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2024年4月20日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年4月19日

日本時間:2024年4月20日(土曜日)

11時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ニューヨーク・メッツ

@ドジャースタジアム

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間4月20日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムでメッツとの3連戦がスタート。その初戦は先発の山本由伸が3回までに4点を失いながらも6回終了時点で4対4の同点に追いついたが、リリーフ陣が終盤に失点を重ね、4対9で敗れた。メッツ2番手のリード・ギャレットが3勝目(0敗)をマーク。ドジャース2番手のダニエル・ハドソンは4対4の同点に追いついた直後の7回表に勝ち越し弾を浴び、今季初黒星(1勝)を喫した。

 

 今季5度目の登板となった山本は、序盤から苦しいピッチングとなった。初回こそ三者凡退に抑えたものの、2回表一死からDJ・スチュワートに先制の3号ソロを被弾。さらに味方のエラーで出塁させた走者がハリソン・ベイダーのタイムリーで生還し、2点のリードを許した。3回表は一死1・2塁のピンチとなり、ピート・アロンソのタイムリーとスチュワートの犠飛で2失点。4回以降は無失点に抑え、最終的には99球で自己最長の6イニングを投げ抜いたが、被安打7(うち被本塁打1)、奪三振9、与四球1、失点4(自責点3)という投球内容でチームを勝利に導くことはできなかった(1勝1敗、防御率4.50)。

 

 4点ビハインドとなったドジャースは、4回裏にテオスカー・ヘルナンデス、5回裏に大谷翔平がタイムリーを放って2点差とし、6回裏二死満塁からクリス・テイラーの2点タイムリーで同点に。この時点で山本の負けは消滅した。ところが、2番手のハドソンが7回表にフランシスコ・リンドーアに2号勝ち越し2ランを被弾。8回表に3番手のジョー・ケリーが2点、9回表にも4番手のライアン・ブレイジャーが1点を失い、4対9で3連戦の初戦を落として今季3度目の連敗を喫した。

 

 5回裏に久々のタイムリーを放った大谷は「2番・DH」でスタメン出場し、4打数1安打1打点1四球。4回裏の第2打席で四球を選んだあと、二塁へ今季5個目の盗塁を成功させ、ヘルナンデスのタイムリーで生還した。連続試合安打を4に伸ばし、今季の打撃成績は打率.356、出塁率.400、OPS1.022となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

4打数 1安打 1打点 1得点 1三振 1盗塁(今季5)

通算打率・356

OPS1・022

 

◆第1打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)1回1死走者なし

(投手)ショーン・マナイア左

 

◆第2打席:

(結果)四球

(状況)4回無死走者なし

(投手)ショーン・マナイア左

※先頭打者だった大谷は冷静に球を見極めて四球で出塁。二死となった後、ヘルナンデスの打席で大谷が仕掛けた。初球に変化球が投じられた瞬間、一塁から猛ダッシュで二塁に滑り込み、悠々と盗塁に成功。しかし、ベースカバーに入り、捕手からの送球を受けた相手二塁手・マクニールがボールを収めたグラブでタッチしてくると、図らずも滑り込んだ直後の大谷の後頭部付近にボコッ! 流れの中でのプレーでヘルメット越しだったとはいえ、なかなかの〝強烈タッチ〟に大谷は両手で頭を抱えてうずくまる事態に…。それでも立ち上がる際にはマクニールの足をポンポンと叩いて〝大丈夫だ〟とアピールした。そして自らの俊足で二死二塁と広げたチャンスで、ヘルナンデスが続く2球目の直球を右前へはじき返すと大谷はグングンと加速して一気に本塁を陥れた。

 

◆第3打席:

(結果)ライト前ヒット

(状況)5回2死1、2塁

(投手)ショーン・マナイア左

※初球からスライダーを果敢に振って行った大谷。3球目は低めのボール球に手を出してファウルとし、追い込まれた。それでも外角のスライダーをカットし、浮いたところを右前に運んだ。2点差に迫る価値あるタイムリー。

 

 

◆第4打席:

(結果)空振り三振

(状況)7回無死走者なし

(投手)ブルックス・レイリー左

 

◆第5打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)9回無死1塁

(投手)ジェーク・ディークマン左

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

◯ 真美子夫人が19日(日本時間20日)、試合を観戦した。本拠地での観戦は3月28、29日のカージナルス戦以来3度目とみられ、バックネット裏三塁寄りの5階席スイートルームから見守った。コーイケルホンディエの愛犬デコピンも連れ、大谷の打席時には身を乗り出して、応援していた。

 

 

◯ マイク・トラウトが現地時間19日(日本時間20日)に米ポッドキャスト番組『ファウル テリトリー』に出演。昨シーズンまでチームメイトだった大谷についてコメントした。

 

「大谷みたいな選手を失うということは、代わりになる選手なんていない。投げて打つからね。なかなか難しいよ」

 

「FAの際には、もちろん帰ってこさせようとした。でもフリーウェイシリーズとかで何度か会って話すことができた。ワクワクしたし、うれしいよ。どこに行っても活躍できると思う」

 

「(大谷の打撃練習について)冗談みたいだよね。今でも大谷の打撃練習を超えるものを見たことがない。最初の2周目ぐらいまでは流しているんだけど、みんなが見ているのを知ってか知らずか、『いくぞ』ってもう一段階ギアを上げるんだ。見ていて面白いよ」

 

「(大谷はOPSは1.000を超えているものの、得点圏打率はあまりよくないですが…)大丈夫。上げてくるよ。野球っていうのはうまくいくときも思い通りにいかないときもある。厳しいスポーツなんだ」

 

「僕らがデビューした時とは違う。あの頃だったら平均球速91マイル(約146キロ)ぐらい?今や95、96マイル(約152~154キロ)が普通だもんね」

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「(大谷について)彼が塁上で積極的に走っているのが分かる。そして、彼は賢く走っている。あの盗塁がなかったら、最初の得点はなかっただろう。彼は何かを起こそうとしている」

 

「彼は本当に良い打席を迎え、チームにエネルギーを与えようとしている。それは素晴らしいこと。彼は良い野球をしている」

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平に待望の1本 得点圏21打席ぶり安打「チームにエネルギー生み出す」ロバーツ監督評価

斎藤庸裕氏/情報:日刊スポーツ)

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 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)19日(日本時間20日)=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(29)に、待望の1本が出た。メッツ戦に「2番DH」で出場し、5回2死一、二塁から右前に適時打を放った。得点圏に走者を置いた状況では3月20日のパドレスとの開幕戦(韓国・ソウル)以来、21打席ぶりの安打。第2打席では四球から盗塁で2試合連続の二盗をマークした。得点のきっかけを生み、チームをもり立てたが、先発の山本由伸投手(25)が6回7安打4失点(自責3)。救援陣も崩れ、2連敗を喫した。

 

      ◇     ◇     ◇

 

 やっと出た。チームを盛り上げる大谷の1本が、右前で弾んだ。5回2死一、二塁、左腕マナイアのスライダーを捉えた。得点圏に走者を置いた状況では開幕戦以来、21打席ぶりの安打に、一塁を回って右手人さし指を突き上げた。勝利にはつながらなかったが、ロバーツ監督は「チームにエネルギーを生み出し、何か起こそうとしてくれている」と評価した。

 

 今季の安打数では同僚のベッツを抜いてナ・リーグ1位となった。両リーグではトップタイ。高打率をキープしながら、得点圏ではこの日を終えて20打数2安打の打率1割。昨年は同3割1分7厘だっただけに、得点圏で安打が出ない謎が話題に上がっていた。それでも、3点ビハインドの場面から、さらに対戦成績6打数1安打だった左腕マナイアのスライダーを捉え、クリーンヒット。劣勢の状況を自力で打破した。

 

 本塁打は6試合連続で出ず、日本人メジャー最多の通算176号はお預けとなっているが、打つだけが大谷の強みではない。待望の1本が出た前の打席は四球で出塁。2死となり、5番T・ヘルナンデスの打席の初球で二盗に成功した。直後に適時打でホームへ生還。4点を追う状況の流れを変えた。2試合連続、直近6試合で4盗塁と快足ぶりを発揮。昨オフやキャンプで走塁改革に乗り出し、ここまでの5盗塁は失敗なし。継続的な取り組みの成果が確実に出てきている。

 

 大谷がチームをもり立て、一時は同点に追いついたが、4失点した山本からバトンを受け取った救援陣が踏ん張れず、9失点で完敗した。ロバーツ監督は「もう少し、いい野球ができただろう。もちろん、イラ立ちはあるし、負けるのは気分がいいものではない」と厳しい表情だったが、大谷のパフォーマンスについては「走塁でも積極性がある。いい野球をやってくれている」とたたえた。投打がかみ合わない状況で、攻撃的な大谷の姿勢が光った。

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◆ 「翔平が怒ってます」「怒らせとけ」栗山英樹監督が日本ハム時代の大谷翔平に言い続けたこと「チームを優勝させてから行け。なぜなら…」

栗山英樹氏/情報:NumberWEB)

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 メジャーリーグで2度のMVPに輝き、本塁打王も獲得した大谷翔平。花巻東高校からメジャー行きを宣言していた大谷を“二刀流”として育んだ北海道日本ハムファイターズ時代を振り返る。なぜ、5年間でメジャーに行くことができたのか? そこには栗山英樹監督とファイターズの“ある構想”があったーー。

 

『信じ切る力 生き方で運をコントールする50の心がけ』(栗山英樹著/講談社刊)より抜粋して公開します。<全2回の第1回/第2回も配信中>

 

メジャーに挑戦したい選手への「判断基準」

 

 選手について何かをしようとするとき、監督としての僕が強く意識していたのは、これでした。

 

「選手のためになるか、ならないか」

 

 ファイターズ時代は、球団も同じ判断基準を持っていました。

 

 例えば、メジャーに挑戦したい選手がいたとする。どうしても行きたいと言っている。でも、能力的に今、行っても成功しないと判断したら止める。それは、選手のために止めるのです。

 

 しかし、力があって行きたいのに「もう一年我慢してくれ」はしない。なぜなら、その一年間は無駄だから。

 

 人間は、心が必死にならないと、いいことは起こりません。本当に行くと決めていて、本人の能力が備わっていると判断できれば、行かせるというのが僕やGMのヨシ(吉村浩)のスタンスでした。

 

 実際、ダルビッシュもそうでしたが、ファイターズはどんどん選手を外に出しました。ドラフトで指名しても、相手が納得しないならあきらめました。FA(フリーエージェント)でも引き留めなかった。もし、引き留めていたら、大変な選手層になっていたと思います。

 

 でも、しなかった。出たい人たちのためには、そうしたほうがいいし、そうするべきだと考えたからです。挑戦するべきなのです。監督としては、「あの選手がいてくれたら」などと冗談で言ったりしていましたが、選手を出すことに対して、球団に文句を言ったことは一度もありませんでした。

 

 高校時代から、メジャーに行きたいと宣言していた翔平についても同じです。

 

「二刀流は優勝するためにあるんだ」

 

 例えば、翔平が入団したのは、ファイターズがリーグ優勝した翌年です。チームが優勝すればその先数年は、チームの将来についてビジョンを描く余裕ができます。その年、チームは最下位に沈んでしまいましたが、だからこそ、若手を積極的に使うことができたのも事実です。翔平にも、思い切ったことをさせられた。翔平がメジャーに行くために物事が進んでいるな、野球の神様が絵を描いているな、と僕は思っていました。WBCの決勝戦のずっと前から、そんな流れができていたのです。

 

 メジャーに行くまで日本にいる時間が短ければ短いほど、ファイターズを選んでくれた彼に対する誠意になると僕は思っていました。早く行かせてあげられれば、彼も喜ぶ。そのほうが、彼のためになる。ただ、それは力をつけてから、が条件でした。

 

 僕はまず、「チームを優勝させてから行け」と言っていました。なぜなら、「二刀流は優勝するためにあるんだ」と彼には言ってきたし、僕はそう信じていたからです。だから、チームに貢献してから行くべきだと思いました。

 

日本一は翔平の活躍があってこそ

 

 入団4年目の2016年、翔平はチームを日本一にしました。先にも触れた、大差がついていたソフトバンクとの優勝争いに勝ち、日本シリーズでも勝ったのです。あの日本一は、翔平の活躍があってこそ、でした。

 

 これで翔平は約束を果たしました。日本にいるのは、目途として5年と言っていましたが、ここからは翔平の選択でした。5年である程度、身体ができて、プロの野球をそれなりに覚えられると僕が踏んだ5年に、ぴったり照準を合わせてきたわけです。

 

 やっぱり神様がいると思いました。1年、余裕を持たせて、4年目を優勝で終えた。さあ、あと1年準備してアメリカ行きだ、とできるわけです。

 

 翔平の4年目のシーズンが終わったオフから、僕は1カ月半おきくらいに、翔平に本当にアメリカに行くのか確認していました。5年目のシーズンは、開幕直後に大怪我をしてしまいました。ファーストに向かうときに肉離れを起こしてしまった。しかし、肉離れだけは、どうしても起こるのです。

 

翔平からの質問「僕がどの程度できると…」

 

 ここから2カ月半、翔平はチームを離れますが、その間も「本当に今年が終わったらアメリカに行くのか」と僕は確認していました。翔平は一切、ブレませんでした。

 

「行きます」と毎回、必ず言っていました。

 

 それくらいの覚悟がないと成功はできないと僕は思っていましたが、大怪我をしているときも、「行きます」はまったく変わりませんでした。チームに戻ってきたのは、オールスター直前の6月でした。そこから、翔平は準備をしていくのです。

 

 翔平についてのドキュメンタリー映画がディズニープラスで配信されましたが、その中で翔平から一つ、僕は質問を受けたのでした。

 

「監督、僕がどの程度できると思っていましたか?」

 

 実は僕は、もっと活躍することもあり得ると思っていました。ホームラン王だってあり得るし、ピッチャーの勝ち星はもっと伸びると思っていました。ひょっとしたら20勝するかな、くらいに思っていたのです。

 

「翔平が怒ってます」「怒らせとけ」

 

 ただ、チームが勝てなければ、ピッチャーも勝てない。何試合使うかは本当に難しい問題で、何が正解かはわからないのが前提ですが、勝ち星を増やしたいなら、試合数をコントロールしたほうが、というのが僕の考え方です。でも翔平は、投げたくてしょうがない。ただ、人間は自分のことは、なかなかわからないのです。

 

 2016年にファイターズがリーグ優勝したとき、残り3試合でマジック1という ヒヤヒヤの状況でした。残り2試合で翔平の先発が決まっていたのですが、それ以外でも「出してくれ」と翔平はマネージャーに言っていたようでした。

 

 マネージャーが「翔平が怒ってます」と言うので、僕は「怒らせとけ」と返していました。より良い結果を出すために、休ませなければいけないときは、休ませなければいけないのです。

 

<続く>

 

(「Number Ex」栗山英樹 = 文)

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◆ 「僕には時間がない」栗山英樹監督が驚いた大谷翔平の発想…外出時の“大谷ルール”は必要なし?「2年目まで翔平は門限を知らなかった」

栗山英樹氏/情報:NumberWEB)

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 メジャーリーグで2度のMVPに輝き、本塁打王も獲得した大谷翔平。花巻東高校からメジャー行きを宣言していた大谷を“二刀流”として育んだ北海道日本ハムファイターズ時代を振り返る。なぜ、5年間でメジャーに行くことができたのか?  そこには、栗山英樹監督も驚いた若き大谷独自の考え方があったーー。

『信じ切る力 生き方で運をコントールする50の心がけ』(栗山英樹著/講談社刊)より抜粋して公開します。<全2回の第2回/第1回も配信中>

 

翔平は筋トレだけはやめなかった

 

 翔平に驚かされるのは、独自の考え方がはっきりあることです。例えば、打ったり投げたりする練習を、途中でやめてしまうことがある。自分がイメージしているものと、あまりに違う動きになっていることに気づくと、やめてしまうのです。

 

 もし、そのまま練習を続けると、おかしな動きがそのままクセになってしまいかねない。悪いフォームになってしまうということだと思います。昔は、それを直すための練習をしたり、バットを振ったりしたものですが、翔平はやらない。

 

 一方で、筋肉を鍛えるトレーニングだけはやめなかった。シーズンに入って遠征に出ていたとしても、朝10時になると必ずリュックサックを背負ってトレーニングに行っていました。僕は一緒に行くわけではないので、トレーナーに話を聞きました。

 

 それこそ、その日も試合があるし、前日までの試合で身体の疲れもある。だから、トレーニングを休んだほうがいいのでは、とトレーナーが言っても、本人は聞かない。

 

「今日、仮に身体が疲れてしまっていたとしても、試合では何とかします。今日の試合のこと以上に、僕には今やっておかないといけないことがあるんです」と言うのです。

 

「僕には時間がない」

 

 翔平の頭の中にあるのは、「今じゃない」ということでした。

 

「今のためではなく、 将来こういうプレーヤーになるために、今やっておかなければならないことがある。 だから、今やる」。こんな発想をする選手は、トレーナーも見たことがないと言っていました。

 

 大事なことは、もっと先にある。なかなか常人には、理解ができないことかもしれ ません。

 

 おそらく翔平の中には、大リーグでホームラン王になった今のバッティングのイメージや、投球のイメージがすでにあったのだと思います。もしかしたら、今はそれ以上になっているのかもしれませんが。

 

 最近のインタビューでは、「僕には時間がない」という話をしていました。

 

「自分自身も年を重ねて、野球人生も中盤に差し掛かっている。ここから先、多くの時間があるわけではない。本当に無駄にしないように、悔いの残らないように毎日頑張りたい」

 

 まだ20代で、将来は開けていくはずなのに、これが翔平の感覚なのです。トレーニングを含めて、もっとやりたいことがあるのに時間がないと言っていたのです。

 

 一般的な選手の本能は、「今日の試合で結果を出したい」でしょう。しかし、それを超越して、「今ではない」と言い切って、トレーニングをやり切ってしまう。これが、翔平なのです。

 

 翔平を見ていて、思ったことがありました。ストイックに身体を鍛え、練習し、外出もしないし、遊びにも行かない。しかし、それは彼が生活を律しているのではない、と僕は感じていました。

 

 自分のやりたいことの優先順位の問題です。

 

「そんなことをやっている時間があるんだったら、これをやってもっとうまくなりたい」

 

 そういうイメージがはっきりしているのだと思うのです。おそらく、ですが。だから、「律している?」と問われたら「え?」となると思います。

 

 みんなで食事をしたり、お酒を飲んだり、女の子と騒いだりする一瞬の楽しさよりも、スタジアムに来ている 万人が「すごい」と驚いたり、喜んでくれるプレーができる。翔平が目指しているのは、それなのです。

 

「大谷ルール」はいらなかった

 

 入団後、翔平は外出時の「大谷ルール」でも有名になりました。外出は許可制。門限も設ける。二刀流をやるのであれば、どうしても練習で身体に負荷がかかる。翔平の出身校、花巻東高校の佐々木監督も心配されていました。だから、休む時間をしっかり取らせることが、「大谷ルール」のもともとの発想でした。

 

 実は、何人かの選手にも同じようなルールを作りましたが、最後までルールを守り切ったのは、翔平だけでした。

 

 外出するときには、僕に直接、連絡をする。例えば、誰と食事に出るのか、知らせる。結局、僕は一度もダメ出しをしたことはありませんでした。僕が心配していたのは、「ちょっと大谷くんを連れてきて」と言われた、などと他の選手からの誘いが来ることでした。

 

 超スーパースターになろうとしている翔平に会いたい人は多い。しかし、それをすべて許していたら、間違いなくおかしくなると思いました。ただ、本当に行きたいのであれば、行っても構わないと思っていました。翔平が憧れの選手と食事をするのもいい。

 

翔平は“門限”を知らなかった

 

 今も覚えていますが、2年目の7月、仙台で完投勝利をした夜、翔平から連絡が来たのでした。試合後の遅い時間でした。

 

「監督、お疲れさまでした。今日、花巻東時代のキャプテンが仙台に来ているんですが、ちょっと飯、食べに行っていいですか」

 

 僕が「どうぞどうぞ、ゆっくり食べてきなさい」と伝えると、「ちなみに、門限って何時ですか?」という返事が来ました。実は2年目の夏まで、翔平は門限を知らなかったのです。門限が必要なかったから、門限という発想もなかった。

 

 門限はあったと思いますが、僕は返信しました。

 

「門限あるけど、気にしなくていいから、ゆっくり食べてきなさい」

 

 改めてルールなんて、どうでもいいのだと思いました。翔平にとっては、あってもなくても、どっちでもよかった。あろうがなかろうが、本人の問題だったのです。

 

<第1回も配信中>

 

(「Number Ex」栗山英樹 = 文)

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 ■ NOTE