場。白い防護服を身にまといグラウンドを移動する際に流れていた曲は、a-haの「Take On Me(私を連れてって)」、そして作業の際には、日本では「スクールウォーズ」でお馴染みの「Hero(ヒーロー)」だった。咄嗟の事態にもこのように演出を加えてしまうのはやはりアメリカらしい。

 

 無事駆除を終えてもこれだけでは終わらない。そのままヒルトンさんは始球式まで行ってしまった。筆者は試合開始遅延時間1時間55分間の蜂駆除業者の映画でも見ていたのだろうか。

 

 これだけでも十分なエンターテイメントなのだが、更にこれだけでは終わらないのがMLBだ。

 

 翌日、米Topps社からヒルトンさんのカードが発売されることになった。しかもランダムでヒルトンさんの直筆サイン入りの当たりカードも封入される仕様だ。

 

 直筆サインカードが合計で41枚、ヒルトンさんがこの41枚のカードにせっせとサインを書いている様子を想像するだけでにやけてしまう。そして、ヒルトンさんのカードだけではなく「Bee(蜂)」のカードも発売されている。この蜂の集団のみのカード、果たしてどんなファンが購入したのだろうか。

 

“蜂襲来”以外にもリス、猫…すぐに商品化

 MLBはこのように日本では考えられないようなものを商品化してすぐに販売してしまうので、いくつか紹介してみたい。

 

 まずは「リス」カード。2011年に本拠地ブッシュ・スタジアムに現れたリスをマスコット化し、「ラリー・モンキー」ならぬ「ラリー・スクイレル(リス)」としているのだが――2018年に再度現れたリスをカード化したものになる。MLBの選手でも無いカードを買う人がいるのか? という疑問をお持ちかもしれないが、当時24時間限定で発売されたこのカードは2294枚も販売されている。

 

 動物シリーズでは他にもCAT(猫)、GOOSE(ガチョウ)、DUCK(アヒル)とスタジアムに現れたゲストがカード化されて発売している。その中でも猫のカードは約4000枚発行されている。動物カードのみを集めるコレクターも存在するのかもしれない。

 

フィールド・オブ・ドリームスのトウモロコシも

 動物や昆虫だけではない。メッツの本拠地であるシティ・フィールドで44269本ものホットドックが食べられた記念カードが、1ドルで限定販売されている。

 

 さらには「あの名作映画」にちなんだ植物もカード化された事例がある。

 

 映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった土地であるアメリカ合衆国アイオワ州のトウモロコシ畑の中の球場でMLBの公式戦が2021年から年1回ペースで開催されているのだが、この球場で採取された「トウモロコシ畑の茎」入りカードである。筆者も映画の大ファンということもあって、開催初年の茎入りカードを保有している。

 

 しっかりと「GAME USED CORN STALK (試合で使われたトウモロコシの茎)」となっており、MLBの認証ホログラムも貼付されている。そろそろ腐ってしまうのでは?  という危惧を持ちつつ保有しているが、今のところは大丈夫そうだ。

 

大谷が座ったイス、古い座席も販売してしまう

 カード以外でもMLBオークションでは、あらゆる珍しいものが販売されたりする。

 

 大谷翔平がロッカールームで座ったイス、試合で使われたピッチングプレート、投手が使ったロージン、そしてスタジアムが改修されるとなれば古い座席、先日こちらでも紹介したが――大谷の打球が当たって壊れた電飾パネルまで販売してしまう。

 

 もちろん欲しい人がいるからこそ成り立つ商売ではあるのだが、MLBの商魂はやはり逞しい。そのうち筆者もコレクションしている「空気・熱気」も販売し始めるかもしれない……。

 

「Bee Delay」のMVPはヒルトンさんだったのだろう

 さて、「Bee Delay」の試合はホームのダイヤモンドバックスが逆転サヨナラホームランで勝利したのだが、この試合の本当のヒーローはホームランを打ったクリスチャン・ウォーカー以上に、試合を無事開始に導いたミツバチハンター・ヒルトンさんかもしれない。

 

 なぜならこの記事を書いている際に、Topps社からヒルトンさんカードの発行枚数が発表になったのだが――その数なんと1万6946枚。このストーリーは本当に映画化されてしまうかもしれない。

 

「MV(Bee)P!」

 

 といったところだろうか(笑)。

 

(「メジャーリーグPRESS」Aki = 文)

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◆ 打撃絶好調の大谷翔平 DH専任で初のMVPの可能性も

奥田秀樹氏/情報:週刊ベースボールonline)

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【MLB最新事情】

 気が早いが、大谷翔平はDH専任で初のMVPの可能性もあるのかもしれない。これまではDHは打撃だけだからと選ばれなかった。史上最強のDH、レッドソックスのデビッド・オルティスも投票で2005年の2位が最高。06年が3位、04年と07年が4位だった。

 マリナーズのエドガー・マルティネスも1995年の3位が最高だった。元エンゼルスの強打者ドン・ベイラーは79年にMVPに選ばれたが、スタメンは外野で97試合、DHで65試合だった。現時点でデータサイト「ファングラフス」のWAR(代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを示す指標)はドジャースのムーキー・ベッツ遊撃手が2.1で1位、大谷は1.8で2位。

 守備の貢献度が高い遊撃手に勝つには、打撃成績で相当上回る必要があり、難しいとは思うが、今の大谷の打撃を見ていると、不可能はないように思えてしまう。現地時間4月23日のナショナルズ戦の9回、マット・バーンズ投手のスプリッターをとらえた打球は打球速度118.7マイル。今季MLBで最も速い打球で、大谷の7年間のMLBキャリアでも最速だった。低い弾道でトップスピンがかかっていたが、それでも飛距離450フィートで球場2階席へ。

 同僚のマックス・マンシーは、「バックスピンで打っていたら、確実に場外だった」と目を丸くしている。本人も「人生の中でトップクラスじゃないかなと思う」と振り返っている。大谷は体格に恵まれているしパワーもケタ外れだが、その上メカニックを磨き、スイングの力を最大限にボールに伝えられるからこれだけ飛ぶのだろう。

 数字が証明している。4月24日終了時点で、95マイル以上のハードヒットの打球は55本でメジャー全体で1位。ハードヒット率64%、バレル率17.4%もトップである。そしてOPS(出塁率+長打率)1.128も頂点に立つ。大きいのはベッツとフレディ・フリーマンと偉大な打者2人に挟まれていること。

 エンゼルス時代はしばしば敬遠されたし、ストライクゾーンでなかなか勝負してもらえず、ボール球に手を出すことも少なくなかった。しかし今はゾーンに集中できる。大谷はデーブ・ロバーツ監督と話し合い、特に走者を得点圏に置いたときのアプローチをアジャストした。

「単純にゾーンが広がっていた。アグレッシブなのが悪いとかではなく、得点圏じゃない場面はしっかりできているので」と大谷。大谷の本塁打は初球(39本)が一番多い。しかしながらカウント別のOPSを比較すると、一番良いのは3-1の2.007で、その次は2-0の1.845、3-0の1.783、1-0の1.294となる。

 初球は1.262だ。この話し合いのあと、打棒爆発。ロバーツ監督は「今の彼はストライクゾーンをコントロールしている。彼がそれをやると、アウトにするのは難しい。左、右の投手、すべての球種に対応でき、フィールド全体に打ち返す。私は毎晩、最高の席でそれを見ている。私もファンになってしまいがちだ」と目を細めていた。

文=奥田秀樹

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◆ 好対照のスタートを切った今永昇太と山本由伸のデータ上での類似点と相違点

菊地剛慶氏/情報:スポナビ)

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【野茂英雄氏の予見通りになった現在のMLB】
 すでに日本でも大きく取り上げられているように、現地時間5月1日に前田健太投手、今永昇太投手、山本由伸投手(年齢順)の3投手が揃って先発に臨み、それぞれが好投を演じた末、勝利を掴むことに成功している。これはMLB史上初の快挙らしい。

 さらに4月30日にはダルビッシュ有投手が今シーズン初勝利を飾り、その試合で松井裕樹投手も見事なリリーフ登板でお膳立てをし、また5月2日にメジャー初昇格した上沢直之投手がMLBデビューを飾り、2回を無失点に抑える好投を演じている。

 かつてMLBに在籍する日本人選手が限られていた頃、日本人対決をクローズアップしがちだった日本人メディアに対し、野茂英雄氏が「そのうち(日本人選手がMLBでプレーするのが)普通になりますよ」と予見してくれていた通り、日本ではとりわけ大谷翔平選手に注目が集まりがちだが、今では普通に日本人選手たちが活躍する状況になっている。

 それに伴いMLBにおける日本人選手(特に投手)の価値は高まる一方で、近い将来には欧州リーグに在籍する日本人サッカー選手のように、すべての選手を追い切れないような時代が到来するかもしれない。

【今永投手が「期待以上」で山本投手は「期待通り」】
 ところで今シーズンは新たに4投手が活躍の場をMLBに移したわけだが、スプリット契約を結んでいた上沢投手を含め、全選手が無事にメジャーデビューを飾ることができた。

 中でも昨オフにFA市場で高い評価を受けていた山本投手と今永投手に関しては、シーズン開幕前から米メディアの高い関心を集めていたが、現時点での評価は概ね今永投手が「期待以上」で、山本投手が「期待通り」で固まりつつある。

 5月2日時点で5勝0敗、防御率0.78と、MLBトップもしくはトップタイの成績を残している今永投手の評価は当然として、実は山本投手に関しても、韓国でのデビュー戦を除いた6試合では3勝0敗、防御率1.64という好成績を残すとともに、対戦相手のOPSが.586に抑える安定感を見せており、今や多くのメディアが前述通りの評価にまとまり始めている。

【開幕当初2投手はハードヒット率がMLB最低レベルだった】
 ところで集中打を浴び1回で降板した山本投手に対し、6回2安打無失点の好投で勝利投手に輝いた今永投手と、まったく正反対のデビュー戦となった2人だが、実はあるデータにおいて2投手はかなり類似し、MLB最低レベルであったことをご存じだろうか。

 それはハードヒット率だ。これは打球速度95mph以上の打球をどれだけ打たれたかを示すもので、打者を確実に打ち取れているかどうかを確認する際に使用されるデータだ。

 この指標で2人の投手を見てみると、山本投手はデビュー戦で4本の打球(安打3本とフライ1本)を許し、すべてが打球速度95mph以上を超えてり、ハードヒット率は100%だった。

 これに対し今永投手も、12本の打球(安打2本とフライ10本)のうち打球速度が95mph以上だったのは8本と、ハードヒット率は66.7%と同じく高い数値になっていたのだ。説明するまでもなく当初は2人のハードヒット率は、MLB最低レベルだった。

 そのため自分は今永投手のデビュー戦後に有料記事を公開し、「まだ1試合なので今後を見守る必要がある」としながらも、「打球角度が変われば違った結果になっていただろう」とハードヒット率の高さを不安要素として取り上げていた。

 そうした状況を理解していたこともあり、今永投手がシーズン開幕から繰り返している「紙一重の勝負」というフレーズに、個人的に納得させられるものを感じていた。

 

【好対照の性質を持つ2人が投げるフォーシーム】
 そして2投手ともに使用頻度が高く、投球を組み立てていく上で根幹をなす球種がフォーシームだ。だが2人のフォーシームは見事なほどに好対照になっている。

 ここまで山本投手のフォーシームの平均球速は95.4mphで、ほぼすべてのフォーシームの球速がMLB平均以上に分布している。一方の今永投手の平均球速は92.1mphとほぼMLB平均レベルになっているが、全フォーシームの3分の2程度は平均を下回っている。

 今度は2人のフォーシームをスピン効率で比較すると、山本投手のフォーシームの平均回転数は2154rpmで、スピン効率はMLB148位の93.0%であるのに対し、今永投手の平均回転数は2424rpmで、スピン効率98.7%は同24位にランクしている。

 つまり山も投手のフォーシームは球速がMLB平均を上回っているもののスピン効率はやや下がる一方で、今永投手のフォーシームは、球速がMLB平均もしくはそれ以下だが、MLBトップクラスのスピン効率を誇っているということが理解できる。

 それを裏づけるように、今永投手のフォーシームのホップ成分(タテの動き)はMLB4位に入っているが、山本投手は119位に止まっている。

【間違いなくMLBに順応し始めている2投手】
 これだけ異なる性質のフォーシームを投げる2投手だが、フォーシームのハードヒット率に関しては、山本投手が52.4%、今永投手も53.6%とほぼ同じ数値で推移している。

 だが2投手ともにフォーシームだけを投げているわけではないし、他の球種を交えながら投球を組み立てているわけで、実は投球全体のハードヒット率は登板を重ねるごとに改善されている。

 直近の5月1日の登板で見てみると、山本投手は17本の打球(安打5本、フライ4本、ゴロ8本)を許し、95mph以上の打球はわずか5本だったので、ハードヒット率は29.4%。また今永投手も16本の打球(安打3本、フライ7本、ゴロ6本)のうち95mph以上は同じく5本だったので、ハードヒット率は31.3%となっている。

 しかもこの日の登板は山本投手にとって今シーズン3度目の中5日登板で、今永投手に至っては自身初の中4日登板で臨んでいた。MLB流の登板間隔に適応しながら、相手打者を翻弄し始めていることを考えると、今後の登板がさらに楽しみになってこないだろうか。

 今後もいろいろな観点から選手たちを考察し続けたい。ちなみにここで紹介したデータは、すべてMLB公式サイト「savant」から引用したものだ。

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◆ 米国の不条理な市場原理 大谷効果でドジャースのチケット高騰も球場には空席 ポトマック通信

大内清氏/情報:産経新聞)

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米国で戸惑うことの一つに、「市場原理」の強力さがある。

例えば航空券は購入時点の需要と供給で大きく価格が変動する。ある出張時、予約した便が欠航となったのでチケットを買い直そうとしたら、価格が5倍にはね上がっていて、やむなく鉄道に切り替えたことがあった。利用者側に何の非もないだけに「こんなの理不尽だ」と感じたものだ。

プロスポーツでも、人気チームのチケットは高値となる。大リーグ・ドジャースの場合、今季から大谷翔平選手らが加入した効果で、大手販売サイトでの価格が前季の約2倍に高騰したとの報道もあった。

先日、ワシントンで行われた地元チームとドジャースの試合を観戦したのだが、チケットはやはり基本価格よりかなり高め。スタジアムは空席が目立った。この時は「こんなの本末転倒だ」と思った。

今や、どんなチケットもオンライン購入の時代。米メディアによると、需給データから一定の計算方法(アルゴリズム)で売り手側にとっての最適価格が決まる仕組みらしい。

手ごろな価格でより多くの客を楽しませる。そんな消費者側のささやかな期待に、市場原理は必ずしも応えてくれない。「こんなの不条理だ」と首をかしげることもしばしばだ。(大内清)

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大谷翔平 妻・真美子さんの「本当の退団理由」と水原氏が「いちばん“しんどかった”こと」《人生激変の3年間証言集》

岡野誠氏/情報:女性自身)

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誰も予想できなかったことがたった2カ月で次々と起こった。2月29日(日本時間、以下同)、大谷翔平選手(29)が結婚を発表。韓国遠征に旅立つ3月15日にツーショットを公開し、お相手は元バスケットボール選手の田中真美子さん(27)だと判明した。

 

祝福の嵐から一転、開幕戦後に盟友・水原一平通訳(39)の違法賭博への関与が発覚。4月12日、水原容疑者は銀行詐欺の容疑で米連邦地検から訴追され、大谷の被害額は総額1千600万ドル(約24億5千万円)を超えた。

 

真美子さんとの出会い、結婚。一平の裏切り……大谷翔平の人生を激変させた3年間をたどる。

 

全幅の信頼を置いていた人間に24億円以上の大金を盗まれていたと発覚しても、大谷のメンタルは崩れなかった。水原容疑者の訴追から一夜明けた13日には、松井秀喜氏に並ぶ日本人最多のメジャー通算175号本塁打を放った。開幕から40打席ノーアーチと自己ワーストを更新したが、待望の今季1号を放ってから調子を取り戻した。

 

「やっぱり、僕らの想像を超えてくる選手ですよね。ほとんどの人から『無理に決まっている』と言われながら二刀流を成功させたように、今まで未踏の地を開拓してきた経歴が『何があっても乗り越えられる』という自信の裏付けになったのだと思います。ドジャースのキャンプ取材に行った今春も、大谷は威風堂々としていました」

 

大谷の尊敬するダルビッシュ有と親交が深く、かつてベストナイン3回、盗塁王1回に輝いた野球評論家の高木豊氏(65)はそう語る。

 

「ずっと一緒にいた通訳が急に消える直前に、真美子さんと結婚した。やっぱり、大谷は運が強いなと思います。これほどの選手でも、今の状況で家で一人ぼっちになると孤独を感じるし、余計なことも考えてしまうかもしれない。妻の存在は本当に大きいですよ」

 

4月9日の試合後には「ここ数週間いろいろあったので、隣に誰かいるかどうかはだいぶ違うと思うし、そういう意味ではいてくれてよかったなと思うことはありました」と新妻・真美子さんへの感謝を述べていた。

 

「言葉の通じない海外での生活ですから、お互いに孤独を感じると思うんですよね。2人で支え合っていく必要があるし、これから絆はより深くなるでしょう」(高木氏)

 

本誌が「2人の出会いの場」を目撃――真美子さんは大谷と水原氏に挨拶を

大谷と真美子さんの出会いは、約3年前の2021年だった。雑誌『Number』(3月28日号)のインタビューでは《彼女が『最初に会った』と言うときのことを僕は認識していなかったんです。彼女曰く『すれ違いざまに挨拶してくれた』と言うんですけど、僕はそれがどこなのか思い出せない。練習施設の中の廊下だって……》と答えている。実は、本誌は同年11月、その瞬間を目撃していた。

 

「場所は東京・豊洲の『アシックス スポーツコンプレックス 東京ベイ』(今年3月15日閉館)です。館内のトレーニングルームやプールなどが標高2千~4千メートル相当の高地と同じ低酸素に保たれていた施設です。

 

当時、大谷選手はアシックスと契約しており、シーズンオフにはよく訪れていたようです。その日真美子さんは一足先にその場を後にして、帰り際には大谷選手に同行していた水原氏にも挨拶をしていました」(取材記者)

 

メジャーリーグで挑戦を続ける大谷、バスケの日本代表候補にも選出された真美子さんはやがて引かれ合う。時差のあるアメリカと日本で同じ時間に、同じ配信作品を見るなどの交際を続けた。花巻東高校時代の同級生で同じ野球部だった山根大幸さんはこんな話を聞いていた。

 

「高校のころ、好きなタイプについて『明るくて、優しい女性がいい』と言っていました。もともと、翔平はバスケ漫画の『スラムダンク』が好きなんですよ。高校野球を引退した後、体育館に3年生が集まって、よくバスケットをしていました。翔平はうまかったですね」

 

大谷は前出の『Number』で、妻について《僕と一緒で、何が欲しいというタイプじゃなくて、何でもいいけど実用的に使えるものがいいかな、というタイプ》と話しており、誕生日にはサイズの合うシューズをプレゼントしたという。

 

真美子さんの富士通レッドウェーブ時代の知人が証言する。

 

「彼女は物欲のあまりない女性です。洋服は着心地のよさや汚れにくさを重視していましたし、バッグもシンプルでたくさんものの入るタイプを愛用していました。

 

大谷選手と同じく、機能性を大切にしている。引退後も私服はパンツスタイルが多くて、ナイキやユニクロなど動きやすくシンプルな格好をしていました。ピンクのかわいらしいスカートやピンヒールなどは履かないタイプですね」

 

一方で、こんな“倹約家の本音”を漏らしたこともあったという。

 

「チームメートに『ブランドのイメージモデルになりたいなぁ。そうすれば、洋服をもらえるから、困らないでしょう?』とポロッとこぼしていたときもありました。逆に言えば、外見には高いお金をかけたくないのかもしれません」

 

2人が出会った’21年の9月、水原容疑者は違法賭博に手を染め始めていた。日本ハム時代の同僚で、通算1千4安打を放った巧打の内野手だった大引啓次氏(39)も今回の事件に衝撃を受けた。

 

「一平は学生時代にバスケをしていて、大のNBAファンだった。私は彼と同い年で、バスケ好きだったので、よく話をするようになりました。『歴代ナンバーワンのポイントガードはクリス・ポールでしょ』『いや、もっとうまい選手はいるよ』などと熱く語り合いました。

 

一平は基本的に引っ込み思案の性格ですけど、周りに乗せられると空気を読んで、いじられキャラになって場を和ませていた。だから、信じられないですし、本当に残念で仕方ありません」

 

大引氏は当時の彼の性格をこう見ていた。

 

「結果が出ないと、外国人選手はイライラしますよね。そのとき、一平は怒りを全て吐き出させていました。『こうしたほうがいいんじゃない?』のような余計なことは言わずに、受け止めていた。選手にとって、すごく居心地のいい通訳なんだなと思っていたのですが……」

 

新庄剛志(現・日本ハム監督)の師匠としても知られ、’14年から2年間、日本ハムの打撃コーチを務めた柏原純一氏(71)も落胆する。

 

「一平は当時、メジャーでも実績のあるメンドーサ投手の通訳をしており、仲がよかった。その輪に翔平が入って、2人は親交を深めていったようです。一平は常に外国人選手に寄り添っていましたよ。彼のおかげで、異国の地で不安を取り除いて活躍できた選手もいたと思います。銀行詐欺の報道を聞いて、あぜんとするばかりです」

 

■日本ハム時代の同僚が一平本人に直撃「通訳より僕がしんどかったことは…」

 

’18年、大谷はエンゼルスに入団する際、水原容疑者を通訳に選んだ。本人の努力や徹底的な自己管理が二刀流として成功した一番の要因だが、彼のサポートも大きかった。『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2024』(廣済堂出版)の編著者である友成那智氏はこう語る。

 

「エンゼルス時代、水原氏は通訳のみならず、キャッチボールの相手や運転手を務めたうえに、練習のデータも計測していたと聞きます。通常業務の範囲を超えて、貢献していた。大谷が’21年にMVPを獲得した直後、エンゼルスは水原氏に『最優秀通訳賞』を贈ったほどですからね」

 

大引氏は’20年2月にコーチ留学をした際、キャンプ地に赴いて2人と再会していた。

 

「2人がキャッチボールを終えた後、『一平ちゃん、うまくなったね』と私から話しかけたら、『いやぁ、通訳より何より、これがいちばんしんどい』と憂鬱な表情を浮かべていました。世界一の選手の練習パートナーを務めるプレッシャーを感じながら努力しているんだなと思いました。へたなりに頑張る姿が翔平もうれしかったはずなのに……」

 

水原容疑者は一時期、大谷の誰にも明かさない本音を聞いていた。

 

《翔平は基本、野球の自己評価がめちゃくちゃ低いんですよ。ほかの選手のことは『すごいなあ』とか言ってすごく褒めるんですけど、僕が『いや、自分の方が全然すごいじゃん』みたいに言っても『いやいやいや』と。謙虚とかそういうレベルじゃない。なんなんですかね(笑)》(’22年11月11日配信/NHK WEB特集)

 

この特集内で、大谷は野球に身をささげる覚悟を示していた。

 

《1日のできることをなるべく野球に割いて、野球の中で獲得できるものを多くしたいな、と。

 

(中略)無駄な時間というか、リラックスする時間すらもちゃんと管理したいし、野球に専念するところはしたいし、寝る時間もちゃんと管理したい。もし6歳ぐらいからそういう考えでできていたら、もっといい選手になれたと思います》(前掲・NHK WEB特集)

 

だが、いちずに邁進する純粋な心は身近な相棒に利用されていた。

 

水原容疑者はイチローやダルビッシュなどの活躍で日本が世界一に輝いた’09年のWBC決勝をドジャー・スタジアムで生観戦し、野球の仕事への憧れを強くした。そんな彼にとって、自らも通訳として参加した昨年3月のWBC優勝は絶頂の瞬間だっただろう。

 

大谷は投手として2勝1セーブ、打者として23打数10安打で打率4割3分5厘、1本塁打、8打点の成績を残し、MVPを獲得した。花巻東高の同級生である山根さんはLINEで大谷とやり取りした。

 

「初戦のあとに『ナイスピッチ!』と送ったら『Thank you、Thank you!』、優勝した日に『世界一おめでとう!』と打ったら『ありがとう!』と返信がありました。昔からWBC制覇を目標にしていたし、翔平も本当にうれしかったんでしょうね」

 

それから1カ月後、真美子さんは現役を引退。会見では「決めた理由ですか? う~ん……本当にいろいろあるんですけれど……難しいな」と言葉を濁していた。

 

「彼女はお菓子作りが得意でケーキはスポンジから作っていました。将来の夢は『お母さん』と言っていたと聞いて、納得しました。だから、料理にも熱心だったんだなって。退団時は『フードマイスターの資格を取って、食べて元気になれる料理を考案したい』と話していました」(前出・実業団時代の知人)  前出の『Number』で、大谷は《作ってもらって美味しかった料理は何でしょう》と聞かれ、《彼女としては作るのが難しい料理を言ってほしいんでしょうけど……へへへ。僕はカレーがやっぱり美味しかったですね》と話している。

 

(取材:シリーズ人間班/文:岡野誠)

 

「女性自身」2024年5月7日・5月14日合併号

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大谷翔平 韓国で水原氏の裏切りが発覚…真美子さんの言動が韓国人の心を打った理由《人生激変の3年間証言集・後編》

岡野誠氏/情報:女性自身)

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誰も予想できなかったことがたった2カ月で次々と起こった。2月29日(日本時間、以下同)、大谷翔平選手(29)が結婚を発表。韓国遠征に旅立つ3月15日にツーショットを公開し、お相手は元バスケットボール選手の田中真美子さん(27)だと判明した。

 

祝福の嵐から一転、開幕戦後に盟友・水原一平通訳(39)の違法賭博への関与が発覚。4月12日、水原容疑者は銀行詐欺の容疑で米連邦地検から訴追され、大谷の被害額は総額1千600万ドル(約24億5千万円)を超えた。

 

真美子さんとの出会い、結婚。一平の裏切り……大谷翔平の人生を激変させた3年間をたどる。

 

’23年シーズン、大谷はWBCの疲れを感じさせず、投打に獅子奮迅の活躍を見せ、8月10日にはメジャー史上初の「10勝、40本塁打」を達成。二刀流の元祖ともいえるベーブ・ルースを超える偉大な記録を打ち立てた。

 

しかし、24日に右肘内側側副靱帯を損傷。9月5日には右脇腹を痛め、以降は戦列から離れた。20日には右肘の手術を受けた。

 

それでも、メジャーで日本人初のホームラン王を獲得し、メジャー史上初となる2度目の“満票MVP”にも輝いた。リモートでの受賞会見では愛犬デコピンを抱え、大きな話題にもなった。

 

「真美子さんも小学生のころから『ガク』という犬を飼っていた。3年前、その愛犬が死んだときは憔悴していました。2人には犬好きという共通点もあったんです。

 

大谷さんと出会ってから、遠距離恋愛で愛を育んでいましたが、さすがにケガのときは急いでLAへ駆けつけていました」(前出・実業団時代の知人)

 

だが、同じこの時期、賭博の胴元は水原容疑者にこんなメッセージを送っていた。

 

《やあ、イッピー。今、金曜日の2時だよ。なぜ電話に出ないんだ? 今、ニューポート・ビーチにいるんだけど、大谷が犬の散歩をしているよ。彼に話しかけて、どうしたら君と連絡が取れるか聞いてみようか。すぐに電話をくれ》

 

取り立てに追われる水原容疑者は大谷の銀行口座から大金を盗み続けながら、素知らぬ顔で世界一の選手と毎日接していたのだ。

 

「『基本的に人に相談することがあまりない』という大谷選手も、彼だけには絶大な信頼を寄せていた。

 

初めてMVPを獲得した3年前、帰国後の会見で『手術や苦難を乗り越えてきたときに、お世話になった人はいますか』と聞かれ、『お世話になったのはやっぱり一平さんじゃないですか』と答えていたくらいですから」(前出・友成氏)

 

■真美子さんの知人は「大谷選手は今回、彼女の笑顔と明るさに救われた」と証言

 

昨年12月10日、大谷はドジャースと総額7億ドル(約1千15億円)の10年契約を結んだ。そして、今年2月29日に結婚を発表。3月15日、開幕戦のため韓国に移動する際、航空機の前で女性と並ぶ写真を撮影し、公式インスタグラムにアップ。妻が真美子さんだと明らかになった。大谷は韓国でも人気が高く、どんな女性が妻になるのかと関心が高かったという。

 

韓国の経済紙『マネートゥデイ』のキム・ソヨン記者が語る。

 

「フィアンセが派手な容姿ではなく、予想外でした。韓国では『芸能人ではなく、質素な人を選んだ大谷選手はさすがだ』という意見が大半を占めています。ソウル入りした後のドジャースの夕食会で、真美子夫人がリーズナブルなカバンを持っていましたよね。これが大きな話題となりました。

 

誠実に節約する姿、夫を大切にする気持ちが韓国人の心を打ったようです。大谷選手はとてもよい方と結婚をされたと感じています」

 

開幕戦での球場内での行動も真美子さんの株を上げた。

 

「奥さまはVIP席ではなく、一般席に座りましたよね。その素朴さ、謙虚さが韓国人にもとても好感を与えました。彼女からは特権意識を感じない。SNSで踊っている動画も評判を呼び、『性格もよさそう』と言われています。

 

大谷選手もインスタグラムに韓国語で『試合を見に来てください』と投稿しており、ファンを大事にしてくれていると感じました。今回の遠征で、韓国のファンはさらに増えたと思います」(キム記者)

 

大フィーバーのさなか、水原容疑者が違法賭博の常習者で、大谷の銀行口座から送金していたと明らかになった。その夜、彼は大谷に多額の借金を「肩代わりした」と口裏を合わせるように懇願。もちろん大谷は断固として拒否。これが、2人での最後の会話となったのだ。

 

“世界一の裏切り”が判明した翌日、真美子さんは高尺スカイドームの観客席でドジャース選手の夫人たちと笑顔で交流を図っていた。ソウルをたつ空港でも、一切暗い表情を見せなかった。

 

「彼女は責任感が強く、思いやりのある人なので、大谷選手のために何ができるかを常に考えているはずです。おとなしそうに見えますが、明るい性格です。友達の中ではムードメーカー的な存在でした。

 

カラオケに行くとタンバリンをたたいて場を盛り上げたり、アップテンポの歌を歌ったりして、輪の中心にいました。今回、気持ちが落ち込んでしまう大事件に巻き込まれたなかで、大谷選手は彼女の笑顔と明るさに救われたかもしれません」(前出・実業団時代の知人)

 

真美子さんの謙虚さは内面からも読み取れる。選手時代、入団後3年間の思いをこう吐露していた。

 

《周りはもうみんなすごい選手ばかりで、言われたことをできることが当たり前のレベルなんです。(中略)どんどんどんどん自信もなくなってくるし、今まで得意だったシュートも入らなくなるし……。すべてがマイナスに向いて、シュート1本外すだけでも気持ちが下がっていました》(’23年2月28日配信/富士通レッドウェーブ 公式note)

 

このような苦渋を味わったからこそ、同じスポーツ選手として、奈落に落ちた大谷の気持ちにも寄り添えたのだろう。高木氏が語る。

 

「真美子さんはスポーツにおけるメンタルの重要性は十分理解しているし、大谷の苦しさを紛らわすために話を聞いてあげられる。それが、今回の切り替えの早さにつながった面もあるでしょう」

 

全ては水原容疑者の過ちで、大谷は完全な被害者だった。不調に陥っても、大谷は「メンタルを言い訳にしたくない。そこも含めて技術。ここまで結果が出なかったのは実力」と水原容疑者のせいにはしなかった。高木氏はほかの点でも、大谷に感心している。

 

「ドジャース入団後のパフォーマンスや振る舞いを見ると、いち早く“自分のチーム”にしてますよね。メジャーでホームラン王やMVPを取っているとはいえ、移籍1年目ですし、元をたどれば日本から来た“ヨソモノ”でもある。

 

その壁を越えて、何年もチームにいるような雰囲気にした。遠慮せずに、プレーしやすい環境を自分でつくった。同時に、自分が世界一に導くという責任感も漂っている」

 

■《一番楽しい瞬間は、苦しいことを乗り越えてきた仲間と一緒に喜ぶ瞬間》

 

大学、社会人でも野球を続けたが、プロになれなかった前出の山根さんは大谷に夢を託している。

 

「翔平は自分の好きなことを職業にできた一握りの人間です。僕も野球を続けたかったから本当にうらやましい。翔平は本当に野球が好きだし、野球のできる幸せを根底に感じているから、すぐに前を向いて活躍できたのだと思います。

 

これからも翔平らしく、何があっても周りを気にせず、ずっとプレーし続けてほしい。それが、僕ら同級生の夢でもあります」

 

くしくも、水原容疑者は3年前、大谷についてこう話していた。

 

《翔平はどんなマイナスの状況でも常に何かしらのプラスを生み出すというか、探している人なので。調子が悪い時もありましたが、それも本当に何か精神修行のような》(’21年12月24日配信/NHK WEB特集)

 

今後も真美子さんはデコピンと笑顔で大谷の試合を観戦し続けるだろう。そんな彼女のアスリートとしての愛あふれる人生訓がある。

 

《バスケットをやっていて一番楽しい瞬間は、苦しいことを乗り越えてきた仲間と一緒に試合をして、いいプレーができたときに一緒に喜ぶ瞬間》

 

“世界一の応援隊長”真美子さんの支えで想像を絶する苦難を乗り越えた大谷は、どんな重圧にも打ち勝てるはずだ。

 

「『チームのために頑張る』というスピリットを持つ2人は、家庭でもお互いを支え合うでしょう。本当に素敵な女性を選んだ大谷はメジャー史上6人目の40本塁打、40盗塁も十分可能です」(高木氏)

 

人生、何が起こるかわからない。しかし、谷が深ければ深いほど山頂は高くなる。巨額詐欺事件をも力に変えた大谷翔平がドジャースを世界一に導いた─今秋そう言える日が来るに違いない。

 

(取材:シリーズ人間班/文:岡野誠)

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 ■ NOTE

 

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