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2023年12月13日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ ロサンゼルス・ドジャースへの移籍を発表した大谷翔平が、現地時間14日(日本時間15日)に入団記者会見を行うことが分かった。大谷選手が公の場で語るのは8月9日以来で、約4ヶ月ぶりとなる。

 

◯ 大谷のFA交渉において、ジャイアンツも同額を提示していたことが分かった。地元紙サンフランシスコ・クロニクルが伝えている。同紙によるとジャイアンツも大谷のリクエストに応じる形で、同額を提示。約97%の後払いも了承していたという。ジャイアンツは大谷獲得に即座に手を挙げており、編成本部長のファーハン・ザイディ氏も「オーナー側が全力を投じていることを示すため、相手陣営が提示したことは金額面であれ、要求であれ、どんなことにも応じ、非常に迅速に対応していた」と、その本気度を振り返った。ザイディ氏は「ある時点ではチャンスはあると感じていた」と話しつつ、獲得競争の激しさや地理的な問題があったともコメント。地理的な要因が最大の障壁だったわけではないとしつつも「彼が南カリフォルニアに留まりたいと希望していることは感じており、それがハードルになるだろうとは思っていた」と明かした。

 

◯ 大谷翔平投手のドジャース入りが11日(日本時間12日)、正式発表され、新たにチームメートとなるドジャースナインの妻も大喜びしている。ジョー・ケリー投手の妻アシュリーさんは自身のインスタグラムでユニホームを放り投げ大喜び。ケリーは今オフFAとなり、新たに1年800万ドル(約11億5000万円)でドジャースと再契約していた。大谷の加入で今季までつけていた背番号「17」を譲ることになったが、妻のアシュリーさんはこれを歓迎。17の背番号のユニホームを庭に放り投げ、息子・カイくんの名前のプレートの横に「SHO(ショウ)」のステッカーを添付。驚いた表情で庭に出た夫に後ろを向かせ、マジックペンで「KELLY 99」と記入した。

 

◯ ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。12月12日、大谷がアンバサダーを務める世界的ファッションブランド『BOSS』が公式インスタグラムを更新し、「先駆者・大谷翔平のゲームチェンジを祝福します」と記して一枚の秘蔵フォトを掲載した。投稿されたのは着飾った大谷のモノクロ写真だ。白いTシャツの上に濃い色のジャケットを羽織り、ポケットに手を入れながらカメラ目線で収まっている。かなりビシっとキメたフォーマルモードで、大人の男を感じさせるレアショットだ。

 

 

◯ 米データサイト「ベースボール・リファレンス」が11日(日本時間12日)、公式SNSで今シーズンの米国50州別選手検索数を公表し、エンゼルスからドジャースに移籍が決まった大谷が米国50州中37州でトップだった。ニューヨーク州はヤンキースのジャッジ、ワシントン州はマリナーズのロドリゲス、ジョージア州はブレーブスのアクーニャなどご当地スターにはトップを譲ったが、2球団が本拠に置くテキサス州やフロリダ州では大谷の人気が上回った。また、カナダでは全10州でトップという注目度の高さを誇った。

 

 

◯ 大谷のドジャース入団が11日に正式発表され、大リーグと球団の公式オンラインショップでは背番号「17」が入った大谷のユニホームやTシャツなどの予約販売が始まった。関連グッズの販売も本格化。本拠地ドジャースタジアムのチームストアの店頭にも大谷のユニホームが並んだ。ロサンゼルス近郊にあるスポーツアパレル専門店では、入団と背番号決定を受けて急きょユニホームの背中に「OHTANI」と「17」を入れる作業を開始。マネジャーのオーガスタスさんによると、11日は20件ほどの注文があり、12日はそれ以上で「売れ行きは好調。これからますます増えていくと思う」と笑顔で話した。

 

◯ 一夜明けた12日(日本時間13日)、公式グッズショップ「ドジャース・クラブハウス」には大谷のユニホームを求めるファンが殺到した。女性店員は「今までで一番の売れ行きね」とホクホク顔だ。ドジャースは前日11日(同12日)の午後6時過ぎに大谷の獲得を正式に発表。発表前はカスタムでも大谷の17番ユニホームを作ることはできなかったが、午後8時の閉店までに買い求めるファンが殺到。12日(同13日)の午前中までに30着以上を売り上げたという。「ムーキー・ベッツがドジャースに来た時も凄かったけど、ショウヘイは一番だわ。クレイジー。ショウヘイは異次元の選手。ドジャースに来てくれて、本当に嬉しいわ」と女性店員は声を弾ませた。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 贅沢税に関わる大谷翔平の「年俸」はなぜ7000万ドルでも200万ドルでもなく4600万ドルなのか

宇根夏樹氏/情報:スポナビ)

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 ロサンゼルス・ドジャースは、大谷翔平と10年7億ドル(2024~33年)の契約を交わした。ESPNのオールデン・ゴンザレスらによると、大谷の年俸は200万ドルずつ、10年で計2000万ドルだ。あとの6億8000万ドルは、2034~43年に繰り延べされ、ドジャースは毎年6800万ドルを大谷に支払うという。

 

 年俸総額が設定額を超えた球団は、その超過分に対し、贅沢税を課される。

 

 大谷の年俸は200万ドルだが、契約は10年7億ドルなので、年平均額は7000万ドルとなる。けれども、ドジャースの年俸総額に算入される大谷の「年俸」は、そのどちらでもない。ジ・アスレティックのファビアン・アーダヤらは、約4600万ドルと報じている。

 

 ここまでの内容は、もう少し詳しく、各年の設定額などをこちらに書いた。

 

※「贅沢税の算出に用いられる大谷翔平の「年俸」は7000万ドルではないが、それでも史上最高額」

 

 球団の年俸総額に算入される、各選手の「年俸」は、基本的には、契約の総額を年数で割った、年平均額だ。例えば、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)の契約は9年3億6000万ドル(2023~31年)なので、4000万ドルとなる。

 

 ただ、大谷の契約には繰り延べ払いがあるため、7000万ドルにはならない。簡単に言うと、今なら1ドルで買える品物が10年後は1ドルでは買えなくなっている、10年後の1ドルは現在の1ドルよりも価値が低い、という考え方だ。

 

 具体的な計算については、ファングラフスのジョン・ベッカーがわかりやすく説明している。その内容は、以下のとおり。

 

 MLBと選手会は、労使協定において、年に4.43%ずつ、額面の価値が下がるとしている。大谷の契約は、年7000万ドルのうち、6800万ドルが10年後に繰り延べされている。6800万ドルを1.0443の10乗で割ると、4408万1476ドル50セント。そこに、繰り延べされない年俸200万ドルを足すと、4608万1476ドル50セント。これが、ドジャースの年俸総額に算入される大谷の「年俸」という計算だ。

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◆ メッツが大谷翔平を“追わなかった”2つの理由 大富豪でさえ「簡単ではない」事情

(情報:Full-Count)

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 エンゼルスからFAとなっていた大谷翔平投手は、ドジャースに入団することが決まった。多くの球団で争奪戦が繰り広げられたとされているが、MLB公式のメッツ番アンソニー・ディコモ記者はメッツが最終的に大谷を追い求めなかった2つの理由を分析した。

 

 1つ目は地理的問題。「長年の球界の総意として、オオタニは西海岸でプレーすることを好んでいるとされている。それがエンゼルスと(6年前に)契約を結んだ理由の一部だ」というように、仮に大谷が地理を重要視しているなら「メッツがそれ(大谷が西海岸を好むこと)への対抗策としてできたことは多くはなかっただろう」と述べた。

 

 2つ目はロースターの問題だ。「もしメッツがドジャースのように7億ドルの契約でオオタニを獲得していたとしても、さらに2人の先発投手と複数の救援投手を追加する必要があった。オオタニだけでは、メッツを4位から即座に強豪チームへと変えることはできなかっただろう。そのような飛躍を果たすには、メッツはさらなる大金を使う必要があっただろう」。大富豪で知られるスティーブ・コーエンオーナーであっても「それは簡単な支払いではない」と綴っている。

 

 米メディアは、コーエンオーナーが「彼(大谷)の代理人は、個人的に私に接触してこなかった。大体どういうことか、それが物語っている」と実情を語ったことを報じていた。大谷サイドの“興味なし”を察知してか、争奪戦から撤退し、同記者も「どこで聞く情報にもメッツはオオタニと真剣に話したことはなかったとしている」と説明した。

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◆ 大谷翔平は1年でも早く「勝てる環境」を望んでいた ドジャースはMLB史上最強の上位打線に【AKI猪瀬コラム】

AKI猪瀬氏/情報:中日スポーツ)

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 右肘が完治して「二刀流」完全復活を果たしてから、今回のような大型契約で移籍すると予想していましたが、完全に予想を外しました。大谷選手は1年でも早く「勝てる環境」でプレーすることを望んでいたということを再確認することになりました。そして、10年7億ドルの歴史的な長期大型契約も想定外。ドジャースのスーパースター、ベッツは12年3億6500万ドルの契約を結んでいますが、契約が終了する2032年の翌年から10年間にわたって、後払いとして総額1億1500万ドルを受け取る契約になっています。

 

 同じくフリーマンも6年1億6200万ドルの契約で契約終了後の28年から40年にかけて5700万ドルの後払いを受け取る契約をしています。そして、両選手ともに契約期間中のオプトアウト条項/契約破棄条項は、含まれていません。大谷選手の今回の契約も、後払い、オプトアウト条項についてはベッツ、フリーマンと同様ですが、平均年俸7000万ドルから6800万ドルが後払いに回される今回の契約内容は異例中の異例となります。

 

 21年末から22年にかけて99日間の「ロックアウト」を経て結ばれた26年まで有効の労使協定の中には、年俸の後払いに関する年数や割合などの規定は明記されていないので、今回の大谷選手の巨額な後払い金額はルール違反ではありませんが、次回の労使協定交渉の議題になるかも知れません。ただ次の労使協定の中に後払いに関する規定が設けられても、大谷選手規模の契約を望める選手の出現は考えにくく、ましてや巨額な後払い金額を設定する選手は皆無でしょうから、規定が設けられても「絵に描いた餅」になることは確実です。

 

 1番ベッツ、2番大谷、3番フリーマンで構成される上位打線は、メジャー史上最強の上位打線になる可能性を秘めています。好打者、強打者に挟まれる大谷選手は、孤軍奮闘の状態が多かったエンゼル時代よりも打撃成績の向上が確実視されています。おそらく本塁打と打点は楽々とキャリアハイを更新。フィールドの中の事象に関しては、何も心配することは無いと思いますが、フィールドの外では、メディアの数が増加、謎が多い私生活を暴こうとするパパラッチの出現など、大都市ロサンゼルスならではの事象が待ち構えています。

 

 静かな環境で自身のルーティンを守ることを好む大谷選手にとっては、フィールド外の環境に適応するまで時間がかかるかもしれません。11年連続ポストシーズン進出中の名門ドジャースで自身が強く望んだヒリヒリする試合が続いていくことになるでしょう。果たして大谷選手は今後10年間で何個のチャンピオンリングを獲得することになるのでしょうか。(大リーグアナリスト)

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◆ 「金満球団を有利にするヌケ穴」「パンドラの箱が開けられた」全米を巻き込んだ大谷翔平の契約金97%“後払い”への賛否と誤解

(情報:RONSPO)

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 ドジャースと10年7億ドル(約1015億円)で契約した大谷翔平(29)が、球団にかかる贅沢税を軽減するために約97%を後払いにするという異例の契約を結んだことが全米に波紋を広げている。「金満球団の抜け穴だ」「野球を破綻させる」という批判の声や、MLB機構が次の労使協定の改正交渉の際に後払いの制限を申し出るのでは?という議論までなされている。大谷が15日の会見で前代未聞となる形での後払いを申し出た理由についてどう説明をするかにも注目が集まる。

 

 ESPNなどが複数のメディアが「常識では考えられない」と報じた大谷の後払い契約が波紋を広げている。10年7億ドル(約1015億円)の97%にあたる6億8000万ドル(約986億円)を後払いにし、年俸は200万ドル(約3億円)で残りは2034年からの10年間に無利子で支払われるというのだ。

 

 これまでも後払いにしてきた選手は少なくないが、その部分は5%ほどで、先になればなるほど貨幣価値が下がるため、その支払いに利子をつけるケースも多い。前代未聞の契約方式が全米に波紋を広げるのも当然か。

 

 自らの年俸が贅沢税の負担となりチームの補強に影響が出ることを避けるため、大谷が申し入れたものだが、この後払いの中身を巡って賛否の声が起きている。

 

 経済誌のフォーブス誌は、「今小規模、中規模市場の球団のオーナーや上級幹部たちはどのように感じているだろうか?(大型市場のチームと)争うことはとても難しいことだったが、それはドジャースのようなヘビー級の球団が、こうしたアプローチを取ろうとする前のことだった。大谷が並外れた才能を持っているためで、こうした形の契約が、MLBのスーパースターたちから続々と出てくるようなことはないだろうが、インフレを誘発するだろう。契約金額が2倍に上がったかもしれない日本のFA投手の山本由伸に何が起きるかを見る必要がある。FAの高額化については問題はない。しかし保証された金額の97%を後払いにするような契約はどうだろう。これは未知の領域だ」と疑問を投げかけた。

 

 さらに「球界のオーナー間の亀裂が起きても驚きではない。また選手会は喜んでいるのだろうか。ライバル球団のファンはどう思っているのだろうか。ドジャースは他のチームにチャンスを与えない最強のロースターを簡単に構築する。彼らは、リーグのどこの球団よりも悪役となってしまうだろう」などとネガティブな意見を報じた。

 

 SNS上でも「金満球団が有利となるヌケ穴ではないか」「この契約は野球界を破綻させてしまうことになるかも」などの批判の声が少なからずあった。

 

 また大谷は、スポンサー収入など年俸以外の収入が5000万ドル(約72億5000万円)見込まれることや、カリフォルニア州の高額な税金を回避するために、前例のない97%もの後払いを決断したのではないかという分析記事もザ・リンガーなど複数の米メディアが掲載している。

 

 だが、今回の後払いと贅沢税の回避については誤解がある。

 

 2024年度の贅沢税の対象となる年俸総額の上限は2億3700万ドル(約344億円)。大谷が本来受け取るはずの7000万ドル(約101億円)のうち97%を後払いにすることで年俸が200万ドル(約3億円)となり、6800万ドル(約98億6000万円)を軽減できるとの憶測がファンの間では生まれたが、実は、後払いが発生する場合は、10年後の物価上昇などを考慮して年俸が換算されるため贅沢税の対象となる大谷の年俸は200万ドル‘(3億円)ではなく4600万ドル(約66億7000万円)となるのだ。

 

 オフの情報に詳しいトレード・ルーマーズも「大谷の契約構造が贅沢税の回避ではない理由」とのタイトルを取った記事の中で、その誤解の部分をこう説明した。

 

「多くのファンが、今回の大谷の後払いを贅沢税を回避するためだと考えているようだが、それは間違いだ。年俸は4600万ドル(約66億7000万円)で、マックス・シャーザーの4333万ドル(約63億円)、アーロン・ジャッジの4000万ドル(約58億円)を上回っている。年俸7000万ドル(約101億円)の数字を人々が最初に目にして、何千ものタイトルの記事を見たため、ファンの間に根付いてしまっているが、実際は違うのだ」

 

 球団の補強資金に余裕は出るが、元々、年俸7000万ドル‘(約101億円)という数字が誤解であり、それほど大きな贅沢税の軽減を受けられるわけではないという説明だ。

 

 またMLB機構は97%もの後払いを認めるべきではないのでは?との声もあるが、ESPNのジェフ・パッサン記者は、MLB機構と選手会の労使協定に「繰延報酬の額、またはその割合に制限はない」との一文があり、まったく問題がないことを明らかにした。

 

 ウォールストリートジャーナル紙によると、以前の労使交渉でMLB機構は、契約金の後払いに制限をつけることを選手会側に提案したが、選手会は、後払いに制限をつけることを拒否したという。同紙は「後払いは、選手に柔軟性を与え、契約の価値を4億6000万ドルではなく7億ドルにすることを可能にするからだ」と説明している。

 

 2026年に現在の労使協定が見直されるが、トレード・ルーマーズは、「ご存じのように、お金の価値は将来下がっていくから、契約した金額の97.1%を受け取るのを引退の年齢まで待つというようなことをこれまでの選手は強く求めてこなかった。次の労使協定の交渉で、後払いの金額が議題として出てくるだろう。もしかすれば廃止されることになるかもしれないが、1人の選手がそれをすることが問題につながったり、何百億ドルという金額につり上がったりすることはない。彼らはもっと他の重要な議題を見つけるだろう」と、今後も後払いに制限がつけられることはないだろうという見通しを記した。

 

 同サイトは、「大谷がブルージェイズへ向かうことを示唆する金曜日の錯綜した報道と、前例のない後払いの契約構造が相まって、一部のファンは大谷を悪者扱いしているようだ。それは残念なことだと思う。彼はフィールド外でもクリーンなプレーを披露し、世代を超えてスリリングな選手であり続けている」と、批判の声に反論した。

 

 また前出のフォーブス誌も、「パンドラの箱は開けられてしまった。これは容易に閉じることができないものだろう。ただ大谷は昨日まで広く愛される野球界の象徴だった。これから先、彼は良くも悪くもすべてを変えた男ということになる」との意見で記事をまとめている。

 

 日本時間の15日の入団会見で大谷が97%もの後払いを申し出た理由についてどう説明するのか。全米が注目している。

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◆ 有力候補が次々脱落する中、一時はブルージェイズ入り間近との報道も――大谷争奪戦に全世界が翻弄された狂乱の1ヵ月を振り返る<SLUGGER>

(情報:THE DIGEST)

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 全米が、いや、全世界が注目した大谷翔平のFA争奪戦は、ドジャースとの10年7億ドルの“プロスポーツ史上最高額契約”で決着した。その結末に至るまでの過程を、改めて振り返ってみよう。

 

▼11月2日

 ワールドシリーズ終了翌日のこの日、大谷は正式にFAに。最初の5日間はエンジェルスに独占交渉権が与えられた。

 

▼11月5日

 MLB公式サイトがドジャース、ジャイアンツ、マリナーズ、メッツ、パドレス、レッドソックス、エンジェルスの8球団を有力な移籍先候補として挙げる。

 

▼11月6日

 エンジェルスとの独占交渉期間が終わり、全30球団との交渉が解禁。エンジェルスはクオリファイング・オファー(QO)を提示する。

 

▼11月14日

 大谷がエンジェルスのQOを拒否。『ESPN』のジェフ・パッサンが「このオフ、何か大きなことをしたいと思っている」として、ブルージェイズを移籍先候補の大穴として挙げる。

 

▼11月16日

 大谷が21年に続いてア・リーグMVPに選ばれる。2度の満票受賞は史上初。

 

▼11月18日

 MLB公式サイトが「マリナーズが大谷争奪戦から撤退か」と報道。マリナーズは今オフ、コンタクトヒッターや正二塁手など複数の補強ポイントを抱えており、大谷一人に年平均5000万ドル以上もの超高額年俸を支払うことは現実的ではないと考えた模様だ。

 

▼11月23日

『ニューヨーク・ポスト』紙のジョン・ヘイマンが「カブスが大谷争奪戦で急速に存在感を増している」と報道。

 

▼12月1日

 のちに明らかになったことだが、この日、大谷がドジャー・スタジアムを極秘に訪問。ファン向けのスタジアム・ツアーは中止、売店も閉店、球場職員には緘口令が敷かれるほどの厳戒態勢だったという。

 

 また、パッサンが「レンジャーズ、メッツ、レッドソックスがそれぞれ争奪戦から撤退する模様」と報道。レンジャーズは21年オフにコリー・シーガーやマーカス・セミエン、22年オフにもジェイコブ・デグロムらを超大型契約で獲得していたが、世界一を達成した後の今オフは過去2年ほどの大型補強はしない方針を前日に表明していた。レッドソックスは最大のニーズである先発ローテーションの強化にシフト。メッツはのちにスティーブ・コーエン・オーナーは「大谷の代理人から直接連絡が来ることはなかった」と明かしている。

 

▼12月3日

 テネシー州ナッシュビルでウィンター・ミーティングが開幕(6日まで)。大谷はこの日、ジャイアンツの本拠地オラクル・パークを訪れ、ファーハン・ザイディ編成総責任者、ボブ・メルビン新監督、球団OBのスター捕手バスター・ポージーと面談したと地元紙『サンフランシスコ・クロニクル』紙が報道する。

 

 また、ヘイマンが「大谷の契約相場が高騰し、総額6億ドルに達する可能性もある」と争奪戦が過熱していることを示唆。

 

▼12月4日

 ブルージェイズがフロリダ州ダニーデンにある球団施設にて大谷と面会したと報じられる。1日にLA、3日にサンフランシスコ、そしてこの日はフロリダを訪れ、大谷サイドの球団選びが本格化していることが明らかになった。

 

▼12月5日

「カブスが大谷の争奪戦から撤退」と報じられるも、ジェド・ホイヤー編成総責任者は即日否定。

 

 また、ウィンター・ミーティングの会見で、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が1日に大谷と会談したことを明かす。「大谷サイドは交渉の過程を外部に漏らすことを好まない」と報道されていたことから、ドジャースファンからはロバーツ監督の“勇み足”を懸念する声も出た。

 

▼12月8日

 MLB公式サイトのジョン・モロシが「大谷がほどなく移籍先を決定する。今はトロントに向かっている途中だ」とX(旧ツイッター)に投稿。実際にアナハイムに近い空港から搭乗者不明のプライベート・ジェットがトロントへ向けて飛んでいたため、「ブルージェイズ入団」説が急速に強まった。

 

 だが、『USA Today』紙のボブ・ナイチンゲールが「大谷はトロントには行ってない。ロサンゼルスの自宅にいる」と、モロシの報道を否定。ヘイマンら他の記者も相次いでこれに追随するなど情報が錯綜。結局、件のプライベート・ジェットには別人が乗っていたことが判明。モロシはSNS上で謝罪した。

 

▼12月9日

 大谷が自身のインスタグラムでドジャースとの契約合意を公表。「ファンや球界関係者の皆様、決断まで時間がかかってしまい申し訳ありませんでした」と述べ、一連の騒動に終止符を打った。

 

▼12月11日

 ドジャースが大谷との契約合意を正式発表。総額7億ドルのうち実に6億8000万ドルが「後払い」となる前代未聞の契約内容も明らかとなった。

 

構成●SLUGGER編集部

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◆ 大谷翔平の後払い契約に賛否“本当の理由”「思いやりの提案が…」「ジャッジの14年契約は認められず」代理人バレロが米メディアに語った“内幕”

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平が世界のスポーツ史上最高額の10年総額7億ドル、日本円にして1015億円の巨額契約をドジャースと結び世間の注目を浴びた2日後、さらに驚かせる事実が明らかになった。

 

 10年間の年俸はそれぞれわずか200万ドル(約3億円)。総額の97%に当たる残りの6億8000万ドルを後払いにするという。しかも無利子で、契約終了翌年の2034年から2043年まで1年につき6800万ドルずつ10年間で分割し支払われる。

 

「97%後払い」米メディアはどう報じたか?

 この事実に、アメリカのメディアもファンも衝撃を受けた。大手メディアの論調はこうだ。

 

「悪魔は細部に宿る:巨額の後払いがショウヘイ・オオタニ大型契約の鍵だった」(米経済誌フォーブス電子版/記事の見出し)

「ショッキングな契約内容が明らかになった。10年総額7億ドルという巨額の契約は、予想を超えたクレイジーな後払い形式だった」(ニューヨーク・ポスト電子版/記事の見出し)

「極めて異例の契約金構成。ドジャースにとってこの契約はお得のバーゲンかと思ったら、それをはるかに超える盗人レベル」(ロサンゼルス・タイムズ電子版/文中の一部引用)

 

「ぜいたく税」とは? 「後払い」はなぜ?

 

 97%もの後払い契約によって、球団は総年俸を大幅に軽減することが可能になり、さらなる戦力補強を進める余裕が生まれたことになる。これにはMLBのぜいたく税制度が影響しており、球団はチームの総年俸を規定額まで収められなかった場合「ぜいたく税」が科せられ、オーバー額が大きくなった場合や2年3年と連続してオーバーした場合は税額の割合が増すようになっている。MLBでもトップクラスの資金力を持つドジャースは2013年から5年連続と2021年から2年連続でぜいたく税の課税対象になっており、今季も課税対象になると見込まれている。

 

 このぜいたく税制度は選手の契約金の年平均額で計算され、大谷の金額は本来なら7000万ドルになる。だが複数の米メディアによると、後払い分はお金の現在価値を元に計算される(物価上昇の影響で貨幣価値が10年後に下がる)ため、大谷の年平均額は4600万ドルになる見込みだという。ドジャースはこれで、ぜいたく税制度にかかわるコストカットを可能にし、その分を大谷以外の戦力補強に回せるというわけだ。2033年までの大谷の年俸は200万ドルだが、スポンサー契約だけで来季は5000万ドルになるといわれており、年俸が少なくても個人の収入ではメジャートップだ。

 

米ファンの声「ジャッジは認められなかったのに…」

 

 ドジャースにとって最高の契約という声が上がる一方、他球団ファンからは反発の声が上がっている。米スポーツ専門テレビ局ESPNのジェフ・パッサン記者がX(旧ツイッター)で大谷の後払い契約が巨額だと伝える投稿をすると、米国の野球ファンからの驚きのコメントが殺到した。

 

「なぜこれが通るの?」

「認められるべきではない。ルールの悪用だ」

「野球界にとってよくない」

「税を免れる史上最大の抜け穴じゃないか」

「こんなのフェアじゃない」

 

 大部分が後払いという契約が認められるなら、なぜアーロン・ジャッジの14年契約が認められなかったのか疑問を呈する声もある。

 

 昨オフにヤンキースからFAとなったジャッジは、結局はこの時点でのFA史上最高額となる9年総額3億6000万ドルで再契約を結び残留したが、争奪戦に名乗りを上げたパドレスが14年総額4億ドルを超える提示をすると報じられていた。しかしジャッジが44歳になるまでの異例の長期契約に、MLB機構が許可をしない方針であると伝えられ、実際には正式提示は行われなかったとされている。パドレスにとっては、何としても獲得するために高額提示をしたいが、ぜいたく税対策として年平均を抑えるために14年契約を考えた。だが機構側は、44歳になるまで同じパフォーマンスを維持するのは難しいだろうという判断で異例の長期契約を認めなかった。

 

 同じくぜいたく税制度に影響を及ぼす大谷の後払いは労使協定で定められた規定に抵触してはいないが、ジャッジの14年が認められずこれが認められるのは不公平という声がある。特に他球団のファンにとっては、ドジャース一強になる可能性が高まったことで、納得がいかないという思いが強い。

 

10年契約後…州を出れば節税に?

 

 大部分の後払いがドジャースだけでなく大谷自身にもメリットがあるとの指摘も出ている。ドジャースが本拠地を置くカリフォルニア州は所得税が現在13.3%、来年からは14.4%に上がり、所得税ゼロの州があるアメリカではかなり高額。大谷がドジャースとの10年契約を終了後、カリフォルニア州から引っ越せば節税になる可能性がある。

 

 一方で、20年先までの後払いのリスクを指摘する声もある。

 

 アスレチックスの外野手ブレント・ルーカーはXにこう投稿した。

 

「世界滅亡の終末もの映画や番組を観過ぎているので、そんな先まで後払いを組むなんて、僕にはできない(そんな契約をするほど野球はうまくないけれど)」

 

 米スポーツメディア「ジ・アスレチック」の編集者メリッサ・ロッカードさんもこう指摘する。

 

「2043年の社会が正常に機能していると楽観しているオオタニを尊敬する」

 

ネズ・バレロが語った“契約の内幕”

 

 契約交渉中に沈黙を守ってきた大谷の代理人ネズ・バレロ氏は、契約合意にこぎつけた後の11日付の米専門誌「スポーツ・イラストレイテッド」でこの契約が成立するまでの舞台裏を明かしている。それによると、大谷は11月にFAになると、バレロ氏にすかさず聞いてきたという。

 

「僕のチームが戦力強化できるよう、僕の年俸すべてを後払いにするというのはどうだろうか?」

 

 その言葉を受けて、バレロ氏は労使協約書を読むことに没頭した。そして「選手は少なくとも規定の最低年俸を受け取らなければならないが、後払いにする金額の制限はない」という条項があることを確認したという。年俸を200万ドルに設定したのは、大谷自身の考えだった。バレロ氏はこう語る。

 

「彼がすることはすべてが独特で、その思考には隙がない。これだけ責任感を持ってチームの勝利に貢献しようとする選手がいるだろうか。純粋な気持ちで周囲を思いやる彼の人柄を象徴している」

 

大谷の思いやりが“賛否”に…

 

 史上最高額の契約金を史上最高の割合で後払いにするという驚きの契約は、SNSで今も賛否が渦巻いている。スポーツ実況アナウンサーとして知られるクリス・ローズ氏は自身のポッドキャストで「ショウヘイがこれまでブーイングを受けた記憶はないが、今後は受けるかもしれない。彼がどうブーイングに反応するか興味深いね」と話している。

 

 後払いの金額に制限がないという点は、MLBと選手会が労使交渉をしたときに制限を提案された選手会が拒否したため、その結果だとも伝えられている。大谷のこの契約で、次回の労使交渉では再び議論が持ち上がるかもしれない。大きな波紋を広げる、衝撃的な契約だった。

 

(「メジャーリーグPRESS」水次祥子 = 文)

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