2017年5月10日

 

前進、初マシン打撃!

 

リハビリは、また少し前進したようだ。『日刊スポーツ』によると、大谷翔平は9日、2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷の室内練習場で、左太もも裏肉離れを発症後、初めてマシン打撃を行った。

 

また、これまでは室内練習場で行っていたキャッチボールも、初めてグラウンドで行った。スパイクも履いて投げ、ランニング量も増えるなど経過は順調な様子。各リハビリの強度も少しずつあがってきたということだ。

 

「動ける範囲でやっています」と、大谷談も。

 

 

ポスティング改定の続報

 

8日、メジャーリーグ機構が日本プロ野球機構(NPB)に対し、ポスティングシステムの改定を申し入れた問題で、NPB実行委員会が12球団に向けて米国側から協議の申し入れがあったことを報告したと、各メディアが伝えた。

 

結論は出ていないが、交渉は長期化する懸念があると伝えていたのは、『スポニチ』鈴木勝巳氏の記事。

 

 

「MLBでは昨年12月、海外選手との総契約金を最大575万ドル(約6億4400万円)に規定し、適用年齢を23歳未満から25歳未満に引き上げた。移籍資金などの高騰を抑制するのが最大の狙いで、ポスティングシステムにおける譲渡金も同じ意味合いを持っている。ただ、前回同様の『不利益変更』となった場合、12球団の総意として簡単に意見を集約できるかという問題も出てくる。そこに選手会の意向やファンの声などが加われば、交渉が長期化することは容易に想像がつく」

 

2013年オフに、ポスティングシステムで楽天からメジャー入りを目指した田中将大は、このシステムの改定時期の煽りを受けて、ヤンキースと契約したのは、年明けの2014年1月にズレ込んだ。

 

今オフにメジャー挑戦の可能性がある大谷も、交渉の進捗状況に左右されてしまう可能性があるということだ。

 

まだまだ時間はあるが、順調に交渉が進むことを期待する。

 

 

運命を変えた一戦

 

過去に大谷が紙面に登場した、雑誌を振り返る企画。今回は、2016年5月12日に発売された『Sports Graphic Number PLUS Special Issue JUNE 2016』の「スポーツノンフィクション 2016 運命を変えた一戦。」の中に、巻頭で取り上げられた大谷記事をピックアップ。

 

執筆担当は「野球翔年」シリーズでおなじみの石田雄太氏。「運命を変えた一戦」の大谷テーマのタイトルは、「野球の神様。」。試合は、2015年11月19日、世界野球WBSCプレミア12準決勝の日本対韓国戦だ。

 

記事の要約ポイントをピックアップ。

 

・大谷がここ一番の重要な試合で勝ち切れない”トラウマ”。特に直近2015年シーズンの終盤戦の大事な試合やCSシリーズで勝ち切れなかった課題を、シーズン終了後のプレミア12の韓国戦では、その殻を破りたい思いをもって投げていたことを回想。また栗山監督も、同じ課題テーマをもって、同大会を考察していことを振り返っている。

 

・この大事な韓国戦、大谷は初戦と準決勝の2試合に登板した。どちらの前夜にも、『フェイシング・ザ・ジャイアント(※)』という映画を鑑賞し「幸せな気持ちになった」と振り返る。映画はアメリカンフットボールを題材にして、主人公のヘッドコーチが、コーチとして選手に求めるべきは、何なのかを問い直し栄光を掴むあらすじ。

 

・その結論は、力を出し尽くさせて、結果を神に委ねるということ。常に全力を尽くしているか、それは本当に全力か、自分や選手に問いかけた主人公が見事にチームを生まれ変わらせたストーリー。

 

 

・そんな心境から大谷が挑んだ準決勝では、見事7回1安打11三振の快投を見せた。この快投について、大谷は気持ちの整理がついたという。

 

・テレビ観戦していた栗山監督は、プレッシャーのかかる大一番で気持ちの整理ではなく技術が備わり成長したからだという。

 

 大谷が行き着いた、いろんな悩みも問題も、目の前のやるべきことを悔いなくやりきる重要性に気づいた思考には、自身の経験からも共感できた。自分が知り得る言葉では、「人事を尽くし天命を待つ」ということでは無いかと受け取った。

 

また栗山監督の見方として、気持ちを強くもってやりきった先に見える光景は、結果として積み重ねた研鑽ゆえのスキル向上、成長へと繋がっているという考えの説き方にも納得共感。

 

大谷と栗山監督の思考に触れて、あらためてそんなふたりの師弟関係だからこそ、「二刀流」という偉業が生まれたんだなと思った。

 

※映画『フェイシング・ザ・ジャイアント』

・原題は、『Facing the Giants』。2006年のアメリカ映画。アレックス・キンドリックによって作られた、キリスト教系ヒューマンドラマである。出演者はシャーウッド・パプティスト教会のボランティア達で成り立っており、負けてばかりの高校のアメリカン・フットボールチームをキリスト教の世界観から見ている。日本では劇場公開されずビデオスルーになった。

 

 

★2024年1月27日 NEW更新後記

 

あらためて、このノンフィクション「野球の神様。」を読み直した。その後、当時購入したまま書棚にしまい未鑑賞であった、誌面に登場する映画『フェイシング・ザ・ジャイアント』をみた。大谷が、「幸せな気持ちになった」という気持ちの整理をつけた映画。それから、もう一度誌面を読み返した。

 

 

すごい!秀逸なノンフィクション作品だなあとあらためて感嘆した。

 

この号全体のテーマである「運命を変えた一戦。」の巻頭記事に相応しい背景のピックアップ。大谷のここ一番で勝ちきれない”トラウマ”払拭ストーリー。

 

払拭できたのは、大谷が志向してきた考え方の肯定化。”誰よりも野球に時間を費やしてきた”、”楽しいことよりも正しいことを選んできた”。これらを、映画から導いたサイドストーリーで掘り起こし転機に展開しているところ。

 

大谷は志向の肯定化により、気持ちの整理がついて、結果もついてきたと振り返っているストーリーに対し、師である栗山監督は、技術の成長と見方を変えて証言するサイドストーリー。その栗山監督の冷静で客観的な分析が、ロジカルに解説されて紹介される件。

 

そして、最後に「野球の神様。」とタイトルをつけた石田雄太氏のセンス。映画『フェイシング・ザ・ジャイアント』は、キリスト教系のヒューマンドラマ。やるべきことを全力でやって、結果はどうあれ「神」を賛美するというストーリー。

 

「神」を持ってきて、旧来から球界でしばしば使用されてきた「野球の神様」と結びつけるコンセプトのアイデアは、センス以外の何ものでもないと思った。

 

タイトルを決めてから、構成したのかな!?取材を通して、起承転結を整えたときにアウトプットされてきたタイトルかな!?

 

大谷の口から、試合前夜にこの映画を観たことを引き出した、石田雄太氏の懐へ入る旨さも光る。

 

大谷は、これら石田雄太氏が自分をとりあげた取材記事を読み聞きし、センスを感じているからこそ、定期的に「野球翔年」の取材に個別に応じるようになったんじゃないかとさえ思った。

 

大谷がチョイスする自身のブランディング・パートナーにも、いつもセンスを感じる。ポルシェ、セールスフォース、ニューバランス、コーセー等など、そして、なぜか我が親会社のバンテリン!笑

 

このノンフィクション記事は、2022年3月8日に文春オンラインに公開されているので、今では誌面以外で読むことができる。

 

 

映画『フェイシング・ザ・ジャイアント』をみた感想。あらましから登場するキャスト陣を含めて、お世辞にも一流作品とは言い難いと思う。ただ、この平凡な仕立てさが、エンディングをシンプルに受け入れられるように思った。

 

口コミに、神頼みの出来すぎたストーリーと揶揄する批評もあったが、ことの本質は全力を尽くし何事にも感謝するという謙虚な志向をもてば、すんなり受け入れられると思うのだが。

 

映画で一番センスを感じたのは、実は平凡な映画に似つかわしくない?バックに流れるサウンドトラックだ。序盤に流れるメインテーマも、途中の挿入歌も、そして、エンディングに流れる「Voice of Truth」が爽やかにカッコいい。

 

大谷は、どうやってこの映画の存在を知ったのかが、知りたくなったな。

 

 

★Facing the Giants (Original Motion Picture Soundtrack) 

1.Come Together - Third Day

2.Voice of Truth - Casting Crowns

3.Score 1 - Opening Scene

4.I'm Finding You - Bebo Norman

5.Score 2 - Opening Credits

6.Completely - Ana Laura

7.Score 3 - Death Crawl

8.Come on Back to Me - Third Day

9.Never Give Up - Josh Bates

10.Score 4 - Championship Game

11.With You - Mark Willard

12.Score 5 - Brooke Tells Grant About the Baby