2024年4月25日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年4月24日

日本時間:2024年4月25日(木曜日)

7時45分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ワシントン・ナショナルズ

@ナショナル・パーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間4月25日、ドジャースは敵地ナショナルズ・パークでのナショナルズ3連戦の2戦目を迎え、打線が今季最多の20安打、同最多タイの11得点と爆発し、11対2で快勝。連勝を3に伸ばすとともに、明日の最終戦を残して3連戦の勝ち越しを決めた。ドジャース先発のランドン・ナックは6回3安打2失点と役割を果たし、記念すべきメジャー初勝利(1敗)をマーク。ナショナルズ先発のジェイク・アービンは5回途中12安打6得点と打ち込まれ、2敗目(1勝)を喫した。

 ドジャースは初回にウィル・スミスのタイムリーで先制し、2回表にはムーキー・ベッツの2点タイムリーで3対0とリード。2回裏にニック・センゼルの2号ソロなどで2点を返されたが、3回表にマックス・マンシー、5回表にギャビン・ラックスがそれぞれタイムリーを放ち、6対2とリードを広げた。8回表にアンディ・パヘスの2号ソロと大谷翔平のタイムリー二塁打で2点を追加すると、9回表には大谷のタイムリー二塁打とフレディ・フリーマンの2点タイムリーでダメ押し。20安打11得点の猛攻でナショナルズを圧倒した。

 ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場し、タイムリー2本を含む6打数3安打2打点の活躍。3安打はいずれも二塁打で、開幕26試合で14本(シーズン87本ペース)という量産ぶりを見せている。マルチ安打は今季12度目、1試合3安打は今季4度目となり、打率は.371、OPSは1.128まで上昇。連続試合安打も9まで伸び、驚異的な打棒でドジャース打線を牽引している。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

6打数 3安打 2打点 2得点 1三振

通算打率・371

OPS1・128

 

◆第1打席:

(結果)左中間2塁打

(状況)1回1死走者なし

(投手)ジェイク・アービン右

※1ストライクからの2球目、ほぼ真ん中の96・7マイル(約155・6キロ)のフォーシームを振り切った。打球速度115・6マイル(約186キロ)の光速ライナーで右中間を真っ二つ。4番スミスの中前適時打で先制のホームを踏んだ。

 

 

◆第2打席:

(結果)ファーストゴロ・併殺

(状況)2回1死1塁

(投手)ジェイク・アービン右

※カットボールを引っ張った打球速度96・3マイル(約154・9キロ)の強烈なゴロが一塁手の正面に飛び、一ゴロ併殺打。

 

◆第3打席:

(結果)センターフライ

(状況)4回1死1塁

(投手)ジェイク・アービン右

※カットボールをはじき返すも中飛。打球速度は99・4マイル(約159・9キロ)だった。

 

◆第4打席:

(結果)空振り三振

(状況)6回1死走者なし

(投手)デレク・ロー右

 

◆第5打席:

(結果)右中間2塁打

(状況)8回1死2塁

(投手)タナー・レイニー右

※カウント1―2から投じた4球目、外角の93・9マイル(約151キロ)のフォーシームを右中間へ適時二塁打。打球速度は105・7マイル(約170・1キロ)だった。

 

 

◆第6打席:
(結果)左中間2塁打
(状況)9回2死1、3塁
(投手)マット・バーンズ
※5番手の右腕M・バーンズを捉えた。前夜、打球速度118・7マイル(約191キロ)、飛距離450フィート(約137メートル)の衝撃弾を浴びた反省からフォーシーム2球続けたカウント1―1からの3球目、外角高めの92・8マイル(約149・3キロ)のフォーシームをバットで逆方向に押し込んだ。打球速度101・9マイル(約164キロ)で左中間最深部へ。客席から大歓声が挙がったが、フェンスを直撃すると一転、大きなタメ息に変わった。飛距離386フィート(約118メートル)は8回にぺヘスが左翼席に放った2号の飛距離375フィート(約114・3メートル)を上回っていた。

 

 

【コメント】

試合前

――前日の本塁打はバットに当たった瞬間、自己最速の打球速度になる感触はあったか。
「そうですね。感覚的にも、人生の中でもトップクラスではないかなと」

――右肘の手術明けのシーズンで結果を出している。
「投球プログラムのリハビリはまだ続いていますけど、基本的には打撃はもう終わってはいるので、フィールドでどれくらい強度を高く保って、毎試合出られるかにフォーカスしています」

 

――今季は打者に専念している。結果を残しやすいと感じているか。
「時間的に余裕があるのはもちろんそうなので、体調管理しやすいというのはその通りかなと思いますけど。あんまり考える時間が長すぎても良くないのかなと思うので。基本的には練習時間だったり、データを見る時間だったりは一緒にしています。例年通り」

――打者に専念していることで一番多く学んだことは。
「前回(2019年)は膝の方がその期間は不安が多かったので、そこが前回とは一番違う。肘以外は万全状態ではあるので、そこが前回とは違うところかなと思います」

――プレーしていない時間の管理がうまくなっていると思うか。
「新しいチーム、新しい打線の中にに入っているので、あまり自分の状態がどうのこうのと気にしている余裕が今のところないのかなと思うので。まあ本当に勉強の途中かなと」

――26日(同27日)からトロントでブルージェイズ戦。オフ期間中に契約するという噂も流れた。
「行くか行かないかに関しては、僕もびっくりしたので。そこはまあ正直ファンの人と同じような心境でその時はいましたけど、実際に話もさせてもらいましたし。本当に素晴らしい球団だなというのは、個人的にもそうですけど、感じてはいたので、ファンの人も含めて。街も好きですし。なので行くこと自体はすごく楽しみだし、そこでプレーすることも楽しみにしてますね」

――アナハイムからトロントへ向かう飛行機が追われていた。
「いや、ニュースでなんか、言われているなと言うか。僕は乗ってないんだけどな、みたいなのは感じてましたけど」

――ブルージェイズ以外にどの球団と話をしたのか。
「ここ(この場)でこう、この球団やこの球団とは言えはしないので。もちろん向こうが言う分には、僕の方からは構わないですけど。シーズン中で向こうもチームとして動いてますし、(自分が発言することで)迷惑がかかるかもわからないですし、ここでは具体的なチーム名は控えたいなと」

――ロバーツ監督はストライクゾーンについて調整していると話していた。
「監督とも話をして、打撃コーチもそうですけど、毎日話しますし、基本的に打撃コーチは動作的な問題がメインですけど。監督とはアプローチの面を話して。自分も納得する部分もありますし。早い段階でそういう風に対策を打つことで、今後もプレーしやすくなるという話はしていたので。それはお互い、よりゲームを作る上で、お互い深め合っていければと」

――ロバーツ監督はクラブハウスで存在感があると話していた。通訳も変わり、ここ数週間で何か変化はあるか。
「どうなんですかね。新しい通訳が素晴らしいんじゃないですか」

――親友だった人物に裏切られたということについて感じることは。
「まだ調査自体は続いているので、まだ全部が終わったというわけではもちろんないですし。失ったというか、それ以上にチームメートもチームもそうですけど、サポートしてくれる人たちがたくさんいるので、むしろそっちの方がありがたいかなというか、そういう風に感じている場面の方が多いかなと」

――花巻東高の後輩、佐々木麟太郎がスタンフォード大に進学した。どれくらい助言はあったか。
「助言はしないですね。基本的にもう自分が選んだところがベストな選択だと思いますし。僕もそうやって色々決めてきているので。本人が納得して選んだということが一番だと思うので、助言というのはないですかね」

――球団の日本生まれの選手ではロバーツ監督の7本塁打が最多。記録を抜くのは近いですか。
「できればね、今日できれば一番いいですけどベストを尽くしたいと思います」

――前日の6号本塁打について。どのあたりが人生一番だったか。
「打感というか、もちろん当たるポイントもそうですし、タイミング的にドンピシャだったかなと思います」

――昨年の打撃が良かったと話していた。戻ったのか、ひとつ上の段階にいったのか。
「段階は進んでいるとは思います。上にいけばいくほど伸び率みたいなものは当然下がってくると思いますけど、細部の細かい部分というのはちょっとずつ上がってくるものだと思うので、もちろん変える部分もありますけど、継続して取り組んで伸ばしていく部分もあるので、そこはどっちもかなと思います」

――4月にシカゴでクリケットバットで練習。新しいアプローチは。
「練習の一環ではあるので、過度にやり過ぎることで逆に良くなかったりバランスの問題なので、バランスの調整。こういう打てない要因がここにあるんだったら、この練習みたいな。そのバランスの感覚が大事かなと思います」

――今回の遠征に夫人は来ているか。
「来ていないですね」

――結婚したことで遠征先に連れて外に出たり違う時間を過ごしたいという思いは。
「休みがそこまでまだ、基本的に休みの移動が結構多いので、自宅で丸1日休みみたいなのが今のところあまりないので、一緒に散歩行ったりそういうのはしますけど、まだそこまで丸1日どこかに行くみたいなのはない」

――寂しさはないか。
「遠征ですか? 寂しいと言わせたいです」

――渡邊雄太選手が日本復帰を選択した。
「決断自体はもちろんリスペクトしていますし、本人が納得して選んだ道というのが一番いい選択だと思うので、そこはもちろんリスペクトしていますし、日本人の選手として米国で、同級生でしたし、そこは僕も刺激にしていたので、寂しい気持ちと、改めて頑張ってほしいなという気持ちもあります」

――メッセージのやり取りは。
「まだですね。共通の方からいろいろ話は聞いていたので、落ち着いた段階でしたいなとは思っていました」

 

 

【NEWS情報】

 

◯ 寝具メーカーの西川は、大谷が愛用するマットレス「nishikawa『エアー』マットレス」発売15周年を記念して、日本全国の“夢”見る子供たちへ向けた大谷との共同プロジェクト「大きな夢を見よう! プロジェクト」を25日から開始。5月5日こどもの日にちなんで全国の夢を見る子供たちに向け「エアー」マットレス約2500本を無償プレゼントする。

 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「彼(の打球)は別格。バットから放たれたボールの勢いが全く違う」

 

ムーキー・ベッツ内野手:

「(パワフルな打球を飛ばす大谷の隣で影響されずにプレーすることの難しさについて)そんなに難しいことではないよ。彼ができることの90%は俺にはできないことだから、俺はそれ(=大谷がやっていることと同じこと)をやろうとも思わない。俺はムーキーであって、自分ができる最高のムーキー・ベッツでいることが、自分にできることのすべてだ。6インチ(約15センチ)背を伸ばして、50パウンド(約20キロ)体重を増やすことはできないよ」

「大谷に関して何か他に言える言葉がもうない。だがチームにはいい時もあれば悪い時もあるから、みんなが毎日プレーしに来ることが重要だ。その日がどうなるかわからないのだから」

 

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 ■ 球界情報

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マイク・トラウト外野手:

◯ エンゼルスのトラウトが、両リーグ単独トップとなる2試合連発の10号ソロを放った。6回、左翼席へ打った瞬間にそれと分かる一発をたたき込んだ。飛距離は127・1メートル。打球速度184・3キロの豪快な本塁打だった。トラウトは前日、12年ぶりとなる先頭打者弾となる9号ソロを放った。オズナ(ブレーブス)と並んで両リーグ最多タイとしたが、この本塁打で両リーグ10号一番乗りを果たした。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 「か」のあるなしに感じた大谷翔平の公私に渡る充実ぶり まさかの“おのろけ発言”も「寂しいと言わせたいです」

中村晃大氏/情報:スポーツ報知)

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 ドジャース・大谷翔平投手(29)が24日(日本時間25日)、敵地・ナショナルズ戦に「2番・DH」で先発出場。メジャー初の1試合3二塁打で猛打賞をマークした。26試合でメジャートップの14二塁打は、年間87二塁打ペース。「走打二刀流」の今季は、MLB記録を93年ぶりに塗り替える可能性も出てきた。試合前の取材では、敵地の遠征に真美子夫人(27)が帯同していないことを明かした上で、まさかの“おのろけ発言”も。充実の心の内を中村晃大記者が「見た」。

 

 何度聞き返しても、大谷がのろけていた。今回の遠征に真美子夫人(27)は帯同していないと本人が明かした。初見参のワシントンDCからトロント、アリゾナと続く敵地9連戦。今年の2月29日に結婚を発表した“新婚さん”に「遠征中、寂しさはないですか?」と質問が飛んだ。「寂しいと言わせたいです(笑い)」。予想外の返答だった。

 

 最初は「(自分に)寂しいと言わせたいですか(笑い)」に聞こえた。結婚会見時にも、公表した理由を「皆さんがうるさいので(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに報道陣をイジったように、こちらの意図をくんだスマートな“返し”も大谷の魅力。この日もその軽妙なやり取りに、笑いが起きた。しかし、間違いがあっては失礼と、録音を聞き直した。すると「か」の文字がない。「(真美子夫人に)寂しいと言わせたいです(笑い)」だった。1文字で全く意味が変わってくる。大谷らしいと言えばそうなのかもしれないが、取材の中でこんな冗談が飛び出すということは、公私ともに充実しているということなのだろう。

 

 「基本的に休み(試合がない日)の移動がうち(ドジャース)は多いので、自宅で丸一日休みは今のところあまりない。一緒に散歩に行ったりとかはしますけど、そこまで丸一日どこかに行くみたいなことはまだないかなと思います」と普段の生活の一部も明かしてくれた。元通訳の水原一平容疑者がいなくなった今、「いてくれて良かった」と感謝する愛妻と愛犬デコピンの存在が、ロサンゼルスから大谷を支えている。(中村 晃大)

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◆ 大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「ボス」になれないことだ

石野シャハラン氏/情報:Newsweek)

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<日本人は欧米などと違い、人を雇って命令するのが苦手。だが今後、家事や介護の外注が増えることを考えれば、大谷選手が元通訳にだまされた件は他人事ではない>

 

米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳による違法賭博と窃盗容疑のニュースを知り、元通訳が大谷選手の銀行口座に自由にアクセスできていたことには驚いた。元通訳の工作もあったにせよ、それだけ大谷が彼に絶大な信頼を寄せていたということでもある。同時に、これを大谷の純真無垢さの表れと考える日本人が多いことにも驚く。アメリカでも同情的な声はあるが、大谷は間が抜けていた、というのが大方の本音ではないだろうか。

 

中規模企業くらいの金額を稼ぎ出す彼は、野球選手であると同時に自身の資産(金銭だけでなく、心身やパブリックイメージ、プライバシーなど)を守るため代理人や会計士、通訳を雇う、いわばチームのボスであるはずだ。それが通訳に手玉に取られていたとなると、同情されたとしてもボスとしては失格。少なくとも日本以外ではそうだ。

 

欧米や私の出身国イランは日本以上に序列に厳しい。ボスとメンバー、客とサービス提供者はフレンドリーに見えても、その後ろに強固な序列があり、越えてはいけない一線がある。ボスはメンバーと友達にならないし、客は神ではないが友達でもない。厳しくも良いボスでないと尊敬されない。

 

日本人はボスになることが苦手だ。会社の中では上司として役割の範囲内で部下を管理できても、組織を一歩出ると、個人や家庭として他人を雇うことがうまくない。日本は戦後長らく格差の少ない社会だとされてきたからか、あるいは料理・掃除・子育ては専業主婦の妻がやるという時代が長かったからか、家庭で他人を働かせる光景が一般的ではなく、特別な大金持ちがやる贅沢という認識がいまだにある。

 

■海外では一般家庭でも人を雇うのが普通

 

日本を一歩出ると、アジア諸国や欧米では家の掃除や子どもの世話のために他人を雇うのは普通のことだ。

 

シンガポールでは外国人家事労働者の地位が低く問題になっているが、そのくらい一般家庭に家事労働のアウトソーシングが浸透している。親が人を使うのを見て育った人は、他人を使うことに慣れている。翻って日本で人を使うとなると、雇い主のほうが緊張してしまい、お手伝いさんが来る前に家をきれいにしてしまう、という笑い話を聞く。

 

だが日本に長く住む私には、他人を家に入れることや指示を出し評価することに気後れがするという気持ちも理解できる。高級住宅地の立派な家に住む大物芸能人夫婦でも、家事は妻が一手に引き受け、掃除や料理をSNSで自慢する。日本人メジャーリーガーの伴侶もどうやら同様で、同僚選手の妻から夫の食事は料理人に任せて球場に来て応援しなさいと叱られるという。そのくらい日本人は他人を雇うことが苦手だ。

 

今後は日本も人を雇う場面が増えるのに...

 

良いボスは高圧的では駄目だが、フレンドリーすぎてもいけない。ちょうどいい具合に指示を出し、出来栄えを点検しなければいけない。長嶋茂雄氏の監督時代の迷言「私は選手を信頼しても、信用はしてません」ではないが、信頼しつつ厳しく接するのが日本人には難しいところだろう。

 

しかし今後は日本人も、おそらく他人に金を払って働いてもらうことが増えていく。忙しい共働き家庭は増えているし、政府も外国人の家事代行サービスを広げる方針だ。また少子高齢化社会では身内の手を借りるのにも限界があり、介助士・介護士のサービスはますます必要となる。

 

雇われる側にしても、相手が金持ちでカリスマだから頼まれれば何でもしていいわけではない。日本社会はまだ契約関係を結ぶことに慣れておらず、社会全体として「なあなあ」な空気だからこそハラスメントや無償の労働がはびこる余地があり、逆に雇用主が付け入れられるケースも発生する。今回の事件は図らずも、そんな日本人の弱点への教訓と言えないだろうか。

 

石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

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◆ 大谷翔平「176号」が松井秀喜の苦しみと重なった…「ゴロキング」と揶揄されたメジャー1年目に打ち明けた「本塁打を打てなかった本当の理由」

笹田幸嗣氏/情報:NumberWEB)

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 松井秀喜が持っていた日本人本塁打記録を大谷翔平が塗り替えた。足掛け10年、4970打席で175本塁打を放った松井に対し大谷は7年、2979打席で176号に到達した。量産速度に大谷の凄みが表れている。

 

 過去6年、大谷は単年平均で30本塁打弱を記録してきた。今後の10年契約を全うすれば「Five Hundred Club」=500本塁打達成も夢ではない。二刀流、MVP、本塁打王等々。これまでも数多くの夢を我々に与えてくれたことを考えれば、期待は膨らむばかりだ。

 

 松井と大谷。日本を代表するパワーヒッターのふたりにはさまざまな違いがあると感じるが、絶対的な共通項がある。

 

『チームの勝利のために自分が今、何をすべきか』

 

 野球選手として当たり前のことと思うかもしれないが、実際のところ実践できていない選手も多くいる。頭の中では考えられても結果に繋げられない。だが、日本の誇るこのふたりは完璧だ。その上で松井と大谷は『175』という数字をメジャーでクリアした。そこを称えたい。

 

「ゴロキング」と揶揄されたメジャー1年目

 03年。ヤンキース移籍1年目の松井は日本からやってきた『本塁打王・ゴジラ』として、全米で最も重圧が高く、目の肥えたファン、記者が集まるニューヨークで期待を集めていた。

 

 だが開幕2カ月を経ても成績が上向かない。ツーシーム、シンカーを代表とする「動くボール」全盛の時代に外角へ逃げながら沈んでいく投球にバット軌道があわなかった。

 

 打率は.250ほどに低迷し、本塁打は5月を終わり248打席でわずか3本。全米屈指の名門紙「ニューヨーク・タイムズ」の番記者、タイラー・ケプナー氏は紙面で『Ground Ball King』(ゴロキング)の見出しで揶揄した。ケプナー記者に問うとシビアに答えた。

 

「グランドアウト(内野ゴロ)が想像以上に多いからね」

 

 実のところ、筆者も失望しかけていた。

 

 95年の野茂英雄に始まり、日本を代表し海を渡った選手は、1年目から日本時代同様の成績を残していた。00年、マリナーズの佐々木主浩はクローザーとして37セーブを挙げ新人王に輝き、01年のイチローは打率.350で首位打者、最多安打、盗塁王、ゴールドグラブ賞も受賞しMVPにまで輝いた。日本で年間最多50本塁打を放ち圧倒的なパワーを誇ってきた松井にも同じ姿を期待していたからだ。

 

「なぜホームランを打てない?」筆者に松井は答えた

 5月のニューヨークだったと記憶している。松井に聞いた。

 

「なんで打てないの?  なんでゴロアウトばかりなの?」

 

 失礼だとは思いつつも、本当のことを探るのは記者の基本だ。松井への敬意を欠かさぬよう、ふたりだけになれる時間を狙って聞いた。

 

「見ての通り。これが今の自分の実力だよ」

 

 それでもしつこく聞いた。

 

「なんでホームランを打てないの?」

 

 松井は答えてくれた。

 

「日本でもアメリカでも俺のアプローチは一緒。何も変わってないよ。でも、結果は大きく違っちゃう(笑)。例えば走者が二塁にいたとすれば、最低でも三塁へ進めたいと思い打席には入っている。それは日本もアメリカも同じなんだよ。そこで本塁打になっちゃうのが日本、二ゴロになっちゃうのがメジャー。だから、これが今の俺の実力」

 

手厳しいファン、記者からの評価は変わっていった

 外角への変化球に対しバットヘッドが返り、一塁へ下を向きながら悔しそうに走る松井の姿が頭を駆け巡る中で心に残ったのは技術でなく打席内での考え方、アプローチだった。

 

 野球には2死走者なしなど、本塁打を狙って打席に入っていい場面が多々ある。派手な結果に左右され本塁打を打った、打たないに一喜一憂しがちだが、置かれた状況で『すべきこと』を実践するのが選手に求められる責務だ。“ランナーを進めようと思ったらホームランになっちゃった”。松井には大切なことを教えてもらったと感謝している。

 

 6月以降、徐々にメジャー投手への適応を果たしていった松井はニューヨークの手厳しいファンや記者からの評価も高めていった。そこには進塁打、犠飛など『プロダクティブ・アウト』と呼ばれるチーム打撃を確実に実践する松井の姿があったが、その仕事の持つ意味をファンや記者が理解していたからだ。その中で28歳からメジャーでプレーし、「175」という金字塔を打ち立てたことに敬意を払いたい。

 

松井の言葉と重なった、大谷翔平の「176号」ホームラン

 今季、大谷翔平は結果だけを見れば、本塁打がなかなか出なかったり、得点圏打率が低かったりで苦しんでいるように見える。事実、インサイドアウトのバット軌道が美しい彼にしては珍しい、手首の返ってしまった二ゴロに唇を噛む姿も目にした。だが、これには理由がある。それはドジャースにいるからだ。

 

 ベッツ、大谷、フリーマン、スミスと続くラインナップは敵軍の誰もが「クレイジー」と声を揃える。その中で不動の1番打者ベッツはリーグトップの出塁率.468を誇る。大谷にとっては常にベッツが走者にいる状態で打席を迎え、後ろにはフリーマン、スミスが控える状況だ。この状況で彼が考えることは走者を進める繋ぎの打撃だ。今季、右方向への打球が多い理由はここにあるが、制約のかかった打席が多いとヒッティングポイントが安定しづらくなる。その中で繋ぎを意識した大谷は、両リーグ最多安打を記録している。

 

 自由に打つことを任された場面では大谷らしい打撃も見せている。逆方向へ運んだツインズ戦の3号とパドレス戦の4号はいずれも走者なし。そんな中、松井越えとなった通算176号の5号本塁打は松井の言葉を思い起こさせた。

 

 0対0で迎えた3回1死一塁。走者ラックスを進めるために右方向を意識したアプローチが“ホームランになっちゃった”という打撃となった。まだ29歳の大谷が今後、どのような状況で本塁打を積み重ねていくのか。彼のアプローチを意識しながら、その内容を楽しんでいきたい。

 

(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)

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 ■ NOTE