2023年9月23日

 

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 ■ 今日の大谷翔平(関連NEWS)

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◯ 大谷の今オフFAの去就先に業界内で最有力候補として挙げられてきたドジャースだが、ニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマン記者が21日に「大谷翔平を求めるドジャースに付きまとう大きな疑問」と題した気になる異論の声を上げ、話題となっている。同記者は「(ドジャースは)今オフは主に先発投手に『大きく集中する』という情報が入っている。そのため、ヒジの手術をし、2024年は打者しかしない二刀流スターは以前ほど『明らかなフィットではない』というのが大方の意見だ」と指摘。

 

気になるのが2つ目の指摘。「もう一つはあまり信ぴょう性がないうわさに分類されるかもしれないが、ドジャース関係者でさえ大谷がドジャー・スタジアムで打つのが好きではないという臆測を聞いている」大谷の同球場での成績は15試合に出場して28打数10安打、打率3割5分7厘、4打点、1本塁打。一発こそ少ないが、苦手と呼べるものではないだろう。エンゼル・スタジアムとほぼ同じ気候であり、同記者も「そんな心配は無用と思われる」とも言及している。

 

◯ ダルビッシュ有が22日、カージナルス戦前に取材に応じ、右肘手術をした大谷について言及。「このレベルになると、それだけ100%以上の力を出さないといけなくなってくる。いろんな要因があってけがが増える。本人も一度(手術を)経験している。その経験が大きく生きると思う。年々、レベルも上がって、投げる球が速くなったり、強くなったり、キレが良くなったりする。その分、全体的に求められる部分が高くなって、体調管理をするのが難しくなってきている。どれだけ完璧なことをやっていても、けがにはなる。大事なのは、最新の科学というかそういうところが出されているアームケアであったり、ちゃんと知った上で自分の引き出しに入れていくことが大事かなと思う」と見解を示した。

 

◯ 右肘手術から2季ぶりに復帰した前田健太が22日、試合前に取材に応じた。「翔平は(手術を)1回やっている。リハビリの過程や復帰のプロセスは彼自身、理解していると思う。野球に対する取り組み方が完璧な選手。(復帰は)そこに関しては大丈夫だと思う」前田はハイブリッド手術を受けた。「(靱帯の)強度が強くなり、リスクとリハビリ期間が全く変わらないという説明を受けて、新しい方を選んだ」と振り返った。

 

 

◯ 本塁打争いが注目されているホワイトソックスのルイス・ロベルト外野手は、今季の本塁打は37本で、シーズン終了となっている大谷に「7本差」と迫っている。ロベルトは、「残り9試合で、オオタニを超えるのは、非現実的だと思う」と、語る一方で、「目標に掲げているのは、40本塁打。それも、結構、難しいことだと思うけれど、最後までベストを尽くしたい。どうなるか、みてみましょう」と爽やかに語った。「1年間を通じて戦えたことは自信になったが、メジャーで結果を出すには、安定して調子をキープすることが大事だと分かった。誰でも好不調の波があるが、その変動が激しいシーズンになったので。来年はシーズンを通じて、本塁打争いに常に関わっていられるようなレベルを目指したい。そのためにも、力強くシーズンをフィニッシュしたい」

 

 

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 ■ ロサンゼルス・エンゼルス情報

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◯ エンゼルスは22日(日本時間23日)、リリーフ左腕のアーロン・ループを左肩痛のため15日間の負傷者リスト(IL)に入れたと発表した。来季の契約は球団に選択権があり、年俸750万ドル(約11億円1000万円)。行使しないと予想されており、その場合はバイアウトとして200万ドル(約3億円)が選手に支払われる。

 

◯ フィル・ネビン監督が22日、敵地ツインズ戦前にメディア対応し、左手首骨折で離脱中の主砲トラウトの現状について語った。「室内練習で調整を進めている。彼は今日ティー打撃を打っていると思う。しかし、現時点ではプロセスが遅い。彼はグラウンドに戻るためにできる限りのことをしようと最善を尽くしている。我々に残された時間はわずかしかない。ただ、オフを100%の状態で迎えることも重要だ。残り試合に欠場すると言っているわけではない。まさに今が重要なな時期」

 

◯ エンゼルスは8回表に2点、9回表にも1点を返して反撃したが、ツインズに6対8で敗戦。勝利したツインズは短縮シーズンの2020年以来3年ぶりとなる地区優勝を決めた。ツインズ先発のパブロ・ロペスは6回5安打3失点で11勝目(8敗)を挙げ、4番手のヨアン・デュランは苦しみながらも27セーブ目をマーク。エンゼルス2番手のデービス・ダニエルは4回1/3を3安打3失点でメジャー初黒星(0勝)を喫した。

 

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 ■ 球界情報

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◯ ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手が22日、本拠地でのダイヤモンドバックス戦に2番右翼でスタメン出場し、3打席連続の本塁打を放った。3回にセンターへ33号3ランを放つと、5回には右中間に34号2ラン。勢いそのままに7回には35号ソロを右翼スタンドに放り込んだ。同一シーズンで1試合3本塁打を2度達成したのは、ヤンキース史上初。35号は、トップを走る大谷(44本)に9本差と迫った。ジャッジはこの日が出場100試合目。今季2度目の1試合3発を記録するなど、“ハイペース”で35本塁打を積み重ね、シーズン最終盤までキングの座を狙う。

 

◯ オリオールズ藤浪晋太郎投手は22日、敵地ガーディアンズ戦に登板、2/3回を無安打無失点と好投した。5-6と1点ビハインドの6回1死から3番手として救援。1番クワンを速球で一直、2番ラミレスをカットボールで右飛に打ち取った。球数は8球。防御率は7・25。オリオールズは、シーソーゲームの末、逆転サヨナラ負けを喫した。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ カージナルス・ヌートバー、右肘手術の大谷翔平に「彼はまた一段と強くなって戻ってくる」 WBCでもらった時計、今も大切に

(情報:中日スポーツ)

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 カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手が22日、遠征地のサンディエゴで、今春WBCで侍ジャパンの一員としてともに戦ったエンゼルスの大谷翔平の右肘手術について言及。「もし誰かが強くなって戻ってくるとしたら、それは翔平だ」と期待を込めた。

 

 大谷が右肘の靭帯を損傷したニュースを聞いて「僕自身、見たくなかったし、球界やファンの誰もが見たくなかったこと」と心を痛めたと言う。「彼は地球上で最高の選手だし、みんなが彼の才能を最大限発揮した二刀流の姿が見たいと思っている。すごく(けがは)残念」と語った。その上で、大谷のすごみを知るからこそ「僕は彼がまた一段と強くなって戻ってくると楽観している」と話した。

 

 自身はチームの試合がまだ残っている中、今季を「ローラーコースターのような1年だった」と振り返る。打撃は昨季より伸ばしているところも多いが、3度のけがで戦列を離れた。「全く満足できない。オフはいっぱいやることがある。本当にいっぱい練習しないと。翔平のようにね」と意気込んだ。

 

 WBCの時、大谷からもらった時計を大切に使っている。この日もサンディエゴの遠征で身につけ、ロッカーに置いていたのをうれしそうに報道陣に見せた。「遠征でドレスアップする時に使っているんだ」。WBCで絆を深めた大谷への思いがにじんでいた。

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◆ 「ドジャースはフィットしない」大谷翔平のFA移籍先“大本命”と見られているド軍に2つの疑問…米敏腕記者が指摘

(情報:RONSPO)

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今オフにフリーエージェント(FA)となるエンゼルスの大谷翔平(29)が右肘のハイブリッド手術に成功し、2025年からの二刀流復帰のメドが見えてきたことで、またその去就についての注目度がアップしてきた。米スポーツ専門チャンネル「ESPN」のコメンテーターが「5億ドル(約742億円)の価値はない」と発言して物議を醸し出したが、敏腕記者で知られるジョン・ヘイマン氏は、ニューヨークポストに大本命と目される「ドジャースの大谷獲得に大きな疑問が伴う」との注目記事を寄稿した。FOXスポーツは、MLB専門家による討論会を行い、最大10年5億ドル(約742億円)の契約オファーがあると予想してドジャース、レンジャーズを移籍先の最有力候補に挙げているのだが、果たして大谷の決断やいかに?

 

2024年に打者専任となることがネック?

 

 大谷の去就を巡って“炎上騒ぎ”が起きた。

 

 ESPNのコメンテーター、スティーブン・A・スミス氏が、「大谷に5億ドル(約742億円)の価値はない。大谷がいてもエンゼルスは勝てなかったし、球場はガラガラだったじゃないか」と問題発言して物議を呼んだ。

 

 故障者リストに入って今シーズンを終え、損傷を起こした内側側副靭帯の「ハイブリット手術」に成功した大谷の去就が、それほど全米メディア、ファンの注目を集めている。その中で敏腕記者で知られるジョン・ヘイマン氏が、ニューヨークポスト紙に「ドジャースの大谷獲得には大きな疑問が伴う」との見出しを取った注目記事を投稿した。同記者は、ここ11年で10度地区優勝を果たして世界一も手にしているドジャースが大谷の移籍先の最有力候補である理由をまず3つ挙げた。

 

①最も一貫した勝者②(エンゼルスと同じ西海岸で)地理的に望ましい③5億ドル(約742億円)を出せる資金力の余裕。

 

 その上でドジャースの大谷獲得に2つの疑問が生じていることを明かした。

 

「ひとつは検討する価値があり、もうひとつはバカげた噂のカテゴリーの話だ」という。その疑問のひとつが、ローテーションに問題があり「この冬は先発投手の獲得に非常に集中すると言われている」とのチーム事情だ。

 

「大谷の執刀医であるニール・エル・アトラッシュ医師は、肘の手術後、全体的に楽観的な絵を描いたが、二刀流スターは、少なくとも2024年は打者でしかプレーできないだろう。今のところ、ドジャースは以前ほど“ピッタリとはフィットしない”と考えている」と指摘した。

 つまり2025年まで二刀流を封印する大谷は、先発投手が補強ポイントのドジャースにフィットしないのではないか?というのだ。

 

 もうひとつの疑問は、大谷がドジャースタジアムで打者として好成績を残していないことだ。

 

「あまり妥当性がないかもしれないが、ドジャース関係者でさえ大谷がドジャースタジアムでの打撃を好まないという憶測を耳にしたことがある。ただドジャースタジアムは、エンゼルスタジアムと並んで天候に恵まれている(大谷のキャリアOPS1.149はその心配を裏切るものだ)。ある人は、過去6シーズンのドジャースの優れた投手陣(多くの問題を抱えた今年でさえ、後半戦のERAトップクラスである)と関係があるのではないかと説いた」

 

 ドジャースは昨年オフに大谷のために何百万ドルもの年俸を削減したが、J.D.マルティネス、デビッド・ペラルタ、ミゲル・ロハス、ジェイソン・ヘイワードを獲得。打線については、それほど補強の必要がないことを付け加えた。

 

「ヘイワードは驚くことにキャリア最高のOPS(.848)を記録し、驚くなかれ、クラブハウスで“最高の存在感”を示している」

 

 その一方でドジャース本命説を訴える声も少なくない。

 

 FOXスポーツは、担当記者による座談会を開き、大谷の移籍先や、契約金について予想した。その中でディーシャ・ソザール記者は「長期契約でドジャースに移籍すると思う」と断言した。

 

「9年4億5000万ドル(約668億円)あたりだろう。市場で多くが予想する5億ドル(約742億円)近くになるのかもしれないが、私は大谷の肘の故障で、来年は打者だけのプレーに制限されることで契約の値下げが見られると思う。大谷の二刀流選手としてのキャリアが、どの程度続くのかを見越して、オプトアウトや球団側のオプションを含め、契約が、どのような形になっていくのか興味をそそることになるだろう。いずれにしてもドジャースが大谷の次の移籍先として理にかなっている」

 

 ローワン・カブナー記者は、スミス氏が否定した10年5億ドル(約742億円)の契約を勝ち取るのではないか、との予想を立て「カリフォルニア州のチーム」と遠回しの表現で、ドジャースを有力視した。

 

「大谷が再び投手として2025年、もしくは2026年に復帰でき、30代の序盤(彼は来年7月まで30歳にならない)で、まだ大金を得ることができることから、平均年俸の高い短期契約を考えることも馬鹿げた話ではない。ただ2度目の肘の手術を受けた後の不確かさを考慮するとリスクがあるようにも見える。それでも彼が過去数シーズンで二刀流選手ではなく、地球上で最高の打者だったということだけで5億ドル(約742億円)は必要なのかもしれない。逃すには惜しすぎる。私の予想は10年5億ドル(約742億円)、数年のオプトアウト条項付きでカリフォルニア州のチームの1つになると思う(オークランドに幸運を!)」

 

 またジョーダン・シュスターマン記者は、オプトアウト(複数年契約の途中でも契約を破棄できる)がついた契約になるのではないかと予想。有力候補にレンジャーズの名前を挙げている。

 

「オプトアウトが加わる8年4億4000万ドル(約653億円)くらいの契約でレンジャーズだろう」

 

 FAとなる大谷の去就に全世界のファンが注目している。

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◆ ダル、肘の状態を語る 2度目手術受けた大谷へは「僕が何か言うことはない。自分の1回目の経験生かして」

(情報:スポニチ)

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 パドレスのダルビッシュ有投手(37)は22日(日本時間23日)、本拠地でのカージナルス戦を前に取材に応じ、自身の右肘炎症の状態、2度目の右肘手術を受けたエンゼルスの大谷翔平投手(29)について語った。

 

 10月半ばまでノースローが続くというダルビッシュは今の状態を「肘がどうとかというのはちょっとわからないですけど、変わらず体は動かしているので、体の状態はかなりいいです」と笑顔。この日はダッシュを繰り返し、ブルペンではチームメートの投球を見守った。ダルビッシュへの主な一問一頭は以下の通り。

 

 ――今後のご自身のステップは。

 

 「次の遠征も行ってその間はトレーニングもして、オフシーズンに入った時点でレギュラーシーズンが終わった時点で僕は完全に休みをとるので、そこから7日間10日間してまた通常通りのオフシーズンという形になっていくと思います」

 

 ――いつぐらいから投げるのか。

 

 「どうですかね、一応6週間のオフ、10月半ばに多分ノースローが解けるはずなので、そこから軽く投げ始めてというところだと思うので、10月の終わりくらいとか11月の頭とか」

 

 ――エンゼルスの大谷が2度目の手術を受けたことについて。

 

 「このレベルになってくるとそれだけ100%以上の力を出さなきゃいけなくなってきたりしますし、いろんな要因があってケガが増えると思うので、でも本人も1回経験していますから、その経験が大きく生きるんじゃないかと思いますけど」

 

 ――2人(ダルビッシュ、大谷)とも春先から腕を振ってきた。投手とは過酷な仕事。

 

 「それは年々レベルも上がってきていますし、投げる球も速くなったり、強くなったり、キレが良くなったりとかするので、やっぱりその分、全体的に求められるレベルが高くなっているので、そういう意味で体調管理するのは難しくなっていきているのかなとは思いますけど」

 

 ――投げることを向上させることと同時に体のケアが求められる。バランスが難しい。

 

 「でもそこはどんだけ完璧といわれるようなことをやっても、またケガにはなるので、でも大事なのはある程度最新の科学とか、そういうところから出されているアームケアとか、そういうところをちゃんと知った上でみんな引き出しに入れていくことが大事なのかなと思います」

 

 ――肘の手術から復帰するのはリハビリが厳しく大事。経験から言えることは。

 

 「みんなそうやって言うですけど、僕は凄く楽しかった。全然難しいとか本当になかったですし、凄く僕は楽しんでやっていました」

 

 ――大谷へのエールは。

 

 「自分が分かっているでしょうし、僕が何か言うことはないと思いますし、自分の1回目の経験を生かしてというところだと思います」

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◆ 大谷翔平とエンゼルスの関係は健全なのか? 記者が目にしたクラブハウスでの“ある事件”「いきなりロッカーが空に」「釈然としない説明」

阿部太郎氏/情報:NumberWEB)

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「大谷と球団のバランスは、いつの間にか釣り合わなくなっていた」――打者として打率.304、44本塁打、95打点。投手として防御率3.14、10勝5敗、167奪三振。MLBの歴史に残る大谷翔平の伝説的なシーズンは、右肘の負傷によって幕を閉じた。その過程で番記者が目にした、大谷とエンゼルスの“すれ違い”とは。「世界一の選手」と9年連続でプレーオフを逃した球団は、果たして対等なコミュニケーションをとれていたのか。激動のシーズンの裏側に迫った。(全2回の1回目/後編へ)

 

広報から転送された「代理人の声明文」

 9月19日、14時37分。エンゼルスの広報担当者から1通のメールが届いた。正確にいえば、大谷翔平の代理人ネズ・バレロ氏の声明文が転送された。

 

 文面には大谷が19日朝に右肘の手術を成功させたことと、執刀した医師ニール・エラトロッシュ氏のコメントが記されていた。

 

 そして、エンゼルス側は文末にわずか2行、「翔平は休んでいて元気で、回復の道を歩んでいることに興奮している」と添えただけだった。

 

 代理人主導の発表に、どこか違和感を覚えた。

 

歯切れが悪かったGMの会見

 3日前、9月16日。エンゼルスが、大谷の負傷者リスト入りと残りシーズンの全休を発表し、歴史的なシーズンの幕は突然、閉じられた。

 

 その日の13時45分。ペリー・ミナシアンGMが事情を説明するために会見場に姿を見せた。5分ほど早く着いたミナシアンGMは水を口に含みながら、馴染みの記者と軽妙なやり取りをした。

 

 だが、会見が始まると、その言葉選びはかなり慎重で、歯切れは悪かった。

 

 会見の冒頭。「Surgery(手術)」という言葉を使いかけ、慌てて「Procedure(治療行為)」と言い直した。

 

 大谷サイドへの配慮がにじんだ。9月4日に行われた大谷の代理人のバレロ氏の会見でも、一度も「Surgery」とは言わず、「Procedure」という言葉を使っていた。メスを入れるというネガティブな想起をさせないためか、どんな意図があるのか分からないが、代理人は手術の詳細を明かそうとしない。

 

 その姿勢に追随するミナシアンGMは「なるべく早く治療行為をする。彼の視線は既に来季に向いている」と言ったものの、どんな手術、治療行為になるかと問われれば、「詳しくは分からない」。

 

 契約期間での手術の費用はエンゼルスが負担する。詳細を本当に知らないとなれば、問題だ。

 

 手術の内容などは全く明かさない反面、大谷への思いはいつもと変わらなかった。

 

「我々は彼を愛している。彼はここで史上最高の3年間を過ごした。彼がずっとここにいることを希望している」

 

「彼と我々は常にコミュニケーションをとり、多大な信頼がある」

 

 その言葉に疑問符がつく出来事は、その前日にあった。

 

「大谷のロッカーが空に…」クラブハウス事件

 9月15日のタイガース戦。大谷は右脇腹を痛めた4日から11試合連続欠場となった。

 

 その試合前、囲み取材に応じたネビン監督は「まだ、ラインアップは決めていない」と含みを持たせたが、試合を通して、「ショウヘイ・オオタニ」の名前がコールされることはなかった。

 

 そして、試合後、大谷の「今季終了」のメッセージは唐突に訪れた。

 

 メディアにクラブハウスが解放された時、大谷のロッカーの私物がなくなっていたのだ。

 

 試合前に山積みされていた靴箱、グラブ、バット、打撃用革手袋などが全て消えている。残っていたのは複数枚のTシャツやウインドブレーカーのみだった。

 

 事態を飲み込めていなかったのか、広報は戸惑いを見せた。どうしたのかと聞かれると、担当者は「分からない」と答えるばかりだった。

 

 そこから、メディアと広報の「攻防」が始まった。

 

 メディア側はミナシアンGMの説明を求めたが、広報は「連絡がつかない、明日『何か』を発表する」の一点張り。

 

 米記者の一人は「野球界で最高のスーパースターのことなのに、明日なんておかしい」と主張したが、事態は変わらなかった。結局、30分ほどのやり取りは虚しく終わった。

 

GMの釈然としない説明「意図したものはない」

 翌日に口を開いたGMは、なぜ大谷がロッカーを整理したのかについてこう推測した。

 

「彼はシーズン全休が決まって、右肘の手術に向けてすぐに取りかかかるモードになったと思う。たぶん、彼の中では今日、治療行為(手術)を行う可能性があると思ったのではないか。だから、ロッカーの荷造りをしたのだろう。彼に何か意図したものはない」

 

 釈然としない説明だ。大谷はミナシアンGMが会見をした9月16日も、17日も球場に入って、ベンチで仲間のプレーを見届けていた。慌ててロッカーを片付ける必要があったのかどうか。

 

 球団は大谷の負傷者リスト入りとシーズン全休の発表を16日にすることを決めていた。GMは「試合に出るメンバーの妨げにならないように発表は16日にした」と説明した。

 

 ならば、少なくともロッカーを整理するのはそれ以降にするように、大谷に言えなかったのか。それとも、大谷の動向を知らなかったのだろうか。

 

「シーズン終了時や残りの試合に出場しない場合にロッカーを片付けるのは普通のこと。今回驚きだったのは、球団が状況を説明する前に(ロッカーの)片付けが起きたことだ」

 

 地元紙の記者は、SNSでそうつぶやいた。

 

<後編に続く>

 

(「メジャーリーグPRESS」阿部太郎 = 文)

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◆ 大谷翔平の異変にも球団は「心配いらない」「信じてくれ」の一点張り…“世界一の選手”とエンゼルスの関係は「対等とは思えない」

阿部太郎氏/情報:NumberWEB)

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「大谷と球団のバランスは、いつの間にか釣り合わなくなっていた」――打者として打率.304、44本塁打、95打点。投手として防御率3.14、10勝5敗、167奪三振。MLBの歴史に残る大谷翔平の伝説的なシーズンは、右肘の負傷によって幕を閉じた。その過程で番記者が目にした、大谷とエンゼルスの“すれ違い”とは。「世界一の選手」と9年連続でプレーオフを逃した球団は、果たして対等なコミュニケーションをとれていたのか。激動のシーズンの裏側に迫った。(全2回の2回目/前編へ)

 

「翔平が一番体のことを分かっている」

 今季のエンゼルスは、とにかく今オフにフリーエージェントとなる大谷翔平を残留させるために必死だった。

 

 だが、再契約を勝ち取るという球団の一番の優先事項が、両者の関係にひずみを生んだように見える。

 

 ペリー・ミナシアンGMも、フィル・ネビン監督も常に「翔平が一番体のことを分かっている」「体調管理の面で、一番心配のいらない選手だ」と言い続け、大谷の状態は本人任せにしていたように映った。

 

 6月27日の登板以降は爪の影響からか、本調子とはほど遠い投球内容だった。

 

「リスクがあると思えば試合に出さない。信じてくれ」

 7月27日。ダブルヘッダーでメジャー初完封と1試合2発をやってのけた「伝説の1日」では、脇腹付近のけいれんが起きた。

 

 移動日なしでトロントに移動した7月28日には、両ふくらはぎのけいれんで途中交代した。その翌日、ネビン監督は「リスクが本当にあると思えば、試合に出さない。信じてくれ」と訴えたが、大谷本人の「出たい」という強い意志を常に尊重した。長い目で見て、「今日はやめておこう」という言葉はなかった。

 

 8月3日の登板で中指がけいれんした際には、GMによれば、大谷側にMRI検査を提案したという。だが、大谷サイドに断られた。そして球団は次の週も、大谷をスケジュール通りマウンドに送った。

 

エンゼルスと大谷の関係は「対等」とは思えない

「腕の疲労」で一度登板を飛ばした8月23日のダブルヘッダー第1試合で、悲劇は起こった。

 

 右肘靭帯の損傷――。

 

 エンゼルスと大谷の関係は「良好」かもしれないが、「対等」とは思えない。

 

 一気にメジャーの顔となった大谷と、プレーオフ進出を逃し続ける球団のバランスは、いつの間にか釣り合わなくなっていた。仮にこのタイミングで負傷していなかったとしても、いつかは破綻を招いたのではないか。

 

 メッツの千賀滉大は、右肘の靭帯損傷のニュースを受けて「正直、投げ方、出力、パフォーマンスも本来の彼とは少し遠い部分があった。僕だけでなく、野球好きな、大谷選手が好きな選手やファンならちょっと思っている部分があったのでは。どうにもなってなければいいなと思ったんですけど……」と話した。

 

 一番近くで見ていた球団のスタッフは、なおさら、大谷の異変に気づいていた可能性はある。

 

「世界一の選手」になるために最高の環境を作ったが…

 6年前、大谷は世界一の選手になるために海を渡った。

 

 そして今、メジャーの監督や選手の多くが「彼こそが世界一」だと口を揃える。世界という表現を超えて、「惑星」という言葉を使う者さえいる。「翔平は惑星で一番のアスリートだ」「彼ほど素晴らしい選手は見たことがない」と。

 

 大谷が「世界一の選手」になるために、エンゼルスは最高の環境を作った。2021年には、本格的に二刀流の制限を撤廃した。一度目のトミー・ジョン手術からリハビリを経て、紛れもない「史上最高の選手」となった。

 

 テレビでMLBを見ると、大谷のニューバランスのCMが流れる。ニュースでは度々、話題の中心に上がる。野球界を代表するスーパースターであることは疑いようがない。

 

「世界一のチームの一員」になる場所ではない

 今後、大谷がFAでどの球団を選ぶのかは不透明だ。

 

 もちろん、エンゼルスに残留する可能性はある。そのために、今季のエンゼルスはあらゆる手を尽くしてきたようにも見える。後輩たちは羨望の眼差しで見つめ、スーパースターでありながら孤立とは無縁だ。

 

 だが、個人的には別れの時ではないかと感じている。

 

 今のエンゼルスは成熟していない。大谷との関係においても、マイナーなどを含めた組織においても。

 

 大谷が「世界一の選手」になった場所は、「世界一のチームの一員」になる場所ではない。

 

<前編から続く>

 

(「メジャーリーグPRESS」阿部太郎 = 文)

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◆ 大谷翔平、藤浪晋太郎、そして鈴木誠也――1994年生まれの3人は試練を乗り越え、ただひた向きに前へ前へと進み続ける<SLUGGER>

ナガオ勝司氏/情報:THE DIGEST)

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「翔平と藤浪っていうのは、僕の世代の中でもずっとトップを走ってきた人たちだったんで、僕もそこに負けないように何とか頑張りたいなと思います」――鈴木誠也(9月19日、日本人の右打者で歴代最多の同一シーズン19本塁打を記録した夜)

 

 ボルティモア・オリオールズの藤浪晋太郎は、4月12日。

 ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平は、7月5日。

 そして、シカゴ・カブスの鈴木誠也は、8月18日に生まれた。

 

 そう、彼らは同じ1994年生まれの29歳である。

 

 日本プロ野球で活躍し、今はメジャーリーグでプレーしている同世代の3人は今季、それぞれ浮き沈みの激しいシーズンを過ごしている。

 

 メジャーリーグ1年目の藤浪はオープン戦での活躍が認められ、先発投手としてオークランド・アスレティックスの開幕ロースター入りを果たした。

 

 ところが、メジャー初登板となった4月1日のエンジェルス戦で2.1回8失点で敗戦投手になるなど、阪神時代からの課題である制球力不足を露呈して中継ぎへの転向を余儀なくされた。

 

 中継ぎ転向後も制球難はたびたびニュースになったが、メジャーリーグへの適応を続ける中、6月以降11試合連続無四球を記録するなどピッチング内容は次第に良くなっていった。

 

 そんな藤浪に目を付けたのが、オリオールズだった。ア・リーグ東地区でレイズとの激しい首位争いに勝ち残るため、7月19日に藤浪をトレードで獲得した。

 藤浪は期待に応え、徐々に大事な場面で起用されるようになった。9月17日のレイズとの首位攻防戦でも9回に登板し、チームが延長11回にサヨナラ勝ちでプレーオフ進出を決めると、文字通り「勝利の美酒」に酔った。

 

 メジャー6年目の大谷は、まず3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場し、投手としては3試合で2勝1セーブ、打者としても打率.435、1本塁打、8打点の活躍で日本代表の3大会ぶり3度目の優勝に貢献。大会MVPを獲得した。

 

 エンジェルスでは、オープニング・ゲームでは史上初となる2年連続の「二刀流」で開幕投手を務め、4月は5度の先発で4勝、防御率も一時は0.47を記録するなど、幸先良いスタートを切った。6月10日のマリナーズ戦では投手として3年連続の100奪三振に到達。この月は、打者としても15本塁打を放ってホームラン王争いでトップに立った。

 

 オールスターにはア・リーグ最多得票で3年連続の出場を果たし、史上初となる2年連続の2ケタ勝利&2ケタ本塁打を達成。さらに同一シーズンで10勝と40本塁打を達成したメジャー史上初の選手になった。

 

 ところが、8月23日に右腕の疲労を訴えて降板後、右ヒジ内側側副靱帯を損傷していることが判明。打者としてはその後も出場を続けたが、9月に右脇腹も痛め、故障者リスト(IL)入り。19日に右ヒジの手術を受け、今シーズンを終えた。

 

 メジャー2年目の鈴木誠也は、WBC日本代表に選出されながらも、春季キャンプ中に左脇腹を痛めて辞退し、開幕と同時に10日間のIL入りした。

 

 リハビリを経てメジャー復帰を果たしたのは、開幕から約2週間後の4月14日、ドジャース戦だった。いきなり今季1号本塁打を放って周囲を喜ばせたが、その後は次第に調子を落とし、7月31日時点で打率.249、8本塁打、35打点と苦しんでいた。

 

 とりわけ、チームから期待されていた出塁率と長打率の伸び悩みが目立ち、OPS(出塁率+長打率)はその時点で.713と、メジャー1年目より後退している感じすらあった。それまで我慢の起用を続けていたチームも「メンタル面でのリフレッシュが必要」とし、8月が始まると、鈴木を7試合中5試合で先発から外す苦渋の決断をした。

 

 鈴木がスタメン復帰したのは8月9日のメッツ戦だった。「結果を出さなければ未来はない」という瀬戸際に追い込まれた彼は、10号本塁打を含む3安打を放って息を吹き返すと、8月は22試合の出場で打率.321、5本塁打13打点、OPS1.006と好成績を残した。9月に入っても19日までの18試合で打率.377、6本塁打、18打点、OPS1.204とさらに調子を上げている。

 

 冒頭にも書いた通り、鈴木が19日に記録した同一シーズン19本塁打は、日本人の右打者としては、2006年の城島健司(当時マリナーズ)と井口資仁(同ホワイトソックス)の18本塁打を抜く歴代最多記録だった。

 17年間も破られなかったのは、それだけ日本人の右打者の成功例が少ない証でもあるが、鈴木自身は以前からその理由をこう推測していた。

 

「当然、右投げのピッチャーが多いですし、シンカーとかはメジャー独特で、日本ではあんまり感じられないような軌道で来る。それにもちろんスピードも速いし、(右打者にとっては)難しいのは間違いないですけど、特には気にしてないです」

 

「スピード」というのは、単に球速だけのことではない。マウンドに立つピッチャーの身体が大きかったり、手が長かったりすれば、日本の投手の球の出どころや角度、体感速度は随分違うだろう。加えて、野手の身体能力も相対的に高いので、日本なら野手のいない場所に飛ぶはずの打球に追いつかれることも多い。

 

 大事なのは「じゃあ、どうするのか?」だ。

 

 鈴木は日本のプロ野球とはまったく違う環境、プレーの強度も質も違うベースボールに適応するため、2年近くの時間を費やしてきた。

 

 打席の中では、もがき、苦しみ、時には自分に腹を立てているようだった。日本で揺るぎないものにしたはずの打撃について、メジャーリーグのピッチャーたちに適応できるように、考えに考え抜いた結果、前述のように試合で結果が出ず、ピッチャーではなく自分自身と戦う羽目にもなった。

 

 だが、鈴木は諦めなかった。

 

 もう駄目だ、と自ら白旗を上げることだけはなかった。

 

 19本塁打を放った夜、彼はこう言った。

 

「やっぱり、翔平があれだけ抜けてますし、19本で喜んでいいのかなっていうのもあるんで、特に気にしてないです。このリーグには上には上がたくさんいるし、19本で喜んでるようではこのまま終わってしまうと思う」

 

 日本人の右打者が成功した実例が少ない、などという事実はきっと、彼にとってはどうだっていいことなのだ。日本人という括りならもっと凄いやつがいる。

 

 大谷翔平だ。

 

 大谷は左打者だが、そんなの関係ない。

 

 メジャー1年目の18年に22本塁打、翌年も18本塁打、そしてMVPを獲得した21年には46本塁打を記録している。今年だって、シーズン最後の25試合を欠場することになったが、それでも規定打席数に達して打率.304、44本塁打、95打点、20盗塁、OPS1.066という驚異的な数字を残している。

 

 だから、19本塁打で満足なんてしていられない。「大谷は別格」なのを承知の上で、後に続いた者はそれを乗り越える努力をする。それがどんなに険しく、高く聳え立った壁だろうが、たとえ1センチずつ、ほんの1ミリずつだったとしても、日本人選手の頂点に立つ者を目指して、這い上がっていかねばならない。

 

 なぜなら、「諦めたらそれで終わり」だからだ。

 

 今季19号本塁打を放った同じ日、大谷が右ヒジの手術を終えたというニュースが伝えられたが、鈴木が思うことはそう多くなかった。

 

「翔平はすでに、すごい成績を上げてましたし、オフの過ごし方であったりっていうのは、僕も翔平の姿を見てたりして、頑張っているのを知っていたんで、すごく残念な気持ちもあります......本人が一番、残念だと思う。でも、彼なら多分、すぐ復活して、また同じような活躍をしてくれると思うんで、僕もしっかり......負けないように頑張りたい」

 では、投打二刀流の大谷とは違い、投手専業の藤浪は鈴木にとってどういう存在なのだろうか。ワイルドカード争いでカブスが苦戦する中、藤浪がオリオールズの主力選手の一人として、プレーオフ進出を決めた。「藤浪の活躍は励みになるのか?」と問うと、鈴木はこう答えている。

 

「励みになるとかはないですけど、元々持っているモノはすごいですし、それを自分でつかみ取って、ああいうチームで行けたっていうのは、実力が認められたってこと」

 

 あいつは凄いんだから、当たり前でしょ? とでも言いたげな感じだった。

 

 大谷は凄い。藤浪も凄い。そんなことは分かっている。だからこそ、「負けないように」頑張るだけ。

 

 類まれなる才能を持った同期の3人。

 

 これからも、さまざまな試練を乗り越えて、ただひた向きに、前へ前へと、進み続けるのみだ――。

 

文●ナガオ勝司

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