2024年4月28日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年4月27日

日本時間:2024年4月28日(日曜日)

4時07分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対トロント・ブルージェイズ

@ロジャーズ・センター

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間4月28日、ドジャースは敵地ロジャース・センターでのブルージェイズ3連戦の2戦目を迎え、4回までに4点をリードして4対2で先行逃げ切り。連勝を6に伸ばし、最終戦を残して3連戦の勝ち越しを決めるとともに、貯金を今季最多の7とした。ドジャース先発のタイラー・グラスノーが7回途中2安打1失点の好投で5勝目(1敗)を挙げ、4番手のエバン・フィリップスは8セーブ目を記録。ブルージェイズ先発の菊池雄星は6回91球、被安打9、奪三振3、与四球0、失点4で2敗目(2勝、防御率2.94)を喫した。

 

 ドジャースは初回先頭のムーキー・ベッツが三塁打を放ち、一死後にフレディ・フリーマンの犠飛で先制。2回表にはクリス・テイラーと大谷翔平のタイムリーで2点を追加した。4回表は先頭のミゲル・ロハスの二塁打から一死3塁とし、ベッツがタイムリーを放って4点リードに。7回裏にデービス・シュナイダーのタイムリー二塁打で1点を返され、9回裏にはクローザーのフィリップスが自身のエラーからピンチを招いてキャバン・ビジオのタイムリーで2点差に迫られたが、4対2で逃げ切った。

 

 ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場。花巻東高校の先輩である菊池と通算9度目の対戦となった。初回の第1打席はセカンドゴロに倒れたが、2回表の第2打席は打球速度119.2マイル(約191.8キロ)という痛烈なタイムリー。自己記録を更新し、今季メジャー最速の安打となった。4回表の第3打席は空振り三振に倒れ、菊池との対戦は3打数1安打1打点。7回表の第4打席は二塁ビジオのエラーで出塁し、9回表の第5打席はセンターフライだった。5打数1安打1打点で2試合連続安打とし、今季の打撃成績は打率.347、出塁率.410、OPS1.071となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

5打数 1安打 1打点 1三振

通算打率・347

OPS1・071

 

◆第1打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)1回無死3塁

(投手)菊池雄星 左

※注目の第1打席は初回無死三塁の先制機で打席を迎えた。菊池は直球を続けて2球で追い込むと、最後はカウント1―2から5球目の97マイル(約156.1キロ)直球を108.7マイル(約174.9キロ)の鋭い打球ではじき返したが、二塁手の好守もあって二ゴロ。三塁打で出塁したベッツは還れなかった。それでも続くフレディ・フリーマンが左翼へ犠飛を打ち上げ、1点を先制した。

 

◆第2打席:

(結果)ライト前ヒット

(状況)2回2死1、3塁

(投手)菊池雄星 左

※第2打席も再び好機でめぐってきた。2―0とリードを広げた2回2死一、三塁。大谷はカウント2―2から5球目の98マイル(約157.7)キロを完璧に捉えると、119.2マイル(約191.8キロ)の強烈な打球で一、二塁間を破り、チーム3点目となる打点を挙げた。打球速度119.2マイルは自己最速、ドジャース史上でも最速で、今季のここまでのMLB全体でも最速となった。

 

 

 

◆第3打席:

(結果)空振り三振

(状況)4回1死1塁

(投手)菊池雄星 左

※カウント2-2からカーブで空振り三振に喫した。

 

◆第4打席:

(結果)セカンドゴロ・失策出塁

(状況)7回1死走者なし

(投手)ゲネシス・カブレラ左

 

◆第5打席:

(結果)レフトフライ

(状況)9回1死1塁

(投手)ジョーダン・ロマノ右

※2年連続30セーブ以上のロマノ相手に打球を左翼フェンス際まで飛ばしたが、特大の左飛に倒れ、惜しくも2戦連発とはならなかった。Rソックスのフェンウェイパーク、カブスのリグレーフィールド、メッツのシティフィールドなら本塁打という当たりだった。

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 大谷が試合前に、ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督と談笑をした。試合開始3時間ほど前に、右翼の位置で約15分間のキャッチボールを行った。そこからベンチに引き揚げる際、敵の主砲であるゲレーロJrとハグをして挨拶した。さらに、ベンチ前ではシュナイダー監督と対面。会話が弾んだようで同監督が爆笑する一幕もあり、和やかな談笑を終えると、2人は最後に握手をかわした。シュナイダー監督のコメント。

 

「お手柔らかに。ブーイングは申し訳ない、と返して、お互いに笑いあったんだ。(もうわだかまりはない?)もともとわだかまりはないよ。彼は何も悪いことはしていない。ただうちのチームを選ばなかったというだけ。(帽子については)どこかに持っていてくれるといい。まだ(キャリアが)何年も残っているから、ここにくることもあるかもしれない(笑)」

 

 

◯ ロサンゼルス・タイムズ紙のジャック・ハリス記者が27日(日本時間28日)、Xに「ホッケー殿堂博物館に来ました」とトロントの名所を訪問した様子を投稿。その博物館の入り口に、大谷の写真が怪しげな人物の写真とともに貼られていた。同記者は「ショウヘイ・オオタニはブルージェイズと契約しなかったときからここには入ることができませんと、レジの人が教えてくれました」と説明している。

 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

(試合前)

「今日は投手戦になるだろう。菊池はいいスタートを切っている。強力な球を持っていて、速球、カーブ、スライダーは伸びがある。左右両方の打者にとって厳しい。グラス(グラスノー)もいい球を投げている。ファンとしても、コーチ(監督)としても、この試合を楽しみにしている。いい打撃をしなければならない」

 

「大谷と菊池が同じ花巻東高校の出身であることについて)彼らが同じ高校の出身というのは知らなかった。野球は世界から注目を浴びるスポーツとなり、日本では間違いなくそうだ。それは素晴らしいことだ。日本が今、何時なのかはわからないが、今日のゲームに多くの視線が集まるのだろう。野球、日本、翔平、菊池にとってエキサイティング。楽しみだよ」

 

(試合後)

「(自己最速打球をマークした大谷について)驚くほど素晴らしい。打球が強いのはもちろんだが、ストライクゾーンの見極めが出来ているのがとても印象的だ。低めのボールを見送って、彼が打つべきゾーンのボールを強く打ち返した。ストライクゾーンが安定していれば、これからもいい事が起こる」

 

「(ダグアウトで大谷としばらく真剣な話をしているように見えたが)深刻な話ではない。いい打撃ができている、と再確認しただけだ。おまえのアプローチはいい、正しいプレーをしていると伝えた。彼は実際にそれをしている」

 

ジョン・シュナイダー監督:

「(菊地について)相手は本当に優れた打撃のチーム。今日の彼はストライクゾーンに投げすぎた感はあったが、球は素晴らしかった。直球もカーブも素晴らしかった。スライダーが少しストライクゾーンに行きすぎたときもあったが、球の質という点ではずばぬけて良かった」

 

「(大谷の適時打について)脱帽だ。とにかく相手打線が素晴らしかった。相手をほめたい。いいスイングをしていた」

 

菊池雄星投手:

――ドジャース打線はどうだった?

「レベルの高い打線でした。特にスライダーが決めきれずにうまく打たれたかなという感じでした」

 

――大谷との対戦については。

「ランナーを置いてる打席が多かったので難しい対戦になりましたけど、毎年、毎年レベルアップしています。長打だけ打たれないようにという配球をしていまし。打たれましたし、僕も一番速い球を投げたのかな。今年。彼もものすごく速い打球を打ちました。悪くないボールだったと思いますけど、彼が上回ったと思います」

 

――5連敗で攻撃陣が低調だ。

「タイミングだと思います。みんないいときも悪い時も経験しているベテランが多いですから、1年間戦っていればそういう時期もあるし、今がたまたまそういうタイミング。連敗中で先制点を与えたくなかった。そこが僕自身できなくて流れをつかみきれなかった」

 

――今日はどのように捉えている?

「ボール自体は凄く良かったですし、いいバトルができたなと思いますけど、2死からの失点とか。打たれたのは仕方ないけど、もう少し配球含めて厳しく投げられればよかった、工夫できたと思います」

 

――追い込んでからの変化球を決めきれなかった?

「そうですね。特にスライダーが立ち上がりに甘く入ってピンチを広げたのがあったので、もう少しカーブをうまく使えたらと思った。今日は終始スライダーを決めきれなかった」

 

――タレント揃いだが、つないでくる嫌らしいドジャース打線の印象について?

「勝つチームだなという感じですね。走塁の意識だったり、バントも含めて本当に抜け目のない打線。点の取り方、勝ち方を知っているなと感じました。そういう意味でプラスを考えるとすれば6回までいけたというところは。4点取られましたけど、6回まで試合をなんとかつくれたことはプラスに捉えたいと思います」

 

――日本のファンも対決を楽しみにしていた

「僕も楽しみでした。1年に1回しか対戦できないですからね、今年は。インコースの悪くないボールで思い切り腕を振ったボールでしたけど、投げた瞬間にライト前にいって打球が見えなかった。本当にパワーも確実性も含め、毎年どんどんレベルアップする。僕もそれに負けないように、対戦を楽しみにしながらどうやったら抑えられるんだろうと日々考えながらやっている」

 

――自己最速のボールを大谷の自己最速で打ち返された

「持っていかれたなという感じでしたね」

 

――大谷との力の勝負は楽しかった。

「ストレートで押せている感じはあったので、もう1球、2ストライク追い込んでから押し込みたかったですけど、彼のスイングスピード、技術も含めて上にいかれた」

 

――大谷を空振り三振にとったカーブは素晴らしかった

「ストレート、スライダーが多かったですから、カーブを使いながら最後なんとか三振取れてひとまずは。ランナーいる場面の対戦だったので、すごい神経を使いながらになりましたけど。左右問わずナンバー1のバッターに確実になっていると思う。そういうバッターと対戦できるのは僕自身のレベルアップにつながるし、本当に幸せなことだなと思います」

 

――今年は大谷が投球はしないで、打撃に専念。対峙した投手にしかわからない凄みは?

「二刀流をしていること自体が考えられないですね。僕はピッチャーしかやってないですけど、投げ終わった後は3日間くらい体が使い物にならないので(笑)彼はその数時間後にバッターで立っていたわけじゃないですか、去年まで。その中であの数字を残したのは考えられない。僕とか筋肉痛で2、3日動けないですけど。そういう中で二刀流で数字を残しているのは考えられないし、今年はバッターに専念したらそりゃ疲労度合いも違うでしょうから、とんでもない数字がシーズン後に残っているんじゃないかな。違うリーグで良かったなと思います」

 

――6回まで試合をつくった。

「やはりこういう打線ですから、そう簡単にはきれいにゼロを並べるのはなかなか難しいと思う。今日みたいに点を取られてもビッグイニングをつくらずに5回、6回、7回と投げていくというのが1年間通してできていくと僕自身もいい数字が最後ついていくと思う。負けはしましたけど、6回までいけたこととか、先に点を取られた後も粘り強く試合をつくれたことは次につながるかなと思います」

 

――2番に大谷がいることでどういうふうに対戦しようと思った?

「長いのだけランナーためて打たれないようにということは打線の中で常に考えていましたね。アプローチの仕方もそれぞれバッターで違いますし、なかなか大振りしてこない。コンパクトに打ってくるし、甘く入ったら思い切り引っ張ると、1~9番までそういう打線ですから、完璧に抑えようとせずにランナーためての長打だけは防ごうという意識はいつも以上に持ちながらやっていましたね」

 

――大谷と去年まで何度も対戦しているが、データを研究した上で違った部分は?

「基本的には泳がせるしかないですね。真っすぐを意識させて、体を開かせてカーブ、スライダーで泳いでもらうのが唯一とは言わないですけど、そういう状態をどうつくるかがカギなんですけどね。最後の打席だけは真っすぐ、スライダーを意識させて最後カーブっていうのが最後の打席だけはできたと思います。1個甘くなるとカチャーンといかれるのでそこが難しいですね」

 

――98マイル台は3年ぶりだったが、アドレナリンが出た?

彼が出させてくれたんじゃないですかね」

 

――捕手が何回かいく場面があったが。

「いいボールがきてるから安心してと言っていました」

 

――集中した状態でアドレナリンが出ていた?

「コントロールした中で思い切りゾーンの中で思い切り勝負するというのが今日もできた。その上で打たれることもあるし、うまくいくこともある。結果は4失点ですけど、切り替えやすいかなと思います。勝負した結果ですから」

 

――去年より安定した結果が出ているように見えるが、変えた部分は?

「いろいろ変えているので。ここで言うと長くなるんで(笑い)ぜひ、僕の練習もたまには見に来てください(笑い)」

 

――同じ岩手で、同じ学校の選手が重なるのは?

「幸せなことですよ。岩手のみんなが久しぶりにテレビに映るよと連絡くれたので、有名になれるチャンスかなと思って今日は頑張ろうと言っていました(笑)」

 

――大谷との対戦が決まった時は?

「よっしゃとは思わないですよ(笑)凄いバッターですから。でも、やるとなったらヨシという感じじゃないですか。やった、対戦できるとは思わないですよ(笑)」

 

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 「大変だ、さあ来るぞ」 空港で大谷翔平を出待ち…“12.9事件”をカメラマンが自虐

(情報:Full-Count)

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 ドジャース・大谷翔平投手はエンゼルスからFAとなっていた昨年オフに「ブルージェイズ移籍間近」と報じられたた。結局は誤報だったが、一部米メディアによって、ブルージェイズと契約するためにトロントへ向かったと報じられたことで、日米を巻き込んだ大騒動となった。26日(日本時間27日)から、ブルージェイズとの今季初カードとなる3連戦を迎えたことで、地元紙で改めて当時の“背景”が報じられた。

 

 ドジャースの地元有力紙「ロサンゼルス・タイムズ」は「『彼はブルージェイズの一員になる』。ショウへイ・オオタニがトロントへ飛ばなかった日の裏側」の見出しでコラムを掲載した。去年の12月8日(同9日)、トロントをベースにしているフリーランスの写真家で、ブルージェイズファンのカルロス・オソリオ氏がSNSをスクロールしていた際に大谷に関するメディアの憶測を見つけ、空港へ向かった時の本人の話として紹介した。

 

 カリフォルニア州のオレンジ・カウンティからトロントへ向かうプライベートジェットを追跡する投稿から始まった。オンラインの探偵たちは、それが大谷をブルージェイズとの面談または契約に連れていく飛行機に違いないと推測。その後、「MLBネットワーク」の1人のレポーターが複数の匿名ソースからの情報として「ショウへイ・オオタニは今日トロントに向かっている」と断言した。

 

 オソリオ氏は好奇心が掻き立てられ、さらに自身のブルージェイズ・ファンの血が騒ぎ、行動に出た。ロイター社の編集者たちにメールを送り、予想される大谷の到着を写真に納めるためにトロントのピアソン空港に車で行く話を持ち掛けた。彼は複数のカメラマンとサインを求める人たちとともに、その飛行機が現地午後4時23分に着陸するのを見届けた。大谷がまもなく目の前に現れると期待していた。

 

「大変だ、さあ来るぞ。僕らが最初にオオタニの写真を撮ることができる」

 

飛行機から降りてきたのはTVパーソナリティのハージャベック氏だった

 オソリオ氏は駐機場に向かいながら気持ちを昂らせた。しかし階段を下りてきたのはカナダの実業家でTVパーソナリティのロバート・ハージャベック氏だった。飛行機は同氏のプライベート・ジェットで、当然ながら大谷は乗っていなかった。

 

 オソリオ氏は飛行機に大谷が乗っていないことが分かった時、悔しさを募らせた。さらに最近、オソリオ氏が当時の心境を振り返ったという。「ロバート(・ハージャベック氏)がこの飛行機から降りて車に乗るのを見るのにちょうど間に合った。それだけだったんです」と“空振り”に終わったことを自嘲気味に語った。

 

「その飛行機をしっかり調べていたら、もしかしたら、ハージャベックとその飛行機だと分かったかもしれません」。オソリオ氏は笑い、「ですが、あまりに気持ちが盛り上がっていて。(大谷が)乗っているに違いない。彼が来る。彼がブルージェイズの一員になる。僕らはワールドシリーズを制覇する、という感じでね」と続けた。

 

 これが昨年12月に起こったトロント移籍騒動の“背景”だという。

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◆ 私たち3人は決して「アンチ大谷」ではない 疑問をぶつけることでファンに応える米番記者の報道姿勢

志村朋哉氏/情報:AERA.net)

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 新天地ロサンゼルスで好調なデビューを果たした大谷翔平だが、そのお祭りムードをかき消してしまうほどのインパクトがあったのが、銀行詐欺の疑いで訴追された水原一平・元通訳の違法賭博疑惑である。『米番記者が見た大谷翔平』(朝日新書)で米メディアの番記者による対談の進行役を務めた日本人ジャーナリストが、締切の都合上、書籍内に盛り込むことができなかった「水原事件」について、共著者たちの本音を聞いた。

 

 「とにかく驚いた」

 

 スポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』でエンゼルスとドジャースを担当するサム・ブラム記者は、水原一平・元通訳の解雇を知った時のことをそう振り返る。

 

 「(野球賭博で永久追放された)ピート・ローズ以来のすごいスキャンダルだし、翔平と一平は常に一緒にいたから、『窃盗』なんて言葉を目にしてショックだったよ。一平は、本当に誠実な人だと見られていて、ファンにも愛されていた」

 

 ブラムは、21年から大谷と水原の関係を近くで見続けていた。『米番記者が見た大谷翔平』の対談では、大谷にとって水原は「親友」や「兄弟」のような関係で、「切っても切れない絆のようなものがあると感じる」と述べた。記者に対して気さくでフレンドリーな水原だが、大谷の情報を漏らすようなことは決してなかった。

 

 そんな水原が被告人として出廷した姿を見て、ブラムは現実とは思えなかったという。

 

 「数年間、一平とは毎日のように球場で会っていた。彼は感情を顔に出さないタイプ。あまり笑顔も見せない。だから、法廷でも普段と変わらない表情だったけど、足枷を着けられている姿はショックだった。気の毒に思う部分もある。お金を盗んだのはもちろんよくないけど、闇の道にはまっていってしまった。悪い人ではないと思うんだ。でも、とんでもなく間違った選択をしてしまった。更生するのに必要な助けが得られるといいんだけど」

 

■ 「大人になるべき」

 

 ドジャースの地元紙ロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストを務めるディラン・ヘルナンデス。母が日本人であるため流暢な日本語を話す。米メディアで日本語が分かる数少ないジャーナリストだ。ドジャースが高校卒業時の大谷を獲得しようと目論んでいた時から、日本にも出向いて大谷を取材している。

 

 長年の取材で浮かび上がってきたのは、「野球以外のことに興味がない野球少年」という大谷の人間像だったが、本当にそんな「キャプテン翼」のような純粋な人間が存在するのかと疑問に感じていたという。水原のスキャンダルが発覚した時には、「今回のことで本当の大谷の人間性がわかる」と述べていた。

 

 連邦当局の捜査によると、大谷は自身の銀行口座から1600万ドル(約24.5億円)以上がなくなっていることに気付いていなかった。

 

 「大谷は自分の銀行口座に一度も携帯からログインしていなかった。本当にお金はどうでもいいんだろうね」

 

「大谷が水原を親友だと思っていたとしたら、非常にかわいそう」

 

と、ヘルナンデス。

 

 ヘルナンデスもブラムも、水原を介してしか大谷とコミュニケーションをとっていなかったネズ・バレロ代理人の対応に問題があったと口を揃える。同時に、ヘルナンデスは「(大谷自身も)グラウンドで少年でいるには、その外で大人になる必要がある」と警鐘を鳴らす。

 

 「他の人に全部丸投げしてたわけでしょ。野球以外のことは面倒臭いという感じで...。 月に1回くらい口座をチェックするとか、たまに書類に目を通すくらいのことはやった方がいいと思う。アメリカは競争社会で、何をしてでも上に上がろうとする人が多い。とにかく犠牲者になるな、と僕も(自分の子供を)しつけている」

 

■アンチ大谷?

 

 大谷だけでなく水原も自らの携帯電話を提出するなど協力的だったことが、連邦当局の捜査を容易にした。

 

 「一平がかなりのデジタルな証拠を残していたから、捜査は非常に早かった」

 

とブラム。そして続ける。

 

 「有罪が確定するまでは、一平は罪を犯していないと見るべきだけど、現時点では、単純明快な事件だと思う。『賭けていたのは翔平で、一平は罪をかぶっただけ』なんていう陰謀説がいまだに出回っているけど、それはあり得ない」

 

 罪状認否すら済んでいない時点で、水原が大谷やドジャースなどに謝罪したのも、アメリカでは異例である。罪を認めることになり、検察と司法取引を行う上でも、自らを不利な立場に追い込むからだ。

 

 「アメリカ人だったら、この時点では黙っているのが当たり前。不利になるから」とヘルナンデス。

 

 ブラムもヘルナンデスも、スキャンダル発覚当初から、「大谷が賭け事を行っていたとは思わない」「大谷の説明も合点がいく」と語っていた。大谷が野球以外のことに興味がない、と取材を通して感じていたからだ。

 

 それでも、「水原がどうやって銀行口座から送金したのか」「なぜ誰も気付かなかったのか」など疑問は残っていたため、証拠が出てくるまでは断言はできないという姿勢だった。「アンチ大谷」なのでは、と思われるかもしれないが、それが真実を追求するジャーナリストのとるべき態度なのである。証拠がないうちから大谷を信じるというのは、ファンとして肩入れしているに過ぎない。

 

■ 記者はファンではない

 

 今回のスキャンダルの報道をめぐって、ヘルナンデスやブラムは熱心な大谷ファンからSNS上で非難を浴びた。『米番記者が見た大谷翔平』の発売も相まって、「大谷バッシングで話題を作って金儲けをしようとしている」とさえ批判された。しかし2人のこれまでの働きぶりを知る者として、普段通りの記者としての仕事を果たしただけだと断言できる。

 

 米時間3月25日、大谷はスキャンダルについて声明を発表したが、記者からの質問は受け付けなかった。その3日後、ヘルナンデスはロッカールームで大谷に、「水原がどうやって口座にアクセスしたのか」「なぜ誰も気付かなかったのか」を直接、日本語で尋ねた。

 

 大谷は捜査が進行中なので話せないと答えたが、ネット上では「試合前にそんなことを聞くなんて不謹慎」だとヘルナンデスを非難する声が上がった。

 

 しかし、メジャーリーグが試合前後にメディアにクラブハウスを開放するように定めているのは、そうしたファンが疑問に思っていることを記者が選手にぶつけられるようにするためなのだ。

 

 「ファンは何を知りたいのか、読者は何が知りたいのかを考えて質問しに行く」

 

とヘルナンデス。

 

 「日本の報道陣も同じことを考えていたはず。でも日本のメディアだと、そういうふうに取材するとファンが怒るから遠慮している。メディアは国民を代表して質問する役だと僕は思っている」

 

 リーグとしても、メディアに話題を提供することで、知名度や人気の向上が見込める。

 

 大谷について言えば、熱心なファンが彼をメディアの批判から守ろうとすることすら、彼の能力を過小評価していると言えるのかもしれない。

 

 「ファンが大谷を庇いたいという気持ちが全くわからない」

 

とヘルナンデス。

 

 「大谷はそこまでメンタルが弱くない。でなければ、こんなに成功していないよ。みんな普通の人の常識を通して大谷を見ている。でも、大谷は本当にすごい。WBCで、みんな期待している場面でも、楽々、活躍できた。普通の人じゃないよ、全然。僕たちも6年間大谷の周りにいたけど、彼の考え方はまだ全然わからない。でも人並みじゃないというのは分かるよね。タイガー・ウッズとかマイケルジョーダンとかバリーボンズ並み」

 

 私たち3人は決して「アンチ大谷」などではない。かといって、大谷の応援団でもない(個人的には、ジャーナリストとして後者だと思われている方がショックである)。プロのジャーナリストとして、読者の知りたいこと、役立つ情報を探り出して、ありのままに伝えているだけだ。

 

 「米番記者が見た大谷翔平」でも、いかにして大谷が史上最高と呼ばれる選手たちと肩を並べるような存在となったのかや、日米の報道や文化の違いなどを冷静に分析している。最終章では、ここでも言及した記者としての姿勢についても深く語り合った。

 

 名門球団ドジャースの一員としてポストシーズンで活躍し、ワールドシリーズ制覇を成し遂げれば、大谷はアメリカ社会で更なる高みに登ることになる。その偉業の凄さや社会的意義を理解する上で、拙著が役立つことを願っている。(志村朋哉)

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◆ 大谷翔平191kmホームランの本当の凄さを上原浩治が解説!「打ち取っても恐怖が残る打者」

上原浩治氏/情報:スポナビ)

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 メジャーリーグ、ドジャースの「打者・大谷翔平」が春先から好調をキープしている。

 

 本塁打では松井秀喜さんが放った日本人最多記録(175本)を更新し、26日のブルージェイス戦では、3試合ぶりの7号ソロをマーク。直近5試合で3発とハイペースな本塁打だけでなく、高打率もキープする。

 

 最近の報道では、大谷選手の打球速度を取り上げるケースが増えてきた。報道をみると、23日のナショナルズ戦で打った6号ソロの打球速度は118・7マイル(約191キロ)。本塁打では自己最速の打球だったことが紹介されている。

 

 打球速度は、スイングスピードが速く、しっかりとボールに力を伝えることができていることの表れだろう。バットの軌道が遠回りせず、コンパクトにボールに力を伝えるスイングということにもなる。また、スイングスピードが速いということは、振り始めてからボールに当たるまでの時間も短くなり、それだけボールの見極めを長くできることにつながっているはずだ。

 

 投手の視点で言えば、打球速度の数字よりも、こうしたスイングで振ってくるという意味で脅威に感じる。

 

 また、高打率が物語るように、一発を放つパワーに加え、ミート力も高い。

 

 あくまで私自身の経験だが、一発もあって、打率も高い選手との対戦では、一発よりも安打につながる率の高さを警戒することが多かった。今の大谷選手のような打率だと、3打席で一本、4打席だと2本の安打を覚悟しなければならなくなる。大谷選手の場合には、塁に出たら盗塁もあるため、走者を気にしながら次の打者と勝負するというのは、投手からすれば、さらなる負担を強いられることになるだろう。

 

 しかも、大谷選手は、初球からでも、ストライクゾーンのボールであれば、積極的に振ってくる。これも投手心理からすると苦しい。

 

 ボール球を打ってくれればいいが、大谷選手のスタンスは、あくまで「好球必打」で攻撃的にバットを振ってきている印象だ。

 

 投手はカウントを優位に持って行くためにも、初球はストライクを取りたい。際どいコースで見逃しが取れれば理想的だが、初球から狙われている場合には、ストライクゾーンをかすめるボールは打ってくるケースを想定しないといけない。すると、投げる側は、安易にカウントを取りに行けず、初球から「勝負球」を投じなければいけなくなる。結果的に、打ち損じてくれたときには、淡泊な攻撃に見えるかもしれないが、投手の立場で言えば、「ストライクゾーンなら初球からでも」というタイプの打者との対戦は、打ち取っても決して楽な心理ではない。

 

 大谷選手が高打率をキープしている要因には、自身の高い打撃技術に加え、ナ・リーグ西地区の首位を走るメジャー屈指の強豪、ドジャースへの移籍が効果をもたらしていることも忘れてはならない。

 

 前後を打つ選手が好打者だと、大谷選手に走者がいるケースで打席が回ってくることが増える。また、敬遠や際どいボールで勝負しながら最終的に大谷選手を歩かせたとしても、走者をためて後ろに控える中軸に回すことになり、傷口を広げてしまうリスクが伴う。ドジャース打線の2番打者に組み込まれている大谷選手と対戦する場合、投手もある程度は一発を覚悟してでも勝負にいったほうがベターだという計算が働いてもおかしくはない。

 

 もちろん、理屈ではそうでも、結果を残すのは決して簡単なことではない。相手投手が勝負してくるボールを打って高打率をキープし、一発も量産していくことができているというのは、大谷選手にそれだけの力があってこそだと言える。

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 ■ NOTE