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2024年3月27日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 大谷は26日(日本時間27日)、敵地で行われたエンゼルスとのオープン戦に「2番・指名打者」で先発出場した。

 

移籍後初めてのエンゼルスタジアム。初回の第1打席前には昨季までの功績を称える1分間の特別な演出で出迎えられた。粋なサプライズ演出だった。初回1死、スコアボードに2018年のメジャー1号から昨季のMVP受賞まで、6年間の功績を称える映像が流された。観客はスタンディングオーベーション。1度打席に入った大谷だが、打席を外してヘルメットを取って応えた。場内は拍手喝采。なお、第1打席は右腕チェイス・シルセスに空振り三振に倒れた。

 

4回1死の第2打席はブーイングと歓声が入り交じる中、打席に入ったが、フルカウントからの6球目、相手先発・シルセスのスライダーを捉えられず2打席連続の空振り三振となった。 

 

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◯ 大谷が27日、通訳を務めていた水原氏の違法賭博騒動後、初めて自身のインスタグラム(ストーリーズ)を更新した。エンゼルスの公式インスタグラムのストーリーズを引用する形で投稿。「お帰り、翔平!」というメッセージと共に、古巣とのオープン戦で、大谷がファンのスタンディングオベーションに応える写真だった。

 

◯ デーブ・ロバーツ監督が26日(日本時間27日)、エンゼルスとのオープン戦の試合前にメディア対応。大谷に言及した。

 

「(裏切りによって失った大谷について)実際には心配していない(水原氏という)“緩衝材”がなくなり、ここ数日、彼はチームメートとさらに関わり合っているのが分かる。試合中に直接、彼と話し合うことは良いことしかないと思う」

 

「一平がいなくても、彼はチームメイトと上手くコミュニケーションを取ることができる。彼がどれだけ英語を知っているかに、みんな驚くと思う。昨日は大事な日だったと思います。私たちはみんな、前進することを楽しみにしている。我々はあらゆるところから彼をサポートする」

 

「(山本について)由伸の場合は違う。彼はアメリカに来るのが初めて。彼には通訳のヒロ(園田氏)がいる。ですから、彼が必要とするものは何でも、私たちは実現できるように手助けしようとしている。野球面、身体能力面、生活面。そういったことは、彼のエージェントが担当している。まだ時間はかかりそうだが、彼は適応できている」

 

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◯ 今季の開幕投手が決まっているエンゼルスの新エース左腕で仲のよかったパトリック・サンドバルは、「彼にドジャーブルーは似合わないけど」と冗談を交えながら「会えてよかった。長い間チームメートだったし、いい友達だからね。彼は何でも出来るし、結果も出す。そういう所に憧れている」と再会を喜んだ。水原一平元通訳については「正直、どう思うべきか本当に分からない。本当に不幸なことだと思う」

 

◯ エンリケ・ヘルナンデス内野手(32)は「トラブルへの対応の仕方が僕よりはるかに優れている。とんでもない裏切り方をされた。それでも仕事に出てきて、何事もなかったように…。野球に影響しないようどう対応するかということに、彼は本当に素晴らしい対応をしている」と称賛。

 

フレディ・フリーマン内野手(34)は「彼の私生活に関する問題だよ。みんな知りたがっているのは分かる。昨日、彼が話したことで、騒動が収まることを願う。会見の後に彼を見たら、話すことができてほっとしていたような感じがする」と話した。

 

マックス・マンシー内野手(33)が「僕らみんな、彼の味方だ。彼は僕らに直接、真実を話してくれた。彼を100%信じる」と気遣った。

 

ミゲル・ロハス内野手(35)が「彼はクラブハウスで素晴らしいチームメート。彼の気持ちを代弁することはできないが、同僚として彼が今直面していることは、あまりにも大変なこと。できるのは、そばにいて力になることだけ」と話した。

 

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 ■ ロサンゼルス・ドジャース情報

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◯ オープン戦 エンゼルス4x―3ドジャース(26日・米カリフォルニア州アナハイム=エンゼルスタジアム)ドジャース・大谷翔平投手(29)が26日(日本時間27日)、オープン戦の敵地・エンゼルス戦に「2番・指名打者」でスタメン出場し、2打席連続空振り三振を喫して交代した。開幕シリーズ第2戦の2打席目から13打席連続安打なしで、エンゼルス戦は3試合連続で安打が出ずにオープン戦最終戦を終え、28日(同29日)の本拠地・カージナルス戦を迎えることになった。

 

試合は、初回にエンゼルスのドゥルーリーがパクストンから2点適時二塁打を放って先取点。2回にはサノがソロを放ってリードを3点に広げた。4回2死までエンゼルス先発のシルセスにパーフェクトに抑えられていたドジャースは、4回2死からフリーマン、スミスの2者連続ソロで1点差に迫ると、6回にはラックスのソロで追いついた。その後は両軍得点を奪えず9回裏2死走者なしとなったが、ネトが左翼線への三塁打で出塁すると、最後はロペスが左前適時打を放ってエ軍がサヨナラ勝ちした。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ なぜ日本メディアは大谷翔平を信じようとしなかったのか?

菊地慶剛氏/情報:スポナビ)

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【感情を交えて自分の言葉で説明した大谷選手】

 

 自身の元専属通訳である水原一平氏に関するスキャンダルが発覚して以降、初めてメディア対応を行った大谷翔平選手に対し、彼がどんな発言をするのか日米メディアが大いに注目していのは今更説明する必要はないだろう。

 

 会見実施前にチーム広報から質疑応答、映像撮影なしで、大谷選手が声明を発表するという通達があった時は、かなりメディアの不評を買うことになりそうだと予測ししていた。

 

 だが実際は、よくありがちな事前に用意された声明文を読み上げるのではなく、メモを見ながら自分の言葉で丁寧に説明する姿は間違いなく大谷選手の誠意が伝わるものだった。

 

 その後自分なりにできる限り多くの米メディアの反応を確認してみたが、殿堂入りを果たしているベテラン記者の1人、ESPNのティム・カークジャン氏の感想が、彼らの思いを代弁していたように思う。

 

 「自分が想像していた以上に彼は直接的に訴えかけていたことに少し驚いた。事前に質疑応答なしで声明文を読むと聞いていたが、彼はそれ以上のことをした。

 

 会見中彼は自分が考えていた上に、感情を表に出していた。それは非常に重要なことだと思う。彼の発言内容のほとんどに説得力があると感じた。少なくとも自分は納得させられた。

 

 今回の球界最大のスター選手にまつわるスキャンダルは、野球界にとってネガティブなものだ。まだ多くの疑念が残っているものの、今日いくつかの答えを得ることができた。現在調査が続く中で、彼が話せる最大限を話していた。

 

 今後調査でいろいろな事実が明らかになるにつれ、更なる疑問が出てくるだろう」

 

【大谷選手は現時点で出来うる責任を果たす】

 

 カークジャン記者の言葉通り、大谷選手の説明ですべての疑念が晴れたわけではない。その一方で、大谷選手は現時点で彼ができるすべての説明を行い、それが説得力のある内容だったということだ。

 

 個人的にも、今回のスキャンダルを誰よりも早く、深く取材していたESPNのティシャ・トンプソン記者が、時系列に沿って取材状況を詳細に記述した記事を読んでからは、水原氏が大谷選手のみならず、あらゆる関係者に嘘をつき続けていたという構図を組み立てていただけに、今回の大谷選手の説明はそれを裏づけてくれるものとなった。

 

 なぜか日本では大谷選手の説明後も、米メディアの「まだ疑念が残る」という部分だけが誇張され報道されているように見受けられるが、実は多くのメディアが大谷選手の説明に納得もしているのだ。むしろこちらの方を重視すべきではなかろうか。

 

 しかも大谷選手は自分の口座から水原氏が盗んだと説明しているだから、どうやって大谷選手の口座にアクセスし、違法ブックメーカーに送金を行ったかの疑念は、大谷選手ではなく水原氏に向けられるべきだし、彼以上に説明できる人物は他にはいないはずだ。

 

 カークジャン記者が指摘するように、今後は連邦機関やMLBの調査で明らかになる事実に注視すべきであって、この件に関する現時点での大谷選手の責任は十分に果たしたと考えている。

 

【なぜか米メディアの報道に追従し続ける日本メディア】

 

 実は今回のスキャンダルが発覚して以降、多くの日本メディアの報道内容に違和感を抱いてきた。米メディアで報じられている疑念をそのまま鵜呑みにして、大谷選手に疑いの目を注ぎ続けていたように感じられたからだ。

 

 今も米メディアの中に残る疑問の1つが、前述にある水原氏が大谷選手に認識されることなく口座にアクセスし、送金を行えたのかだが、これまで大谷選手と水原氏の関係性について誰よりも詳細に報じてきたのは日本メディアだ。

 

 これはあくまで現場取材時代の自分の経験談だが、自分1人で慣れない米国生活を強いられている日本人選手たちを何度もサポートしてきた。ドライバー役として日本の食料品店や日本食レストランに運んだりするのは日常的なことで、時にはクレジットカードや携帯電話の契約を手伝ったこともある。

 

 多分自分のみならず米国で日本人選手を取材してきたメディアならば、誰もが経験していることだと思う。

 

 さらに通訳がついている選手なら、信頼度に多少の差はあったとしても、誰もが通訳にプライベートな部分をサポートしてもらっているのも、現場取材記者の常識のはずだ。

 

 そうした背景と大谷選手と水原氏の密接な関係性から、自分はSNSや有料記事を通じて、水原氏が大谷選手の口座に自由にアクセスできても何ら不思議ではないと主張し続けてきた。

 

 今回のスキャンダル報道の中で、自分のような主張はかなりの少数派だったように思う。

 

【自分たちで築き上げたものを自分たちで破壊する行為】

 

 今回のスキャンダル発覚前の日本メディアは、大谷選手を神格化するかのように彼のイメージを損なうようなことには一切目を向けず、とにかく礼賛の限りを尽くしてきた。

 

 「純粋に野球を愛し続ける少年のようだ」、「すべてを野球に捧げているストイックすぎる性格」、「野球以外には興味がなく無頓着」等々、すべて日本メディアが訴えてきたことだ。

 

 ところがスキャンダルが発覚した途端、米メディアの報道に追随してスポーツ賭博への関与やマネーロンダリングを疑うような報道が続き、大谷選手を擁護する声がほとんど掻き消されていた。そうした報道姿勢は過去の自分たちを否定する行為に他ならないし、自分には極端な日和見主義に映ってしまっていた。

 

 そして日本メディアは、MLBで水原氏以外にも多くの通訳が働き、彼に負けない優秀な人たちがいるにもかかわらず、彼だけを特別扱いにしてヒーローに仕立て上げた。その影響もあってか、日本メディアや一般大衆の中で水原氏を冷静な目で見ることができていなかったようにも感じている。

 

 これまで大谷選手についてポジティブ、ネガティブ両面から取り上げてきた自分が、なぜか今回のスキャンダルに関しては大谷選手を完全擁護しているような立場に置かれていること自体が異様でしかない。

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◆ 弁護士が大谷翔平の声明文を解説 水原氏騒動は「真実でなければ」…信頼できるワケ

(情報:Full-Count)

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 ドジャースの大谷翔平投手は、違法賭博疑惑で解雇された元通訳の水原一平氏の騒動について25日(日本時間26日)にドジャースタジアムで声明文を読み上げ、自身の関与を否定した。この件について、弁護士として活動していた投球分析家のロブ・フリードマン氏が解説した。

 

「ピッチング・ニンジャ」の愛称で知られるフリードマン氏は、1991年7月から1996年6月まで弁護士として税務、企業法務などを専門とし、1996年6月から2000年3月は顧問弁護士を務めていた。

 

 米メディア「ジョムボーイ・メディア」のジェイク氏の「ショウヘイ・イッペイ情勢について何か意見がある人は?」という投稿にリプライする形で「弁護士としての知識を置いておきます。何かを否定することは、全員がやることです。誰かを窃盗で告発し、同時に当局に協力すると、故意に不正行為(虚偽の発言)を行った場合責任が生じます。名誉棄損、悪質な訴追などです」と説明。

 

 さらに「当局の捜査が行われれば、それは簡単に検証することができます。真実でなければ、弁護士はああいう発言をさせません。もちろん全てにおいて100%はないけれど、これらは状況を評価する際に考慮すべき要素です。そして、スター選手が信頼してきた人に騙された例は(今までに)たくさんあります」と述べた。

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◆ 大谷翔平の元通訳の違法賭博問題を、MLBのスペイン語通訳から考える

谷口輝世子氏/情報:)

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 ドジャースの大谷翔平選手は、違法賭博に関わった疑いのある元通訳について「彼が僕の口座からお金を盗んで、」と話した。大谷だけでなく、近しい人にお金を盗まれたり、横領されたり、詐取されたりするリスクはある。ましてや大金を稼ぐ人たちが、共同経営者や側近に横領されることは、日本でも、アメリカでも、それほど珍しい事件とはいえないだろう。

 

 嘘をつき、罪を犯した疑いを持たれているのは、大谷が信頼してきた通訳だ。グローバルなスーパースター・大谷は、通訳を必要とする、言葉の壁のある米国のメジャーリーグでプレーしているのだということを改めて感じた。そこで、この記事では、同じように言語の壁のある中でプレーしている選手と通訳の関係をレポートしようと思う。

 

 英語を母語としないメジャーリーガーは少なくない。昨年の開幕時、米国外で生まれた選手は全体の28.8%を占めていた。このなかにはカナダ出身の10選手も含まれるが、メジャーリーガーの少なくとも4分の1は英語を母語としない選手たちである。

 

 ドミニカ共和国、ベネズエラなどからの選手は、十代半ばでマイナー契約を結ぶ。1980年代、90年代には、若いラテン系の選手が、十分に英語で交渉できないのをよいことに、一方的に球団が有利な契約を結ぶことがあった。ドラフトで指名されたアメリカ人選手にはある当たり前の権利が、こういったラテン系の選手には与えられておらず、メジャーリーグも球団から搾取されていたといえる面がある。メジャーリーガーになって、よいパフォーマンスをしても、母語ではない英語でメディアの取材にも対応しなければならず、思ったように自分の考えていることを伝えられないことがあり、メディアへの露出やファンの人に与えるイメージという点でも不利な状況にあった。

 

 こういったラテン系選手の待遇は批判されてきて、近年では、メジャーリーグ機構も少しずつ改善している。例えば、機構はドミニカ共和国で、各球団のアカデミーにいる選手に対して、英語学習、ライフスキル、高校卒業資格を得られる教育機会のオファーのほかに、安全運転、健全な人間関係、禁止薬物、ソーシャルメディア、経済的責任、性的な健康、精神的健康について対面での講習を提供している。また、メジャーリーグの労使協定では、言葉の壁に配慮して、選手が希望すれば母国語で書類を受け取ることができるとしている。

 

 2016年には、メジャーリーグ球団と選手会が各球団に対してスペイン語の通訳の雇用を義務付けた。それまでは、スペイン語を母語とする選手には通訳はおらず、必要なときは、コーチ、スタッフ、もしくは他の選手が助けてきた。前述したように、ラテン系の選手は満16歳でマイナー契約を結び、アメリカ国内のマイナーリーグで何シーズンかを過ごしてからメジャーに昇格してくるので、英語での会話はできるようになっているが、それでも、母語で話すのと同じというわけにはいかない。

 

2016年に球団に対してスペイン語通訳の雇用が義務付けられたときに、通訳にインタビューした記事を書いているのでご興味のある方は目を通していただきたい→「メジャーリーグのサンドイッチマンに仕事術を聞く」

 

 球団が雇用したスペイン語通訳は、広報の一員となっていることが多く、スペイン語を母語とする選手がメディア対応する際に通訳することが主な仕事である。労使協定で規定された仕事の内容は、スプリングトレーニングからポストシーズンまでチームに同行することとされており、メディア対応の時間帯には必ずそこにいること、球団のイベントには出席することを期待するとしている。また、選手から移動や宿泊に関する質問があれば、これを助けなければいけないとしている。ただし、選手の契約に関する質問は含まない。なぜなら、これは公認代理人の管轄になるからである。

 

 球団には複数のスペイン語を母語とする選手がいることもあり、スペイン語の通訳は特定の選手の専属通訳というわけではないし、特定の選手が通訳を必要とするときのためにずっとそばにいるわけでもない。そして、スペイン語通訳の仕事には、特定の選手のプライベート時間にも通訳の役割を果たすことは含まれていない。

 

 メジャーリーグと選手会は、球団に対して日本語と英語のバイリンガル通訳を雇用することは義務つけていない。それでも、日本の選手たちはNPBでのパフォーマンスに対する高評価をもとに、有利な契約の条件を引き出すことができ、球団に通訳者の雇用を求められる立場にある。日本の選手を迎えるメジャーリーグ球団にとっても、少しでも快適な環境を作り、最も良いパフォーマンスをしてもらうことが重要なので、通訳の雇用を拒否する理由は全くない。

 

 日本人選手の通訳は、その選手の専属であることが多いが、球団に雇用されている。球団に雇用されていないと、クラブハウスやベンチ内に入ることができない。

 

 話がずれるが、かつてメジャーを代表する強打者でありながら、ステロイドを使用していたバリー・ボンズは、自身の影響力を使って、側近やパーソナルトレーナーもクラブハウスに入れるようにしていた。ステロイド使用の問題が大きくなった2002年と2003年に、メジャーリーグ機構は選手のパーソナルトレーナー、つまり球団が雇用していないトレーナーをクラブハウスに入れることを禁じた。これを受けて、ジャイアンツはボンズのパーソナルなスタッフを雇用している形にしたが、実質はボンズ専属のスタッフだった。ジャイアンツがこのスタッフとの雇用を打ち切ったのは、2007年だった。

 

 日本で生まれ育った日本語話者のアスリートが、海外のプロスポーツで活躍するためのルートはいくつかある。高校生や大学生年代から海外に出ていくルートや、日本で実績を上げてから海外へ向かうルートもある。若い年代から海外へ出ていくケースでは、苦労しながらでも言語を習得する時間があるかもしれないが、日本で実績を上げて大人になってから海外のプロスポーツへ飛び込むアスリートにとって、通訳は心強い存在であることは間違いない。そして、ここまで述べてきたように、メジャーリーグでは、スペイン語を母語とする選手が、通訳を求めることは、選手の権利として捉えられるようになっている。

 

 ドジャースは疑惑の発覚直後に大谷選手の通訳を解雇した。今回の事件が、今後、メジャーリーグの他の球団の通訳の雇用方法に影響があるのかどうかはわからない。もしかしたら、将来的に、球団が雇用する日本語通訳に求めるのは、今、現在、スペイン語通訳に求めているのと同じ職務内容とし、選手のプライベート時間には球団の通訳は関与しない、必要であれば選手個人が別の通訳を雇うことになるかもしれない。

 

 ステロイドを使ったボンズと、賭博には関与していないと主張した大谷とは全く違う。それに、スペイン語を母語とする選手が通訳を求めることは、メジャーリーグは権利として認めている。ただし、メジャーリーグや各球団は、選手の事実上のパーソナルなスタッフが持ち込んでしまうリスクを軽減しようとする可能性はあるのではないか、ということだ。

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◆ なぜ「水原一平」通訳は大谷翔平を騙し続けたのか? 精神科医が指摘「水原氏は“相手を操作する”ギャンブル依存症」

片田珠美氏/情報:デイリー新潮)

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 3月26日、ドジャースの大谷翔平選手(29)が会見を開き、元通訳・水原一平氏(39)による違法賭博疑惑について、自らの言葉で「関与」を全面否定した。MLBが調査に乗り出したこともあって質疑応答はなかったが、その真摯な姿勢に日米のメディア関係者の多くが好印象を抱いた一方で、専門家は「疑惑の中心人物」について重要な指摘をする。

 

いまから見ると切なくなる… 大谷と水原の蜜月「バディ時代」秘蔵ショット

 

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 会見で、大谷はスポーツ賭博などへの関与を否定した上で、水原氏が違法賭博に手を染めていたことを「初めて知ったのは韓国で第1戦が行われた後のチームミーティングの時」だったと明らかにした。その後、ホテルに戻ったあとで水原氏からより詳しい説明を受け、「彼に巨額の借金があることを初めて知りました。その時、彼は私に僕の口座に勝手にアクセスしてブックメーカーに送金」していた事実を告げられたという。

 

 大谷が代理人に相談すると、「代理人もやっぱり彼にウソをつかれていた」ことが分かり、球団関係者や弁護士に報告。弁護士からは「窃盗と詐欺」に当たるため警察当局に引き渡すとの報告を受けたといい、「(水原氏が)僕の口座から盗んで、みんなにウソをついた」と硬い表情で語った。

 

「会見で印象に残ったのは、大谷選手が『嘘』という言葉を約12分間という短い会見のなかで6度も使ったこと。今回の会見によって、水原氏のこれまでの説明が全部“作り話”だった可能性が高まり、“彼はなぜ、すぐにバレるようなウソをつき続けたのか?”と疑問の声が上がっています」(スポーツ紙記者)

 

 実際、水原氏がこれまで米メディアなどに語ってきた説明は二転三転し、都合が悪くなると前言撤回するなど“迷走”を極めた。

 

「ギャンブル依存者」を見極める9か条

 水原氏がスポーツ賭博に手を染めるようになったのは2021年。22年末までに100万ドル(1億5000万円超)を失い、23年に入ると借金総額が400万ドル(6億円超)にまで膨れ上がったとされる。

 

 当初、水原氏は米スポーツメディア「ESPN」のインタビューに対し、この時期に大谷に「状況を説明し、彼は私を助けると言った」と話した。具体的には、2人で一緒に大谷のパソコンを使って口座にログインし、「1回につき50万ドル(約7500万円)」を数か月の間に「(胴元側へ)8~9回送金した」と説明。しかしESPNが再取材を試みると、水原氏はすぐに「ウソをついた」と謝罪――。

 

 これまでギャンブル依存症患者を数多く診てきた精神科医の片田珠美氏がこう話す。

 

「一連の報道を見るかぎり、水原氏が賭博という行為に依存する“ギャンブル・アディクション(依存症)”であるのは間違いないように思われます。アメリカ精神医学会が『ギャンブル障害』の特徴として定義した9つのなかに〈賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく〉というものがあります。ギャンブル依存者はウソをつくことによる罪悪感や後ろめたさよりも、自己保身が勝る精神状態に置かれているケースが多い」

 

 9項目のなかには、他にも〈賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさら〉すことや、〈(賭博で)失った金を“深追いする”〉などの特徴が記されている。

 

「操る者」の正体

 片田氏が続ける。

 

「水原氏はESPNに話したのとは別のストーリーを大谷選手の代理人に語るなど、話す相手によって説明の内容が違っていたと報道されています。ウソに一貫性がない点を不可解に思う人がいるかもしれませんが、“その場しのぎで平気でウソをつく”のもギャンブル依存症者の特徴の一つ。他人から見ればすぐにバレそうなウソでも次々とついてしまうのは、水原氏が“違法行為に手を染めている”という認識に加え、“バレたら仕事も収入も失う”との強い喪失不安と“自分が破滅する”恐怖を抱えていたことの裏返しと考えられます」

 

 さらに片田氏は水原氏についてもう一つ、興味深い「特質」を指摘する。

 

「精神科医の目から見ると、水原氏には“マニピュレーター”の性質もあるように映ります。マニピュレーターとは“他人を思い通りに操り、支配しようとする者”であり、うわべは穏やかで人当たりもいい反面、他人の不安や弱みを嗅ぎつける嗅覚にすぐれています。それを利用し、相手の信頼を得ることによって、自身の目的を達成しようとすることも少なくありません。大谷選手にとって、水原氏は不慣れなアメリカで野球人生を送る上で欠かせない人物だったのかもしれませんが、英語を100%理解できるわけではないという大谷選手の弱みにつけ込まれた面もあるのではないでしょうか。ギャンブル依存症者の周りには、必ずといっていいほど“イネーブラー”と呼ばれる『支え手』がいることはよく知られています。今回も大谷選手の意思とは関係なく、結果的に“イネーブラー”として大谷選手が利用された格好になったのは否定できません。地位を維持し、目的(ギャンブルのタネ銭や借金返済の資金)を手に入れるためなら、表面を取り繕い、ウソを重ねてでも信頼を得ていく“操作法”に長けたマニピュレーターの気質も、水原氏は兼ね備えているように見えるのです」(片田氏)

 

 事件の深層には「ギャンブル依存症」のひと言では片づけられない一面があるのか。

 

デイリー新潮編集部

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◆ 賭博問題に巻き込まれた大谷翔平、今後どうなるのか 4つのシナリオ

Maury Brown氏/情報:Forbes JAPAN)

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米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の通訳だった水原一平と、カリフォルニア州オレンジ郡で胴元のマシュー・ボウヤーが営んでいた違法賭博をめぐる問題は、ますます奇っ怪な話になってきている。水原はスポーツ賭博で巨額の負債を抱え、大谷の口座から450万ドル(約6億8000万円)を支払ったとされる。大リーグには1919年のブラックソックス事件(編集注:ワールドシリーズでホワイトソックスの選手たちが八百長に手を染めたとされる事件)にさかのぼる賭博問題の歴史があるだけに、スポーツ界全体に動揺が広がっている。

 

この問題では連邦当局や内国歳入庁(IRS)、大リーグ機構が捜査や調査を進めている。その結果に基づいて大谷に対して取られる措置は、大リーグ機構のルールでかなり明確にされている。

 

大リーグ機構は規約の第21条、通称「ルール21」で、賭博に関与した選手や審判員、球団・リーグ関係者に科す罰則を定める。選手組合と大リーグ機構は団体労使協定を結んでいるので、大リーグ機構側は調査に関する情報を逐次、組合側と共有していくことになる。一方、大谷自身は25日(日本時間26日)、今回の件について初めて記者会見を開き、水原について「信頼していた方の過ちというのを悲しく、というかショックです」と心境を吐露した。

 

捜査や調査の結果、大谷がどうなるかは、ルール21に基づくと次の4つが考えられる。

 

■1. 大谷が窃盗の被害者だった場合

 

大谷が会見で語ったこと、あるいはその語り方は、今後の展開で重要な意味をもつ。大谷はこの席で、「わたしの知る限り」や「わたしの記憶では」といった、ある種の「逃げ」の余地を残した言葉をいっさい使わなかった。

 

大谷はきっぱりこう言った。「僕自身は何かに賭けたりとか、誰かに代わってスポーツイベントに賭けたりとか、それを頼んだりということはないですし、僕の口座からブックメーカーに対して、誰かに送金を依頼したこともまったくありません」

 

大谷はまた、水原との間で起きていることについて初めて知ったのは、韓国のソウルで行われたパドレスとの開幕シリーズ第1戦後のチームミーティングだったとも説明した。このミーティングの時まで、「僕は一平さんがギャンブル依存症だと知らなかったし、借金をしていたことも知りませんでした」と話した。

 

捜査や調査の状況からして、大谷は引き続きドジャースの試合に出場するとみられる。「シーズンに向けてまたスタートしたい」と、大谷は読み上げた声明を締めくくっている。

 

大谷が説明したように、自身が犯罪の被害者であることが判明すれば、大谷へのペナルティーはない。むしろ、大谷には同情がさらに寄せられるだろう。大谷はいまでも用心深いが、親しい友人と信じていた身近な人間に裏切られたのだとすれば、今後はいっそう用心深くなりそうだ。

 

万が一、大谷のスポーツ賭博関与が判明した場合の罰則は?

■2. 大谷はスポーツ賭博をしたが、野球は対象でなかった場合

 

仮に捜査や調査の結果、大谷がなんらかの形で水原を介して野球以外のスポーツで賭け事をしていたことがわかった場合、ルール21によれば、ロブ・マンフレッド・コミッショナーの裁量で非公開の金額が罰金として大谷に科せられる。

 

ルール21にはこうある。「違法な胴元、または違法な胴元の代理人を相手に賭けを行った者は、その行為の事実や状況と照らして、コミッショナーが適切と考える罰則を受けるものとする」

 

このケースは少し前に先例がある。2015年、当時マーリンズの投手だったジャレッド・コザートは、野球以外のスポーツで賭博をやっていたことが発覚した。大谷が「警察当局に全面的に協力したい」と述べたように、コザートも捜査・調査に協力する意向を示していた。

 

■3. 大谷がスポーツ賭博をしていて、違法な胴元との関係もあった場合

 

このシナリオは浮上していないが、水原をめぐる問題は目まぐるしく変わっているので、念のため提起しておく価値はあるだろう。ルール21には、違法な胴元と直接関わった場合の規定もある。この場合、罰則は出場停止だ。

 

「違法な胴元を営んだ、または違法な胴元業のために働いた選手、審判員、または球団もしくはリーグの役職員は、コミッショナーから最低1年間の出場停止処分を受けるものとする。ここで違法な胴元とは、賭け金を受け取る司法管轄区域で違法とされている賭博行為の一環として、一般人を相手にスポーツイベントへの賭け金を受け取る、賭ける、または扱う個人をいう」

 

繰り返しになるが、今回の件はこのケースには該当しなさそうだ。違法な胴元と直接関与したのは水原とみられ、水原がボウヤーを相手にお金を賭けた結果、ボウヤーに対して負債が生じたとされる。

 

■4. 大谷がスポーツ賭博をしていて、野球も対象だった場合

 

万が一、大谷がスポーツ賭博をやっていたばかりか、その対象に野球も含まれていたとすればどうなるか。この場合、さらに2つのケースに分けられる。

 

大谷が賭けた野球の試合に、自身がプレーした時期のエンゼルスかドジャースの試合が含まれていなかった場合、ルール21によれば「1年間の不適格を宣告」される。

 

一方、大谷自身が出場した試合やプレーしたチームが賭けの対象に含まれていた場合は、1989年に監督在任時の野球賭博への関与でピート・ローズが受けたのと同じ処分が下される。

 

「選手、審判員、または球団もしくはリーグの役職員で、義務を果たすべき野球試合に、いかなる金額であれ賭けを行った者は、永久に不適格と宣告されるものとする」

 

これは最悪の結果である。大リーグの顔、大リーグ最大のスーパースターである大谷が、その大リーグから永久追放されてしまうのだ。ローズや、ブラックソックス事件に関与したとしてやはり永久追放されたジョー・ジャクソンの例を踏まえると、米球界への復活はおそらくあり得ない。

 

抜群の好感度を誇る大谷の「ブランド」への影響は?

■「大谷ブランド」に傷がつくか

 

大谷は米国内外の企業とのスポンサー契約で巨額の収入を得ている。また、打者としても投手としても傑出した能力を誇る大谷は、「ユニコーン」のような存在とも目されてきた。今後の捜査や調査の結果しだいでは、大谷はグラウンド内外でさまざまな影響を受けるだろう。

 

大谷が主張しているように、犯罪の被害者だということが明らかになれば、大谷はこのスキャンダルから無傷で抜け出せるはずだ。現時点では「推定無罪」の原則が適用されるので、現行のスポンサー契約への影響はないだろう。

 

もし、水原が賭博でつくった借金を大谷が代わりに支払っていたということであれば、罰金は軽く済むだろうし、大谷はせいぜいナイーブだったという話で終わる。ただしその場合、以前に語っていたことは嘘だったいうことにもなり、評判には傷がつきそうだ。現行の契約が打ち切りになるかは疑問だが、短期的には新たなスポンサー契約に影響が出るのではないか。

 

破滅的なシナリオだが、仮に大谷がなんらかの形で賭博をしていたことがわかれば、一部の契約は解除されるかもしれない。賭けの対象に野球が含まれていなければ、大谷は少なくともドジャース自体との契約は確実に維持できるだろう。だが万が一、対象に野球も含まれていたとすれば、ドジャースとの大リーグ史上最高額の契約も解除されるおそれが出てくる。選手組合はそれに反対するかもしれないし、しないかもしれない。対応は捜査や調査の結果の子細によるところが大きいだろう。

 

Maury Brown

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◆ 大谷選手の会見、全米では「擁護」が多いが、これから立ちはだかる司法問題

長野慶太氏/情報:Forbes JAPAN)

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大谷翔平選手の通訳、水原一平氏による「窃盗事件」で、とうとう大谷選手の第一声が出た。そして、これによってアメリカでは激震が走っている。

 

野球の人気が、フットボールやバスケット、アイスホッケーなどに比べて、比較的劣位に甘んじていたアメリカにあって、これほど野球が一般人の話題に上るのは本当にひさしぶりのことだ。

 

野球のルールもあまり知らない若い人たちまでが、街で「大谷はシロかクロか」との話題に興じる姿は異様な光景であり、これまでのアメリカでは想像もつかなかったことだ。

 

そして、ここが大谷選手のすごいところかもしれないが、「大谷を信じる」という人が圧倒的に多く、SNSなどでの書き込みもそうなっている。大谷選手の悪口を書く人間が出てくると、あっという間にそれに対する反論が集まり、悪口を叩きのめす。また、叩きのめしている人は、青い風船で自分のコメントを締めくくるなどしているから、ドジャースのファンが成敗しにきたという体裁だとわかる。

 

■大谷選手をディスると批判の嵐

 

しかも、こういった「擁護」の多さからすると、必ずしもドジャースのファンだけが身内びいきで大谷選手を擁護しているのではなく、野球ファンの多くが大谷選手に声援を送っているのだと考えても言い過ぎでない。

 

たとえば、大谷選手の記者会見を真っ先に自社のネットにあげたABCニュースに寄せられた批判コメントはこのようなものだった。

 

「信じられないことだと感じています。大谷がこの国に長年いるのに英語が話せないなんて、素晴らしい防御力ですね」

 

このような大谷選手の英語力を皮肉ったコメントが出ると、すかさず「じゃあ、おまえが大谷と同じくらい日本に滞在して、どれだけ立派な日本語を喋れるのか見てみたいものだ」という反論が飛び込んでくる。

 

さらに続けて「なぜイッペイの主張を信じるべきなのか、彼が学歴の詐称を行っている事実があるのに、すでに明らかに彼が詐欺師であることは明らかではないのですか?」というコメントも飛び出す。

 

また、『私はアメリカの最も有名な嫌われ者です』というベストセラーの著者であり、過激で挑戦的に対象をこき下ろすことでよく知られたラジオ番組の有名ホスト、ハワード・スターンでさえも、今回の事件では大谷選手をひと言もこき下ろすことなく、むしろ、メジャーリーグの球団であるアスレチックスがラスベガスに移転することが決まっている時代に、選手に賭け事を禁じるということがそもそも適切なのかどうかという議論に興じていた。

 

このように、いまのアメリカは、大谷選手をディスることは、むしろSNSなどでは批判の嵐を食らうというような雰囲気にあり、筆者を含め、アメリカに居住する肩身の狭い思いをしている日本人は、ほっと胸をなでおろしている。

 

しかし、大谷選手と所属するドジャースの法務チームが、ここからの法務戦略を間違えると、この動きも急反転することがありうるので、気を抜けない。「大谷批判タブー」がここ数日続くとしても、やはり「大谷を信じるにしても、なぜ大谷は窃盗に気がつかなかったのか?」というコメントはたくさん湧き起ってきていて、それが今後、司法機関を牽引していくからだ。

 

考えうるベストな法務戦略とは?

推測の域を出ないが、大谷選手の発言内容が事実ならば、一般的にここからの法務攻防は次のようになるだろう。

 

まず、被害額からいって、刑事裁判と民事裁判の両建ては不可避だ。約7億円(450万ドル)の被害にあって民事裁判を起こさなければ、どこかで(水原氏と)つながっていたのではと思われてしまう。

 

また、「事件」がカリフォルニア州内だけで起きているとは限らないので(水原氏の賭博は、全米移動中にも行われたとして)、おそらく連邦刑事裁判所が事件を担当する。そして民事はおそらくカリフォルニア州裁判所だ。

 

すると、それぞれの「普段の交流がほとんどない」裁判官どうしの、メディア露出を当然意識したうえでの「うちが先に裁判を進める」とか「あっちの裁判が進んでからこっちをやる」という裁判の運用問題が出てくる。州の裁判官であれば、次の自身の選挙にどう利用するかという考えが働いてもおかしくない。

 

これだけ見ても、大谷選手サイドの法務チームが考えねばならないシナリオは多岐にわたり、相当な戦略が必要とされる。さらに、大谷選手とドジャースのそれぞれの法務が同じ方向を向けるかどうかということも、今後、問題になってくる。ここが仲たがいを始めると、とても醜いことになる。

 

ここで言う同じ方向とは、大谷選手が試合で全力を出せるような環境を、球団と大谷選手自身でつくり上げることに尽きるのではないだろうか。それにあたってのポイントは、水原氏に重罰を与えることではなく、二転三転したような当初のコメントを二度と表に出させないこととなる。

 

水原氏のコメントは、それが法廷外であっても法廷内であっても、大谷選手の「環境」に直接影響する。であれば、「水原氏を証言台に立たせない」ということが最大の戦術となるだろう。

 

とすれば、自分たちが裁判の当事者となれる民事裁判ができるだけ先に行われるように働きかけながら、実際には和解を目指すべきだ。和解条件に「非開示条項」を入れて、すべての和解内容を外に出さないというのは1つの戦略だ(弁済1ドルと謝罪で和解するという戦略さえありだ)。

 

そして、刑事事件裁判では、「民事ですでに和解している」ことをもって、水原氏に執行猶予がつく可能性を高める環境をつくり、検察と水原氏の司法取引に誘導する。もともとアメリカの刑事事件の8割以上は司法取引で決着がつき、裁判は開かれない。

 

これができれば、水原氏は刑事事件でも証言することがないので、彼のコメントは外にでない。アメリカの司法当局は、賭博に参加する人間より賭博を主催している人間の処罰に興味があるので、水原氏がFBIに全面協力して主催者逮捕につなげることができれば、巨額の窃盗といえども執行猶予の司法取引が実現する可能性は高まる。

 

真実が、報道内容より仮に多少の複雑性があったにしても、あるいは「言った、言わない」の記憶が双方で多少の齟齬があるにしても、水原氏や大谷選手がそれぞれ弁護士とだけ話した内容は、弁護士秘匿特権によって守られる。仮に裁判で尋ねられても証言を拒否することができる(日本では必ずしもそうではないが)。

 

従って、究極のポイントは、大谷選手が弁護士と配偶者以外、たとえ両親であっても球団社長であってもロサンゼルスタイムスの記者であっても、今回の記者会見した以外のことを喋らないことである。

 

これが破られると、秘匿特権が自動的に放棄されたとみなされ、もし水原氏の弁護士が、嘘八百を並べてでも刑期を軽くする作戦に動いた場合、大谷選手が喋った相手は証言台に呼ばれ、法務チームのコントロールはパンクし、心ない人たちによってSNSは荒らされて、大谷選手は無心でバットを振れなくなる。

 

在米邦人にとって、その華々しい活躍から、大谷選手は久しぶりに地上に降臨した神のような存在だ。これからもますます頑張ってもらいたい。執拗にカメラとマイクを向ける報道陣には、ひと言も喋る必要はない。友人や先輩や恩師たちも、大谷選手に「ここだけの話で」と事件に対する質問をしてはいけないのだ。

 

長野 慶太

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 ■ NOTE

 

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