image

 

2024年4月23日

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

-------------------------------------------------------------

 

◯ ドジャースは22日(日本時間23日)、球団インスタグラムを更新。大谷らが本拠地ロサンゼルスから敵地ワシントンDCに移動する際に様子が公開された。大谷はタブレット端末を見ながら、笑顔でリラックスした表情だった。

 

image

 

◯ メジャーリーグ機構は22日(日本時間23日)、ア・ナ両リーグの週間MVPを発表。大谷は2週連続で候補入りしたものの、今季初受賞はならなかった。大谷は全6試合出場して21打数10安打の打率.476と好成績を残した。21日の本拠地・メッツ戦の3回には8試合ぶりの5号2ラン。1本塁打、3打点、5四球、6得点、3盗塁、出塁率.577を記録した。ナ・リーグはフィリーズのトレア・ターナー内野手が選出された。

 

◯ MLB公式は22日(日本時間23日)、今シーズン最初の模擬MVP投票の結果を発表。大谷はナ・リーグ2位だった。ナ・リーグでは同僚、ムーキー・ベッツ内野手が1位となっている。投票は45人の識者で行われ、1位から5位までを選出。1位5ポイント、2位4ポイント、3位3ポイント、4位2ポイント、5位1ポイントで集計される。ベッツは1位票を41集めて独走した。大谷は1位票は一つも入らなかった。大谷はここまで打率.368、35安打、二塁打11本、63塁打の4冠となっているが、MVP投票で重要視される勝利貢献度WARでは、ベースボール・リファレンス版でベッツが両リーグ1位の2.2をマーク。大谷の1.5と大差をつけている。ベッツは22日時点でリーグ2位の打率.355、トップのOPS1.103を記録。今季は右翼から遊撃に転向し、好守でもアピールしている。

 

image

 

◯ 大谷が投球分析機器を手掛けるラプソード社と長期契約を結び、同社のアンバサダーに就任したと22日、大リーグを取材してきた米紙USAトゥデーのボブ・ナイチンゲール記者が自身のXで伝えた。大谷は投球練習の際に同社の機器を活用している。大谷のインタビュー動画も合わせて公開された。

 

ーースポンサーを結ぶ相手は慎重に決めると聞いているが、なぜラプソードと契約したか

「実際に自分自身が使ってみて素晴らしい機器ですし、僕がもっともっと早く使っていれば良かったなと思える1つだと思うので、子どもたちもそうですし、大人になってからもそうですけど、幅広い年代で使えるものじゃないかなと思います」

 

ーーどのようにラプソードを使っているか

「自分がやっていることを数値化することで日々の成長だったりとか、あとはクオリティーの良いスイングだったり投げ方だったりとか、打たれにくいボールをデザインするというところでいうと、実際に目に見て可視化できた方がより成長につながるんじゃないかなと思っているので使っています」

 

ーーリハビリにどのように生かしているか

「バッティングではずっと使っているので、リハビリの段階から実際に自分のフィーリングに合わせて、実際の数値がその感覚にあっているのかどうかを見ていますし、投球プログラムを開始してからもそういう感覚との一致だったり不一致だったりを随時確かめることでよりスムーズにリハビリを進められるんじゃないかなと思います」

 

ーー野球へのコミットを決めたのはなぜ

「水泳をやったりとか、いろいろ他のスポーツをやってみたりとかはありましたけど、何となく自分の中では最終的に進むのは野球なんだろうなといのは感じながらやってはいたので、決して無駄な時間だったなとは思いませんし、自分の中でなんとなく最初から答えはわかっていたのかなという感覚はあります」

 

 

◯ エンゼルスのコーチ時代に松井氏と同じユニホームを着て、現在は大谷所属のド軍でGM特別補佐を務めるロン・レネキー氏(67)がスポニチの独占取材に応じ、2人の違いなどを明かした。(柳原直之氏

 

――レネキー氏が知る2人を比較すると?

「2人とも素晴らしいよ。野球に向かう姿勢がとてもいい。松井は翔平よりも、もう少し生真面目な感じかな。翔平はいつも笑っている。彼を笑わせるのは簡単。面白いことを言えば、たいがい笑います。松井はもうちょっと真面目な感じです。松井は、毎日メディアと時間を過ごしていた。メディアも彼のことが好きだった。私は毎日ここにいるわけではないので、翔平がメディアとどう交流しているかは知らない。でも、彼も素晴らしい人物。2人とも素晴らしい人柄です」

 

――打撃のメカニックは?

「全然違いますね。翔平は私が見てきた中で最も爆発的なパワーを持つ打者の一人です。彼はそれを生かして、フルにエネルギーを使ってスイングすることに取り組んでいる。そして最大限の力でボールを叩く。彼にとってバットスピードを上げ、パワーを持つことが非常に重要です。彼は反対方向に軽く打ったりはしない」

 

――対する松井氏は

「松井はよりコントロールされたスイングで、余分な動きや無駄を省き、ボールを確実に打ち返そうとしていた」

 

――大谷は走力も兼ね備える

「そこは大きな違いですね。松井は走るのは得意ではなかったし、左翼の守備はまあまあという感じでした。投げるのはうまかったわけではない。でも、ヤンキースではボールをキャッチすると、できるだけ早くジーターに返して、ジーターに投げさせていた。だから問題ありませんでした」

 

――投打二刀流でもある

「翔平はまだ投手として投げているし、分からないけど、いずれ外野手になるかもしれません。彼は素晴らしいアスリートです。2人ともアスリートですが、異なるタイプですね」

 

――大谷はメジャー7年目で松井氏の本塁打数を超えた

「2人には違いがあります。松井はヤンキースに入団。ヤンキースタジアムでは勝つことへのプレッシャーがとても大きい。勝たなければならない。本当にいい打線で、いいチームでプレーしていました。その状況は(ド軍に移籍した)今の翔平と同じだと思います」

 

――ともに人気球団でファンは勝利を期待

「単に地区優勝するだけでなく、プレーオフを勝ち進むことが期待されている。だから最初の数年間は2人はちょっと違っていたと思います。翔平にも(昨季まで所属していたエンゼルスで)プレッシャーがあったと思いますが、ニューヨークは違う。ニューヨークの人たちは多くを期待するし、プレーがうまくいかないときは厳しい」

 

――大谷を過去の偉大な打者と比較すると?例えばバリー・ボンズなど

「ボンズは素晴らしいスイングで、本塁打も打つし、打率も・350~・360。この国にこれまでにいた中で最高の打者です。そこは疑う余地はありません。最初の10年間はアルバート・プホルスも良かった」

 

――いずれも大打者

「そして昔の時代には、ジョー・ディマジオやベーブ・ルースのような選手がいました。でも、翔平は先日もゴロの打球速度が106マイル(約171キロ)だった。通常、ゴロは95マイル(約153キロ)ぐらい。だから、そこは違う。あんなにいつもいつも強くスイングする打者を他に知らない」

 

――大谷のパワーはやはり凄い

「他の打者も思い浮かべているけど、翔平は違う。身体が大きく、強靭。パワーはいわば、速さと筋力です。翔平にはそれが他の誰よりもある。あんな選手は他に知りません。マイク・トラウトはそのようなタイプですが、もう少し小さいバージョンです」

 

――そんな大谷はあまりフィールドでは練習をしない。

「そう。室内で、自分のルールに従ってやっていますね。ハードワーカーで毎日、決まったことを一生懸命やっている。でも何らかの理由で、フィールドで打つことが嫌いな人がたくさんいますね。ここ(フィールド)にいると、時々ホームランを打ちたくなる。でも、それがスイングにいいとは思わない。ケージではホームランは狙えないからね」

 

-------------------------------------------------------------

 ■ ロサンゼルス・ドジャース情報

-------------------------------------------------------------

 

◯ ロサンゼルスタイムズ紙のドジャース担当ジャック・ハリス記者が本拠地で3勝6敗と苦しんだ同球団の現状を分析している。

 

 まず先発投手陣だがタイラー・グラスノー以外の投手はあまり良くない。山本由伸は最初の5試合で防御率4・50、うち1試合しか5イニングを超えて投げられていない。ジェームズ・パクストンとギャビン・ストーンは安定感がない。グラスノー以外の先発投手は、これまで5勝4敗、防御率4・40で、1試合あたり4・44イニングしか投げられていない。リリーフ陣はエバン・フィリップス以外に好調な投手がおらず、ライアン・ブレージャー(防御率5・59)、ジョー・ケリー(防御率7・007)は不振。ダニエル・ハドソンとアレックス・ベシアは防御率3・00以下だが、いくつかの敗戦の要因になっている。投手陣の防御率は4・13でMLB全体で17位にランクされている。

 

 打線は1番から4番以外は力不足。テオスカー・ヘルナンデスは5本塁打もチーム最多の34三振。マックス・マンシーも4本塁打で32三振。21日(日本時間22日)の試合開始時点で、チームの6番から9番までの打者は、トータルで打率・182。これはMLBで3番目に悪い。

 

 加えて守備も平凡としている。DefensiveRuns Saved(守備防御点)は、守備の優れたプレーによって失点を減らすことができた場合はプラスの評価で、これは7位だが、データサイト「ファングラフス」のより包括的な守備指標では18位。この指標ではUltimate Zone Rating(守備範囲、成功率、プレーの価値)などの要素も含まれる。ドジャースは1試合あたり4・54失点でMLBで12番目に多い。失点が多いから、チャンスは確実にものにしないとと攻撃陣にプレッシャーがかかる。得点圏打率・254は18位、1年前の・276よりも下降している。

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 球界情報

-------------------------------------------------------------

 

ニューヨーク・ヤンキース:

◯ ヤンキース0―2アスレチックス(22日・米ニューヨーク州ニューヨーク=ヤンキースタジアム)開幕から首位を快走していたヤンキースが22日(日本時間23日)、本拠のアスレチックス戦に0―2で敗れ、この時点でオリオールズにア・リーグ東地区の首位の座を明け渡した。一昨年62本のア・リーグ新記録を作ってMVPに輝き、オフに3億6000万ドル(当時のレートで約504億円)の9年契約を結んだジャッジだったが、今季は開幕から一向に打撃が上向かず打率1割7分4厘、3本塁打、11打点。特に本拠に戻った最近4試合は15打数2安打9三振と大ブレーキ。パドレスから移籍のソトが安定した打撃を続けているだけに、今後もジャッジの不調が続くと好スタートを切ったヤンキースにとって痛手となる。

 

ロサンゼルス・エンゼルス:

◯ エンゼルスは22日(日本時間23日)、本拠地で行われたオリオールズ戦に2-4で敗れた。一時は首位に立つ好スタートから一転、泥沼の5連敗で借金5の地区3位タイ。3試合にまたがって18イニング無得点を記録するなど打線が湿り、オリオールズ先発のアルバート・スアレスに8年ぶりとなる白星を献上した。今季3勝0敗のデトマーズが先発。しかし、2回2死走者なしからマッキャンに先制ソロを許すと、3回、5回、7回と追加点を許した。7回を投げて6安打4失点と今季初の複数失点で初黒星。1点台を維持していた防御率も2.12に後退した。

 

-------------------------------------------------------------

 ■ 注目記事&コラム

-------------------------------------------------------------

 

◆ ドジャース・大谷 原点の逆方向に返り上った頂点 父の下で学んだ左中間への打球

柳原直之氏/情報:スポニチ)

###

 【ヤナギタイムズ】日本ハム時代の13年12月からドジャースの大谷翔平投手(29)を本格取材し、TBS系情報番組「ひるおび」、「ゴゴスマ」などに随時出演する本紙MLB担当・柳原直之記者(38)の連載コラム「ヤナギタイムズ」。今回は大谷の打撃の原点に迫った。

 

 大谷は「僕自身はあまり本塁打を狙って打つ感覚は持っていない」と話してきた。打撃の基本スタイルは二塁打を狙うことで「しっかり二塁打を基準にして、その延長でホームランだったり、打ち損じがヒットだったりという考え方」としている。

 

 日本ハム時代も、飛距離は群を抜いていた。だが、日本での年間最多本塁打は16年の22本。転機はメジャー移籍後、投手としての登板前後の打者出場を解禁し自己最多の46本塁打をマークした21年ではないか。全打球の46・6%が右翼方向で46発中30本が右翼。「右方向は角度さえつけばある程度、当てただけでも(スタンドに)入るもの」と話したこともあった。

 

 ただ、外角球を強引に引っ張って凡退するリスクも高く、22年以降は広角に打ち分けるスタイルに回帰した。父・徹さんが監督を務めた少年野球時代の原点は、逆方向の左中間への強い打球。これがこの日超えた、松井氏との違いでもある。

 

 これで今季5号。得点圏での苦戦などもあるが、打撃は進化している。打率・368、35安打は両リーグトップ。7日からロバート・バンスコヨック打撃コーチが「Amazon」で購入したクリケット用のバットで打撃練習し、メジャー7年目で確率の部分では最高のスタートともいえる。本塁打量産態勢に入れば、日本選手初のトリプルスリーや、04年のイチロー(マリナーズ)以来の首位打者&最多安打の可能性もある。

 

 46本塁打した21年は4月終了までに8本塁打だった。休養日を挟み4月は残り8試合。両リーグ最多の11二塁打は、大谷の狙い通りなのかもしれない。

###

 

◆ 大谷翔平に“無用”だった心配 37打席ノーアーチも…コーチが確信していた兆し

川村虎大氏/情報:Full-Count)

###

 8戦ぶりの豪快弾には様々な伏線があった。ドジャース・大谷翔平投手は21日(日本時間22日)、本拠地・メッツ戦で今季5号2ランを放った。松井秀喜氏を抜く日本選手単独最多となる米通算176号。38打席ぶりの本塁打だが、アーロン・ベイツ打撃コーチに心配はなかった。

 

 歴史的アーチをかけた試合の前、記者が「ここまで7試合本塁打が出ていないけど」と問うのを遮るようにベイツコーチは「打つよ!」と宣言。「次(本塁打を)打ったら、(本塁打を)打ちまくるよ」。心配ご無用だという様子で本塁打を“予言”していた。

 

 試合前の時点で得点圏打率は21打数2安打で打率.095。12日(同13日)の本拠地・パドレス戦で松井氏に並ぶ4号を放ってから37打席ノーアーチだった。デーブ・ロバーツ監督からは「私は十分理解しているけど、ストライクゾーンをコントールしないといけない」と指摘されることもあった。

 

 ベイツコーチも「(ストライク)ゾーンをあまり広げて欲しくない。四球を選んでいるので、いい仕事をしている」とロバーツ監督の言葉に賛同しながらも、「得点圏打率というより、(ストライク)ゾーンに限定して、打てる球を見極めるアプローチの方を重視した。それくらいかな」とアドバイスを送っていた。

 

 メモリアルアーチは3回1死の第2打席に飛び出した。右腕ハウザーの甘く入ったスライダーを右翼席に叩き込んだ。それだけではなく、5回無死一、二塁の第3打席では、ここまで苦戦していた得点圏で投手強襲の内野安打をマーク。8得点のビックイニングを演出した。

 

 後ろを打つ3番のフレディ・フリーマン内野手が復調の兆しも見せていたことも大谷には追い風だった。20日(同21日)の同カードまで3試合無安打で打率.259まで下がっていたが、2本の適時打。「フレディ(フリーマン)は好調だから、彼が後ろに控えていると、もっと(相手投手は)攻めてくるだろう」。相手投手陣はボール球を投げにくくなり、ストライクゾーンの球を振り抜いた。

 

 この日の2安打でついに打率は両リーグトップの.368に。大谷は試合後「ホームランだけを狙っているわけではない」としつつも「自分の長所でもある」と本塁打への思いを語っていた。ベイツコーチも「次にホームランを打ったら、今後もたくさん打つと思うよ」と自信ありげ。ドジャースでのアーチショーがそろそろ始まりそうだ。

 

川村虎大 / Kodai Kawamura

###

 

◆ 大谷翔平、切り開いた本塁打打者の境地 メジャー挑戦元年からのコメント変遷に進化が表れていた

斎藤庸裕氏/情報:日刊スポーツ)

###

 ドジャース大谷翔平投手(29)は日本人でホームラン打者としての境地を切り開いた。担当記者が追ってきたメジャー挑戦元年からのコメントの変遷に、進化が表れている。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 メジャー挑戦から数年たち、技術の向上とともに大谷の意識は変わった。今でこそ、カウントや状況に応じて本塁打を狙える能力が身についたが、6年前、本塁打は“副産物”だった。18年4月6日、メジャー1号から3戦連発を放った際に、二塁打を基本とした打撃スタイルを強調した。

 

 「僕自身はあんまりホームランを狙って打つという感覚は持っていない。しっかりとツーベースを基準にして、その延長線でホームランになったりとか、打ち損じがヒットであったりっていう考え方なので」

 

 同年9月5日、2試合連発、1試合2本塁打をマーク。それでも「まだいっぱい本塁打を打てる確率は自分的には高くない打ち方だと思っている」と言った。

 

 1年目では日本人最多となる22本塁打を放った。長打力を証明し、ファンやチームから本塁打への期待が高まったが、打撃スタイルはさほど変わらなかった。19年6月、絶好調で日本人初となるサイクル安打を達成。その時期ですら、二塁打の優先度が高かった。

 

 「本塁打よりも二塁打の方が、率的に残る確率が高いので、その中で本塁打になる打席はあっていい」

 

 一方で、ふがいなさを感じることも多々あった。19年シーズンの夏場、73打席ノーアーチが続いた。周囲から身に染みて感じる本塁打への期待。「ヒットは打っているけど、なんでホームランが打てないのかなというのはあると思うので、求められているところでしっかり仕事をしたい」。

 

 求められる仕事の選択肢に、本塁打が加わった。すると、技術に関する大谷のコメントも変わってきた。20年3月のキャンプ。

 

 「紙一重ですね。(バットがボールの)上に当たるか、下に当たるかで、セカンドゴロになるか、センターにホームランになるか、やっぱり変わってくる」

 

 理想のイメージで、明確に“ホームラン”と口にし始めた。アオダモからバーチ素材(現在はメープル)のバットに変更し、46本塁打を放った翌21年、さらに意識は強くなった。

 

 「フィジカルも強くなっていますし、どんなバットでも芯付近に当たれば、ホームランにできるのではないかなという自信があるので、その分、率(打率)寄りのバットになっている」

 

 「数多く打つタイプではない」と言っていた時期から3年、21年6月に自身最多の月間13本塁打を量産(23年6月に15本塁打で更新)。並べる言葉にしても、本物のホームラン打者のメンタリティになった。

 

 「基本的には、常に試合でもホームランになるスイングはしているので、状況に応じてカウントによっても、もちろん変えるんですけど、普段通りの打ち方をすれば、ホームランになるのかなとは思う」

 

 21年シーズン終盤は、本塁打王のタイトルを意識して狙いにいった。22年シーズンは、「3割近く打てるようなイメージで行こうと思ってたので、その中でホームランがどれだけ出るのかが1つ、チャレンジではありました」と、打率との両立を掲げていた。

 

 飛ぶボール、飛ばないボールなどMLBは適宜“調整”を行い、野球そのものも変化してきた。「スピンの利いたような打球に関しては、飛ばない印象が強かった」と違和感を明かした一昨年、「もうひと伸びするフィジカルだったり、スイングの強さがあれば、もっともっといい数字が残った」と、さらなる技術と肉体強化を自らに課した。

 

 昨季、前年を上回る44発で日本人初の本塁打王に輝いた。データ解析の進歩でスピードやパワーが向上し、野球自体のスタイルも変わっていった。期待に応え、時代の潮流を上回る早さで先を読み、工夫と自己分析を重ねてきた大谷。チームに求められ、ファンに期待され、理想の野球道も追究する。そして、日本人の歴史を刻むホームラン打者が生まれた。【斎藤庸裕】

###

 

◆ 松井秀喜氏「名もなきホームラン」に興味 大谷翔平に抜かれるまで日本人1位MLB通算175本

広重竜太郎氏/情報:日刊スポーツ)

###

<We love Baseball>

 

 ドジャース大谷翔平投手(29)が、新たな日本人の歴史を刻んだ。21日(日本時間22日)のメッツ戦に「2番DH」で出場し、3回の第2打席で今季5号の先制2ランを放った。メジャー通算176号で、松井秀喜氏を抜いて日本人メジャーリーガーの最多記録を更新した。3打数2安打2打点でチームの連敗は3でストップした。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 大谷の名が超高校級の花巻東2年生として世に出始めた11年の初夏だった。

 

 当時アスレチックスの松井は日米通算500号の節目へカウントダウンを迎えていた。かつてのような量産ペースではない。少しずつ歩み、立ち止まっては、再びゆっくりとした歩調で大台へ進む。到達への数字を目減りさせていった。

 

 記念のアーチへ、担当としてネタが必要だった。松井は抜群の記憶力で、ホームランを打った年月日、対戦相手、シチュエーションを覚えている。だがプロとして放った本塁打より、「名もなきホームラン」に興味がわいた。松井秀喜が何者でもなかった少年時代に、草野球で放ったアーチを、最初の1本を覚えてはいないのか-。

 

 「覚えてないよ、そんなの」

 

 甲高い笑い声で、一笑に付された。だが言葉を重ねた。「実家の裏の空き地で兄貴と野球をずっとしていた。そして、子供の時、あの喜びを知った。それがホームラン打者として夢を追い求める最初の分岐点だった」

 

 明確な放物線の記憶はないが、感情は鮮明に刻まれていた。松井にとっての原風景だった。

 

 夢を追い求めた松井のサクセスはここであらためて、記すまでもない。多くの野球ファンが「ゴジラ」と評された男の夢に乗っかった。相乗りできたからこそ、その軌跡は希望に満ちあふれていた。

 

 時は移ろい、大谷がホームラン打者として名をはせる。ユニホームをとうに脱いだ白髪交じりの松井は今も野球教室で、在りし日のようなホームランをせがまれる。「王さんが55歳の時にOB戦で甲子園でホームランを打った。自分も55歳まで打ちたい」。夢を語る時期もあったが、年齢にはあらがえない。「もう無理だよ。いつまで打たせるの」と軽口もほほ笑ましい。

 

 松井は何とか柵越えしようと、スピンをかけるようにボールの下を打つ。内野上空に高々と上がるポップフライは、それはそれでロマンを感じる。

 

 今はとても想像できない。だが遠い将来、年輪を重ねた大谷が野球教室で見せる黄昏のスイングも、往年と重ね合わせ、いとおしくなるだろう。空高く舞う、やや上ずったフライも味があるに違いない。【広重竜太郎】

###

 

◆ 3、4月はここまで24試合で17長打の大谷翔平。4月は残り8試合で、記録をどこまで伸ばせる?

三尾圭氏/情報:スポナビ)

###

 3月と4月はここまでチームの全24試合に先発出場して、MLB1位となる17本の長打を放っているロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平。17長打の内訳は本塁打が5本(ナショナル・リーグ9位タイ)、二塁打がMLBトップの11本、そして三塁打も1本(ナ・リーグ6位タイ)となっている。

 

 メジャーリーグでは月間成績を表すときに、レギュラーシーズンの試合数が少ない3月と10月は、それぞれ4月と9月にくっつける慣習があるが、3、4月の歴代最多長打は2000年にカンザスシティ・ロイヤルズのジャーメイン・ダイが打ち立てた23本(12二塁打、11本塁打)である。

 

 今年、ドジャースは韓国で開幕戦を迎えるという変則スケジュールだったこともあり、3月に異例の6試合も戦っている。その結果、3月と4月の合計試合数は32試合で、大谷にとって3、4月の月間歴代記録を更新するチャンスである。

 

 ダイがメジャー歴代記録を作った2000年は、まだ4月に入ってから開幕を迎えており、3月の試合はゼロで、ダイは25試合で23本の長打を記録した。

 

 大谷の17長打は歴代61位タイにランクインしており、18本目を打てば30位タイ、19本目で12位タイへと浮上していく。

 

 これまでに3、4月に20本以上の長打を放った選手は10人だけで、11度の記録全てが1996年以降に作られたものだ。唯一、記録を2度達成しているのはアレックス・ロドリゲスで、シアトル・マリナーズに所属していた1998年(20本)とニューヨーク・ヤンキースでプレーした2007年(21本)の2回、20本の大台を超えた。

 

 ドジャースの球団記録は2019年にコディ・ベリンジャーが31試合で放った21本。大谷にとって、まず超えるべき記録はベリンジャーが持つ21長打となる。

 

 ちなにみ、3、4月に21本の長打を放ったケースは2007年のAロッドと、19年のベリンジャーの2度だけだが、2選手ともにそのシーズンは絶好調を維持してシーズンのMVPを獲得している。

 

 4月の残り8試合の内訳は、首都ワシントンDCのナショナルズ・パークとトロントのロジャーズ・センターで3試合ずつ、そしてアリゾナのチェイス・フィールドで2試合が組まれている。

 

 球場の特性を表す『パーク・ファクター』を見てみよう。パーク・ファクターとは、その球場で特定のプレーが起こる頻度を数値化したもの。例えば二塁打のパーク・ファクター(PF)が130の場合、平均に比べて二塁打が3割増で出やすい球場となる。

 

 今季のナショナルズ・パークは左打者にとって二塁打(PF136)が出やすい反面、ホームラン(PF64)を打つのは難しい。外野が広いロジャーズ・センターでは、左打者は他球場の2倍以上の割合で二塁打(PF222)を打っている。右打者に有利なチェイス・フィールドは左打者がホームラン(PF57)を打つ確率が他球場の半分近くまで下がるが、広角に打球を打てる大谷が左方向へ流し打ちできれば、長打も期待できそうだ。

###

 

◆ 大谷翔平“1545万円級”HRボールでモメたファンは返却→オオタニと会えて笑顔、176号は交渉が順調なら…“殿堂行き”か〈メジャー記念球事情〉

AKI氏/情報:NumberWEB)

###

 大谷翔平が日本人最多となるメジャー通算176号ホームランを放った。松井秀喜氏を超える偉大な記録を樹立した中で、キャッチしたファンや金額などが話題になる「ホームランボール」について、メモラビリアに明るいAki氏があらためてそのシステムを説明する。

 

「ホームランボールをキャッチしたい!」

 

 野球観戦が好きなファンの方であれば誰もが一度は憧れる瞬間だろう。

 

 ホームランボールは〈基本的にキャッチしたファンのもの〉という考え方は、日米で共通である。かくいう筆者も一度だけホームランボールをゲットしたことがあり、今も大切に自宅に飾っている。

 

 そんな「ホームランボール」を巡って――大谷翔平の周辺が騒がしい。

 

 大谷のドジャース第1号は返却騒動、第2号はカブスファン投げ返し、そして日本人最多本塁打用の刻印球について相手監督からのクレーム、といった具合である。スーパースターの宿命なのかもしれないが、色々と誤解を生んでいる点もあるので記しておきたい。

 

第1号ボールの対価としてバットは誠意あるものと感じたが

 まず、大谷の移籍後第1号となったホームランボールについて。

 

 前述通りホームランボールはキャッチしたファンのものになるが、選手が記念として手元に残したい場合は、球団スタッフを通して交渉を行うことになる。大谷のケースでは可能なら、と交換条件としてサイン入りバット、ボール、帽子を提示して球団に交渉を頼んだようだ。

 

 ただ交渉をしたセキュリティスタッフの対応・態度がまずかったのだろう。中継でもまるで犯罪者のように取り囲み、同伴者の同席も認めないままひとりで裏へ連れていかれる様子が映し出されていた。

 

 また、返却を認めなければホームランボールへのMLB認証――その詳細は3年前の記事を参照してほしい――を認めないという圧力もあったようだ。とはいえホームランボールへのホログラム貼付は、すり替え懸念の観点からも行っていないはずで、この部分の真偽は不明なのだが。

 

 当初、一部メディアではホームランボールの価格は「専門家の見立てでは合計5000ドル(約75万円)ほど」と報じられた。一方でバットだけでも軽く数百万円(Chandler製で写真を見る限り使用感も確認できたので、大谷が使用したものと思われる)を超えると見立てており、それに加えてサインボールやサイン入りキャップもつくゆえ、対価としては十分誠意あるものと感じた。

 

ファンは豪華グッズ受け取り+大谷と会えて大感激

 今回の事態で問題があったのは、球団の初動対応だと見ている。

 

 後に球場へファンと家族を招待することで、この件は和解となった。ただ最初にセキュリティがキャッチした女性を笑顔で祝福する、もしくは試合後すぐに大谷と直接会う機会を設ける(おそらく大谷もそれを希望したと思うが、球団が気を遣い過ぎたのかもしれない)などの誠意を見せれば、ここまでの騒動にもならなかっただろう。

 

 なおファンが招待された当日、「今までで最高の誕生日!」と大谷と最高の笑顔で写真に収まる様子がドジャースの公式SNSにアップされた。直接会っての「ありがとう」を超えるプレゼントはないという証明でもあった。

 

 このファンは招待の際にサイン入りのバット、ボール、キャップをプレゼントされた。つまり合計するとサイン入りバット2本、サイン入りボール2球、サイン入りキャップ4個を受け取ることになった。ボールについては大手鑑定会社PSAの鑑定を済ませているそうで、その価値は10万ドル(約1545万円)を超えるとも言われている。〈ゴネ得〉のようにも思えるが、球団が初動に問題があったと認めた結果であり、大谷も快く応じたのだと思う。

 

 なおこの後、球団は「今後のホームランボールに関するプロセスを考え直す」と発表している。

 

相手監督がイチャモンをつけた「刻印球」とは

 ホームランボールの一件が落ち着いたタイミングで、次に起きたのが〈刻印球問題〉だった。

 

 パドレス戦、ダルビッシュ有との対決時に話題になったが――ワンデイ・ペラルタ投手やシュルト監督と、その試合の球審との間で問題が起きた。

 

 ペラルタがマウンドで準備を始めると、球審がボールを変更。不満な表情を浮かべつつもペラルタは了承した直後、大谷は初球を捉えてヒットを放った。シュルト監督は試合後に「大谷のためにボールを記念にとっておきたいのは私は理解したが、公平性を求めた」と話した。この報道に対して「何で大谷だけ特別なんだ?」というコメントを至るところで見かけた。

 

 たしかに大谷が174号を打った以降の打席では、ボールを取り換えて使用されていた。ボール上部に「S」、下には「数字」が入る刻印球で、中には違和感を感じる投手もいただろう。

 

“ボールすり替え”を防ぐための対策

 ただこれは当然、大谷がリクエストしたわけではなく、MLB機構が準備したものである。

 

 何らかの記録――例えば3000本安打や500号ホームランなど――がかかった選手の打席で刻印入りの公式球が使用される。この目的はスタンドに入った際にボールを識別するため。パドレス戦でもマチャドのホームランボールを手にしたドジャースファンが〈すり替えた手持ちのボールをスタンドから投げ返す〉というユーモラスな場面があったが、記念球においてこのような事態が起こっても、判別できるようにするためである。

 

 過去のケースで言えば、デレク・ジーター氏とイチロー氏の3000安打ではそれぞれのイニシャルである「J」と「I」、そして数字の刻印が入れられ、実際にイチロー氏は「I/8」のボールで達成している。

 

 大谷の175号は「S/1」のボールとなったが、ボールは複数存在し、番号順ではなくランダムに使用される。そして同じ刻印は1球しか存在しない。刻印以外にもブラックライトのようなもので当てれば見られる〈独特のマーク〉が存在するそうだが、この特定の液体と光は秘密事項となっており、容易に偽造できない仕組みとなっている。

 

 あらためて強調しておきたいのは、大谷の175号、176号用の刻印球はMLB機構が準備したものである。175号の「S/1」はキャッチしたファンが大切に保有する、とのことで、大谷自身も返却を求めていない。MLB側は〈記録が掛かった試合での刻印球の使用は当然〉と捉えていたと推測するが、今後は試合毎にしっかりと相手チーム監督・選手に周知していくべきだろう。

 

交渉が順調に進めば176号は“野球の殿堂博物館”に…

 そして日本時間4月22日の朝5時50分に、大谷は176号ホームランを放った。週初めの月曜早朝ということでリアルタイムで見られたファンも少ないかもしれない(実際、筆者も歴史的瞬間に40分遅刻してしまった……)。

 

 キャッチしたファンはメジャー初観戦の方だったようだ。刻印球は名前の頭文字と異なる「E/6」、175号でSを使用したので「SHOHEI」の頭文字をランダムで使用した形だろうか。そしてこのファンは一旦ボールをキープして後日、球団と交渉にあたるとの報道がなされている。

 

 今後、この歴史的なホームランボールの行方はどうなるのか。

 

 おそらくであるが――球団とキャッチした方の交渉がスムーズに進めば、クーパーズタウンに向かうことになる(我々もそこで目にできることになるだろう)。

 

 大谷は今までのメモラビリアを米国野球殿堂博物館に寄贈しており、野球史を大切にする彼ならではの行動だ。記録を更新された立場の松井秀喜氏も「彼には通過点」と言っていたが、このあとこの記録がどこまで伸びるのか楽しみにしている。

 

 ちなみにベーブ・ルースがメジャーのキャリア725試合目の時点で176本のホームランだったそうで、大谷もこの試合が725試合目だということ。この偶然の一致には震えるばかりである。

 

0.005%以下であろう“キャッチ確率”だからこそ

 ドジャースタジアムの外野座席数が5000席、大谷のホームランが約4試合に1本に出るペースと仮定すると――キャッチできる確率は2万分の1、確率にして0.005%である。

 

 さらに座席以外に落下もしくはスタンドに跳ね返ることもあるゆえ、これよりも確率は下がるだろう。そして運良くホームランボールが座席近くに飛んできたとしても、アメリカの屈強なファン達が命懸けで飛び込んで来るかもしれない。

 

 それでもやっぱり一度は、大谷のホームランボールをキャッチしたいところだが。

 

(「メジャーリーグPRESS」Aki = 文)

###

 

◆ 《独占インタビュー》大谷翔平が明かしたドジャース入団の決意「僕の心の中に何か感じるものが…」じつはメジャーで二刀流の“確信”はなかった?

石田雄太氏/情報:NumberWEB)

###

 名門ドジャースで主力打者として活躍をみせる大谷翔平(29歳)。4月22日現在、打率は.368でナ・リーグ首位に立っている。メジャー開幕前にNumber本誌に明かしていたドジャース入団への決断と今季にかける思いとはーー。1万字にも及ぶロングインタビューより一部抜粋して、特別に公開します。<全2回の前編/後編も読む>

【初出:Number1094・1095号[ロングインタビュー]大谷翔平「大きな決断を迫られたときに」より】

 

ドジャースは「名門なのにすごく柔軟」

――今シーズンからドジャースのユニフォームを着てみて、このチームに感じている印象はいかがですか。

 

「エンゼルスって和気藹々としたフレッシュな雰囲気があって、若い選手も多いじゃないですか。エンゼルスへ入団したときには僕も若手でしたし、先輩たちにも温かみがありました。今年の僕はバッターのほうでプレーしていますからドジャースでは野手の人たちと接する機会が多いんですが、野手の年齢層がけっこう高めで、エンゼルスとはまた違った感じのプロフェッショナルな雰囲気があります。チームとして団結する側面を持ちつつも、個人としてやるべきことを大事にしているという……練習からひとりひとりが集中して、やるときはやる、エンゼルスの良さとはまた毛色の違ったスタイルを感じています」

 

――歴史のあるドジャースに伝統のようなものを感じることはありますか。

 

「今のところは、これがそうか、というものはとくになくて、むしろ名門なのにすごく柔軟だなと思うことのほうが多いですね。新しいことに対して寛容だし、新しいことをいち早く取り入れていく感性を持っている感じがします。これだけのお金を使って、本当に優秀な人にいち早くアプローチしていく柔軟性があるし、同時にマイナーシステムも充実させている。僕はマイナーへ行ったことはありませんが、ドジャースの一番の強みは育成だと思っていて、スプリングトレーニングに来ていた招待選手やマイナーの選手と接したら、それこそ毛色の違いを感じました。僕もそれなりの歳になりましたし、ドジャースの若い子たちが何を目的に練習をしているのかを見ていたら勉強になりました」

 

僕の心の中で何か感じるものがあった…

――12年前、花巻東からドジャースに行くことを決めていれば、ピッチャーとして、そのマイナーからのスタートになったと思います。7年前、ファイターズからエンゼルスを選んだときもドジャースは熱心に誘っていたと聞きますが、ナ・リーグにDHがなかったので投打の2つは今の形と違っていたでしょう。となると、ずっと縁があるように見えるドジャースは大谷さんにとって、どういう存在だったんですか。

 

「同じドジャースという球団ではありますが、高校を出たてのときとは内部の状況も編成の人も変わっていると思うので、今とは違うチームだと思います。ただ僕がこちらに来た2017年で言えば、当時の編成担当の方々は今とほぼ変わっていません。だから比較するならそのときかなと思うんですが、もし僕がドジャースの編成の仕事をしていたとしたら、僕がエンゼルスを選んだことについて、いろいろ考えるところがあったと思うんです。同じエリアの別のチームに行かれてしまって、それはフロントとしては複雑な気持ちがあったんじゃないかなと……それでも僕のことをその後もずっと評価し続けてくれて、いい選手はいい、欲しい選手は欲しい、と熱烈に勧誘してくれました。感覚的なものなので言葉にするのは難しいんですが、あえて言葉にするなら、最後までオファーを出し続けてくれたその姿勢に『ウチは名門だから』というところはまったく感じませんでした。だから最後、決めるとなったとき、僕の心の中で何か感じるものがあったんでしょうね」

 

二刀流の確信はなかった?

――2017年と2023年のドジャースは何かが変わった、ということですか。

 

「2017年のときには25歳ルールがあったのでお金云々のところは度外視するしかないんですが、正直、そのときに投打の2つをこういうふうにやっていくという明確な態勢、ビジョンを持っている球団はありませんでした。僕のほうにも本当に2つできるという確信はなかったし、メジャーリーガーとしてのキャリアをスタートさせるとき、そのために必要な環境を選ぶとしたらどこなのかを考えたら、エンゼルスだというのがそのときの僕のフィーリングでした。僕の中ではドジャースが変わったというより、僕のほうのフィーリングが2017年はエンゼルスと合った、今回はドジャースと合った、という感じです」

 

――そのフィーリングが結果的に大谷さんを正しい道に誘ってくれたと思えますか。

 

「エンゼルスはエンゼルスで、もちろんよかったと思っています。6年間のエンゼルスの環境は素晴らしかったし、あのときの選択は間違いではなかったと言い切れます。あちこちケガをしたせいで試合に出られない期間もあったので、そこは貢献できなくて申し訳なかったと思っています。ただ、自分にとってもチームにとっても、2つをやりたい方向へ順調に進んでこられたのは、エンゼルスという球団の持っている色が強く影響していたからだと思います」

 

<インタビュー後編に続く>

###

 

◆ 《独占インタビュー》ドジャース大谷翔平29歳に問う“10年後”「39歳の大谷さんイメージできてる?」「本当は40歳までフィジカル強化できたら…」

石田雄太氏/情報:NumberWEB)

###

 名門ドジャースで主力打者として活躍をみせる大谷翔平(29歳)。4月22日現在、打率は.368でナ・リーグ首位に立っている。メジャー開幕前にNumber本誌に明かしていたドジャース入団への決断と今季にかける思いとはーー。1万字にも及ぶロングインタビューより一部抜粋して特別に公開します。<全2回の後編/前編から読む>

【初出:発売中のNumber1094・1095号[ロングインタビュー]大谷翔平「大きな決断を迫られたときに」より】

 

大谷翔平が今年超えるべきハードル

――今年はバッター一本、しかもドジャースの1年目となれば、周りも大谷さん自身も、越えるべきハードルは高く設定せざるを得なくなります。昨年は両立が難しいと思われていた打率3割とOPS1.000をともにクリアしました。その技術的な進化をどう感じていますか。

 

「まずは年々、冷静に打席に立てるようになっているのは大きいと思います。慣れもありますしね。ただ、おそらく去年と同じやり方では今年はダメだと思うので、今のところは同じ数字を出すのは難しいというイメージです。今年のOPSはよくて.950とか.960……やっぱり千(1.000)を超えるのは難しいですよ。運とまでは言いませんが、去年は入るべきホームランが入っていたのも大きかったし、いい流れもありました。必ずしも去年やったのと同じことを今年やってみて、去年と同じ数字になるという感覚はありません。近い数字にはなると思いますけど……」

 

――ということは、今年は何かを変えて臨んでいるんですか。

 

「いや、去年の感覚を出していくことを目指しています。それでも同じ感覚を再現することが難しいんです。一度やってできたからといって、今年もできる保証はありませんからね。去年は6月頃から、すごくいい感覚を長いこと維持できたのがよかったんですが、その状態をシーズンの始めから発揮して、最後までフルで維持できるかと言われたら、そういうわけにはいかないし、そこが難しいところです。しかも周りを見ても、メジャーのピッチャーは年々、球は速くなるし球の動き方も大きくなっています。球は強くなる一方なので、自分がもっと上に行かないと……上に行ってやっと同じくらいの数字になると思っています。今年はリーグも変わるし、見たことのないピッチャーとやることも多くなる。バッティングはタイミングと距離感をベースにして、その次に自分がどう動きたいかというところへ続いていくものなので、相手を知らないというのは去年までとは大きく違うところだと思っています」

 

10年契約ーー39歳のイメージとは?

――大谷さんがメジャーでずっと目指してきた「コンパクトにブォーン」というスイングは完成に近づいているんですか。

 

「振り出しのところで改善したいなというところがあるので、課題はそこですかね。もっとシンプルにしたいのに、まだ動き出しで必要のない動きがあると思うし……でも完成形は去年の延長線上にありますから、やっぱり去年の感覚を出していくことが一番で、そこに何をプラスしていけるか、というふうに考えています」

 

――以前、大谷さんは「イメージできたとしても5年先」と話していましたが、今回の契約は10年です。2033年、39歳の大谷さんをイメージできているんですか。

 

「うん、そこは少しイメージするようになりました。ただ今年は新しいチームでの1年目なので、チームやファンの人たちに馴染むことから始めなくちゃと思っています。そのためには結果が必要です。期待してもらってドジャースに入って、期待通りの結果を残せるか……それがプレイヤーとして信頼を得る唯一の方法ですから、僕に必要なのは10年後よりもまず、今年の結果で示していくことじゃないですかね」

 

40歳までフィジカルを強化できたらベスト

――今年、30歳になります。30歳から35歳の間に技術とフィジカルがマッチしてプレイヤーとしてのピークが来る、という考え方は今も変わっていないんでしょうか。

 

「変わらないです。今のところはフィジカルがかなりいい状態だと思っていて、これがこの先、どの程度まで行けるのかというあたりは、どうなんでしょうね……もしかしたらフィジカルの向上具合で言えば、もうちょっと先があるのかもしれないな、と思うところもあります。となれば、ピークはもう少し先まで延ばせるかもしれません。この先は、技術を度外視してフィジカルだけを思いっ切り鍛えて、ハイ、次に技術を、みたいなやり方はできなくなります。シーズンはフル出場が当たり前、その中でトレーニングを続けて結果を出しながら、オフを強化に充てるということになっていきます。シーズンを戦ってオフに強化、またシーズンを終えてオフに強化ということを続けていくと、強化期間はあと5、6年なんじゃないかなという感覚があります。本当は40歳までフィジカルを強化し続けられたらベストなんですけどね。そうすればピークをさらに先まで延ばせるでしょ。その間に得られる技術をいっぱい詰め込んで、引き出しをいっぱい持っておいて、技術はいつでも引き出せる準備をしておくことが大事かなと思っています」

 

<インタビュー前編から読む>

 

(「NumberPREMIER Ex」石田雄太 = 文)

###

 

-------------------------------------------------------------

 ■ NOTE

 

imageimageimageimageimageimageimageimageimageimage