2024年4月14日
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■ 試合データ
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米国時間:2024年4月13日
日本時間:2024年4月14日(日曜日)
10時10分開始
ロサンゼルス・ドジャース
対サンディエゴ・パドレス
@ドジャースタジアム
【MLB.JP 戦評】
日本時間4月14日、ドジャース対パドレスの3連戦の2戦目は悪天候で試合開始が大幅に遅れ、5対2でドジャースが勝利。3連戦の2戦目を終えて対戦成績を1勝1敗とした。ドジャース先発のギャビン・ストーンが7回途中5安打2失点の好投で今季初勝利(1敗)を挙げ、4番手のエバン・フィリップスは5セーブ目を記録。パドレス2番手のトム・コスグローブは一死しか取れず3安打3失点で降板して今季初黒星(0勝)を喫し、パドレスの松井裕樹に登板機会はなかった。
3連戦の初戦を落としたドジャースは、先発のストーンが好投を続けるなか、4回裏二死1・2塁の場面でムーキー・ベッツがタイムリーを放ち、1点を先制。6回表にフェルナンド・タティスJr.のタイムリー二塁打で追いつかれたが、直後の6回裏にギャビン・ラックスとベッツの連続タイムリー、大谷翔平の犠飛で3点を勝ち越した。7回表にタイラー・ウェイドのタイムリーで2点差とされたものの、7回裏にマックス・マンシーの犠飛で再び3点リードに。8回表を3番手のダニエル・ハドソン、9回表をクローザーのフィリップスが抑え、5対2で勝利した。
ドジャースの大谷は「2番・DH」でスタメン出場。1回裏一死走者なしの第1打席は四球を選んで出塁し、今季2個目の盗塁を決めた。3回裏無死1塁の第2打席も四球。4回裏二死2・3塁で迎えた第3打席はサードへの小フライに倒れたが、6回裏一死2・3塁の第4打席はセンターへ犠牲フライを放った。8回裏二死1塁の第5打席はライトフライで凡退し、2打数0安打1打点2四球1盗塁。今季の打撃成績は打率.343、OPS1.078となっている。3連戦の最終戦ではダルビッシュ有(パドレス)との対戦が注目される。
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■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)
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【スタメン】
2番DH
【出場成績/打者】
2打数 0安打 1打点 2四球 1盗塁
通算打率・343
OPS1・078
◆第1打席:
(結果)四球
(状況)1回1死走者なし
(投手)マット・ウォルドロン右
※第1打席で四球を選ぶと、二死から開幕戦以来となる二盗を成功させた。
◆第2打席:
(結果)四球
(状況)3回無死1塁
(投手)マット・ウォルドロン右
※
◆第3打席:
(結果)サードライナー
(状況)4回2死2、3塁
(投手)マット・ウォルドロン右
※
◆第4打席:
(結果)センターフライ(犠飛)
(状況)6回1死1、3塁
(投手)エイドリアン・モレホン左
※左腕モレホンの変化球をセンターのフェンス手前まで運ぶ犠飛で4点目をもたらした。
◆第5打席:
(結果)ライトフライ
(状況)8回2死1塁
(投手)ジョニー・ブリトー右
※右翼にあわやという大飛球を放った。
【コメント】
◯ なし
【NEWS情報】
◯ 試合前、大谷と山本が向かったのは、WBCでともに戦ったダルビッシュのもとだった。シャドーピッチングや変化球の握りを確認するなど、笑顔でピッチャー談義を行っていた。
◯ 6回の第4打席、2四球を選ぶも、ここまでノーヒットの大谷。暴投でランナー2,3塁のチャンスを迎えると、球場では「ゴジラのテーマ」が流れ出す。前日の試合でヤンキースなどで活躍し、「ゴジラ」の愛称で親しまれた松井秀喜氏のもつメジャー日本人最多本塁打記録175本に並んだ大谷。球場全体が記録更新を待ち望む。“ゴジラ越え”に期待がかかる3球目。低めの球を捉え、大きな打球もあと一歩が伸びず、センターフライに。
◯ 日本人4選手が顔をそろえた両軍の対決で、ベンチが空っぽになるハプニングが起こった。5回表1死から、パドレスの5番プロファーに対し、ドジャースの先発ストーンが投げた際どい内角球にプロファーが激高。捕手スミスと口論となり、両軍ナインが本塁付近に集まり、乱闘寸前の事態となった。三塁側ベンチから飛び出した大谷に対し、右翼のブルペンからダッシュで駆け寄ってきた松井裕樹は騒動をよそに笑顔であいさつする光景も見られた。その後、騒ぎは収まり、両軍とも退場者を出すことなく、試合は再開された。
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■ 試合情報(ドジャース関連NEWS)
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【コメント】
デーブ・ロバーツ監督:
「(5回の守りで一触即発の乱闘寸前について)1死、1点を争う試合なので内角への投球は必要。投手には走者を出す余裕はない。(プロファーの激高が)駆け引きかどうか分からないが、打者に当てようと思って投げているわけでなく、正々堂々と試合に臨んでいると彼ら(パドレス)に伝えたい」
「(先発ストーンについて)我々が必要としていた投球。数イニングを無失点で試合をつくる必要があった。一晩中、ファンタスティックだった。1球目から攻撃的な投球でゾーン全体を攻めていた。(右肩痛で負傷者リスト入りした)ボビー(・ミラー)とギャビンは仲が良く、ミラーのためにもっと頑張らないといけないと思ったはず。チャンスが巡ってきて、良い投球をした」
【NEWS情報】
谷繁元信氏:
「大谷翔平VSパドレス・バッテリーは深みのある攻防だった。開幕カードでも感じたが、パドレスはどう大谷を抑えるか、相当、研究してきている。ポイントはインハイの使い方にあった。
先発はナックルボーラーのウォルドロン。初回は1、2球目にナックルを続け、3球目でインハイにカット。3回は初球から内角シンカーで入り、カウント1-1からインハイのフォーシームで空振りを奪った。両打席とも四球となったが、内を意識させてからナックルで打ち取ろうという意図を感じた。そして、4回の第3打席は、2球目インハイへのカットで三邪飛。差し込まれた大谷は、珍しくバットを折られた。
反対に6回の第4打席は、大谷の技術が上回った。ベッツのタイムリー直後の犠飛で追加点を奪った。左腕モレホーンに対し、1ボールからインハイのフォーシームを空振り。平行カウントとなり、またインに来るかという状況で外へのスライダーが来た。大谷は下半身は開いても、右肩が開いていなかった。だから、外野まで飛ばせた。
8回は執拗(しつよう)に内を攻めてくるブリトーに対し、大谷も狙ったスイング。カウント2-1から右飛に終わったが、紙一重だった。
計5打席でヒットはなくても、内容のある打席が多かった。これだけ打てば、当然ながら相手もデータを元に徹底して攻めてくる。右投手なら内角へのカット、フォーシーム、シンカー等々。まして、パドレスは同地区のライバル。シーズンを通して対戦が多く、この日も駆け引きが詰まっていた。これからも、しのぎ合いが続く中で、大谷がどう対応していくか。インハイを厳しく攻められても、少しでも甘くなればヒットゾーンになる。8回のように、積極的に狙っていくこともあるだろう。
また、大谷はノーヒットだったが、1番ベッツが3安打2打点。後ろに大谷が控えており、相手は歩かせたくない。ストライクゾーンで勝負する。ベッツの打点が増えるのは“大谷効果”とも言える。大谷が加わったドジャース打線の手ごわさを、あらためて感じた」
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■ 注目記事&コラム
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◆ どんな人間なのか分からなくなってきた…一平容疑者 淡々 「足かせ」出廷も“いつも通り”
(柳原直之氏/情報:スポニチ)
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【ヤナギタイムズ】ドジャース・大谷の口座から違法賭博での借金返済へ1600万ドル(約24億5000万円)以上を不正送金したとして、銀行詐欺容疑で訴追された元通訳の水原一平容疑者が12日(日本時間13日)、ロサンゼルスの連邦地裁に出廷した。傍聴席から見守った本紙MLB担当・柳原直之記者(38)が、大谷同様に日本ハム通訳時代の14年から知る同容疑者の様子や変化を伝える。
連邦地裁前にはテレビカメラが12台並び、60人分の傍聴席はあっという間に埋まった。午後1時46分。水原容疑者が姿を現すと、すぐに異変に気付いた。
極端に歩幅が狭く、ジャラジャラと金属音が聞こえた。両足の自由を奪う「足かせ」だった。うまく歩けず、うっすら笑みを浮かべたようにも見えた。
違法賭博関与が報じられてから、公の場に姿を現すのは初めて。黒いスーツ姿で、韓国ソウルでの開幕戦時と髪形や体形を含め大きな変化はなかった。
促されて証言台前に立ち、両手を腰の前で合わせて保釈条件を聞いた。ほそぼそとした声で「イエス」と繰り返すこと16回。閉廷間際、裁判官に小さな声で「サンキュー」と述べ、軽くお辞儀した。
絶望に打ちひしがれ、憔悴(しょうすい)しきった様子を想像していただけに、あまりにもいつも通りの水原容疑者の表情は意外で、感情が読めなかった。ある記者は「反省しているようには見えなかった」と話したが、否定はできなかった。
今年1~3月には総額約32万5000ドル(約5000万円)で大量の野球カードを「ジェイ・ミン」という偽名で大谷の口座を不正利用し購入していたという。昨季まで、水原容疑者とエンゼルスタジアム近くのスターバックスで何度か偶然会ったことがある。注文時、店員に伝える名前はいつも「ジェイ」だった。当時は「一平だと米国の人が呼びにくいと思って…」と話していたが、まさかこの事件につながるとは夢にも思わなかった。
14年から大谷を本格取材し、同時期に日本ハムに通訳として所属した水原容疑者もグラウンド内外で取材対象として何度も話を聞き、「勝手知ったる仲」だと思っていた。3月22日付の当欄で「悪人だと思ったことはない」と記したが、その後の報道やこの日の様子を見て、水原容疑者がどんな人間なのか本当に分からなくなった。
≪「謝罪したい」保釈保証金は一部支払わず≫水原容疑者は出廷に先立ち捜査当局に出頭し、身柄を一時拘束され、保釈された。弁護士を通じ「大谷選手とドジャース、大リーグ、そして家族に謝罪したい」との意向を表明した。捜査当局に協力し、司法手続きの早期終了を望んでいる。地裁は保釈保証金を2万5000ドル(約383万円)に設定。一部は支払わずに保釈され、条件として大谷や賭博胴元との接触禁止、パスポート提出、ギャンブル依存症の治療を受けることなどを定めた。条件違反すると保釈保証金を納付する義務が生じる。次回期日は5月9日(日本時間10日)で罪状認否が予定されている。
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◆ 水原一平の犯行に米メディア本音「我々は最悪のことをしていた」「バレロはどこに行った?」なぜ大谷翔平に厳しかったのか…一変の現地報道まとめ
(水次祥子氏/情報:NumberWEB)
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ドジャース大谷翔平の元通訳・水原一平容疑者が大谷の銀行口座から預金を盗み違法賭博の胴元に送金していたスキャンダルは、銀行詐欺容疑での訴追という形でひとつの決着を迎えた。訴追の一報が流れると、米専門テレビ局ESPNの敏腕記者ジェフ・パッサン氏はX(旧ツイッター)に「どのように口座にアクセスされたのかという長い間の謎がついに明らかになった」と投稿した。
冷静に整理「訴追されるまで」
水原容疑者が大谷の口座に不正アクセスし違法スポーツ賭博の借金返済のため盗んだ預金は当初は450万ドル(約6億9000万円)と伝えられていたが、実際はその3.5倍以上の総額1600万ドル(約24億5000万円)にも上った。違法賭博は2021年12月から2024年1月までの間に約1万9000回、1日平均で約25回も行われ、訴状に記された同容疑者のメールの記録には胴元のマシュー・ボウヤー氏から借金返済を催促され追い詰められていく様子が記されていた。不正アクセスされ預金を盗まれた口座は、大谷がエンゼルスでメジャー1年目を迎えた2018年にキャンプ地のアリゾナ州で開設したもので、同容疑者がこのときに手助けをしたため口座や個人情報を把握し、その後に口座に紐づけた電話番号やメールを容疑者のものに変更。送金の際に銀行から認証を得る際には電話で大谷に成りすましていたことも判明した。代理人のネズ・バレロ氏と経理担当、財務アドバイザーから口座情報の開示を求められると、「本人が私的な口座なので情報を見せたくないと言っている」と嘘をつき代理人らが気づく機会を封じるという、大胆で悪質な犯行だった。
訴状を読んだ「米メディアの反応」
大谷はドジャースタジアムで3月25日に行った会見で「彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつみんな、僕の周りにも嘘をついていた」と説明したが、このときにはずいぶん疑問の声が上がっていた。
「どうやったら口座に勝手にアクセスできるのか」
「なぜ周囲の誰も気づかなかったのか」
「なぜ会見で質疑応答をしなかったのか」
しかし連邦検察が4月11日の会見で「ミスター・オオタニが関与した証拠は何もない。彼は被害者だ」と発表すると、空気は一変した。
USAトゥデー紙のベテラン記者ボブ・ナイチンゲール氏は「連邦政府の捜査が、オオタニの会見での説明を完璧にサポートする形となった。彼は詐欺の被害者であり、通訳のギャンブル依存症をまったく知らなかった」とXで速報。元ESPNのスポーツキャスターとして有名なリッチ・アイゼン氏は、当初は「そんな大金が消えていることに気づかないなんて、あり得るのか?」と懐疑的だったが、捜査当局の会見後は「訴状を読んだ。こんなことがあるんだな。オオタニが預金を盗まれた被害者だということは紛れもなく明らか。しかも信頼していた友人が実は詐欺師で、とてつもなく深い闇に落ちて救いが必要なレベルだったというのだからね」と手の平を返した。
ロサンゼルス・タイムズの辛口コラムニスト、ビル・プラシュキー氏も同様の論調だった。4月11日付で寄稿した「ギャンブラーではなく、球界のスターとして、ショウヘイ・オオタニの伝説は続く」という記事でこうつづっている。
「私は当初、450万ドルも不正に違法賭博の胴元に送金されていたことをオオタニが知らなかったということがまったく信じられなかった。だが連邦検察の捜査結果がわかった今は信じられる。『イッペイが僕の口座からお金を盗んで嘘をついていた』とオオタニが言ったときは信じられなかったが、今はその通りだったと納得できる」
「代理人とアドバイザーをクビにすべき」
しかしそれでもまだ、厳しい指摘はある。
前出のプラシュキー氏は同じ記事の中で「オオタニは史上最高の野球選手になるため起きている時間のほぼすべてをそれに集中しているのは明らかで、自分の人生のそれ以外の部分にはほとんど注意を向けていない。そうなのだ、それが問題なのだ。自分のお金に無関心な金持ちの男って、まさに子供ではないのか」と論じている。さらに厳しく一刀両断にしているのが、大谷の代理人を務める大手事務所CAAのネズ・バレロ氏とその周辺のスタッフだ。水原容疑者が不正アクセスしていた大谷の口座について、バレロ氏や財務アドバイザーがチェックできなかったことについて「オオタニのビジネスチームが、口座を放置していたことが信じられない。オオタニのアドバイザーたちは、アドバイザー史上最も弱腰で存在価値がない者たちだ。代理人と危機管理担当広報をクビにし、チームを完全に入れ替えるべき」と主張した。
「バレロはどこに行ったのだ?」
敏腕記者で知られる米スポーツメディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール氏も4月12日付の記事でこう書いた。
「ミズハラだけが、オオタニを失望させたわけではない。バレロはどこに行ったのだ? 代理人は通常、経理面の管理はしない。契約交渉と金銭管理は別分野だ。しかしミズハラがバレロや他のアドバイザーに口座情報開示を拒否したら、それは警報サインが出ているということではないのか? もしオオタニを不機嫌にさせることになれば、他の代理人のところに行ってしまうとでも思ったのか?」
身代わり説の「陰謀論」も…
バレロ氏を中心とした「大谷のビジネスチーム」に猛省が求められている一方で、米国ではメディアやファン、SNSユーザーも自省するべきとの声も上がっている。大谷が被害を被った今回の違法賭博と不正送金事件は、不明な点があったことから多くの憶測を呼び、「オオタニの身代わり説」などの陰謀論がSNSを席捲していた。米メディアでは野球賭博で永久追放されたピート・ローズを引き合いにだして大谷が語られることも1度や2度ではなかった。
FOXスポーツでパーソナリティを務めるジェーソン・フィッツ氏はそんな騒動を振り返り、4月12日の放送でこう語った。
「我々は数週間もの間、まったく何の証拠もない中でオオタニとローズを同じ文脈で語っていた。まったく最悪のことをしていた。なぜか? 何も知らない事象に対して自分勝手なロジックを当てはめるからだ。ショウヘイについては、もっと情報が出たときに事実だけを伝えるべきだった」
捜査発表が「異例の早さ」の背景
米専門メディア「ベースボール・プロスペクタス」も同日の記事で「今回のことは憶測というモラルハザード(道徳的節度がなくなることによる弊害)を考えさせられた。いつか、疑問を呈することと憶測を垂れ流すことを混同しない時代がくるといいが」と論じている。
水原容疑者のことは大谷にとってはショッキングで辛い出来事だっただろうが、社会にとっては一石を投じる出来事にもなった。大谷の社会的影響力は米国でもそれほど大きい。通常は年単位の時間がかかるといわれていた連邦捜査機関の捜査結果が異例の早さで出たことも、その影響力の大きさゆえだろう。
(「メジャーリーグPRESS」水次祥子 = 文)
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◆ 「大谷が好調のサイクルに入ってきた」五十嵐亮太が語るドジャース大谷翔平に期待してしまうワケ「“なおド”の心配は無用だと思いますよ」
(五十嵐亮太氏/情報:NumberWEB)
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ドジャース大谷翔平が日本時間4月13日のパドレス戦で今季4号ソロを放ち、メジャー通算175号に到達。ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏が持つメジャー日本選手最多記録175本に並んだ。大谷の好調のシグナル、そしてドジャースの強さの秘密とは。ディープな野球談義をお送りするNumberPREMIERの動画番組「Set Up Baseball」のホスト役も務める五十嵐亮太氏が語った。
大谷翔平、好調時のサイン
大谷は開幕直後こそ長打が出ませんでしたが、打球スピードなどから体の状態自体は決して悪くないと見ていました。日本時間4月4日のジャイアンツ戦でホームランが1本出てからはいい意味で力が抜けて、しなやかにバットが振れるようになってきた。微妙な感覚の部分も修正されて、いよいよ好調のサイクルに入ってきたという感じがしています。
ツインズ戦では、3号ホームランを放つ直前の6回の第3打席でレフトへ強烈な二塁打を打っていました。逆方向への強い当たりが出たことで感覚を掴んだ部分があるのでしょう。過去を振り返っても、引っ張りが強すぎるというのはあまりいい状態ではなくて、センターから左方向への当たりは大谷の好調時のサインなんです。
投手視点でも、引っ張りに意識が向いてくれた方が崩しやすい。逆に反対方向に強い当たりが出始めてインコースをさばかれたりすると、ちょっと苦しいな、体が開いてくれないかな、という感じを受けますから。10日時点で二塁打を8本打つなど目立って長打も増えてきました。ホームランにしても、最初の2本は引っ張りだったけれど、3本目でついにレフト方向へ一発が出た。こういう当たりが出始めると、大谷のいいところがこれからもどんどん見られるだろうなと期待してしまいます。
新天地であるドジャースに目を移すと、やはり打線の好調が際立ちます。韓国で行われたパドレスとの開幕戦から球団新記録となる10試合連続で5得点以上をマーク。投手目線で試合を見ていると本当に恐ろしい打線だと感じます。絶好調の1番、ムーキー・ベッツを筆頭に、大谷、フレディ・フリーマンと次から次にいいバッターが出てくる。上位打線の前にランナーを溜めてはいけないと考えると下位打線に対しても気を抜けなくなるので、相手投手の負担は物凄く大きい。たとえ1試合は抑えられても、この打線相手にシーズン通して戦っていくことは難しいと思います。
ドジャースの一番の強みとは?
シーズン前の評価では、唯一の弱点として先発ピッチャーが足りないのでは、と言われていましたがここまでの戦いを見る限り全く問題ないと思います。先発ローテーションの軸になっているタイラー・グラスノーはもちろんのこと、メジャー初勝利を挙げた山本由伸も調子が上がってきていますし、25歳のボビー・ミラーは好不調の波はあるものの今季初戦だった3月30日のカージナルス戦での投球は本当に素晴らしかったです。
バッテリーという意味で、正捕手ウィル・スミスの安定感も見逃せません。ドラフト1巡目で入団して、マイナーでも経験を積んだ彼は、今季から10年契約をしています。キャッチャーで10年契約ということだけで評価の高さが分かりますが、やはり技術がしっかりしているし、山本とのバッテリーを見てもピッチャーとコミュニケーションがしっかり取れていることが伝わってきます。
ドジャースの一番の強みは何か。それは1年間を通して戦略的に戦えるということです。分かりやすくエンゼルスと比較すると、1試合にかかる負担、1選手にかかる負担というものが大きく違う。両チームとも1試合1試合を大事にしているのは同じです。でも、この試合を何とか、という戦いを続けているエンゼルスのようなチームは夏場以降もたなくなってしまう。ドジャースはその辺のやりくりが上手なので、開幕時点からある程度選手を休ませながら戦えている。そうすることで選手が故障せずに安定した成績を残せるので、中盤以降の戦いで差が出てくるんです。ベッツとフリーマンが中心打者の自覚を持って戦っていることで負担も減っていますし、大谷はエンゼルス時代よりも格段に安定したシーズンを送れると思います。
この戦い方ができるのも選手層の厚さがあってこそですが、今年のスプリングトレーニングを取材した際、その理由の一端を知ることができました。今シーズンからブルージェイズに移籍して今は4番を務めているジャスティン・ターナーに久しぶりに会ったんです。僕がメッツのマイナーにいた2010年に一緒にプレーしていて、明るい性格の彼とはよく話していました。当時は正直言ってそんなに目立つような選手じゃなかった。12年に自由契約になり、13年にドジャースとマイナー契約を結んだ。ここから大化けしたんです。
14年シーズンからメジャーに定着して、15年以降は主軸としてブレーク。ホームランも量産してドジャースのスター選手として大活躍しました。彼に会った時思わず聞いたんですよ。「メッツからドジャースに移籍して何があったんだ?」って。彼は、「打撃フォームもそうだけれど、何よりバッティングに対する考え方が変わった」と言うんです。ドジャースのコーチに出会って、今までセンター中心に打っていたのに、打球を引っ張っていいという話し合いをした。そこで打球速度をつけたり長打を増やす練習をしていったことが潜在能力を引き出したのだといいます。
データ分析でもドジャースは最先端
ドジャースは育成システムやコーチングなどがすごくきめ細かい。アナリストにも優秀な人材が揃っていて、データ解析なども含めて選手の能力を引き出すためにどうすればいいか、というサポートがしっかりできていると感じます。大型補強というイメージのあるチームですが、実は選手を育成する能力もずば抜けて高い。ドジャースに移籍したピッチャーが前のチームでは投げていなかった球種を投げたり、投球スタイルを変えて活躍するということもよく目にしてきました。
先ほど挙げた生え抜き捕手のウィル・スミスに、どうしてそういうことができるのか直接聞いたら、「データを出してくれる人がすごく優秀なんだ」と言っていました。自軍のピッチャーの特色や、もっとこういうボールを投げられればピッチングに生きてくる、という情報、さらに対戦相手のデータというところも含めて凄く細かく分析できている。
「Set Up Baseball」の第1回で内川(聖一)との対談の中でもお話ししたんですが、今のメジャーリーグのデータ分析は物凄いスピードで進化しています。僕がアメリカにいた時代はたった10年前くらいですが、データの量なんて大したことはなかった。もらっていたデータといえば紙1枚に文章で「このバッターはこういう傾向だから、こういう風に抑えましょう」みたいなことが書いてあるだけでしたから。
ところが今は、相手バッターの傾向一つとっても細かいコースごと、カウント別の数字や、芯に捉えた打球の割合など本当に様々なデータが揃っている。投手自身のデータにしても、回転率やボールをリリースしているポイント、変化球のホップ率がどれくらいあるとか、詳細が瞬時に出てくるわけです。でも、データって数字そのものが重要なのではなくて、読み解く人間が鍵を握るんですよ。アナリストが優秀かどうか、コーチがそのデータをどう活かせるか、選手自身もそれをどう落とし込んでいけるかというところで差が出てくる。ドジャースはその部分でも最先端を行っていて、いい人材が揃っているなという印象を受けます。
「なおド」の心配は無用?
1年間の戦いの中では、こういう部分は大いに重要になってくる。今は対戦カードも一巡目ですが、これが二回り目以降になれば分析と対策の差が出てきますから。さらにドジャースはどこか戦力に綻びが出てきたとしても移籍期限ぎりぎりまで補強も積極的に行うでしょう。長期の戦いという目で見ると尚更分厚い戦力が際立ってくる。昨年まで大谷が所属していたエンゼルスでは日本で「なおエ」なんて言われていましたけど、大谷一人が孤軍奮闘するようなことはなくなる。「なおド」の心配は無用だと思いますよ。
(構成=佐藤春佳)
(「メジャーリーグPRESS」五十嵐亮太 = 文)
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◆ 水原一平・容疑者、最後の望みが絶たれた夜 大谷翔平に問い詰められ「僕の借金を肩代わりしたことにしてくれないか」と頼んだが
(情報:中日スポーツ)
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ドジャース・大谷翔平選手の通訳だった水原一平容疑者は12日(日本時間13日)、銀行詐欺容疑で米カリフォルニア州ロサンゼルスの連邦地裁に足かせを装着されて出廷。保釈金2万5000ドル(約380万円)で保釈が認められた。米複数メディアによれば、ギャンブル依存症の治療と大谷との接触禁止を命じられた。パスポートは没収され、カリフォルニア州の中心部を離れることは許されない。
同容疑者はスポーツの違法賭博で約4000万ドル(約61億2000万円)の負けを抱え、大谷の銀行口座から少なくとも1600万ドル(約24億5000万円)を違法ブックメーカーに不正送金したとされる。
水原容疑者にとって最後の望みが断たれたのは、ソウルでの夜だったようだ。ドジャースが3月21日に開幕第2戦(対パドレス)を戦った直後、同容疑者はドジャースのクラブハウスで「自分はギャンブル依存症だ。多額の借金を大谷翔平に肩代わりしてもらった」と説明。だがその深夜にホテルで大谷から問い詰められ、スーパースターの銀行口座から巨額の金を盗んだと白状したという。
13日の米紙ニューヨーク・タイムズによれば、その場面で同容疑者は「クラブハウスで話したように、翔平が僕の借金を肩代わりしたことにしてくれないか?」と頼み込んだという。だが、大谷はこれを拒否し、即バレロ代理人に連絡を取ったという。この瞬間、足かせをはめられて法廷に引きずり出されることは確定していたことになる。
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◆ 【絶好調の大谷】米番記者が予測する大谷の未来とは? 40歳になっても、大谷は世界最高のプレーを維持できるのか?
(志村朋哉氏/情報:AERA.net)
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大谷はあとどれくらい二刀流を続けられるのか? 大谷はこれからどんな選手になるのか? 長くプレーするために気をつけなければならないことは?『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)のなかで、「ロサンゼルス・タイムズ」記者のディラン・ヘルナンデスと、「ジ・アスレチック」記者のサム・ブラムが、それぞれの記者経験をもとに徹底予測。一部抜粋して解説する。
※記事中の「トモヤ」は在米ジャーナリストの志村朋哉さん。3人による会談は昨年中に行われました。
■大谷翔平の未来像
トモヤ 大谷はあとどれくらい二刀流を続けられると思う? 5年後、10年後はどうなっているかな?
ディラン 一般的に、修復した靭帯の寿命は5年くらいと言われている。来年は登板しなかったとして、あと4、5年は持つことになる。その時点では、クローザーになるかもしれないね。僕は彼が40歳までプレーすると思うし、もっと言えば、状態の良い40歳になると思う。彼の体型や体調管理の徹底ぶり、アスリートとしてのタイプからして、多くの人が思っている以上に長くプレーできると思う。二刀流となると、肘の状態次第になるから、たぶん靭帯の寿命の5年くらいじゃないかな。でも、みんなが思っているより、長く活躍すると思うよ。40歳で50本塁打を打つとは言わないけど、30代後半になっても非常に効果的な選手でいると思う。
トモヤ 守備もするようになるかな?
ディラン やるところを見てみたいな。YouTubeで、彼が甲子園で外野手としてプレーする映像が見られるんだけど、フェンスに当たったボールをすごい速さで返球しているよ。でも二刀流をして守備をするというのは、さすがにやりすぎだとも思う。だから、守備をするかどうかは、いつまでピッチングを続けるかが影響すると思う。ピッチャーをやめたら可能性はあると思う。本当に彼は何でもできるからね。
高校生の時の大谷を見たドジャースのスカウトが、ショートも守れると思うと言っていたらしい。身体能力がずば抜けているアレックス・ロドリゲスのような選手だと。彼の高校の監督もそう言っていた。その時は冗談かと思ったけど、今振り返ると冗談ではなかったと思う。彼の高校の水泳コーチは、大谷が水泳に専念すればオリンピックに出られるとも言っていた。投手として大量のイニングを投げるとかでなければ、本人がやりたければ、何でもできる能力があると思う。だから、ピッチャーをやめたら、外野を守るということは考えられる。
サム 長く二刀流でプレーすることについては、少し懐疑的かな。大谷のベストシーズンはすでに3度見たと思う。今は2度目の靭帯修復から戻ってきたばかりで、受けた手術の内容も分からない。復帰して投げる時には31歳になっているし。不可能ではないだろうけど、以前よりさらに良くなったり、これまでのようなイニング数を投げ続けて、毎日ヒットを打ち続けるというのは想像しづらい。大谷だって人間だから、加齢には勝てない。
ディランの言うように、少しは守備もできると思う。素晴らしい選手ではあり続けるだろうけど、これまで以上の活躍ができるかは疑問。彼自身の考え方やチームの扱いも少しずつ変わっていかなくてはならない。毎日、MVPや殿堂入りやプレーオフを狙って全力でプレーすることはできないと思う。そうした結果は、彼がうまく無理せずにやっていくことでついてくるんじゃないかな。
長くやり続けるためには、歳を重ねるにつれて、変化も大きくしていく必要が出てくる。大谷が40歳までプレーするには、パワーを維持してホームランを打ち続ける必要がある。簡単ではないと思う。代理人のネズ・バレロは、大谷が来年の開幕日に打者として復帰できると断言していたけど、どうだろうか。
みんな楽観的なことを言うけど、靭帯損傷や23年シーズンの最後に負った斜角筋の怪我は、プレーのしすぎやスイングが力強すぎたからかもしれない。大谷のような選手でさえ、長くプレーするには加齢に適応せざるを得ないのが野球なんだ。
ディラン その点に関して、22年に規定打席と規定投球回数に達した時、大谷は「到達したのは良いことだけど、毎年それを目指す必要はない」と言っていた。ある程度、妥協することは厭わないんだと思う。あそこまでプレーしたのは、エンゼルスに必要とされていたからだと思う。彼が頑張らなければ、エンゼルスには勝つチャンスすらなかったからね。
ドジャースに入った今は、「君には10月に頑張ってもらう必要がある」と、首脳陣も無理はさせないだろう。そうしたちょっとした違いが選手寿命を伸ばすと思う。
ディラン・ヘルナンデス、サム・ブラム、志村朋哉
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