2024年4月24日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年4月23日

日本時間:2024年4月24日(水曜日)

7時45分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ワシントン・ナショナルズ

@ナショナル・パーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間4月24日、ドジャースは敵地ナショナルズ・パークでのナショナルズ3連戦がスタート。その初戦は2回裏に1点を先制されたものの、4対1で逆転勝利を収め、2連勝で貯金を3とした。ドジャース先発のジェームス・パクストンは5回途中5安打1失点で降板したが、3番手のアレックス・ベシアが今季初勝利(2敗)、5番手のエバン・フィリップスが6セーブ目をマーク。ナショナルズ4番手のハンター・ハービーに今季初黒星(1勝)が記録された。

 

 2回裏一死1・3塁からジェイコブ・ヤングのバント安打で先制されたドジャースは、ナショナルズ先発のパトリック・コービンの前に5回まで無得点。しかし、6回表に2番手のデレック・ローから二死1・2塁のチャンスを作り、キケ・ヘルナンデスのタイムリーで追いつくと、8回表にはジェームス・アウトマンのタイムリー二塁打とミゲル・ロハスのタイムリーで2点を勝ち越した。9回表には大谷翔平の6号ソロが飛び出し、3点リードに。9回裏にクローザーのフィリップスがピンチを招いたものの、ナショナルズの走塁ミスにも助けられ、4対1で3連戦の初戦を制した。

 

 ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場。最初の3打席はセカンドゴロ、センターライナー、センターフライで凡退したが、7回表の第4打席は四球を選んで出塁した。そして9回表の先頭打者として迎えた第5打席で豪快な6号ソロ。飛距離450フィート(=約137.2メートル)を計測し、打球速度118.7マイル(=約191.0キロ)は自身最速かつ球団史上最速かつ今季メジャー最速の一発となった。4打数1安打1打点1四球で今季の打撃成績は打率.364、出塁率.430、OPS1.107となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 1安打 1打点 1得点 1四球 1本塁打(6号)

通算打率・364

OPS1・107

 

◆第1打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)1回1死走者なし

(投手)パトリック・コービン左

※左腕コービンには3打数無安打。初回一死無走者は追い込まれてからファウルで粘ったものの、フルカウントからの9球目、外角低めの82・2マイル(約132・3キロ)のスライダーに泳がされて二ゴロ。バットは折られて粉々になった。

 

◆第2打席:

(結果)センターライナー

(状況)3回1死1塁

(投手)パトリック・コービン左

※0―1の3回一死無走者はカウント2―2からの5球目、内角高めの93・1マイル(約149・8キロ)のシンカーにバット引き抜いて左中間へ運ぶも打球速度101・4マイル(約163・2キロ)の中直。

 

◆第3打席:

(結果)センターフライ

(状況)5回2死2塁

(投手)パトリック・コービン左

※2ボールからの3球目、内角高めの91・4マイル(約147キロ)のフォーシームを高々と打ち上げて中飛。打球速度109・7マイル(約176・5キロ)。

 

◆第4打席:

(結果)四球

(状況)7回2死走者なし

(投手)ジョーダン・ウェームス右

※ストレートの四球。

 

◆第5打席:

(結果)ホームラン

(状況)9回無死走者なし

(投手)マット・バーンズ右

※3―1の9回先頭。6番手の右腕バーンズ。1ボールからの2球目、ほぼ真ん中の85・6マイル(約137・8キロ)のスプリットを豪快にフルスイングすると確信歩き。角度25度のロケット弾は右中間2階席に突き刺さった。打球速度118・7マイル(191・02キロ)は2015年のスタットキャスト導入以降、ドジャースでは最速本塁打で、大谷にとっても自己最速弾。ポストシーズンを含めメジャー12位タイ。超特大弾の飛距離450フィート(約137・2メートル)は今季自己最長で、同メジャー6位タイ。

 

 

 

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【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

 

◯ 大谷は試合前に三塁側ベンチ前で3分ほどサインを行う場面があった。敵地のファンも大喜びだった。20メートルの距離で58球のキャッチボールを終えた後、サインを求めるファンの前で足を止めると、約3分程のサインを行った。

 

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◯ 試合前のクラブハウス。食事を終え、自分のロッカーに戻ってきた大谷に、米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」のリンジー・アドラー記者が声をかけた。「私の犬を見て」。自らの白い愛犬の写真を携帯の画面で見せると、大谷も笑顔を浮かべた。大谷自身も昨年、愛犬「デコピン」を飼ったことを明かしていた。ドジャースタジアムでも度々観戦。米メディアの間でも“犬好き”は話題に。アドラー記者も「つい見せたくなってしまったの」と笑った。 

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

(試合前)

「(打者としての大谷をどう形容するか)危険だ。とても危険な打者。バットを振ればいつでもゲームを変えられる。今ではストライクゾーンにより規律正しくなったことで、より恐ろしい打者になった。危険な打者だ」

 

「(右肘の手術によって打撃も制限されていると思うか?)ノー。そうは思わない。契約した時から、彼は予定よりも順調に来ていると話していた。(制限されるとか)そういった話は出ていない」

「(大谷に得点機での打撃について助言したことについても言及。時期は約1週間前だとし、始めた理由について)走者が得点圏にいるときに彼に対する投球を見て、だ。(ストライクゾーンを)少し広げ過ぎているように見えた。だから彼と話し合いたいと思った」

「(エンゼルス時代の大谷の打撃と、現在の相手投手がやっていると思うことについて)私たちがそうしたのと同じように、高めに投げようとしている。ただ、彼とトラウトにはそれができなくなっていった。得られるものと同時にリスクも大きくなるから」

「(大谷が頼りにしているように思えるコーチや選手は?)みんなといい仕事をしているように思う。誰か1人の選手だとは思わない。打撃コーチ陣は良い関係を築き、信頼を得ている。今では彼の姿をよく目にする。以前は打席に立つ時に姿を見ていたが、今ではより頻繁に姿を見れるのはいいことだ」

 

(試合後)

「彼は少し詰まったと言っていたよ。言うまでもなくショウへイがバーンズから打った大きなホームランだ。カウント1-0でのスプリットか何かだった。あれは本当に見事だった。あれはスタントンかジャッジという感じだった。2階席に届いた、トップスピンのかかったライナー性の当たりだった。あんな打球を打てる選手はほとんどいないよ。あのバットには稲妻が入っているんじゃないか。彼がバットを振ってコンタクトするといつでも、試合の流れを変えることができる」

 

【NEWS情報】

デーブ・ロバーツ監督:

◯ 【教えて!!ロバーツ監督】ロバーツ監督のスポニチ新連載「教えて、ロバーツ監督」。シーズン中、毎月の単独インタビュー実施。
ーー大谷が開幕から全24試合でスタメン出場中。今後休養を取らせる予定は?
「次のビジター9連戦(日本時間24日~5月2日)の期間中にチャンスがあるかもしれない。(直近では)それが唯一の可能性だろう」

ーー全24試合「2番・DH」で起用。2番以外の打順に据える可能性は。
「彼は2番打者として素晴らしい状態にある。このまま2番で起用し続けるつもりだ」

ーー右肘のリハビリが順調なら、今季終盤に外野手としての起用を示唆している。具体的な守備位置は?
「現時点では遠い将来の話。今、彼は投球リハビリのプログラムに参加している。9月になったら、様子を見ることになる。潜在的には間違いなく左翼手としての起用になる。まだまだ先は長い。現時点では、まだそれが起こる可能性は低い」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平のHR球は「地下室に保管する」 ゲットに狂喜乱舞…喜びすぎて「トレンド入り」

川村虎大氏/情報:フルカウント)

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 ドジャース・大谷翔平投手は23日(日本時間24日)、敵地・ナショナルズ戦で2試合連発となる6号ソロを放った。打球速度は自己最速となる118.7マイル(約191キロ)。飛距離は450フィート(約137.2メートル)の豪快弾はナショナルズ・パークの右翼2階席に着弾した。キャッチしたワシントンDC在住のドジャースファン、ビクター・マーティンズさんは「(近くに来ることを)実は想像していたんだよ」と大興奮だった。

 この日、右翼2階席へ見ていたマーティンズさんの元へ爆速で打球が飛んできたのは9回。転がったボールをキャッチすると、思わずドジャースナインが安打を打った時に行う“キケポーズ”を自ら披露した。

 自身がプレーしていたリトルリーグのチーム名がドジャースだったため、小さいころからドジャースファン。この日も、クレイトン・カーショー投手のユニホームを着用して応援に駆け付けた。2階席だったが、かつて同じような席で応援した際に、マックス・マンシー内野手の本塁打が近くに着弾したことがあったという。

 21日(同22日)の本拠地・メッツ戦で放った日本選手最多となる176号をキャッチしたファンはオークションにかけることを検討していた。「もちろん知っていたよ。素晴らしい偉業だね」と大絶賛。「彼らには(オークションにかける)理由があると思うよ」と理解を示した。一方で、6号球はもちろん、自らの手元に置いておく予定。「すでにガラスケースを注文し、ほかのドジャースグッズとともに地下室に保管するよ」と話した。

“キケポーズ”を披露して喜ぶ姿はテレビに抜かれ、放映された。マーティンズさんは照れ笑い。「その瞬間、たくさんのメールやメッセージを受け取りましたし、どうやらドジャースのインスタグラムでトレンド入りしているみたいです」と笑った。

川村虎大 / Kodai Kawamura

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◆ 「誰よりも自分の体を知っている」ドジャース・大谷翔平が“フライボール革命の第一人者”打撃コーチと取り組む新フォームとは?

柳原直之氏/情報:NumberWEB)

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 今季、大谷翔平はドジャースでどうバッティングを改善しようとしているのか。コーチの証言などから改革の方向性を探った。【初出:発売中のNumber1094・1095号[打撃改革2024]「バットを立てた無駄のないスイング」より】

 自己ワーストの更新を止める開幕から9試合目、41打席目での一発だった。4月3日のジャイアンツ戦。大谷翔平は一塁を回る手前で右拳をグッと握り締めた。ドジャースの一員として本拠地で初めて本塁打を放ち、5万2746人の大観衆は総立ちで地鳴りのような歓声が沸き起こった。

「自分の中ではかなり長い間、打っていないなという感覚だった。まず1本出て安心しているのが率直なところ」

 移動日を挟み、続く5日のカブス戦。投打含めて初のリグリー・フィールドでも快音を残し、2試合連続本塁打。本塁打を放った直後の打席でも特大の中飛を放ち、デーブ・ロバーツ監督も「明らかに良いスイング。翔平は本調子に近づいている」と太鼓判を押した。

「変わらないけど微調整」無駄のないスイング
 昨年9月に右肘の手術を受けた影響で打者に専念する米7年目。キャンプ序盤から目についたのが打撃フォームの変化だった。昨季の構えは、左肘を後方に高く上げ右肩が本塁方向に傾いていた。だが、今季は背筋を伸ばし肩はほぼ水平。2月21日の2度目のライブBP(実戦形式の打撃練習)後に「変わらないけど微調整はする」と語ったように、自然な姿勢から無駄のないスイングが可能になった。2月24日には近距離で軽い専用ボールを発射するマシン相手の打撃練習で、内角球へのバットのさばき方を入念に確認。右肘の状態に関しても「感覚も良かった」と言った。

 キャンプでは開幕への目安に50打席を設定し、渡韓前の実戦は雨天ノーゲームも含め25打席、ライブBPで9打席、韓国でのエキシビションゲーム2試合で5打席に立ち、計39打席。最新マシンを使った室内打撃練習場で11打席分の不足を補った。ロバート・バンスコヨック打撃コーチによれば、大谷の室内打撃練習場でのルーティンは(1)置いた球を打つ「置きティー」、(2)前方から投げてもらうティー打撃、(3)投手の映像が流れ投球を再現する打撃マシン「トラジェクトアーク」での練習の3つ。同コーチは「自分自身の(スイングの)スピードや動きを数値で管理し、思い通りに動けているか確認している」と説明した。

 バンスコヨック打撃コーチは2017年頃からMLBを席巻した「フライボール革命」の第一人者。メジャー経験もマイナー経験もない異色の経歴だ。打撃コンサルタントのクレイグ・ウォーレンブロック氏とともに、当時の極端な内野シフトに対抗する手段として、本塁打狙いのアッパースイングを理想とする打撃理論でJ・D・マルティネス(現メッツ)ら多くの強打者と接してきた。同コーチは、タブレット端末などで相手の研究はもちろん、自身のデータ収集にも励む大谷を「誰よりも自分の体のことを知っている」と評している。

 シーズン開幕後、バンスコヨック打撃コーチは室内で打撃練習する選手を担当することが多く、屋外フリー打撃はもう1人のアーロン・ベーツ打撃コーチがタブレット端末で撮影しながら見守ることが多い。

(「NumberPREMIER Ex」柳原直之(スポーツニッポン) = 文)

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◆ 大谷翔平の進化を徹底分析 外角低めのボール球を振らずに高打率を生み出した

丹羽政善氏/情報:サンスポ)

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【シアトル(米ワシントン州)22日(日本時間23日)=丹羽政善通信員】米大リーグで大谷翔平投手(29)が所属するドジャースは試合がなく、23日(同24日)のナショナルズ戦から9連戦に臨む。21日(同22日)に今季5号を放ち、日本選手最多を更新するメジャー通算176号を放った大谷は、ともに両リーグトップの打率.368、35安打を誇る。データから「外角低めのボールゾーンを振らなくなった」ことが、好調の要因として浮かび上がった。

「16・3%」→「0・5%」。この数字こそ、大谷がMLBで全体トップの35安打、打率・368をマークしている秘訣だ。

数字は「外角低めのボールゾーンのスイング率」を示す。左投手に対しては昨季、外角低めのボール球を149球投じられ、29スイング(16・3%)。今季は24試合消化時点とデータは少ないものの、今季は同19球でわずか1スイング(0・5%)だ。

「どんなシチュエーションでもボール(球)は振らない。ストライクを振る」。大谷の打席での心構えだ。

相手バッテリーは昨季本塁打王の長打力を警戒し、自然と外角低め、さらにボールゾーンへの配球が多くなる。特に左投手と対戦した際は、スライダーなど大谷から離れていく変化球を多投される傾向にある。

大谷は相手の配球を分析することでボール球を見極め、スイングする回数を極端に減らしている。それがハイアベレージにつながっている要因だ。孤軍奮闘せざるを得なかったエンゼルス時代と違い、自身の後を打つ3番フリーマンや4番スミスにつなぐ意識も大きいだろう。日本勢ではイチロー以来となる首位打者と最多安打の獲得、さらに三冠王も夢ではない。

ただ今季は得点圏で打率・136(22打数3安打)、5打点とチャンスを生かし切れていない。もともと積極的にスイングするタイプで「(好機の打席で)単純に(スイングする)ゾーンが広がっている」と自己分析。だからこそ「特に変えないようにするのが、変えたこと。全打席、どんなシチュエーションでもしっかり、自分のバッティングを変えずにやっていければ」と課題を挙げている。

23日(同24日)からはワシントンDC(対ナショナルズ)、カナダ・トロント(対ブルージェイズ)、アリゾナ州(対ダイヤモンドバックス)と敵地での9連戦が始まる。大谷は高打率を保ちながら本塁打も増やし、ナ・リーグ西地区での首位固めに貢献する。

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◆ 大谷翔平、松井秀喜とのメジャー成績比較で「走れる広角アーチスト」がクッキリ…177号以降はジャッジら“2020年代最強打者争い”頂点へ

広尾晃氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平がナ・リーグ安打数でトップに立つともに、松井秀喜を超えるメジャー通算176本塁打を放った。一方で得点圏打率について取りざたされるなど、話題になったスタッツから序盤戦の大谷を読み解いていく。(全2回/第2回も配信中)

 4月21日のメッツ戦で、大谷翔平はMLB通算176本塁打を記録。松井秀喜を抜いて、NPB出身の日本人選手最多となった。さらに23日のナショナルズ戦でも2試合連続の本塁打を打ち通算177本となった。今季6号の打球速度118.7mph(191km/h)はキャリアハイ、飛距離136.8mという特大の一発だった。

〈NPB出身の日本人選手、MLBでの本塁打数5傑〉※カッコ内は本塁打率。現地時間4月23日現在


 大谷翔平 177本塁打/741試合2582打数(14.59)
 松井秀喜 175本塁打/1236試合4442打数(25.38)
 イチロー 117本塁打/2653試合9934打数(84.91)
 城島健司 48本塁打/462試合1609打数(33.52)
 井口資仁 44本塁打/493試合1841打数(41.84)

 松井秀喜が10年1236試合かけて打った175本を、大谷翔平は7年740試合で抜いた。

 巨人で10年間主軸打者として活躍した松井秀喜は、29歳になる年に周囲の慰留を振り切る形でMLBにFA移籍した。これに対して大谷翔平は入団時から「MLB挑戦」が前提になっていて5年でMLBにポスティング移籍。24歳になる年だった。5歳の年齢差があったことは留意すべきだろう。

松井と大谷、両方から本塁打を打たれた3人とは


 松井秀喜が引退したのは2012年。大谷はこの年のドラフトで日本ハムに入団し、2018年からMLBに挑戦した。

 2人のMLBでのキャリアは重なっていないし、6年のブランクがあったが、松井秀喜、大谷翔平両方から本塁打を打たれた投手は3人いることが分かった。

★ジェームズ・シールズ
 松井(ヤンキース)2006年9月14日デビルレイズ戦2回右翼ソロ
 松井(ヤンキース)2007年7月22日デビルレイズ戦2回右翼ソロ
 松井(ヤンキース)2008年4月6日レイズ戦4回右翼2ラン
 松井(アスレチックス)2011年7月27日レイズ戦4回右翼3ラン
 大谷(エンゼルス) 2018年7月25日ホワイトソックス戦5回右中間2ラン

★エドウィン・ジャクソン
 松井(ヤンキース)2008年4月15日レイズ戦2回右中間ソロ
 大谷(エンゼルス)2019年6月17日ブルージェイズ戦2回左翼3ラン

★ジャスティン・バーランダー
 松井(エンゼルス)2010年4月22日タイガース戦5回左中間ソロ
 大谷(エンゼルス)2018年8月25日アストロズ戦4回左中間2ラン

 3人とも実績十分の先発投手だ。

 ジェームズ・シールズは、レイズ(デビルレイズ)、ロイヤルズ、パドレス、ホワイトソックスで2006年から18年まで通算145勝139敗、オールスター出場1回。松井はシールズのデビュー年に1本目を打ち、大谷はシールズの最終年に本塁打を打っている。エドウィン・ジャクソンは2003年から19年までドジャースを皮切りに15回も移籍を繰り返して通算107勝133敗、オールスター出場1回。

 そしてジャスティン・バーランダーは2005年タイガースに入団後、アストロズ、メッツ、アストロズと移籍し40歳の今年も現役で通算258勝141敗。サイヤング賞3回、オールスター出場9回。殿堂入り確実の大投手だ。大谷は初対戦では手も足も出ず三振したが、この年の8月にさっそく1発を打っている。

 

同じ左打ちの強打者でも、数字を見るとタイプが違う


 松井秀喜も大谷翔平も左打ちの強打者だが、タイプはかなり違う。

〈安打に占める長打の比率〉
 ・松井1253安打
 二塁打249本(19.9%)三塁打12本(0.9%)本塁打175本(14.0%)
 ・大谷717安打
 二塁打140本(19.5%)三塁打30本(4.2%)本塁打177本(24.7%)

 筆者は本塁打より二塁打が多い打者は「中距離打者」だと思っているが、NPBでは二塁打より本塁打が多かった(二塁打245本17.6%、本塁打332本23.9%)松井は、MLBでは二塁打の方が多くなった。反対に大谷はNPB時代、二塁打の方が本塁打より多かった(二塁打70本23.6%、本塁打48本16.2%)のが、MLBに来て逆転した。

 多くの日本人打者と同様、松井はMLBに来て「小型化」したが、大谷は「大型化」したのだ。数ある日本人打者の中で、これは大谷翔平だけだ。

 三塁打は大谷の方がはるかに多い。足に関しては、松井がMLB10年で13盗塁9盗塁死、大谷はMLB7年目で91盗塁33盗塁死と、大谷の方が圧倒的に勝っている。大谷は「走れるスラッガー」なのだ。

対左投手、本塁打の打球方向も対照的
〈右左投手別の成績〉
 ・松井
 右投手/打率.281 OPS.831、左投手/打率.284 OPS.802
 ・大谷
 右投手/打率.289 OPS.974、左投手/打率.255 OPS.830

 松井秀喜は、やや長打は少ないものの左投手もそれほど苦にせず、対応していたが、大谷の場合、依然として左投手がやや苦手だ。大谷の打順で左投手がマウンドに上がるケースは今もしばしばみられる。

〈本塁打の打球方向〉
 ・松井
 左翼5本(2.9%)左中間5本(2.9%)
 中堅17本(9.7%)
 右翼111本(63.4%)右中間37本(21.1%)
 ・大谷
 左翼16本(9.0%)左中間28本(15.8%)
 中堅39本(22.2%)
 右翼49本(27.7%)右中間45本(25.4%)

 驚くべき違いが出た。

 松井秀喜の本塁打175本の内、85%近い148本は右方向、つまり引っ張った本塁打であり、中堅でさえも9.7%の17本、反対方向の左には10年のキャリアで10本しか打っていない。松井が本塁打を狙うときは、間違いなくバットを振り抜いて引っ張ることを意識していたのだろう。

 これに対して大谷は176本の内、53.1%の94本は右方向。しかし中堅に22.0%の39本、左翼にも24.8%の44本と広角に打ち分けている。大谷が反対方向に本塁打を打つのは珍しくない。大谷にとって本塁打を打つとは「プルヒットすることではなくフルスイング」することなのだ。

 

「強く、速く打つ」松井と「打ち上げる」大谷
「フライボール革命」の考え方では、ミート力やボールをバットに載せる「技術力」ではなく、バットスイングを速くして打球速度を上げることが最重要だ。打球速度が上がれば、反対方向でも飛距離が伸びていく。全方向に本塁打を打つことができるようになるのだ。

 松井秀喜は175本の内、ライナー性が26本、フライボールが149本
 大谷翔平は177本の内、ライナー性が17本、フライボールが160本

 松井秀喜はボールを「強く、速く打つ」ことを考えていたが、大谷翔平は「打ち上げる」ことを意識しているのではないか。

 松井はフライボール革命以前の打者であり、大谷はアーロン・ジャッジらと共にフライボール革命の申し子というべきだろう。2人が違う時代を生きていることを実感する数字だ。

 さらに三振数にも違いが見える。松井はMLB1236試合で689三振、1試合当たり0.56個に対して、大谷は740試合で775三振。1試合当たり1.05個の三振を喫している。フライボール革命以降「三振はホームランのコスト」という認識が広がっているが、大谷も三振することを全く恐れていない。

大谷は2021年以降のメジャー通算本塁打4位!


 松井秀喜との「比較」は、この日を最後にメディアにはのぼらなくなるだろう。

 日本、アメリカ、中南米……といった国籍を越えて、大谷翔平は「メジャーリーガー」としての競争に身を投じている。

〈2021年以降、今年4月21日までのMLB通算本塁打数10傑〉
 ジャッジ: 434試1573打448安141本315点 率.285 OPS.999
 シュワーバー: 451試1647打365安131本281点 率.222 OPS.952
 オルソン: 501試1870打491安130本366点 率.263 OPS.957
 大谷翔平: 474試1715打484安130本303点 率.282 OPS.932
 アロンソ: 488試1813打454安130本355点 率.250 OPS.971
 ライリー: 499試1929打548安110本310点 率.284 OPS.920
 ゲレーロJr.: 500試1931打542安109本311点 率.281 OPS.925
 アルバレス: 416試1507打439安106本311点 率.291 OPS.894
 セミエン: 508試2076打548安104本303点 率.264 OPS.938
 ベッツ: 440試1715打489安103本266点 率.285 OPS.919

 アーロン・ジャッジを筆頭に現代MLBの最強スラッガーの名前が並んでいるが、大谷はジャッジと12本差の4位タイにいる。

 こうしたライバルたちとの鎬を削る争いが、大谷の「主戦場」なのだ。

 大谷は圧倒的な長打力で、彼らとの争いの頂点に立とうとしている。

そもそも「投手」という衝撃…で、得点圏打率は?


 と、ここまで書いてきて、今年はうっかり忘れてしまいそうだが――大谷翔平は「投手」でもあるのだ。超ハイレベルな打撃争いに加えて、来年は投手としても各チームのエース級と鎬を削る。どこまですごいねん、とあらためて思う次第である。

 そんな大谷が今季序盤戦のスタッツで取りざたされているのが「得点圏打率」である。MLBで重要視されるセイバーメトリクスの観点に立った場合、現状の低打率はそれほど心配するものではないと見ている。

<第2回「得点圏打率と初球打ち」編につづく>

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)

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◆ 首位打者・大谷翔平の得点圏打率.130だが「トラウトらと同じで問題ない」ワケ…初球打ち打率4割、39本塁打もスゴい中で“データ以外の懸念”
広尾晃氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平がナ・リーグ安打数でトップに立つともに、松井秀喜氏を超えるメジャー通算176本塁打を放った。一方で得点圏打率について取りざたされるなど、話題になったスタッツから序盤戦の大谷を読み解いていく。(全2回/第1回も配信中)

 松井秀喜のMLB通算本塁打を抜いた大谷翔平だが、相変わらず安打を量産している。4月23日終了時点でリーグ1位の36安打、僚友ムーキー・ベッツより2本多い。打率は.364でナ・リーグ1位だ。

大谷は1割台の一方でベッツが“5割超え”


 大谷翔平は昨年、リーグ2位の21敬遠(IBB)、エンゼルス時代はなかなか勝負してもらえなかったのだが、今季は1番ムーキー・ベッツ、3番フレディ・フリーマンと2人のMVP男に挟まれた2番を打ち、現時点でIBBは0。勝負してもらえているから、安打数も増えている。

「首位打者」はイチローが2回獲得しているが、日本人では彼だけだ。そして「最多安打」は、イチローが7回も記録しているが、他の日本人選手は記録していない。MLBの打撃タイトルではないが「シーズンで最も多くの安打を打った男」は、首位打者と共に記録男・大谷翔平の新しい勲章になるかもしれない。

 ところで、大谷翔平の「得点圏打率」が低いことが一部で話題になっている。

 得点圏とは走者が二塁以上にいる状況のこと。MLBではRISP(Runners in Scoring Position)といい、データサイトに載っているごく一般的な指標だ。

 4月21日終了時点で大谷の得点圏での打撃成績は
 15試23打3安0本5点、打率.130

 ナ・リーグ規定打席以上の92人の中で86位だ。これはいくらなんでも低すぎるだろう、という話である。ちなみに得点圏での打率1位は、僚友ムーキー・ベッツ。なんと.529(14試17打9安1本13点)。ここまでのドジャースを引っ張ってきたのは、ベッツだと言える。

過去、大谷の得点圏は「通算打率より少し高い」


 だとすると大谷の得点圏での打率の低さは「どげんかせんといかん!」のか? 

 筆者は全く問題ないと考える。

 大谷翔平のシーズン通算打率と得点圏での打率を年度別に並べてみよう。比率のカッコ内は得点圏打率÷通算打率である。

 2018年/打率.285/得点圏.350/比率(122.8%)
 2019年/打率.286/得点圏.292/比率(102.0%)
 2020年/打率.190/得点圏.143/比率(75.3%)
 2021年/打率.257/得点圏.284/比率(110.5%)
 2022年/打率.273/得点圏.314/比率(115%)
 2023年/打率.304/得点圏.317/比率(104.3%)
 2024年/打率.364/得点圏.130/比率(35.7%)
 通 算/打率.278/得点圏.289/比率(104.0%)

 2020年と今年を除いて、大谷はシーズン通算打率より「少し高い得点圏打率」を上げていることがわかる。2020年はコロナ禍でのショートシーズンであり、大谷は1度目のトミー・ジョン手術の回復途上にあったが、右腕を故障するなど調子が上がらないままだった。それを除くと大谷は得点圏でコンスタントに打ってきたことがわかる。

 

実はトラウト、ジャッジらも大谷と同じ傾向


 実は「通算打率より少しだけ得点圏打率が高い」のは、MLB打者の一般的な傾向である。

 昨年までの大谷の僚友だったエンゼルス、マイク・トラウトは通算打率.300、得点圏打率は.302、ヤンキースのアーロン・ジャッジは通算打率.279、得点圏打率は.284、カージナルスのポール・ゴールドシュミットは通算打率.292、得点圏打率.304である。大谷もほぼ同じ傾向を示している。

 一線級の打者は、シーズンに600回前後も打席が回ってくる。無走者も、得点圏も何度も経験する。走者がいる方が多少はモチベーションは上がるだろうが、無走者でもテンションが下がるというものではない。常に安打、本塁打を狙っている状況にそれほど大きな差は生まれないだろう。

データ的に得点圏打率が確実に上がると見るワケ


 そもそも「打率」は、セイバーメトリクス的には「信頼すべき指標」とはみなされていない。

 セイバーメトリクス研究家のボロス・マクラッケンは複数の投手のデータを調査して、投手の被打率はその能力にかかわらず、長期的に見ればリーグの平均打率の前後に落ち着くことを発見した。つまり被安打は、投手の能力ではなく、その他の要因によって記録されるとし、投手がコントロールできるのは「奪三振、与四球、被本塁打」の3つの要素だけだと断定した。

 それ以外のフェアグラウンドに飛ぶ打球は「運の産物」で、投手は安打になることを阻止できない、ということだ。

 マクラッケンは、投手の本塁打を除く被打率であるBabip(Batting Average on Balls In Playを考案した。

 Babip=(被安打-被本塁打)÷(打者-与四死球-奪三振-被本塁打)

 これは、端的に言えば安打の中の「運の要素」の率だ。

 Babipは長期的に見ていけば、どの投手もリーグの被打率に近い数字に落ち着く。例えばシーズン中にこの数字がリーグの平均値より高い選手は以後低下し、低い選手は以後上昇する傾向にある。

 また打者側から見ても、高い打率をキープしている打者でもBabipがリーグ平均より高い打者はいずれ打率は落ちていくし、低打率にあえぐ打者でもBabipも低い打者はいずれ打率が上昇する、との理屈だ。

 大谷翔平の打率は.364で、Babipは.410になっている。いずれ打率は下がっていくとみるべきだろう。得点圏打率は.130だが、得点圏でのBabipは.200と打率よりやや高くなっている。とはいえ両方ともに低いゆえに、現状の得点圏打率からほぼ確実に上がっていくとみていい。

 

「初球を狙いすぎ」との声も…今季打率.462
 もう一つ「大谷翔平は初球を狙いすぎる」との声もある。

 MLBとNPBの野球の大きな違いの一つが「積極性」だと思う。

 4月20日のメッツ戦で、ドジャースの山本由伸は2回1死から5番のDJスチュアートに155km/hの4シームを右翼席に放り込まれたが、山本とスチュアートはもちろんこれが初対戦。その初球を思い切り振ったのだ。打球速度176.5km/h、飛距離134.7m、打球角度19度。弾丸ライナーだった。

 投手がストライクゾーンに投げてくる、あるいは自分が想定するコースに来ると思えば、思い切って打てばよいのだ。

 今季、大谷が「ファーストピッチ」を打った打撃成績は以下の通り。

 13打数6安打1二塁打1三塁打1本塁打3打点、打率.462

通算でも初球に強く、打球速度も凄まじい


 実は大谷は「初球」が大好物で、年度別での初球を打った打撃成績は、こんなすごい成績になっている。

 2018年/38打17安5本10点 率.447
 2019年/52打22安6本16点 率.423
 2020年/9打1安1本3点 率.111
 2021年/62打23安8本15点 率.371
 2022年/96打33安8本22点 率.344
 2023年/68打34安10本20点 率.500
 2024年/13打6安1本3点 率.462
 通 算/338打136安39本89点 率.402

 調子が上がらなかった2020年を除き、常に4割前後の高打率、それだけでなく初球本塁打も39本打っているのだ。

 MLBではストライクゾーンを積極的に攻める投球が多い。それを見越して大谷はバットを振っているのだろうが――それに加えて、大谷の打球速度が凄まじい。

 MLB公式サイトの「スタットキャスト」によると、現地4月22日時点で大谷の打球の初速スピードは最大で115.8mph(186.4km/h)だった。これは全選手中の4位で、ドジャースの打者では史上最速だった。また95mph(152.9km/h)以上の打球(ハードヒット)数は全選手中最多の47だ。そして23日のナショナルズ戦で放った6号本塁打では、118.7mph(191km/h)というキャリアハイの打球速度をマークした。

 この猛烈なバットスピードがあるから、大谷の打球は多少芯を外れても、角度が低くても遠くに飛ぶ。それによって安打になる可能性がグッと上がるのだ。

 大谷の初球狙いが広く知られるようになれば、ボールから入る投手も増えるだろう。とはいえ思い切ってバットを出す積極性がある限り、結果はついてくるのではないか。

 

むしろ懸念は「今季も休まない」こと


 筆者はそういう問題以上に、大谷が今季も「休まない」のではないか、と懸念している。

 ベッツ、フリーマンと大物のチームメイトがいるのだから、適宜休養を取るべきだと思うが――彼自身は、2番DHで162試合出る気ではないか、と思う。

 それに早くも5盗塁とリーグ10位タイ。第1回での松井秀喜との比較で触れたように「走れるスラッガー」ぶりを示すスタッツだが、それだけ怪我のリスクもある。

 大谷も今年で30歳になる。また今春は大変なことがあった。大谷翔平には少しは「自重する」ところがあっても良いのではないかと思う。

 名将ロバーツ監督はこれを重々承知して適宜休養を取らせるとは思うが――来年の二刀流復活に向けて、大谷翔平は自重しつつ頑張ってほしいと思う。<第1回「松井との比較」編からつづく>

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)

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 ■ NOTE

 

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