2023年12月11日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 一夜明けた10日(日本時間11日)、地元紙は大谷の超大型契約を大きく報じた。ロサンゼルス・タイムズ紙、デイリー・ブリーズ紙ともに一面、中面を使って大きく報じた。LAタイムズは一面で「オオタニが次の章にドジャースを選んだ」としてプロスポーツ史上最高額にもなると詳報。中面ではドジャースのユニホームを着た大谷の写真を大きく使用。ドジャースがワールドシリーズ制覇を目指す上で完璧なタイミングで完璧な選手を獲得したこと、また古巣・エンゼルスの今後についても記載している。デイリー・ブリーズ紙も「オオタニとドジャースが10年700ミリオンの契約に合意」「本当にでかい契約だ」として超大型契約に注目。一面、スポーツ面合わせて3枚を使って大展開している。

 

◯ MLBの画期的な契約と言えば、大谷翔平の10年総額7億ドルの前は、2000年12月にA・ロッドこと、アレックス・ロドリゲスがレンジャーズと結んだ10年総額2億5200万ドルがある。その当事者であるA・ロッド(48)がX(旧ツィッター)で「翔平おめでとう。大きな変化だ。これからも野球を前進させてくれ」と祝福した。10年総額2億5200万ドルは当時、スポーツ史上最大の契約だとして、世界中で話題になった。

 

◯ 米スポーツ専門誌の「スポーツイラストレイテッド誌」は「10年間追い求め、ドジャースがついにショウヘイ・オオタニを獲得」と題する記事を公式サイトに掲載。記事であるドジャース幹部は、「彼(大谷)は本当に、最後の1ドルまで追い求めることより、居心地の良さのレベルを優先しているように見えた。彼にとってベストな契約とは最大の金額とは考えていないようだ」と語った。契約前、本拠地で行われた大谷とドジャースの面談。マイナーリーグのシステムについて質問し、野球をどれほど愛しているか、愛犬についても語った大谷に、ドジャースは「恋に落ちた」と記している。ドジャース幹部は「我々は衝撃を受けた」とし、「彼は年齢よりも若く見えた。なぜなら、試合に対する若々しい愛情を持っているからだ。我々は何が彼を動機づけているのか知りたかったが、それはとても単純だった。野球をすること。ショウヘイはとにかく爽やかだったんだ」と大谷の人物像に惚れ込んだことも明かしていた。

 

◯ メッツのスティーブ・コーエン・オーナーはスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」に「(大谷の)代理人は一度も連絡を取ってこなかった。そのことではっきり分かる」と告げた。資産198億ドル(約3兆円)を誇り資金力は30球団随一。争奪戦に加えて他球団と競わせれば契約総額を上げることにつながるが、同サイトは「この発言でメッツと大谷の交渉は準備段階から次に進んでいなかったことが分かる」と伝えた。17年オフのメジャー挑戦時もニューヨークなど東海岸の球団は最終候補に残らなかった。

 

◯ 「MVPトリオ」の1人であるドジャースのフレディ・フリーマン内野手(34)の妻、チェルシーさんが自身のX(旧ツイッター)に大歓迎している様子を投稿した。チェルシーさんは「野球シーズンはまだ?」とつづり、グレーのトレーナーを着た自身の写真を投稿。注目すべきはそのトレーナーの胸部分には「THE BIG 3」の文字とともに大谷、フリーマン、ベッツの3人が並んだ画像が写っている。

 

 

◯ MLBなどのスポーツグッズを手がける米国の人気メーカー・FOCO社は、ドジャースのユニホームを着た大谷のボブルヘッド人形の予約を公式サイトで開始。豪快なスイングを表現した高さ8インチ(約20センチ)の65ドル(約9400円)のもの(1024体限定)と、デザイン非公表で二刀流を表現した高さ18インチ(約46センチ)で750ドル(約10万9000円)の2種類となっている。

 

◯ 「背番号16待望論」が持ち上がっている。新天地での注目の背番号。大谷は日本ハム時代は「11」、エンゼルスでの6年間は「17」を付けた。現在、ド軍で「17」を付けている救援右腕ケリーは、「大谷のために変えるのは名誉なこと」と大谷に譲ることを快諾している。しかし、ファンの中には別の意見も。SNSでは「代表でも16だった」「野茂のつけてた16の方が」と、「17」ではなく「16」を望む声も聞かれた。大谷は今年3月、侍ジャパンでは背番号「16」を背負ってWBCに出場した。何より「パイオニア」の野茂英雄氏が、ド軍に移籍した95年から4年間、背負った番号が「16」だ。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 大谷番10年のスポニチ本紙記者が解説 ドジャースを選んだ3つの理由

柳原直之氏/情報:スポニチ)

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なぜ、大谷はドジャース移籍を決断したか。迷い、考え抜いた結果であることは間違いない。

 

 (1)二刀流選手の価値=契約総額

 

 ある関係者は、大谷の優先事項に関して「契約総額を大事にしている」と語った。大谷は物欲が少なく、お金に無頓着で知られるが、真意は違う。大谷にとって契約総額=選手の価値だった。二刀流選手として迎えた初めてのFA市場。今回の契約総額が今後の前例になることを意識した。かねて二刀流選手の台頭について「良いサンプルとして良い成績が残るように頑張りたい」と話したように、史上初めて2度目の満票MVPに輝いた自身が10年総額7億ドル(約1015億円)という巨額オファーを受けることで、将来の後進たちが正確に評価されることを強く望んだ。

 

 (2)世界一を目指す球団

 

 大谷は今後数年プレーオフ(PO)と世界一を狙う球団でのプレーを熱望していた。3月のWBC決勝前に大谷が「憧れるのをやめましょう」と語った選手の一人であるベッツ、フリーマンを中心に打線は強力で、大谷が過去3年のように敬遠される心配も少ない。資金力に余裕があり、11年連続PO進出中。エンゼルスでの6年間は一度もPOの舞台に立てなかった。「(順位争いで)ヒリヒリする9月を過ごしたい」と語る大谷の希望に合致した。

 

 (3)リハビリ環境や医療スタッフ

 

 本拠地は、今季まで所属したエンゼルスの本拠地から高速道路で約1時間の距離。練習環境を変えず、リハビリに集中できる。2度目の右肘の手術の執刀医は、前回の18年と同じニール・エラトロッシュ医師で、ド軍のチームドクターを務める。さらにド軍のトレーナーのバーナード・リー氏は、18年はエ軍のトレーナーとして大谷の右肘のリハビリを担当。“成功体験”を知る仲間たちの存在は心強い。ロバーツ監督もウインターミーティング(WM)中に「うちのスタッフは最適な復帰時期を導き出せる」と自信を示していた。

 

 今回の交渉でWM前や期間中に移籍先候補の球団施設を訪れた行動は、大谷らしかった。報道陣がWM会場に大挙して訪れるため、球団施設はもぬけの殻。大谷側にとっては、いつもより“目”をくぐり抜けやすくなっていた。今季も9月4日の試合前に報道陣がネズ・バレロ代理人の会見に殺到している隙に、屋外打撃練習に参加。右脇腹を負傷した際、目撃者が極端に少なかった理由だった。

 

 ド軍とエ軍の違いの一つがメディアの数と重圧の大きさ。大谷がどう対処していくかも注目点の一つになる。(柳原 直之)

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◆ 大谷翔平のド軍背番号は…本命「17」を若手内野手に“譲渡”? 空き番「11」の可能性も

(情報:Full-Count)

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エンゼルスからFAとなっていた大谷翔平投手は9日(日本時間10日)、ドジャースと契約を結ぶことで合意したと発表した。10年総額7億ドル(約1014億円)の超大型契約で、プロスポーツ史上最高額となる。球団からの正式発表は身体検査の結果待ちと見られるが、次の注目は“背番号問題”か。

 

 大谷の背番号と言えば、エンゼルス時代に付けた「17」の印象が強い。ドジャースは今季まで17番を付け、再契約した救援右腕ジョー・ケリーに大谷への譲渡を依頼。35歳のベテラン右腕は快諾したという。ケリーの妻、アシュリーさんも快く受け入れており、「17」は本命視される背番号と言える。ただ、MLB公式サイトでは24歳のミゲル・バルガス内野手が17番。これは何を意味するのか……。

 

 それでは、他の背番号はどうか。日本ハム時代に付けていた「11」は34歳のミゲル・ロハス内野手が今季付けていたが、MLB公式サイトの選手紹介ページでは背番号「19」に。日本のエースナンバー「18」も“空き番”となっている。エンゼルス時代のイメージを変えるべく、違う背番号を選択する可能性もゼロではなさそうだ。将来の殿堂入りが期待され、FAとなった左腕クレイトン・カーショーの22番も空いている。

 

 ちなみに、野球日本代表「侍ジャパン」で付けていた「16」は正捕手ウィル・スミスが2019年から付けている。なお、ジャッキー・ロビンソンの「42」をはじめ、トミー・ラソーダの「2」、サンディー・コーファックスの「32」、フェルナンド・バレンズエラの「34」など計12個の背番号が永久欠番となっている。

 

 メジャー球界では実績のある選手へ背番号を譲ることは十分に可能性がある。ただ、大谷は今年1月に行われた侍ジャパン先行メンバー発表の会見で「僕は背番号にこだわりはないですし、偉大な先輩方にいい番号を付けていただけたらなという感じですかね」と話している。そして、選手の移籍が多いからか、米国では日本ほど背番号について大きく報じられないのが現状。実際、MLB公式サイトの選手紹介ページで“しれっと”伝えられることが多い。

 

 大谷がドジャースとの契約合意を発表した直後。本拠地ドジャースタジアムのグッズショップには「OHTANI 17」と入れたカスタムユニホームを買い求めるファンがいたが、2人目が作ったところで急遽、中止となった。球団関係者によると、まだ正式発表されていないからだという。

 

 ドジャース・大谷の17番ユニホームを最速ゲットしたのは、ドジャースタジアム近くに住む弁護士のエリック・スワトスキーさん。幻のユニホームとなってしまうのだろうか。

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◆ 栗山英樹氏、大谷翔平の1015億円契約「むちゃくちゃうれしい」 ド軍入り「物語感じます」

宮脇広久氏/情報:Full-Count)

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 今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」の監督を務め、優勝を果たした栗山英樹氏は11日、ドジャースと10年総額7億ドル(約1015億円)の契約で合意した大谷翔平投手に言及した。栗山氏はこの日、第20回「タニタ健康大賞」に選出され、都内で行われた授賞式で株式会社タニタの谷田千里社長からトロフィー、副賞100万円などを贈られた。

 

 約1015億円での契約は、世界プロスポーツ史上最高額と見られる。栗山氏は「今が彼のベストかと言うと、僕の中ではもっと天井が高いのですが、シンプルに久々にむちゃくちゃうれしかったです」と喜んだ。9月に行った右肘手術により、来季は打者に専念する予定だ。「彼の本質は二刀流なので、1つに絞ったからといって上がるかどうかはわからないと思います。翔平にはそれも超えていってほしいですけどね」と願った。

 

 ドジャースはナ・リーグ西地区で2013年から10度の地区優勝を飾り、11年連続でポストシーズン進出中の常勝軍団。また、野茂英雄投手から始まり大谷で日本選手10人目となる。「私も『ドジャースの戦法』の本を開くことがある。日本にとって大切な因縁のあるチーム。個人的に“物語”を感じます」「いつも勝っているチームに行ったことが、彼の力を倍加させると思う」と期待した。

 

 栗山氏はWBCだけでなく、大谷が日本ハムに在籍した2013年から17年にずっと監督を務め“ボス”であり続けた。前日(10日)には日本ハム球団を通じて「世界一の選手になると信じて、ファイターズから5年で旅立った翔平がメジャーリーグでの6年間でこれだけの評価を受けたということは金額がということではなく、今回は本当にうれしかったです」などとコメントを発表。この日初めて公の場で思いを語った。

 

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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ブルージェイズの提示額は「ドジャースと同じくらいだった」 大谷翔平を逃した舞台裏

(情報:Full-Count)

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 エンゼルスからフリーエージェント(FA)となっていた大谷翔平投手は9日(日本時間10日)、自身のインスタグラムでドジャースとの契約に合意したと発表した。一方、最後まで争奪戦を繰り広げたブルージェイズは、一度は合意目前とまで報じられながらも逃した。地元放送局の記者は「ブルージェイズが提示した最高額のオファーは、ドジャースと同じくらいだった」と伝えている。

 

 地元放送局「スポーツネット」のブルージェイズ番記者ベン・ニコルソン・スミス記者は、「ブルージェイズがどれだけオオタニ獲得に迫ったかに関しては、2度MVPを獲得したオオタニにしか答えられない質問だ」と言及。「MLBネットワーク」のジョン・モロシ記者は、大谷翔平が本拠地のトロントに向かっていると報じたが、複数の記者から否定されて謝罪する展開になっていた。

 

 ニコルソン・スミス記者は「しかしながら、その契約交渉に詳しい関係者によると、ブルージェイズが提示した最高額のオファーは、ドジャースと同じくらいだったとしている」と舞台裏を明かす。「その交渉に通じた情報筋いわく、ブルージェイズは『ちょうどその辺り』だったとして、オファーは非常に競争力の高いものだったと表現した」と指摘した。

 

 さらには「最終的な数字に関する詳細はわかっていないが、7億ドル(約1018億円)のオファーとちょうど同じくらいとなると、(ブルージェイズの最終的な)オファーは6億ドル(約872億円)を優に超えていたことを間違いなく示唆している」とも。惜しくも逃してしまったが、大谷への本気度を伺えるオファーだったようだ。

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◆ 突然だった大谷翔平の決断…ド軍すら前日まで知らぬ“奇妙さ” 米記者語る舞台裏

(情報:Full-Count)

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 エンゼルスからFAとなっていた大谷翔平投手が発表した移籍決断のニュースは、瞬く間に世界中に広がり、多くの人を驚かせた。“勝者”となったドジャースも、寝耳に水の朗報だったという。ほとんど情報が出てこず、秘密裏に進められた去就決定だった。

 

 MLBネットワークの番組に出演したニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマン記者は「私の理解するところでは、(移籍発表の)前日の時点でドジャースは彼を獲得できるとは理解していなかった」と紹介。情報が入ってきたのはぎりぎりだったようで「前日夜のすごく遅い時間、あるいは当日朝になって、彼らはオオタニを獲得したのが自分たちだとわかったのです」と語った。

 

 様々な情報が錯綜した決断の行方。ヘイマン記者は「私の知る範囲では、最終候補はドジャース、エンゼルス、ブルージェイズです。ブルージェイズが争奪戦に入っていたのは明白なことで、それはエンゼルスにも言えることです。ジャイアンツとカブスも最終候補と呼ぶべきなのかもしれません」と振り返った。

 

 結果的に、大本命と目されたドジャースで決着。「(ドジャースが常に最有力候補だと思っていたのには)理由が2つあります。1つ目は地理的なこと。2つ目は、彼らが球界の中で最も一貫して勝利を重ねてきたからです」とあらためて説明していた。

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◆ 大谷翔平の衝撃FA…実際ドジャースはどう決まったのか? 最終候補が“消去法”で絞られていき…日本人が「北米史上最高額プレーヤー」になるまで

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平がドジャースと結んだ10年総額7億ドル(約1015億円)の超大型契約。この金額は、MLB30球団で総年俸ランキング最下位アスレチックスの過去10年の総年俸合計も超える額だという。今回のFA移籍は現地でなぜ“異例”といわれたのか。決定直前に流れたブルージェイズ急浮上説は何だったのか?  「史上最大の移籍劇はこうして決着した」。〈全2回の1回目〉

 

 大谷翔平の注目の去就を真っ先に伝えたのは、米国の有名敏腕記者によるスクープでも球団からの発表でもなく、大谷自身のインスタグラムだった。

 

「すべてのファンのみなさん、野球界にかかわるすべてのみなさん、決断に時間がかかったことをお許し下さい。次の所属球団をドジャースに決めました」

 

 日本時間10日午前5時を回ったときだった。起きぬけの野球ファンの目を一瞬で覚ますビッグニュースは、瞬く間に日米を駆け巡った。

 

比べてわかる「衝撃的な金額」

 

 契約は10年総額7億ドル。現在のレート約145円で計算すると1015億円というとてつもない金額になる。北米プロスポーツの史上最高額であることはもちろん、世界のプロスポーツでも史上最高額。MLB30球団で総年俸ランキング最下位アスレチックスの過去10年の総年俸合計も超える額だという。1人で選手40人の10年分だ。

 

 MLBの契約でこれまでの史上最高額はMVPに3度輝いた外野手マイク・トラウトが2019年3月にエンゼルスと結んだ12年総額4億2650万ドルの延長契約。大谷はこれを一気に2億7000万ドル以上も上回り記録更新となった。

 

 北米プロスポーツでは、NFLカンザスシティ・チーフスのQBパトリック・マホームズの10年総額4億5000万ドルの最高額を更新。世界ではリオネル・メッシが2017年にスペインのFCバルセロナと結んだ6億7400万ドルを抜き、キリアン・エムバペがフランスのパリ・サンジェルマンFCと結んだ2025年までの契約、約6億7900万ドル(オプトアウトしなかった場合)も抜く。スポーツ史上で誰も到達したことのない、まさに衝撃的な金額だ。

 

じつは少ない「メジャーで大型契約の日本人」

 

 日本人選手が世界の契約金最高額を更新する日が来ると、誰が想像しただろうか。日本からメジャーに移籍する選手、特に投手は野茂英雄から始まる確かな実績の積み重ねによっていきなり高額の契約金を得る場合があったが、メジャーで自ら実績を積み上げ長期の大型契約を勝ち取った選手はほんの一握りだ。先駆的な存在はやはりイチローで、メジャー7年目の2007年7月にマリナーズと5年総額9000万ドルで2度目の契約延長を結んだ。その後、2012年にレンジャーズでメジャーデビューしたダルビッシュ有が2018年2月にFAとして6年総額1億2600万ドルでカブスと契約し、2023年2月には移籍3年目のパドレスと6年総額1億800万ドルで延長契約。メジャーで実績を重ねてから5年以上の長期大型契約を手にした日本人選手は、他にいない。MLBで長期の大型契約をつかむのは、それだけ大変なことだ。

 

大谷の移籍…最終段階で5球団に

 

「メジャーの全球団が欲しがる」とまでいわれた大谷争奪戦は、最終段階に入ったといわれた時点で5球団に絞られていた。

 

 まず、かねてから大谷獲得の最有力といわれ続けてきたドジャース。花巻東高時代から大谷を熱心にスカウトし続け、日本ハムからポスティングシステムでメジャー移籍を目指したときも獲得に乗り出すなど、古くからラブコールを送り続けてきた球団だ。

 

 そしてデビューから6年間過ごしたエンゼルス、高校の先輩である菊池雄星も所属しカナダのトロントに本拠地を置くブルージェイズ、歴史のある人気球団で仲の良い鈴木誠也が所属するカブス、スター選手の獲得が悲願であり積極的にアプローチをしてきたジャイアンツの5球団だった。

 

なぜ「異例」だったのか? 米記者たちのタメ息

 

 争奪戦は異例ずくめだった。

 

 徹底した情報統制が敷かれたことがそうだ。11月上旬に大谷が正式にFAとなり全球団との交渉が解禁されても、契約交渉に関する情報はほとんど表に出てこなかった。こうした情報は通常、米野球記者の中でも大御所クラスの有力記者によって何か動きがあるたびに発信されることが多い。それはジ・アスレチックのケン・ローゼンタール、ESPNのジェフ・パッサン、USAトゥデー紙のボブ・ナイチンゲール、ニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマンといったベテラン記者たちで、それぞれ強力な情報網を持ち確度の高い独自ニュースを発信することで信頼を得ている。

 

 そんな記者からも、大谷に関しては「ほとんど情報が入ってこない」という嘆きの声が出ていた。

 

 完璧なほどの情報統制は、大谷の代理人ネズ・バレロ氏によって各球団に通達されたといわれている。契約交渉が解禁された当初、獲得に興味を持つ各球団に「不利な立場になりたくなければ、交渉に関する情報を漏らさないこと」と伝えたという。そうして争奪戦は水面下で、静かに進行していった。

 

“消去法”で絞られていった移籍劇…「記憶にない」

 

 最終候補の5球団の名前が浮上したのは、交渉解禁から約1カ月を経過したころ。その浮上の仕方がこれまた異例だった。大物FA選手が争奪戦になった場合「○○チームが獲得に動いている」というように、そのままストレートな情報が出てくるのが普通だ。

 

 ところが大谷の場合、現地12月1日にパッサン記者が「レッドソックス、レンジャーズ、メッツの3球団が争奪戦から脱落した」と報じたことから、球団が絞り込まれたことが判明した。“消去法”によって交渉継続中の球団が明らかになるというのは、長年MLBを取材してきた筆者でもあまり記憶にない。この少し前には他の米記者から「ヤンキースは、オオタニがニューヨークでプレーする気持ちがあると本気で考えてはいないので消極的」「マリナーズは、オオタニを獲得することは現実的ではないと判断している」などの情報が出ており、脱落球団が出るたびに、絞り込みが進んでいることがわかった。

 

 そんな最中、12月5日の会見でドジャースのデーブ・ロバーツ監督によるまさかの暴露があった。聞かれてもいないのに自ら大谷の名前を口にしたのだ。「正直に言いたい」。そう切り出された約20分間の会見を見直すと、そこには“確かな目的”があったことがわかる――。

 

〈つづく〉

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◆ 大谷翔平“じつは最後まであった”エンゼルス残留説…ドジャース監督“まさかの暴露”からブルージェイズ急浮上まで「歴史的移籍はこうして決着した」

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平がドジャースと結んだ10年総額7億ドル(約1015億円)の超大型契約。この金額は、MLB30球団で総年俸ランキング最下位アスレチックスの過去10年の総年俸合計も超える額だという。今回のFA移籍は現地でなぜ“異例”といわれたのか。決定直前に流れたブルージェイズ急浮上説は何だったのか?  「史上最大の移籍劇はこうして決着した」。〈全2回の2回目〉

 

疑問「なぜ米記者は怒っていた?」

 

 FAの契約交渉には本来、「情報戦」がつきものだ。大物FA選手がどの球団と契約するのか、その交渉過程がどうなっているのかは野球ファンも注目しており、その争奪戦が激しければ激しいほどオフシーズンが盛り上がる。球団や選手サイドが交渉を有利に進めるためにその情報合戦を利用することもある。球団がもし強打の左打ち外野手と契約交渉をしているときに、選手側にプレッシャーをかけるために他の同タイプの外野手とも交渉しているという情報を流すこともあれば、逆に選手側が球団側にプレッシャーをかけるために他球団と交渉しているという情報を流すこともある。

 

 しかし大谷翔平の場合は、情報統制が敷かれ契約交渉に関する情報がほとんど表に出てこないため、米メディアから大谷に対する批判が噴出。過激な批判で炎上するコメンテーターもいた。

 

「ブルージェイズ急浮上…」は何だったのか?

 

 とはいえ、契約交渉の最終局面に入り球団が5球団に絞られたころから情報は少しずつ出始めていた。12月2日にはジャイアンツの本拠地オラクルパークを訪れたらしいという情報が地元紙サンフランシスコ・クロニクルのスーザン・スラッサー記者によって伝えられ、同4日にはフロリダ州にあるブルージェイズの球団施設を訪問したことをローゼンタール記者が伝えた。

 

 大谷がブルージェイズと契約するためプライベートジェットでトロントに向かったという怪情報まで飛び出し、日米加の3カ国のメディアとファンを巻き込む大騒動も起こった。

 

 ことの発端は、米専門テレビ局MLBネットワークのジョン・モロシ記者の「オオタニの契約が秒読みに入った。たぶん今日にも」というX(旧ツイッター)の投稿だった。日本時間8日午後10時30分過ぎにこの情報が出ると、さまざまな情報がSNSを駆け巡った。その日のうちに大谷のいるカリフォルニア州アナハイムの空港からトロントの空港に飛ぶプライベートジェットがあることを米国ファンがフライトレーダーで発見し、そのフライトは1日で最も追跡された便となるほどのフライトレーダーウオッチ現象が起こった。さらに花巻東高の先輩である菊池が、ブルージェイズの本拠地ロジャーズセンター近くにある高級すし店に50人超えのグループの予約を入れているという情報が拡散され、これは大谷に関係するものだろうと誰もが注目。ブルージェイズが夕方に記者会見をするという情報まで流れ、大谷の移籍がいよいよ決定かと騒がれた。

 

 結局、プライベートジェットはまったく関係のないカナダの有名実業家とその家族が乗っていたものであることが便到着後に判明。メディアもファンもすっかり振り回され、モロシ記者が謝罪する事態にまでなった。

 

「あのドジャース監督の暴露」確かな狙いがあった…

 

 大谷狂騒曲が続く中、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督がまさかの暴露で球界をかき回す騒動もあった。

 

 12月5日、関係者が一堂に会する野球界のオフシーズン最大のイベント「ウインターミーティング」の会見の場だった。大谷の獲得を目指し最終候補に残っていた他球団の幹部や監督は、大谷に関して聞かれても徹底して口を閉ざしていたのだが、ロバーツ監督だけは、大谷とドジャースタジアムで面談した事実を正直に明かしてしまった。もちろん周囲は大慌て。ロバーツ監督が会見直後に球団幹部からお叱りを受けたとも伝わっているため、球団にとっても寝耳に水の発言だったのだろう。一体何のつもりだったのかと、さまざまな憶測も呼んだ。

 

 筆者は、ロバーツ監督のこの会見の一部始終が収録された動画を何度も見直してみた。

 

タブー承知も…なぜロバーツ監督は話したのか

 

 会見の席に着いた同監督は、まず顔見知りの記者と「久しぶり。元気?」と挨拶を交わすと、1人の記者からチームの全体的な補強の進捗状況についての質問を受けた。すると「いろいろ話し合いはしているが大きな進展はない。話題にするのはタブーになっているけれど、ショウヘイがどう決断するか、それによって我々球団がどう対応するか」と、聞かれてもいないのに自ら大谷の名前を口にしたのだ。しかもタブーであることも、承知の上だった。

 

「ショウヘイのこと話せるの?」

 

 驚いた別の記者がそう尋ねると、ロバーツ監督は答えた。

 

「その可能性は大いにあるんじゃないかな。私が思うに……」

 

 それから4秒間沈黙。何か答えを見つけようとするかのように両目を天井に向けて左右に動かした後、おももろにこう切り出した。

 

「ああ、私たちは彼と会った。正直に言いたい」

 

 他の球団関係者は口を閉ざしているのになぜ話すのか、という質問も飛んだ。

 

「誠実であるべきという思いがある。情報が何も出ないことに、不満の声が出ていることも聞いた。質問されたことに嘘は言えない。事実を話したことが、誰かをないがしろにすることになるとも思わない。ここにいる報道陣のみなさんも、知る機会を得てしかるべきだと思う」

 

 ロバーツ監督は、交渉を秘密裏に進めたことで批判が集中していた大谷をかばう気持ちもあったのだろうか。いずれにしろ、大谷に向いていた目がこの会見で一気に同監督に集まり、風よけになっていたのは事実だった。

 

史上最大のスターを受け入れる「覚悟」

 

 約20分間の会見中には、大谷が普段からメディア対応を制限していることに関しての質問も飛んだ。エンゼルス時代は登板した日には試合後に会見をするが、それ以外はほとんど話をすることがないというのは、米国で広く知られたことだった。

 

「それについてはミーティングでは話が出なかった。ただ彼と所属球団の間で話し合うべきことだと思う。広報担当も交えて話し合い、彼自身にとって何がベストなのかを考えないといけない。と同時に野球界にとって何がベストかも考えなければならないと思う。何が正しい答えなのか、今はわからない」

 

 大谷の意向を汲みながら野球界全体のことも考えるべきという監督の言葉からは、球界を代表するスター選手を迎え入れるのだという覚悟も伝わってきた。

 

エンゼルス残留の可能性もあった…

 

 2度目の肘手術を受けた大谷が、二刀流として復活すると思うかという質問も出た。

 

「我々はそう考えている。執刀したニール・エラトロッシュ医師ももちろんそうだし、球団のスタッフも、その時期がきたときに投手として復帰できると自信を持っている。ただ1つ言えることは、我々がこれだけの年数のこれだけの契約を結ぶ(であろう選手の獲得を臨む)ということは、それだけその選手に賭けているということ。その選手に全力で賭ける。我々は喜んで賭けたいし、賭けることに興奮するし、賭けが成功することを願っている。彼は本当に特別な選手だ」

 

 ドジャースは、このスポーツ史上最高額の契約を結んで大谷に賭け、大谷自身もそれに応える覚悟を決めた。ヘイマン記者によると、大谷争奪戦は最終的にドジャースとブルージェイズとエンゼルスの3球団に絞られ、トロントへのプライベートジェット騒動が起きていたときはドジャースもまだ大谷の決断を聞かされていなかったという。最後まで熟考し、そして決断した。さまざまな騒動を巻き起こした史上最大の移籍劇は、こうして決着した。

 

「現役最後の日まで、ドジャースのためだけでなく野球界のために、邁進し続けたいと思います」

 

 大谷の決断発表の文章には、力強い決意がつづられていた。

 

(「メジャーリーグPRESS」水次祥子 = 文)

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◆ 大谷翔平+ドジャース=“日本と縁深い”巡り合わせ「憧れるのはやめましょう」ベッツらが新同僚、日本人最多81勝は野茂英雄…“本塁打王”も?

広尾晃氏/情報:NumberWEB)

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大谷翔平の新天地となるロサンゼルス・ドジャース。日本人メジャーリーガーにとって縁深い名門球団は、どのような陣容、歴史を持つのか――成績、データから掘り下げる。

 

 日本時間の日曜日の10日未明、大谷翔平は自身のインスタグラムでこう切り出した。

 

〈全てのファンの方、野球に携わる全ての方に、ここまで結論が長引いてしまったことをお詫びします。次のチームとして、ドジャースを選ぶことを決断しました〉

 

 大谷翔平らしい丁寧なコメントで、ロサンゼルス・ドジャース移籍を発表した。

 

 契約は10年で総額7億ドル(約1015億円)。円安の影響もあって日本円に換算すると、ついに1000億円を超えた。2003年、松井秀喜がニューヨーク・ヤンキースと3年総額2100万ドル(当時:約25億4100万円)の契約をしたときに、日本のファンは目を見張ったものだが、単年換算すると、大谷はその10倍である。

 

 今回の大谷のトミー・ジョン手術(新しい術式を取り入れていたようだが)を担当したのは2018年に続いて、ニール・エルアトラッシュ医師。実はドジャースのチームドクターでもあった。この1年間の投手・大谷翔平のリハビリテーションを考えれば、東海岸やカナダなどの選択肢はなかったのかもしれない――。

 

直近5シーズン“ほぼすべて100勝以上”の名門

 

 大谷が移籍するドジャースとは、どんなチームなのか? 

 

〈ロサンゼルス・ドジャース ナショナル・リーグ西地区〉

◇今季成績 100勝62敗 1位→地区シリーズでダイヤモンドバックスに敗退◇

 

 西海岸で実力、人気随一の強豪チームで、本拠地はロサンゼルス市内中心部にあるドジャー・スタジアム。2019年からの5シーズンでショートシーズンだった2020年を除いてすべて100勝以上を挙げ、2013年以降は常にポストシーズンに進出している。何としてもポストシーズンで熱い戦いをしたい大谷には理想的なチームだ。

 

 今季の観客動員は383万7079人、30球団中で断トツの1位。1試合当たりの観客動員も47371人で1位である。監督は日系二世で沖縄県生まれの51歳、デーブ・ロバーツ。2016年に就任以降、すべてポストシーズンに進出し、ワールドシリーズ優勝1回の経験を持つ。

 

打線:ベテラン多めだがベッツ、フリーマンら超強力

 

 そんな名門チームの現在の陣容を見ていこう。■はFA選手。

 

〈野手陣〉

捕手:ウィル・スミス28歳

126試464打121安19本76点3盗 率.261 OPS.797

一塁:フレディ・フリーマン33歳

161試637打211安29本102点23盗 率.331 OPS.976

二塁:ミゲル・バルガス23歳

81試256打50安7本32点3盗 率.195 OPS.672

三塁:マックス・マンシー32歳

135試482打102安36本105点1盗 率.212 OPS.808

遊撃:ミゲル・ロハス34歳

124試385打91安5本31点8盗 率.236 OPS.612

左翼:デビッド・ペラルタ35歳

133試394打102安7本55点4盗 率.259 OPS.675■

中堅:ジェームズ・アウトマン26歳

151試483打120安23本70点16盗 率.248 OPS.790

右翼:ムーキー・ベッツ30歳

152試584打179安39本107点14盗 率.307 OPS.987

DH:JDマルティネス35歳

113試432打117安33本103点1盗 率.271 OPS.893■

 

 レギュラーの9人のうち6人が30代と、ややベテランが多い。

 

 大谷翔平がWBC決勝アメリカ戦の前に「憧れるのはやめましょう」と言った1人のムーキー・ベッツが打線の主軸で、MVPを1回受賞。今季ナ・リーグMVP投票でも2位だった。2023年は右翼で98試合、二塁で65試合出場。彼も内外野での“二刀流”だった。

 

 一塁は、WBCカナダ代表として活躍したフリーマンで、2023年の最多二塁打。三塁は、打率こそ低いが強打と選球眼が売りのマックス・マンシー。さらに2年目で飛躍した俊足外野手のアウトマンと、打線は強力。今季のDHはベテランのJDマルティネスだったが、FAとなってチームを離れている。さらに捕手のウィル・スミスもWBCに出場している。

 

 この打線に大谷が加わると思えば、確かに胸が躍る。

 

投手陣:カーショーは現時点でFAも補強で底上げか

 続いて、投手陣を見ていこう。

 

〈先発陣〉

クレイトン・カーショー35歳

24試13勝5敗0S 131.2回137振 率2.46■

ボビー・ミラー24歳

22試11勝4敗0S 124.1回119振 率3.76

フリオ・ウリアス26歳

21試11勝8敗0S 117.1回117振 率4.60■

トニー・ゴンスリン29歳

20試8勝5敗0S 103回82振 率4.98

マイケル・グローブ26歳

18試2勝3敗0S 69回73振 率6.13

ノア・シンダーガード30歳

12試1勝4敗0S 55.1回38振 率7.16■

 

 通算210勝、16年にわたってドジャースの先発マウンドに立ち続けた偉大な左腕、クレイトン・カーショーがFAになっている。黒田博樹とも同僚で、互いに技術を教え合うなど日本のファンにもなじみだったが、大谷との共演が見られるかは現時点で不透明だ。オフに左肩を手術し、復帰は来年夏と予想されている。

 

 先発陣ではウリアスもFAになっていて、投手陣は再構築することになる。しかし資金力もあり、来春には強力な投手陣を形成しているのではないか。

 

〈救援陣〉

エバン・フィリップス28歳

62試2勝4敗24S 61.1回66振 率2.05

ブラスダー・グラテロル24歳 

68試4勝2敗7S 67.1回48振 率1.20

カレブ・ファーガソン26歳

68試7勝4敗3S 60.1回70振 率3.43

アレックス・ベシア27歳 

56試2勝5敗1S 49.2回64振 率4.35

エンシー・アルモンテ29歳

49試3勝2敗0S 48回49振 率5.06

 

 今年からクローザーになったエバン・フィリップスは安定感があった。グラテロルは100マイル超の速球が売りの若手セットアッパー。2023年は無双状態だった。そのほかの救援陣は顔ぶれがこれから変わりそうだ。

 

日本人投手7人、野手2人の成績を見てみると

 続いて、ドジャースではこれまで9人の日本人選手がプレーしている。このうち投手は7人。

 

野茂英雄:7年 191試81勝66敗0S 1217.1回1200振 率3.74

石井一久:3年 86試36勝25敗0S 473回382振 率4.30

木田優夫:2年 6試0勝1敗0S 16.2回13振 率2.16

斎藤隆:3年 180試12勝7敗81S 189.2回245振 率1.95

黒田博樹:4年 115試41勝46敗0S 699回523振 率3.45

前田健太:4年 137試47勝35敗6S 589回641振 率3.87

ダルビッシュ有:1年 9試4勝3敗0S 49.2回61振 率3.44

 

 村上雅則以来の日本人メジャーリーガーとなった野茂が最初に着たのがドジャーブルーのユニフォームだった。野茂の活躍がなければ、今の日本人メジャーリーガーたちはいなかったかもしれない。野茂は1995~98、2002~04年の通算7シーズンにわたってドジャースで投げた。デビューの1995年には最多奪三振のタイトルを獲得。翌96年にはノーヒットノーランも記録している。

 

 石井は左腕先発投手として2度の2ケタ勝利、斉藤は36歳でドジャースのマウンドに立ち3シーズン、クローザーとして活躍。木田優夫は2シーズン、6試合に登板した。黒田博樹も4シーズンで二度の2ケタ勝利、前田健太も4シーズンで3回2ケタ勝利。このように、投手は活躍した選手が多い。一方で、野手は2人。

 

中村紀洋:1年17試39打5安0本3点0盗 率.128

筒香嘉智:1年12試25打3安0本2点0盗 率.120

 

 共に日本屈指の強打者だったものの、ドジャースでは活躍できず、短期間の在籍に終わっている。この2人は本塁打を打っていないが、野茂英雄が4本塁打、石井一久、前田健太も1本ずつ本塁打を打っている。ドジャースでは盗塁を記録した日本人選手はまだいない。

 

沖縄生まれロバーツ監督、大谷も“歴史の1人”に

 ちなみに「日本生まれの選手」となると、この顔ぶれにもう1人加わることになる。ほかならぬドジャースの現監督、デーブ・ロバーツは、沖縄県那覇市生まれ、母が日本人。ドジャースで302試合に出場して7本塁打している。

 

 大谷翔平がドジャースのユニフォームを着ることが可能になったのは、2022年MLBが「ユニバーサルDH」を導入し、ナショナル・リーグも指名打者制となったから。この制度改革がなければ大谷の選択肢はそれ以前からDH制を敷いていたアメリカン・リーグに絞られていたはずだ。

 

 そうした「歴史の巡り合わせ」もあって、大谷翔平はドジャースに移籍したことになる。早くも来季が楽しみだ。

 

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)

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