2024年4月17日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2024年4月16日

日本時間:2024年4月17日(水曜日)

11時10分開始

ロサンゼルス・ドジャース

対ワシントン・ナショナルズ

@ドジャースタジアム

 

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【MLB.JP 戦評】

 日本時間4月17日、ドジャースは本拠地ドジャー・スタジアムでのナショナルズ3連戦の2戦目を迎え、ムーキー・ベッツが5打数5安打2打点の大活躍を見せるなど、6対2で勝利。連敗を2でストップした。ドジャース2番手のライアン・ヤーブローは3回表から登板し、5回2安打2失点のロングリリーフで2勝目(0敗)をマーク。ナショナルズ先発のパトリック・コービンは7回途中9安打5失点で降板し、開幕3連敗となった。

 

 1回裏無死満塁からテオスカー・ヘルナンデスの併殺打の間に先制したドジャースは、2回裏にオースティン・バーンズとベッツの連続タイムリーで2点を追加。直後の3回表にジェシー・ウィンカーの2号2ランで1点差に詰め寄られたが、5回裏にキケ・ヘルナンデスの1号ソロが飛び出し、4対2とリードを広げた。試合はそのまま終盤を迎え、7回裏にテオスカー・ヘルナンデス、8回裏にベッツがそれぞれタイムリーを放ち、1点ずつを追加。6対2でナショナルズを破った。

 

 ドジャースの大谷翔平は「2番・DH」でスタメン出場。5打数2安打で連続試合安打を3に伸ばし、4試合ぶりのマルチ安打を記録したが、2安打はどちらも走者が得点圏にいない状況で放ったものだった。2回裏一死2・3塁の第2打席、4回裏二死1・3塁の第3打席、7回裏無死2塁の第4打席はいずれも凡退。これで今季、得点圏では19打数1安打(打率.053)となった。開幕20試合を終え、打撃成績は打率.341、出塁率.385、OPS1.019となっている。

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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【スタメン】

2番DH

 

【出場成績/打者】

5打数 2安打

通算打率・341

OPS1・019

 

◆第1打席:

(結果)レフト前ヒット

(状況)1回無死1塁

(投手)パトリック・コービン左

※2ストライクからの3球目、真ん中低めの92・4マイル(約148・7キロ)のシンカーにバットを合わせて逆方向へ。痛烈なライナーは左前にはずんだ。続くフリーマンが四球を選んで無死満塁。4番のT・ヘルナンデスの遊ゴロ併殺打の間に1点を先制した。

 

 

◆第2打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)2回1死2、3塁

(投手)パトリック・コービン左

※ベッツの左中間適時二塁打で3―0とリードを広げた2回一死二、三塁は初球の92・3マイル(約148・5キロ)の外角シンカーを強打。打球速度107・7マイル(約173・3キロ)の弾丸ゴロは前進守備の二塁手の正面だった。

 

◆第3打席:

(結果)セカンドゴロ

(状況)4回2死1、3塁

(投手)パトリック・コービン左

※初球の92・4マイル(約148・7キロ)の外角シンカーを引っ張って二ゴロに倒れた。

 

◆第4打席:

(結果)センターフライ

(状況)7回無死2塁

(投手)パトリック・コービン左

※4―2の7回無死二塁も初球攻撃。91・2マイル(約146・8キロ)の外角シンカーを中堅へ打ち上げた。大歓声が上がったが、伸びずに平凡な中飛だった。これで得点圏は3月20日の韓国・ソウルでのパドレスとの開幕戦の8回一死一、二塁で左前適時打を放って以降、2犠飛を含み20打席無安打。通算は19打数1安打、打率0割5分3厘、4打点は開幕して20試合とはいえ、さびしい数字だ。

 

◆第5打席:

(結果)サード内野安打

(状況)8回2死1塁

(投手)タナー・レイニー右

※ベッツの適時打で6―2となった8回二死一塁はカウント2―2からの5球目、外角高めの見送ればボールの94・4マイル(約151・9キロ)のフォーシームに何とかバットを当てるとボテボテのゴロが三塁前へ。快足を飛ばして三塁内野安打とした。

 

 

【コメント】

なし

 

【NEWS情報】

 

◯ XJAPANのYOSHIKIが試合前に米国国歌演奏などを行った。練習中には三塁側のドジャースベンチを訪問。大谷、山本と交流した。約3分間談笑し、サイン入りユニホームをプレゼントされたYOSHIKI。その後、ベンチで自らのスマホを取り出し右手に持ちながら3ショットを自撮り。左手はピースサインをしており、山本と大谷も笑みを浮かべている。セレモニーではセンターにピアノが持ち込まれ、ビジョンでは紹介映像が放映。その後、「Endless Rain」の演奏が始まると終盤には一部のファンがスタンドで大合唱するシーンもあった。

 

休憩を挟んで国歌演奏が行われたが、YOSHIKIが演奏するも場内にピアノの音が流れず。音響トラブルとみられ、やり直すことに。それでも米国国歌を奏であげると、スタンドから大きな拍手がわき起こった。YOSHIKIは大谷&山本の存在を「アメリカに住む日本人として勇気づけられています」と語っていた。試合も終了まで観戦し、八回に大谷が内野安打を放った際には客席で笑みを浮かべながら拍手を送っていた。

 

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 ■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)

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【コメント】

デーブ・ロバーツ監督:

「(スコアリングポジションでランナーを置く場面で、大谷が3打席連続で初球打ちを行ったことについて)ショウヘイはアグレッシブな打者だ。得点圏にランナーがいるときは、これまで以上に超攻撃的だと思う。だからその気持ちをもう少し抑えなければいけない。投手に球数を投げさせることも必要だ(珍しく苦言も)」

 

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 ■ 球界情報

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デービッド・フレッチャー内野手:

◯ ブレーブスは16日(日本時間17日)、デービッド・フレッチャーをメジャー昇格させた。フレッチャーは昨季までエンゼルスに在籍。ともに2018年にメジャーデビューを果たした大谷翔平とも親交が深い。フレッチャーは昨年12月に交換トレードでブレーブスに移籍。今春キャンプは招待選手として参加していた。開幕メジャーこそならなかったが3Aで13試合に出場し打率・280とまずまずの成績を残し、メジャーへの切符をつかんだ。フレッチャーはエンゼルスで大谷と同じ18年にメジャーデビューを果たし、21年から5年2600万ドルの長期契約を結んだ。核となる選手として期待されたが、故障続きで成績は低迷。昨オフにブレーブスへトレード移籍していた。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ YOSHIKIピアノ生演奏思わぬハプニングも… 異国で成功するために必要なメンタリティとは?

斎藤庸裕氏/情報:日刊スポーツ)

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【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)16日(日本時間17日)=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(29)が4試合ぶりのマルチ安打をマークしながら、得点圏で3度凡退した。

 

 ナショナルズ戦に「2番DH」で出場し、5打数2安打。得点圏打率が19打数1安打の打率5分3厘まで下がった。試合前に生演奏を披露したX JAPANのYOSHIKIが観戦する前で豪快アーチが期待されたが、日本人のメジャー通算本塁打数の記録更新は、またも持ち越しとなった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 YOSHIKIが、試合前にピアノの生演奏を行った。まずはバラードの名曲「ENDLESS RAIN」の演奏を披露。観客から拍手を受けた。その後、両軍の選手が整列する中で国歌の演奏を始めたが、音響の不具合で、しばらくスタジアム内は静寂に包まれた。思わぬハプニングに見舞われたが、即興で間奏を作曲。“Take2”は不具合なく、美しいピアノの音色が響き渡った。「まさか2回演奏とは思いませんでした。大歓声を聞いた瞬間、即興を含め、頑張って良かったと思いました」と振り返った。

 

 試合前には大谷と山本と対面。2人から特注の背番号44のユニホームをプレゼントされた。2人のドジャースに加入について「(同じ)ロサンゼルスに住んでいるので、とてもうれしいです」と喜んだ。大谷の二刀流での活躍には「すごいですよね。僕もアメリカに来て長いんですが、大谷選手が来て、スーパースターが来てアメリカで頑張っているのは尊敬もしますし、アメリカに住む日本人として、とても勇気づけられます」と敬意を示した。

 

 ロサンゼルスを拠点とし、米国でも音楽活動を続けている。野球と音楽でジャンルは異なるが、共通点もある。「僕に限らないと思うんですけど、いろんな方に支えられて皆さんここに立っていると思うので、少しでも、恩返しできるようにという気持ちで日々、頑張ってます」。また、異国で成功するために必要なメンタリティについては「やっぱり努力する結果というのは出るので。努力、努力、努力。それがメンタルにもつながるのかなと思いますけど」と語った。

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◆ 「いろんなこと、今はあると思いますけど…」ダルビッシュ有、大谷翔平への思いを語る「大谷くんも結婚されて…すごく明るい感じ」

四竈衛氏/情報:NumberWEB)

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 事の経緯は定かではない。ただ、練習の合間のような偶然でもない。侍の3人は、おそらく互いに連絡を取り合い、示し合わせたかのように、グラウンド上で再会する貴重な時間を共有した。

 

約15分間にわたる「三者会談」

 

 ドジャースの本拠地ドジャースタジアムで行われた「ドジャース―パドレス」3連戦の2日目となった4月13日。曇り空の下、右翼付近に姿を現したパドレスのダルビッシュ有をみとめたドジャースの大谷翔平、山本由伸は、満面の笑みを浮かべつつ、三塁側ダッグアウトから小走りで駆け寄り、先輩のもとへあいさつに訪れた。にこやかに出迎えたダルビッシュに対し、帽子を取って深々と頭を下げ、握手を交わすと、昨年3月のWBCでも一緒に戦った3人は笑みを絶やすことなく、約15分間にわたって談笑した。

 

 両軍の直接対決は、3月20日、韓国・ソウルで開催された公式戦の開幕シリーズ以来だったものの、公の場での「スリーショット」は今季初めてだった。前日12日に山本が登板し、翌14日には「ダルビッシュVS大谷」が再現される予定でもあり、ちょうど「間の空いた」1日だった。

 

ダルビッシュが語る大谷の変化

 

 3人の会話の詳細は、知るよしもない。だが、14日の登板後、ダルビッシュは、素直な思いを口にした。同地区の宿敵ドジャースに所属するとはいえ、年下の後輩達と屈託なく話す機会は貴重だった。

 

「楽しかったですね。大谷くんもやっぱり結婚されて、いろいろ肩の荷が降りたじゃないけど、多分隠さなくていいところが増えたと思うし、だからすごく明るい感じもします。いろんなこと、今はあると思いますけれども、その中でも野球に集中して、なんていうのかな、笑顔で前向きにやっているのを見ると自分も元気になるので、山本くんもそうですけれども、話せてよかったです」

 

再戦の第1打席は三振

 

 迎えた14日の3戦目。

 

 ダルビッシュは、左打席で悠然と構える大谷の姿を、特別な思いで見つめていた。立ち上がりから本来の調子には程遠かった。それでも、第1打席の3球目に最速95マイル(約153キロ)をマーク(結果はファウル)したのは、より力を込めた大谷の打席だった。

 

「ずっと今まで、(宿敵は)ドジャースって思っていたところが、やっぱり大谷くんと対戦するところであったり、すごくモチベーションをやっぱり感じているところなので、それがこういう結果になっちゃうというところだと思います」

 

 状況は無死二塁。安打のみならず、進塁打すら打たせたくない。結果は、内角ヒザ元へ食い込む時速93マイル(約150キロ)の高速カットボールで空振り三振。互いに目を合わすことなく、プレーは続いた。

 

第2打席でボール球を振った大谷に対し…

 

 3回2死走者なしで迎えた第2打席は、内角を意識したダルビッシュの丁寧さが裏目に出たのか、カウント3―0となった。それでも、大谷は意図したかのように、積極的にバットを振ってきた。空振り、ファウルでフルカウント。最後は抜け気味のスプリットでタイミングをずらし、力ない三飛に打ち取った。

 

「とにかくフォアボールだけは嫌というところだったので、それがスリーボールになって、(4球目に)ボール球を振ってくれて、わざとだと思うんですけど。でも、なるべくストライク投げるようにということだけ集中はしました」

 

 オールスターなどの「宴」であればともかく、同地区の宿敵相手の公式戦。ピンチを回避するうえで、四球で歩かせていいケースもある。それでも、ダルビッシュと大谷は互いに、ファンが望まない結果で終わらせるつもりはなかった。実際、凡退してダッグアウトへ向かう大谷に対し、ダルビッシュはすれ違いざまに声をかけた。

 

「ボールばっかりで申し訳ない」と謝罪し、試合後は「もっと気持ち良くストライクゾーンに行きたかった」と、その場面を振り返った。

 

第3打席は空振り三振

 

 だからこそ、第3打席は徹底してストライクゾーン内で勝負した。スライダー、カットボール、速球、スプリットと異なる球種を続け、最後は外角寄りのカットボールで空振り三振。特別な相手に、特別な思いを胸に、全「18球」を投げ込んだ。

 

 日本ハム時代の終盤、無敵の状態で投げ続けた末、より高いレベルを求め、海を渡った。そんなダルビッシュが37歳となった今季、同じ背番号「11」の後継者だった大谷が打席に立つと、感慨深い思いは自然とわき起こった。

 

大谷との対戦でわき起こった思い

 

「今までなかったですね、基本的には。日本の時とかありましたけど、米国に来るとやっぱりそういう機会があんまりないですし、対戦機会も少ないですから。そういう感情っていうのはなかったですけど、やっぱり大谷くんが来ると、日本にいた時をちょっと思い出すというか、個々の対決の楽しさを思い出させてくれると思います」

 

 韓国での初対戦では2打数1安打、そして今回は3打数無安打2三振。ただ、今のダルビッシュが、結果だけにこだわっているとも思えない。

 

 今季、両軍の直接対決は残り3カード8試合。

 

 同地区のライバルとしての戦いだけでなく、互いを強烈に意識し合う「ダルビッシュVS大谷」の力勝負は、今後、球史に刻まれる名勝負になりそうだ。

 

(「メジャーリーグPRESS」四竈衛 = 文)

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◆ アメリカで「お金に興味のない野球少年」の印象広まる…在米記者が見た大谷翔平の本当の強さ

志村朋哉氏/情報:プレジデントオンライン)

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アスリートでありながらセレブとなった大谷翔平。なぜ、グラウンド外の一挙手一投足もここまで注目されるのか。『米番記者が見た大谷翔平』(共著/朝日新書)を刊行したばかりのジャーナリスト・志村朋哉さんは、「批判される機会も増えるのがアメリカでセレブになる宿命」という――。

 

■球界唯一のセレブとなって

 

 アメリカ人口第2位の大都市ロサンゼルスは、「エンタメの都」と呼ばれる。そのロサンゼルスの象徴ドジャースに移籍した大谷翔平は、良くも悪くもエンゼルス時代とは比べ物にならないほど世間の注目を集めている。

 

 実際、シリーズ開幕と同時にグラウンド外のニュースで日々洗礼を受けたが、逆境の時こそ、その人の本質が表れるという。まさに今年は大谷の第二幕の年となるだろう。

 

 ドジャースのユニフォームを着るまでを振り返ってみよう。

 

 昨年12月に自身のインスタグラムで移籍を発表してから、大谷はシーズン前から世間を大きく賑わせた。

 

 北米スポーツ史上最高となる総額7億ドル(約1000億円)での契約は、米メディアでスポーツの枠を超えるニュースとして扱われた。スポーツに興味がない層にも、「超大金持ちの野球選手」として認知されるようになった。大谷がアメリカの野球界で唯一の「セレブ」になった瞬間といえるかもしれない。

 

 2月末には、またもインスタグラムにて自身の結婚を電撃発表。アメリカでは、日本のような騒ぎにはならなかったが、それでも米球界では異例なことに、地元やスポーツのニュースとして取り上げられた。

 

■オオタニ観の日米の温度差

 

 そして、3月の韓国での開幕戦シリーズの真っ最中に起きた「水原事件」。ダグアウトで談笑する大谷と水原一平通訳の姿が中継に映った第1戦の後に、ドジャースが水原を解雇したという衝撃のニュースが流れた。3週間後には、連邦地検が水原を訴追したと発表。訴状によると、違法スポーツ賭博で4000万ドル(約62億円)以上の負けが生じた水原が、大谷の銀行口座からブックメーカーに1600万ドル(約24億5000万円)以上を無断で送金していたという。

 

 大谷を公私ともに最も近くで支えてきた水原の違法賭博疑惑は、セレブの街ロサンゼルスにぴったりなスキャンダルである。ドジャース移籍以上に米メディアで大きく取り上げられた。

 

 日本とアメリカでは、こうした大谷の話題に対しての反応に違いがある。

 

 結婚について言えば、突然SNSで結婚を発表して、会見を開いたにもかかわらず、奥さんの素性を明かさなかった大谷の言動を不思議に感じたアメリカ人は多かった。

 

 アメリカでは、有名人に恋人や配偶者がいるのは当然との認識があり、当事者たちもそれを隠したりはしない。私生活をSNSで公開するのも珍しいことではない。だから、婚約や入籍をしても、わざわざ会見を開いて発表するということもない。

 

 「アメリカ人からすると、『何を隠しているんだ、本当にいるのか、何かおかしい』と思ってしまうかもしれない」とロサンゼルス・タイムズでコラムニストを務めるディラン・ヘルナンデスは言う。

 

■ネタとして面白い「陰謀論」

 

 「水原事件」については、連邦地検が捜査を明らかにするまでは、「大谷の説明を完全には信じられない」というアメリカ人は多かった。

 

 なぜ水原が大谷の銀行口座にアクセスできたのか。なぜ450万ドルもの額が送金されたことに、大谷も周囲の人間も気づかなかったのか。ほとんどの記者やファンが、疑問に感じている。

 

 ドジャースの本拠地開幕戦で20人ほどにインタビューしたが、ドジャースファンでさえ、大谷の話を100パーセント信じていると答えた人はいなかった。

 

 スポーツファンやコメンテーターには、「賭博を行っていたのは大谷で、水原も野球界も大谷をかばおうとしている」という陰謀論を持ち出すものすらいた。何の根拠もないが、その方が「球界最大のスターにまつわるネタとして面白い」からだろう。

 

 日本人にとって大谷は、老若男女問わず誰もが知る国民的スターである。メジャーリーグという世界最高峰の舞台で頂点に君臨する大谷は、日本人にとって憧れであり、誇りを感じられる存在なのだ。それに、日本では、グラウンドのゴミを拾ったとかファンやスタッフに「神対応」したとか、大谷の一挙一動が報じられ、多くの国民が大谷という人間を少なくとも「知った気」にはなっている。

 

 その大谷に「完璧」な存在であってほしいと願い、大谷が嘘なんてつくはずがないと思うファンが日本に多いのは当然のことだ。

 

 しかし、アメリカでの大谷は、トップアスリートとして尊敬は集めるが、ファンが自身を重ねて誇りを感じるほどの存在ではない。

 

■「本当に大谷は賭けていないの?」

 

 大谷の人間性も世間にあまり伝わっていない。スーパースターにしては、メディア露出が少なく、あまり取材にも応じてこなかった。アメリカ人にとっては、通訳を介してしか話を聞けないため、性格をイメージしづらい。プライベートについても、ほとんど語らないので、「ミステリアス」との印象を持たれている。

 

 そういう背景もあって、アメリカのほうが今回のスキャンダルに関して、ニュートラルな見方をしている人が多いのは間違いない。

 

 実際、何人もの友人たちから、「本当に大谷は賭けていないの?」と聞かれた。「そんな風に大谷を見るなんて不謹慎だ」と日本人は思うかもしれないが、何の思い入れもない有名人が似たようなスキャンダルに巻き込まれたら、同じような好奇の目で見てしまう可能性はある。

 

 検察によると、水原は電話で大谷になりすまして銀行に送金を許可させたり、代理人を騙して大谷の口座を管理できないようにしたりしたという。こうした情報を検察が発表したことで、大谷の説明に納得するファンは増えた。

 

■ホームランボールでの摩擦

 

 さらに、大谷が3月3日(米時間)に放ったドジャース移籍後初となるホームランをめぐっても、ちょっとした騒動が起きた。

 

 記念ボールを拾ったアンバー・ローマンさんが、「夫と引き離され、スタッフに囲まれた状況で、ボールを持って帰るのなら本物認証をしないと言われ、即決を迫られた」と球団の対応に不満を漏らしたのだ。結局、サイン入りのボールとバット、帽子2個と引き換えたという。大谷にも対面できなかった。

 

 批判を受けたドジャースは、ローマンさんと夫をVIP待遇で本拠地での試合に招待して和解した。大谷はローナンさんと対面し、サインや写真撮影に応じた。球団は記念ボールの回収方法も見直すと発表した。

 

 また、大谷がホームラン直後の囲み取材で、「まあ戻って、ファンの人と話して、ハイ頂けるということだったので、ハイまあ僕にとってはすごく特別なボールなので、ありがたいなと」とローマンさんに直接会ったとも受け取れるような説明をして、ウィル・アイアトン通訳が「僕がファンの方と話して、ボールを返してもらうことができました」と英語に訳したため、米メディアには混乱が起きた。大谷とローマンさんの発言の食い違いを受けて、「大谷は嘘つき」と批判したり、賭博疑惑と絡めたブラックジョークをSNSに書き込んだりする他球団のファンすら現れた。

 

 これらの騒動や事件が大きな話題になったのは、大谷がアメリカで「セレブ」としての地位を確立したことの裏返しでもある。記念ボールの件などは、大谷以外の野球選手だったら、ニュースにすらなっていないだろう。

 

■7億ドル稼ぐ選手を快く思わない人も

 

 今や大谷は、日本だけでなく、アメリカでもその発言や一挙一動を注目される存在になりつつある。アメリカで、ここまでの地位に上り詰めた日本人は他に思いつかない。

 

 人種や価値観が多様なアメリカには、国民全体が一体となって応援するようなスターは存在しない。注目度が高まれば、批判される材料も増える。人気が出るほどアンチの数も増える。大谷と同じロサンゼルスでプレーするNBAのレブロン・ジェームズや、NFLの名クォーターバック、トム・ブレイディといったトップアスリートもそうである。「スターの宿命」とも言えるだろう。

 

 大谷のドジャース移籍は、野球界全体にとってみれば朗報と言えるが、脅威と感じる他球団のファンもいる。金に物を言わせて大型補強を行うドジャースが「悪の帝国」として映ってもおかしくない。自分の贔屓球団を選んでくれなかったことや嫉妬心などで、大谷を恨む野球ファンもいる。実際、古巣エンゼルスの球場では、大谷の映像が大型ビジョンに映って大きなブーイングが起きた。格差の激しいアメリカ社会で、一人のアスリートが7億ドルを稼ぐことを快く思わないアメリカ人もいる。

 

■「最も偉大なアスリート」の資質

 

 これまでの大谷はプレーで魅せていれば、アメリカのファンも満足していた。しかし、大都市ロサンゼルスの名門球団で7億ドルを稼ぐ「セレブ」となった今は、グラウンドの内外で厳しい視線が向けられることになる。

 

 些細なことが大きなスキャンダルとして扱われるかもしれない。それを苦痛に感じる日本のファンもいるだろうが、現実として受け入れるしかない。

 

 前出のジェームズやブレイディは、メディアやアンチの批判に晒されながらも、在籍チームを優勝に導き続け、「最も偉大なアスリート」に名を連ねるようになった。大谷にも同じ資質がある。WBCで日本を優勝に導く姿を見て、筆者はそう感じた。

 

 実際、「水原事件」があったことなど微塵も感じさせない好スタートを切った。記者の質問にも、いつもと変わらぬ様子で淡々と答えている。

 

■活躍を支えている「冷たさ」

 

 大谷はインタビューで自分のことを他人事のように語る。

 

 自身を客観視し、感情を切り離すことができるのだ。

 

 「冷たさ」を感じることもあるが、このメンタリティーが大谷の活躍を支えていると筆者は分析する。

 

 野球は9人が9回をめまぐるしく戦い、逆転はいつ何時でも訪れる。どんなに良い打者でも3回に2回は失敗し、運が結果を左右することも多い。思えばこれほど思い通りにいかないスポーツはないかもしれない。

 

 これからもいくつもの波を乗り越えていくことで、これまで「謎」とされていた大谷の人間性がアメリカ人にも伝わっていくだろう。実際、「水原事件」によって、「お金に興味のない野球少年」のイメージはアメリカにも広まった。

 

 全米のメディアやスポーツファンが野球に注目するポストシーズン。大谷はそこで活躍してドジャースを優勝に導き、さらなるスターの階段をかけ上がることができるのか。

 

 今年もメジャーリーグから目が離せない。

 

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志村 朋哉(しむら・ともや)

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 ■ NOTE