2023年10月18日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ MLB選手会は17日、選手間投票による各賞の最終候補を発表。大谷はプレーヤーオブザイヤー賞(年間最優秀選手)と、アウトスタンディングプレーヤー賞(ア・リーグ最優秀野手)の2部門で、ともに3年連続の候補入りとなった。大谷の活躍について選手会は、「ショウヘイ・オオタニは、二刀流でまたしてもこの世のものとは思えないシーズンを送った」と称賛。「年間最優秀選手」に選ばれれば2年ぶり。大谷以外にロナルド・アクーニャJr.外野手(ブレーブス)と、ムーキー・ベッツ外野手(ドジャース)が最終候補に入った。「ア・リーグ最優秀野手」にはヤンディ・ディアス内野手(レイズ)とコーリー・シーガー内野手(レンジャーズ)。受賞者は11月2日に発表される。

 

◯ 今オフにFAとなる大谷について、ドジャースのアンドルー・フリードマン編成本部長が地元メディアから獲得の意思を聞かれ「誰?」とはぐらかした。フリードマン氏は17日、今季のチームの総括会見に出席。ロサンゼルス・タイムズ紙のマイク・ディジオバンナ記者が伝えたところによると、大谷獲得にどれだけ本腰を入れるかと問われて「誰?」と含み笑いをし「特定のFA選手については話すことができない」と答えたという。ただし今オフの補強については「我々は積極的に補強に動き、可能な限りベストのチームを作る。(来春キャンプで)チームがアリゾナに集合したときには、ワールドシリーズ制覇を狙えるチームになっているという自信がある」と話したという。

 

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 ■ ロサンゼルス・エンゼルス情報

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◯ ジョー・アデル外野手が、ノックを打ってくれる人を募集中。14日(日本時間15日)には自身のXで「フェニックスに住んでいて、今オフに僕にゴロを打ちたい人いる? 報酬付きだよ」と投稿。アデルは守備面が課題なだけに、ファンの興味を誘っている。昨季まではメジャーでプレーした際、守備ではミスが目立っていた。今季昇格時にはホームランキャッチなどファインプレーを見せるなど、徐々に成長を見せているが、まだ本人は課題を痛感しているようだ。「ゴロを打ちたい人いる?」と投稿したために、ファンからは「内野に移るのか?」とのコメントもあったが、「いや、普段からゴロの練習からまず始めるんだよ」と返信していた。

 

◯ 昨季途中までエンゼルスに所属したブランドン・マーシュ外野手が、新天地で覚醒している。17日の地区優勝決定シリーズ・ダイヤモンドバックス戦では6回に適時打を放ち、ベース上で雄叫び。今季は主力として133試合に出場し、自己最多の12本塁打をマーク。プレーオフでは打率.350と好調。11日の地区シリーズ・ブレーブス戦では本塁打を含む3安打の活躍を見せると、そこから4試合連続で安打を記録。OPSは1.035まで上がっている。昨季はワールドシリーズも経験しており、勝負の10月を経験するのは今季で2度目。エンゼルスは悔しいシーズンを送る一方、マーシュは新天地で存在感を見せている。

 

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 ■ 球界情報

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◯ 「古巣」甲子園を電撃訪問したオリオールズ・藤浪晋太郎が、同期入団で今月3日に阪神から戦力外通告を受けた北條への思いも明かした。「プロの世界なんで、自分たちももう30歳近いですし、そうなるのは仕方ないことかなと…その反面、寂しい思いもありますね。北條のことは小さい時から知っていて、一緒にやってきた仲間なんでしんみりしてしまいました戦力外通告を受ける前に、北條からはLINE(ライン)で連絡があった。「通告される前に連絡ももらいました。ただ、LINEで多くを語るのは違うと思ったので、近々ご飯行こうという話もして。そのときにいろいろ話そうと思ってます」

 

北條は「晋太郎」ではなく「藤浪」、藤浪も「ジョー」ではなく「北條」と呼ぶ特別な関係だった2人が、甲子園のお立ち台に並び立つことはファンの長年の夢だった。ついに実現せずメジャー挑戦と戦力外という対照的な形で聖地を去ることになったが藤浪は北條の現役続行も願った。「1年でも長くとは思いますし、北條の人生なんで納得いく形になれば。それを1番に願っています」。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 単独インタビュー ヤクルト・村上宗隆、独占激白 無冠の1年「勝てないもどかしさ、打てないもどかしさあった」

赤尾裕希氏/情報:サンスポ)

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ヤクルト・村上宗隆内野手(23)が17日、サンケイスポーツの単独インタビューに応じ、現在の心境を激白した。自身はタイトルなしでチームは5位に終わり、悔しさを吐露。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表として世界一に貢献したエンゼルス・大谷翔平投手(29)に感じたことを明かした。来季の覇権奪還と三冠王への再挑戦に意欲を見せ、米大リーグへの変わらぬ思いを口にした。(取材構成・赤尾裕希)

納得できるはずがなかった。満足できるわけがなかった。何より勝利を追い求めてきた村上は、リーグ5位に終わった今季の悔しさを吐露。主砲として勝利に導けなかったことに責任を負った。

「勝ちに貢献できなかったところが一番悔いが残っています。苦しさというよりは勝てないもどかしさ、打てないもどかしさはありました」

大きな期待を背負っていた。昨季は日本選手最多のシーズン56本塁打を放ち、史上最年少で三冠王を獲得。さらなる活躍を望まれる中、打率・256、31本塁打、84打点でタイトル獲得はならず。それでも、野球と真摯(しんし)に向き合った日々は無駄ではなかった。

「手を抜いてやっていたわけではないし、結果を残すため、自分の描いている選手になるために、試行錯誤してやって結果が出なかった。その選択に悔いはないです。今年の失敗を来年につなげる自信もありますし、プラスになることもすごく多かった。もちろん昨年に比べたら全然打てなかったけど、僕もいいときばかりではないと分かっています。必死に考えながら野球ができたので、昨年よりももっともっと野球に向き合えたというか、シーズンが終わって感じる部分が昨年よりもすごくあるし、今は『また来年やってやろう』という思いがすごくあります」

ファンからの熱い思いと高い期待値は、時に批判となる。状態がなかなか上がらなかったときにはSNS上でも厳しい声が飛んだ。村上は日本を代表する打者としてブレずに全てを受け止めた。

「やっぱり昨年の成績を残して期待されるのは当たり前ですし、僕は23歳ですけど、他の23歳と見られ方が違うというのはわかっていました。自分がブレる、ブレないという話ではない。毎日野球場に来て、僕のプレーを見に来てくれるお客さんがいるので、感情がブレて野球に支障が出るというのは良くないこと。しっかり試合に合わせて練習しているという自信はあったので、別に何もなかったです」

3月のWBCで日本代表の中心選手として世界一に貢献。大谷と初めて会い、圧倒的な存在感を間近で感じながらプレーした。レギュラーシーズンでは打率が一時1割台に落ち込み「大谷の影響」と言われたこともあったが、村上自身もその存在の大きさを感じていた。そして、考えや技術だけではない〝学び〟を得た時間でもあった。

「(影響は)もちろんありました。日本のプロ野球で56本塁打を打って、三冠王を取って、パワーには自信があった。直接、大谷さんのバッティングを見たり、試合を見る中で『自分はもっとこうなれるんじゃないか』という期待もあったし『こういう打撃をしたい』という思いもあった。でも、今になって思うのは自分は自分なんだなと。今年の反省をするならそこが一番だと思う。青木さんがよく言っていたのですが、メジャーでパワーの差や体格差を感じて自分を見失う選手がいて(適応に)1年、2年かかると。早い段階でメジャーのトッププレーヤーと一緒にプレーをしたり、対決して感じられたので、すごくいい経験になりました」

来季目指すのは、リーグ優勝と日本一の奪還。個人成績では再びキャリアハイと三冠王に挑戦する。そして、米大リーグへの思いも変わらない。

「もちろんまた、全ての打撃タイトルを取りたい。メジャーへの思いはもともと強かった。いろいろな方に刺激を受けて、向こう(米国)でやりたいと思っていました」

24年シーズンは、再び「村神様」伝説が誕生する予感だ。

巻き返しに向け、充実したオフシーズンを過ごしている。トレーニングでは全体のバランスを意識しながら全ての面でレベルアップを目指す。

「来シーズンが始まって好調、不調って絶対にあると思う。今シーズンは不調の時期がすごく長かったので『自分の戻る場所』を作るというか、自分の打撃フォームの中でいいときはこう打ったとか、こういう打ち方もあるなとか、こういう練習もあるなとか。打撃は本当に小さなところが一つはまれば大きく変わるし、その一つが欠ければ悪い成績になる。小さいところを気にしながらやっていきたい。一番いい体の状態でどういうフォームが合っているのか、技術うんぬんではないところを伸ばしていけたらなと思います」

来季は再び頂点を目指す戦いとなる。もちろんその中心には背番号55が座る。

「僕らは必ず力がある。最下位も取るけど優勝もできるし、僕の中で別に何かを変えないといけないというのはない。レギュラーがそろって143試合フルで戦えて、負けた日も前を見て『明日勝つんだ』という気持ちさえあれば、おのずと結果は付いてくると思う」

進化した「村上宗隆」と、一致団結したスワローズが神宮の杜で躍動する。

★今季の村上

3月のWBCでは日本代表の中心選手として、準決勝のメキシコ戦でサヨナラ2点二塁打、決勝の米国戦で右翼席へのソロを放つなど3大会ぶりの世界一に貢献した。レギュラーシーズンでは3月31日の開幕戦(対広島、神宮)の今季初打席で、自身初の開幕弾となるバックスクリーン左への1号2ランを放った。

その後は、なかなか状態が上がらず、4月中旬から5月上旬頃まで打率1割台と低迷。それでも、重いバットを試すなど懸命に試行錯誤を続けながら打席に立ち、9月12―14日の広島戦(神宮)では3試合連続本塁打を放った。結果的に140試合に出場し打率.256、31本塁打、84打点でタイトル獲得はならず。入団6年目(外国人選手を除く)での通算本塁打は歴代最多を更新する191に到達した。オフシーズンは下半身の状態が万全ではなく、来季を見据えて現在はリハビリ組で調整している。

★異業種交流

異業種の同学年から刺激を受けた。村上はシーズン終了後の7日、男子バレーボールのW杯を観戦。元レスリング選手の吉田沙保里さん(41)らとともに、テレビ番組で共演経験のある西田を応援した。村上自身もインスタグラムのストーリーズ機能で「ユージおめでとう」と祝福。「応援していました。刺激をもらいました」と笑顔で振り返った。

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◆ ド軍編成本部長 シーズン総括会見で大谷についての言及避けるも、第一線のFA選手に積極的に動くと明言

(情報:スポニチ)

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 公式戦で100勝以上を挙げながら、1年前に続いて地区シリーズで敗退したドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長が17日(日本時間18日)、シーズンの総括会見に臨んだ。複数の米メディアが報じた。

 「我々のゴールは10月に11勝すること、今年は1勝もできなかった。どうすれば結果を変えられるのか、手段を見つけないといけない。我々は道路の分岐点にいる」と話した。

 敗因は先発投手陣がケガと、フリオ・ウリアスの逮捕などで、弱体化してしまったこと。ダイヤモンドバックス相手の地区シリーズ、3試合で4・2回を投げ13失点だった。自信を持っていた攻撃陣もムーキー・ベッツとフレディ・フリーマンが21打数1安打の不振、3試合でわずか6点しか取れなかった。「これだけ才能ある選手が集まりながら、3試合27イニングで一度もリードを奪えなかった。その理由は解明しないといけない」。フリードマン編成本部長は1年前と同じく「組織としての失敗」と総括。その上でデーブ・ロバーツ監督はじめ、24年も同じ体制で臨むと明言した。

 ド軍の第一の目標は成功を長く続けること。実際、11年連続ポストシーズンに進出し、その間に10度の地区優勝を成し遂げ、その目標は達成している。しかしながらポストシーズンを勝ち進めない。とりわけ19年から23年、フルシーズンの年に4年連続100勝を挙げたのに、全て途中敗退。優勝できたのは短縮シーズンの20年だけだ。他のシーズンはプレーオフで格下のチームにことごとく敗れている。10月は悪夢の繰り返しだ。

 ドジャースはポストシーズンについて何か問題があるのかと聞かれると、編成本部長は「その答えは分からない」と1年前と同じ返事だった。どうすれば24年は世界一に手が届くのか?最大の課題は先発投手陣の立て直しだ。しかしながらクレイトン・カーショーの去就はまだしばらくはわからないし、トミー・ジョン手術から復帰のウォーカー・ビューラーが来季、どれだけ投げられるのかも定かではない。ボビー・ミラー、ライアン・ぺピオ、エメ・シーハン、ギャビン・ストーン、マイケル・グローブといった若い投手については「彼らに経験を積ませたかったし、その通りにできた。24年以降たくさんチームに貢献してくれる」と言うが、何人がローテーションに定着し、安定したピッチングを見せられるかどうかはわからない。だから第一線のFA選手獲得に積極的に動くと明言した。

 「過去2度のオフシーズンの結果については我々はとても怒っているし、がっかりしている。来年同じことにならないようできることは何でもする。2月にアリゾナのキャンプ地に現れる時には、優勝を狙える本物のチームを用意する。そのことについては自信を持っている」ときっぱり。

 ただ大谷翔平の獲得に動くかどうかについてについて聞かれると、「誰って?」とごまかした。MLBのルールで、ワールドシリーズ終了後、正式にFAになるまでは、他球団の選手の話はできないからだ。もっとも大谷に、噂される5億ドルを提示するのはリスクも大きい。ドジャースは23年もぜいたく税の基準額を超えてしまったから、税率は高止まり。既に30代のベッツとフリードマンに長期投資をしているが、大谷も来季中に30代になる。そしてこのオフ、何よりも優先すべきは山本由伸ら24年に投げられる先発投手の補強なのである。

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◆ 大谷翔平のFA“かなり危険だった”候補地の治安「地下鉄がマリファナの匂い」「カード情報が盗まれた…」記者が体験したアメリカの現実

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 FA移籍先が注目される大谷翔平。来季以降、本拠地になるのはサンフランシスコか、ニューヨークか、あるいは……。気になる現地の「治安」「日本食の有無」「ファンの違い」。アメリカ滞在経験のあるライターが、移籍候補先に挙がる球団のホームタウンを歩いてみた。#1は「治安編」。〈全2回の#1/#2へ〉

 今オフの大谷翔平争奪戦で参戦が有力視されるチームの本拠地を歩く。

サンフランシスコ…「衝撃の危険エリア」
 まずはジャイアンツのあるサンフランシスコへ。近年、急激な治安の悪化が叫ばれているが、実際のところはどうか。歩いたのは、この街で最も危険なエリアといわれるシティホール(サンフランシスコ市庁舎)周辺。ダウンタウンの中心街から少し外れた地区にある。

 近づくにつれて歩道のゴミの散乱具合が増し、多くの人が路上でたむろ、はたまた地面に座り込んでいる。キャンプ用のテントも点在しており、ストリートで生活している人々の多さに驚かされる。

 歩道で両ひざと頬を地面につき、お尻を天に向けて突き出し倒れている人を見つけた。黒く汚れたボロボロの服を身に着け、ズボンこそ穿いていたもののお尻が半分むき出しだった。

 サンフランシスコは今、ドラッグ中毒者とオーバードーズによる死亡者の増加が問題になっているという。筆者はアメリカに長年住んだ経験があるが、ここまでスラム化した街を見たのは初めてだった。危険なエリアのため車もまばら。降りる人もほとんどいない。

白飯の上にチキン…それが「1800円」
 しかしそんな光景はシティホール周辺くらいで、ダウンタウンのビジネス街や観光地として有名な湾岸地区は整然としている。治安の悪さを感じることもなく、少なくとも昼間に歩くぶんには何も問題はなかった。ただし、かつてお洒落でトレンディといわれていたサンフランシスコの町並みは今や昔。寂れた印象が強く、ダウンタウンの中心にあるショッピングモールにはシャッターが下ろされた店も複数見られた。それでも物価だけは高く、モールの中の和食のテイクアウトの店でチキン照り焼き丼を頼んだら、白飯の上にチキンが乗っているだけのものが12ドル。今の為替レートに換算すると1800円近くになる。

 サンフランシスコのいい点を挙げるとすれば、夏の過ごしやすい気候と、日本食スーパーなどがそろう「ジャパンタウン」と呼ばれる地区が存在すること、そして大谷もお気に入りとされる「In-N-Out」があることだ。このハンバーガーチェーンは、ほとんどの店舗がカリフォルニア州にある。テキサス州などにも点在するが東海岸には1つも存在しない。この8月に初めてサンフランシスコの同店に行ったが、チーズバーガーには分厚い玉ねぎの輪切りが挟まれ、フレッシュで美味しかった。

 

住みやすいシアトル…日本食も


 そんなサンフランシスコと同じ西海岸に位置するシアトルも路上生活者が多い街だ。数年前にはマリナーズの本拠地Tモバイルパークの球場外でテント暮らしをしている人たちを多く見かけた。市の対策によって、昨年訪れた際は見あたらなかったが、球場に近いダウンタウンの南側はスラム化している。それでもシアトルには治安が良い住みやすい地区も多い。日本食がそろう大きなスーパーがあることもポイントだ。

シカゴ…「地下鉄には絶対に乗らないように」
 都会で住みやすく、大きな日本食スーパーがあるところでいえば、アメリカ中部地区のシカゴも挙げられる。実際、ここに本拠地を置くカブスも、大谷獲得に乗り出すと伝えられている。

 ただし、心配なのはやはり治安。昨夏にシカゴを訪れたとき、取材現場で顔を合わせる知人から、口を酸っぱくしてこう言われた。

「地下鉄には絶対に乗らないように。Uberを使う方がいい」

 あまりにも何度も言われたので不安になったが、球場に通うのに毎日行き帰りUberを利用するとお金がかかってしまう。昼間なら大丈夫だろうと、乗ってみると衝撃的だった。

 駅でも電車内でも、独特な匂いが強烈に鼻をついた。

 アメリカでは2010年代から、嗜好品としてのマリファナ使用を合法化する州が増加傾向にある。アメリカの他の都市でも、駅や地下鉄の車内で葉っぱの匂いが気になることはあるが、シカゴの地下鉄はその中でも際立っていた。車内で突然、マリファナパーティーが始まったところに出くわしたと、知人に聞いたこともある。

地下鉄カード券売機で…「最悪の日」
 余談だが、地下鉄といえば、東海岸のニューヨークで信じられない出来事に遭遇した。駅の券売機で地下鉄カードを購入しようと34ドルのお札を挿入。のち購入完了ボタンを押せば出てくるはずのカードが、一向に出てこない。仕方がないのでキャンセルボタンを押すも、何とお札まで戻ってこないではないか! 

 今思えば焦っていたのだろう。次になぜかクレジットカードを差し込んでみるも、相変わらず反応はなし。駅員さんに言おうとするも、あいにくの無人。いったん地上へ出て、反対側のホームがある道路の向かい側の入口から駅に入る。そこで駅員に事情を話して返金を頼むと、封書を渡され「これにトラブルの内容を書き込んでMTA(ニューヨーク州都市交通局)に送れば返金されます」と言われた。渡されたものを読むと、返金まで日数がかかることがわかった。さらに読み進めると、返金を受け取るには「アメリカ在住である必要がある」との記載を見つけた……。

 ちなみにこの出来事から約2週間後には、クレジットカードが不正利用されていることが発覚した。そのカードは日本では普段使っておらず、アメリカでは主にかざして使っていたのだが、差し込んでしまった記憶が一度だけあった。そう、あの地下鉄の券売機トラブルの時である。確証はないが、その際にカード情報を盗まれた可能性があるとにらんでいる。

 このように、油断しているととんでもないことが起こる国がアメリカなのだ。

〈つづく〉

(「メジャーリーグPRESS」水次祥子 = 文)

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◆ 大谷翔平に“記者の本音”「どの球団が実際ベスト?」有力候補の現地を実際に歩いた話「ドジャース選手が悩む“ある問題”」「外出しない大谷にピッタリ」

水次祥子氏/情報:NumberWEB)

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 FA移籍先が注目される大谷翔平。来季から本拠地になるのはサンフランシスコか、ニューヨークか、あるいは……。気になる「治安」「日本食の有無」「ファンの違い」。アメリカ滞在経験のあるライターが、移籍候補先に挙がる球団のホームタウンを歩いてみた。#2は「現地ファンの熱狂度編」。〈全2回の#2/#1へ〉

 購入したはずの地下鉄カードばかりか、挿入した現金まで“出なくなる”ことがある無機質な券売機とは違い、ニューヨークの野球ファンは温かい。そして熱い。

なぜニューヨークがおすすめ?
 8月下旬にエンゼルスがメッツとの3連戦のためニューヨークに遠征したときのこと。シティフィールドに詰めかけた地元ファンから大谷に送られた拍手と歓声は、まるでホームの人気選手に向けられるそれのような熱気と音量だった。ニューヨークのファンは、本当に優れて素晴らしいものに対しては、たとえ敵チームの選手であれ最大限の敬愛を示す。

 大谷が3連戦を終えてニューヨークを去ったあと、メッツの取材に行くと球団の広報部長を務めるイーサン・ウィルソン氏に話しかけられた。

「ショウヘイはどうなの? 手術しそうなの?」

 大谷の右肘靭帯損傷が明らかになったあとだったが、まだ打者として試合に出場している時期だった。まだわからないと答えるとこう言った。

「そうか。手術、避けられればいいね」

 敵味方という立場を超えて球界の宝を気遣う。そんな思いがウィルソン氏の言葉からも伝わってきた。

 2012年から3年間ヤンキースに所属していた黒田博樹は当時、マンハッタンのスターバックスでコーヒーを買った際、店員が「いいから」とお金を受け取らなかったことがあったと話していた。街角でふと感じる人々のぬくもりと自分に対するリスペクトは、選手にとって励みになる。かといってニューヨークという街は人が必要以上に干渉してくることもなく、メリハリのある絶妙な空気感がある。ハマる人にはハマるはずだ。

 

「懐が深い」カブスファン
 シカゴも、ファンは温かく熱い。そして少し独特だ。

 シカゴ市内にあるスポーツ博物館を訪ねてみると、カブスに関する展示は過去の栄光にまつわるものだけでなく、1945年のワールドシリーズでペットのヤギを連れたファンが球場から追い出されたことに端を発する「ヤギの呪い」や、2003年のサミー・ソーサのコルクバット事件などチームの残念な出来事にまつわるものも展示されていた。2016年に108年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たすまであまりにも長く世界一から遠ざかっていたせいか、カブスファンは自虐的な笑いを好む傾向にあるのかもしれない。鳴り物入りで入団した選手が万が一にも期待通りに活躍できずとも辛抱強く待ってくれる、あるいはネタにして笑ってくれるような懐の深さを、この街の人々は持っている。

「熱すぎる…」レッドソックスファン
 それに比べて、活躍しなければ許されない雰囲気が漂う街が、レッドソックスの本拠地、ボストンだ。

 デビューから6年間レッドソックスでプレーし2020年からドジャースに所属しているムーキー・ベッツ外野手は、10月1日に配信された自身のポッドキャストでこう語っていた。

「球場に来る観客はLAとボストンでは正反対だね。LAのファンはどちらかというと落ち着いていて、僕らが勝てばすごく喜んでくれるけど、負けても、明日勝てばいいよ、よくやってるよ、という感じなんだ。でもボストンでは、勝たないとファンに殺される」

 大谷が今年4月にボストンに遠征したときも、レッドソックスの本拠地フェンウエイパークで大谷を出待ちする地元ファンが関係者出入口に殺到し、熱気ムンムンとなったことが話題になった。

 ボストンの街は都会的でもある。大学が多い学術の街でもあるためか、すべてがコンパクトにまとまっている。実に住みやすい街といえる。フェンウエイパークの近くには洒落た店が立ち並ぶメインロードがあり、そこには人気の和食店もある。野球選手としては、球場も含めて限られた範囲で生活も仕事もすべてが完結するため、移動時間を浪費する必要がない。睡眠時間をたっぷり取りたい、そしてあまり外出をしないという大谷にはぴったりかもしれない。

 

エンゼルスの「圧倒的メリット」
 ただ大谷が好む温暖な気候という点では、やはりエンゼルスのある南カリフォルニアが断トツに優れている。

 エンゼルスの本拠地アナハイムには昨夏訪れた。球場から徒歩10分ほどのホテルに宿泊し歩いて球場に通ったところ、ホテル周辺は閑静な新興住宅地になっていた。アナハイムの球場周辺の歩道は、ゴミが散乱していることもなく、実に清潔。散歩をしていると歩道のところどころに「Pet Waste Station(ペット・ウェイスト・ステーション)」というゴミカゴのついた設備があり、愛犬などの散歩で出た排泄物はそこで捨てられるようになっていたのだが、そんな設備を見たのはアナハイムが初めてだった。

ドジャース選手を悩ます「深刻な渋滞」
 ドジャースの本拠地があるロサンゼルス中心部も気候的に変わらないだろうが、ドジャースタジアムの難点は、球場の行き帰りの渋滞。球場はダウンタウン近く、渋滞で悪名高い高速道路のすぐ脇にある。球場への行きは高速の渋滞にはまり、帰りは球場の駐車場から出口までたどりつくにも大渋滞だ。ドジャースタジアムに取材に行くと、試合後に監督会見、選手の囲み取材などを終えると試合終了から1時間後にはすべてを済ませて帰ることも可能なのだが、それでは駐車場から出口までの渋滞にはまってしまうため、わざと帰る時間を遅らせるメディア関係者も多くいる。

 選手たちもこの渋滞には手を焼いているようで、試合後に球場で花火大会が行われる日は、観客が花火を観賞している間に球場を脱出しようと選手達が速攻で帰っていくのを見たことがある。渋滞のストレスは選手も感じているのだろう。

獲得消極的? ヤンキースもありな理由
 ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、シカゴ、ニューヨーク、ボストンと歩いたが、筆者のおすすめはボストンとニューヨーク。ニューヨークはメッツが争奪戦に参戦すると伝えられている一方、ヤンキースは微妙なようだ。だがヤンキースはこのオフ、選手のクラブハウスとその周りの改築を予定しており、睡眠ルームと筋肉の疲労回復に効果的とされるレッドライト・セラピー専用ルームを新設。最先端テクノロジー設備も揃え、選手のダイニングルームをきれいにリフォームするとのことで、二刀流の大谷を助ける環境がそろう。

 

サンフランシスコの現状
 また、ジャイアンツのある西海岸、サンフランシスコは、今は治安面で難があるとはいえ、大谷という1人のスーパースターの出現で大きく変わる可能性を秘めた街だ。ジャイアンツの本拠地オラクルパークは6年前までは1試合平均4万人を超える観客動員がありファンの熱気で盛り上がる球場だったが、コロナ禍をきっかけにビジネス街に人がいなくなり、治安の悪化で去ってしまった住民も多く、今季は1試合平均約3万人と減っている。

 夏に訪れたときはスポーツバーがどこもかしこもサッカー中継を流していたので、すっかりサッカータウンと化したことも観客減の要因になっているかもしれない。だが大谷が加入することで球場に観客が戻り、メジャー屈指の美しい球場に熱気と興奮を再び――ある意味、選手として、スーパースターとして、自分の力を存分に試すことのできるやりがいのある場所といえなくもない。

 さて、大谷に合うのはどの街だろうか。

(「メジャーリーグPRESS」水次祥子 = 文)

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 ■ NOTE

 

村上崇高が、大谷に影響されたと告白。サンスポの独占取材。