2024年3月9日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 大谷が「2番DH」で本拠地のレッズ戦に出場し、2打数0安打だった。1回1死、右腕マルティネスと対戦。カウント1-1からの3球目、甘く入った直球を捉えたが、左翼フェンス手前で捕球された。第2打席は4回1死、再びマルティネスとの対戦で左飛で凡退した。その後、午後7時ごろから雷雨の影響で中断。内野フィールドに防水シートが敷かれた。試合は5回表が終了後、雨天中止となった。

 

 

◯ デーブ・ロバーツ監督はノーゲームとなった後、大谷の次回オープン戦出場が10日(日本時間11日)のダイヤモンドバックス戦になると明言。9日のレンジャーズ戦は欠場する予定。

 

◯ 日本ハム、ソフトバンクでプレー経験のあるレッズのニック・マルティネス投手は8日(日本時間9日)、ドジャースとのオープン戦に先発登板し、4回まで無安打無失点6奪三振の快投を披露。無失点に抑えたマルティネスだが「タフ。こういう打者と対戦するときは、集中力を高めなくてはいけない。息をつく暇はないよ。彼らだけでなく、1番から9番まで打席での自制心がものすごい。ストライクゾーンを見極めることができる」と絶賛。「彼らのような打者、特にショウヘイと対戦するときは全集中を要求される。完璧な投球をしないといけないから、息をつくことができないよ」と明かした。

 

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 ■ ロサンゼルス・ドジャース情報

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◯ 今季、右翼から二塁にコンバートされた中心選手のムーキー・ベッツが初めて「1番・遊撃」でラインナップ。遊撃を務めていたG・ラックス内野手が入れ替わって二塁で出場する。ラックスは昨季のオープン戦で右膝の前十字じん帯と側副じん帯を断裂し、シーズン全休の大けがを負った。レギュラー遊撃手として復帰を目指していたが、膝の影響でスローイングが不安定だった。ロバーツ監督はこの日「変更は現時点で恒久的なもの」とテスト変更でないことを明言した。

 

昨季16試合で遊撃にも入っていたベッツは試合前に取材に応じ「何が起きたかは関係ない。僕たちはただ勝ちたいんだ。だから、誰がどこの守備であるかというのは問題ではない。最も重要なことは勝つことだ。僕は全く気にしない。ダイアモンドの上にいるときは、自分のベストを尽くすだけだ。」と断言。「たぶん高校生の時」以来となるレギュラー遊撃手として「もちろん、変化はある。それも楽しい。自分の前に任務が積まれたということ。誰もそんなことは気にしない。これから何が自分に起きるかなどは気にしない。韓国に行くのがいつだろうが、僕は準備できる」と男気発言を連発し、フォアザチーム精神を強調した。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷翔平が結婚 見えた日米の違い

志村朋哉氏/情報:時事通信)

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 大谷翔平が結婚を発表し、日本列島に衝撃が走った。プライベートに関して本人はほとんど言及することがなく、自宅と球場を往復するだけの生活をしているイメージがあった分、驚きは大きい。アメリカでも大谷の結婚はニュースにはなったが、日本での盛り上がりに比べるとかなりの温度差がある。アメリカが今回の結婚をどう受け止めたのか、そしてそこから見えてくる日米の文化の違いを解説する。

 

 米西海岸時間2月28日の午後11時過ぎ、就寝の準備の最中に、日本の雑誌編集者さんから国際電話をもらって大谷の結婚を知った。

 

 ドジャース移籍時と同じように、なんの前触れもなく、自身のインスタグラムに日本語と英語で声明文を投稿。いかにも大谷らしい発表の仕方だった。

 

 「大谷はハード・ローンチの天才」だと米スポーツメディア『ジ・アスレチック』でエンゼルスとドジャースを担当するサム・ブラム記者は言う。ハード・ローンチとは、チラ見せしながら徐々にではなく、一気に大ニュースを発表することだ。

 

 「MVP発表時にも、突然、愛犬ディーコイ(日本語名デコピン)が登場したしね。これだけメディアの注目を集めているのに、数年間もガールフレンドの存在を隠し通せたのは、本当にすごいこと」とブラムは話す。

 

 現地では、スポーツ専門媒体やロサンゼルスの地元メディアなどが報じた。

 

 「おはようございます。私も苗字を『オオタニ』に変えて、みんなに私が彼の新妻だと思わせようかと思っています(笑)」といかにも軽い朝番組のノリでニュースを伝えたのは、地方局FOX11ロサンゼルスのリポーター、クリスティー・ファハード。(現地2月29日放送)

 

 大谷は、「MVP」「超億万長者」「スーパースター」などたくさんの称号を得てきたが、「夫」という肩書はなかったと紹介。インスタグラムで結婚を発表したが、相手の素性は明かしていなくて、日本ではビッグニュースになっていると伝えた。

 

 「クリスティー・オオタニがドジャースタジアムから中継でお伝えしました」と1分半のリポートをジョークで締めくくった。

 

「だから何なの?」

 

 しかし、街中で号外が配られ、夜のニュース番組のトップで報じられ、井戸端会議の話題を独占した日本と比べると、アメリカの盛り上がりはゼロに近いと言える。

 

 野球ファンは、「球界の顔」である大谷の慶事をSNSで「Congratulations!(おめでとう!)」と祝福したが、「だから何なの?」「なぜこれがニュースなの?」と冷めたコメントも目立った。

 

 メディアの報道も、その日に起きたスポーツニュースの一つという扱いで、野球好き以外は目にしてすらいないだろう。報じる視点も、「国民的スターの結婚で、日本では大きな騒ぎになっている」というものだった。少なくとも、記者が夜にたたき起こされて速報を書かなくてはならないようなニュースではなかった。

 

 「日本人は大谷の私生活にすごく関心があるみたいだけど、こっちではほとんど話題にならない」とブラム記者。「僕もあまり興味はないな。メジャーリーガーで結婚している人はたくさんいるし。ただ大谷が結婚して幸せになったことは、僕もうれしい。ほとんどのアメリカのファンは、大谷の結婚を祝福したら、それでおしまいって感じだと思う」

 

 ドジャース入団が発表された時は、私の元にも興奮したアメリカ人の友人たちからテキストメッセージが届いたが、今回はなかった。

 

 アメリカでも、大谷が「野球界最大のスター」であることに異論を唱える者は少ない。では、なぜ日米でこれだけの温度差があるのか?

 

 そもそも、アスリートの結婚はアメリカではニュースにならない。ほとんどのスポーツファンは、アスリートが競技でどんなパフォーマンスを見せるのかに興味があるのであって、私生活で何をしているかまで注目する人は少ない。なので、有名人ネタを扱うゴシップメディアなども、相手がテイラー・スイフトやジェニファー・ロペスといった、よほどの有名人などでなければ、アスリートのプライベートを詮索するようなことはしない。

 

 それに、アメリカでは、有名人に恋人や配偶者がいるのは当然との認識があり、当事者たちもそれを隠したりはしない。だから、婚約や入籍をしても、わざわざ会見を開いて発表するということもない。

 

 普通のメジャーリーガーであれば、以下のようなカジュアルな会話で結婚がメディアに明かされてもおかしくない。

 

記者「何かオフシーズンにニュースになるようなことはあった?」

 

選手「いいオフシーズンだったよ。ちなみに結婚したんだ」

 

記者「それはおめでとう!相手は誰なの?」

 

選手「大学の同級生なんだ。これが写真だよ」

 

 それでも、読者の興味をひくようなエピソードでもなければ、記事にはならないだろう。

 

不可解に映る結婚発表

 

 アメリカ人は、仕事場で家族や恋人のことを当たり前に話す。アフターワークの飲み会に、配偶者が加わるというのも珍しくない。

 

 そうした感覚を持つアメリカ人には、突然SNSで結婚を発表して、会見を開いたにも関わらず、奥さんの素性を全く明かさない大谷の言動が不思議に映ったかもしれない。

 

「アメリカ人からすると、『何を隠しているんだ、本当にいるのか、何かおかしい』と思ってしまうかもしれない」とロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストを務めるディラン・ヘルナンデスは言う。

 

 日本人の母を持ち、日本文化にも詳しいヘルナンデスは、そうしたアメリカ人の大谷に対する誤解をとくため、日本の事情を説明するコラムを書いた。

 

 「日本人が、なぜこれだけ騒いでいるかが、アメリカ人には分からないんだ」とヘルナンデス。「大谷ほどの(国民的スター)がアメリカには存在しないし、セレブにも、そこまで興味がないから」

 

 大谷が渡米した直後から、私も繰り返し強調してきたが、日本メディアが誇大宣伝するような「大谷フィーバー」に全米は包まれてはいない。それは大谷の活躍がすごくないとか、おとしめようとしているわけではない。広大な国土に多様な人々が暮らすアメリカで、国民の大半が熱狂するような社会現象は起きにくいというだけの話だ。

 

 今や日本人にとって大谷は、老若男女問わず誰もが知る最大の国民的スターである。テレビをつければ大谷関連の情報やCMなどを目にしない日はない。街は大谷の写真と広告であふれている。日本人の両親の元に岩手で生まれ、外国人に引けをとらないパワーで「世界一の野球選手」となった大谷は、日本人にとって憧れであり、誇りを感じられる存在なのだ。そんな大谷の結婚が一大ニュースになって、相手の女性について大きな関心が集まるのも無理はない。

 

 しかし、アメリカには、日本での大谷と比較になるような有名人は存在しない。だから、大騒ぎになるため、ほとんど外出もできないくらいすさまじい日本での大谷人気を、アメリカ人が理解するのは難しいだろう。

 

 英語でのメッセージも書かれてはいたが、大谷の結婚発表の投稿が、主に日本人向けに書かれていたのは明らかだ。

 

 「明日の囲み取材で対応をさせていただきますので、今後も両親族を含め無許可での取材等はお控えいただきますようよろしくお願い申し上げます」との締めくくり文は英語にはなかった。あくまで日本メディアに釘を刺したのだろう。

 

大谷が「かわいそう」

 

 ヘルナンデスは、大谷の言動を説明するのに、ストーキングや誹謗(ひぼう)中傷、過剰取材などで離婚に追い込まれたフィギュアスケーターの羽生結弦の例を挙げた。

 

 「大谷が相手の女性を明かさなかった理由は理解できる」とヘルナンデス。「週刊誌なんかが結婚相手を暴こうとしているのを見て、初めて大谷のことをかわいそうだと思ったよ。大谷としては逃げ場がない。アメリカのパパラッチがセレブを追っているイメージがあるかもしれないけど、それはセレブ自身がわざわざパパラッチのいる場所に行くなど、自分を売り出す手段として使っていることもある。(郊外などに)引っ越せば寄ってこないよ」

 

 イギリスのヘンリー王子夫妻や小室圭さん、眞子さん夫妻など、自国で居心地の悪くなった有名人がアメリカに移住する理由の一つでもある。良い意味で放っておいてくれるのだ。

 

 日本では「大谷ロス」を感じる女性も多いようだが、アメリカではそうした声は聞かれない。

 

 アメリカでは、有名人に恋人や配偶者がいるのは当然との認識がある。プロサッカー選手のマロリー・ピューと交際して結婚したシカゴ・カブスのダンズビー・スワンソン遊撃手などは、公の場で彼女を大事にする姿が、女性の好感度を上げたとすら言える。

 

 「今回の結婚で、翔平にはより感心させられた」と話すのは、熱狂的な大谷ファンのジェニー・ムーアさん(48)。「仕事とプライベートを両立させられて、しかもプライベートの部分をひけらかさないなんて、とてもプロフェッショナルで礼儀正しいと思う。きちんと線引きができるのを見ても、個人的な問題をフィールドには持ち込まない姿勢なのが伝わってくるわ」

 

 これまでアメリカ人にとっての大谷は、私生活がベールに包まれている印象があったが、結婚というプライベートの一面を公表したことで、ファンも親しみを感じやすくなるかもしれない。ドジャースには、フレディ・フリーマンやムーキー・ベッツなど家族を大事にするイメージの選手がそろっているので、チームメイトとの関係にも良い影響があるかもしれない。

 

「ドジャースに移籍して、大谷は少し殻を破って本当の自分をさらけ出し始めたような感じがする」とブラム記者。

 

「でも何よりも、翔平と謎めいた花嫁を祝福しないとね」

 

(志村朋哉 在米ジャーナリスト)

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◆ チーム事情に振り回されながらも守備位置変更を受け入れ続けるムーキー・ベッツの身体能力と滅私奉公精神

菊地慶剛氏/情報:スポナビ)

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【開幕直前の二遊間入れ替えを決定したドジャース】

 

 すでに日本でも報じられているように、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は現地時間3月8日のレッズ戦開始前に、ムーキー・ベッツ選手とキャビン・ラックス選手の二遊間コンビの守備位置を入れ替えることを明らかにした。

 

 今回の決定は一時的なものではなく、同監督が「現時点で永続的」と話しているように、シーズン開幕以降も当面は両選手の守備位置を固定していくことになりそうだ。

 

 これまで右翼手として6度のゴールドグローブ賞を受賞し、チームの中心選手であるベッツ選手を、今シーズンから先発二塁手に専念させること自体がかなり異例ではあったが、そこからさらにマイナー時代を含め経験の浅い遊撃手へコンバートするのは異例中の異例といっていい。

 

 ベッツ選手はほとんど練習機会がないまま、ぶっつけ本番で3月20日から始まる韓国でのシーズン開幕に臨むことになる。どこまで新たな守備位置に対応できるのか注目されるところだ。

 

【マイナーとメジャーで遊撃経験はわずか30試合】

 

 今回の決断は、ある意味ドジャースにとってギャンブルのようなものだと考えている。

 

 今シーズンから先発遊撃手に固定する予定だったラックス選手がオープン戦で送球面に不安定さを露呈し、メディアからも不安視する声が挙がっていた。通常なら遊撃手として経験豊富なミギュエル・ロハス選手やキケ・ヘルナンデス選手が控えており、彼らをラックス選手の代用させることで対応できていただろう。

 

 だがドジャースはラックス選手の攻撃面での貢献度を重要視し、送球の負担が減り、彼が遊撃手より二塁手での出場機会が多かったことを考慮し、二塁に回すことを決定。その結果として、ベッツ選手を遊撃にコンバートせざるを得なくなったのだ。

 

 だからと言ってベッツ選手が、遊撃手として十分な実績を残しているわけではない。元々2011年にレッドソックスから内野手(高校時代は主に遊撃手)でドラフト指名を受けたが、2014年のシーズン途中で外野にコンバートされるまで主に二塁手を任されてきた。

 

 昨シーズン途中で控えを含め遊撃手が一時期いなくなり、急きょベッツ選手が16試合(うち先発出場12試合)だけ遊撃に入ったことがあるが、マイナーを含めプロ生活13年間で遊撃を任されたのはわずか30試合に止まっている。

 

 そんなベッツ選手がシーズン開幕目前で突如遊撃手にコンバートされたのだから、チーム内に混乱をもたらしてもおかしくない状況だ。

 

【ベッツ選手の身体能力と滅私奉公精神があってこそ】

 

 チームづくりというものは大抵主軸選手を中心にしながら編成していくものであり、そうした主軸選手たちは確固たるポジションが与えられる。ところがベッツ選手は誰もが認める主軸選手であるにもかかわらず、オフに決まった二塁手専念も、そして今回の遊撃手コンバートもチーム事情によるものだ。まさにベッツ選手は周りに振り回される格好になっている。

 

 しかも経験不足が否めない遊撃手を任されるということになれば、ベッツ選手が負うことになる負担やプレッシャーはより一層増す。それでもドジャースがギャンブルといってもいい決断をしたのは、ベッツ選手の類い稀な身体能力と滅私奉公精神を信頼しているからに他ならない。

 

 MLB屈指のオールラウンド選手としての確固たる地位を築いているだけでなく、プレイベートでもボーリングやバスケ等でプロ並みの実力を誇る身体能力は、まさに球界随一とまでいわれている。そのため今回の遊撃手コンバートに関しても、MLBネットワークで解説者を務めるアンソニー・レッカー氏が「毎日でもムーキーが遊撃を守る姿を見たい」と歓迎しているほどだ。

 

 だが身体能力以上に注目すべきなのは、「チームが勝つためになら何でも受け入れる」というベッツ選手の滅私奉公精神だ。今回の遊撃手コンバートも以下のように話して、当然のごとく受け入れている。

 

 「皆が同じ方向を向いている。(遊撃手コンバートは)まったく気にしていない。とにかく勝ちたいだけだ。何百万回と言い続けているが、最も重要なことは勝つことであり、自分は勝ちたくしてしかたがない。どこのポジションを任されようが、ダイヤモンド(フィールド)に立つ限り、自分ができることに最善を尽くす」

 

 チームが勝つために何でもするという姿勢は、大谷翔平選手とかなり共通する部分がある。彼らのような滅私奉公精神の選手たちが中心にいる今シーズンのドジャースは、その結束力が簡単に揺るぐことはなさそうだ。

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◆ 大谷翔平が考える“10年後の大谷翔平”

川上康介氏/情報:GQ JAPAN)

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BOSSから新たな大谷翔平のコレクションが4月5日に発表される。そのキャンペーンビジュアルの撮影に『GQ JAPAN』が同行。独占インタビューを行った。

 

彼がやってきた

 

11月とはいえ、ロサンゼルスの空は晴れ渡り日差しは強い。彼は時間通りにスタジオにやってきた。BOSSのロゴ入りキャップに白いTシャツ、デニム、スニーカー。目の前で見ると、想像以上に大きい。

 

「今日はよろしくおねがいします」。そう声をかけると、彼はニッコリと笑い、「こちらこそよろしくおねがいします」といった。

 

1年間、日本中が夢中になって追いかけた大谷翔平がそこにいた。2023年は、大谷翔平の年だった。3月20日、フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝戦。侍ジャパンのクローザーとしてマウンドに登った大谷が投じた最後の1球。水平方向に43.2センチという驚異的な変化を見せたスイーパーに、エンゼルスの同僚であり、メジャー屈指の好打者マイク・トラウトのバットが空を切った。吠える大谷。グローブとキャップを投げ、チームメイトと抱き合う。名シーンとして長く語られるであろうこの瞬間の、主役は間違いなく大谷翔平だった。9月に脇腹を痛めて故障者リスト入り。そのままシーズンを終えたものの、打者として打率.304、44本塁打、95打点、20盗塁、投手として10勝5敗、防御率3.14、167 奪三振という成績を残し、アメリカン・リーグ本塁打王、MVPなど数え切れないほどの栄誉を手に入れた。

 

日本のマスコミはWBC開幕前から大谷の動向を報じ続けた。大谷がチームを離脱すると、2024年のシーズンに向けた移籍に関する報道がスタート。MVP獲得や全国の小学生にグローブをプレゼントした件なども大きく報じられた。

 

「僕のMVP受賞や犬のことなどが盛り上がっているんですよね。日本で流れるニュースはほとんど見ないんですが、大きく取り上げられていると聞いて、すごく平和だなと思いました(笑)」。インタビューが行われたのは、そんなシーズンオフの1日。MVPが発表された翌日だった。彼が2020年以来ブランドアンバサダーをつとめるBOSSから発表される初のカプセルコレクション“BOSS × SHOHEI OHTANI”の撮影が行われるということで、急遽渡米。スタジオのメイクルームでインタビューを行った。毎日のように見ていたユニフォーム姿とは違うリラックスした表情。心なしかカラダも大きい。

 

「今は右肘の手術後で、結構食べるようにしているので大きくなっています。ここからシーズンに向けて絞っていくので、時期によって1サイズくらい変わってくるはずです。スーツは日本とアメリカに5着ずつくらいありますが、まだ着られるのかな? 年々体型も変わっているので、着られなくなるものもあるんですよ」

 

故障により予定より早く、9月にシーズンが終わった。そしてすぐに受けたのが右肘の靭帯修復手術。ピッチャーとして復帰できるのは、最速でも2025年シーズン。歴史に残るシーズンは、彼のカラダに大きな負担をかけていた。

 

「ケガはやっぱりストレスになります。調子が悪くて試合に出られないことはまだ受け入れやすいんですが、ケガは自分ではどうしようもない。早く回復するように毎日リハビリ、ケアをするしかない。ただリハビリも段階を踏んでいかなくてはならないので、やれることを少しずつやりながら目標の数値をクリアしていくことに専念しています」

 

孤独なリハビリを支えてくれたのは、話題の愛犬デコピンだったという。

 

「もともと犬を飼いたいと思っていたんですが、手術によって早まった感じです。今はもう犬とリハビリ、それだけの生活。ずっと一人暮らしで、一人でいることを苦に感じたことはなかったんですが、犬との生活に慣れてしまうと、もう離れられない(笑)。トレーニングのときもランニングのときもいつも一緒にいます」

 

この手術は、大谷翔平を進化に導くのか?

 

「ケガをしなかった世界線がわからないのでなんとも言えませんが、前回手術したときも気づくことはいろいろありました。もちろんケガをしないに越したことはないのですが、してしま った以上、いい結果につなげていくしかないと思っています」

 

12月9日、ロサンゼルス・ドジャースと大谷が交わした契約は、10年総額7億ドル(1029億3854万円、1ドル147.12円で計算。編集部調べ)。世界のスポーツ界においても史上最高額の契約だった。インタビューの時点では、彼の2024年の所属球団は、まだ発表されていなかった。「2024年はバッターとしてだけの出場になりますが、目標はまずキャンプインまでにしっかりプレーできる状態にもっていくこと。そこからクオリティを上げていって、いいシーズンを迎えられればいいなと。術後ということもありますし、あまり遠くを見ず、目の前のことをひとつずつやっていくだけです」

 

自分を冷静に見つめ、大言壮語をしない。一方で悲観的にもならず、前を向いて歩を進める。

 

「野球に関しては楽天的。いつ大ケガをするかわからない仕事だし、それでダメなら辞めればいいだけの話。だからいつそうなってもいいという覚悟を持ち、毎日を悔いなく過ごしたい。そう考えているから逆に楽天的なんです」

 

常に世界中から注目される存在になった。ドジャースへの入団発表の前から、次の契約は史上最高の金額になるということは予想されていた。

 

「プレッシャーがないと言ったら嘘になります。契約金額が上がるということは、チームからそれだけの期待をされ、戦力として計算されているということですし、まわりもそういう目で僕を見るでしょうから、そこに応えなければならないというプレッシャーはあります。ただそれによって『やらなきゃいけない』と思いすぎるのもよくない。年俸が変わったからといって、自分がやるべきことが変わるわけではない。まず自分で自分に期待し、その期待に応えるように練習をする。これまでは、まわりの期待と自分の期待がいいバランスを保ってきたし、これからもそうでありたいと思っています」

 

彼にとって野球は、子どものころからの“趣味”なのだという。

 

「小学校低学年で野球を始めたときから一貫して趣味のような感じです。最初は単純にキャッチボールが面白くて、早く週末に野球をやりたいなと思っていた。完全に遊び感覚です。そこに試合に勝つとか、ホームランを打つという楽しさが加わってきて、さらには練習が身を結ぶという嬉しさも知った。そういう楽しさ、嬉しさが積み重なって今がある。もちろん今は仕事という一面もありますから、責任を果たしたいという思いもある。でもやっぱり野球をやる楽しさと、目標を設定してそれを達成していく楽しさの両方が、根底にはあります」

 

愛犬デコピンと。日本中が大谷の犬の話題で盛り上がった。

 

10年後はどのように過ごしているのだろう?

 

「39歳、40歳か……野球はまだやっていたいですね。できればバリバリの現役でいたい(笑)。もちろん、いずれ引退する日はきますが、そのときに野球を好きなままでいたいです。野球を好きなまま、嫌だなとか辞めたいななどと思っていないのが理想です」

 

Be your own BOSS──自分自身のBOSS。自信、スタイル、そして前向きなビジョンによって突き動かされる、自己決定的な人生のチャンピオンになる──そんなボスのキャンペーンメッセージを誰よりも体現する男、大谷翔平。

 

「自分をいちばん理解しているのは自分。自分のBOSSでありたいと常に思っています。それが難しいときもありますが、そう思って行動するのが大事なのではないでしょうか」

 

力強く、爽やかに、そう言い切った大谷翔平。恐らく100年後も伝説として語られる彼と同じ時代を生き、彼の活躍をリアルタイムで観ることができる私たちは、本当に幸せだと思う。

 

■大谷翔平

 

プロ野球選手

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 ■ NOTE