2023年9月12日

 

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 ■ 試合データ

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米国時間:2023年9月11日

日本時間:2023年9月12日(火曜日)

10時40分開始

ロサンゼルス・エンゼルス

対シアトル・マリナーズ

@T-モバイルパーク

 

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【MLB.JP 戦評】

 ガーディアンズ4連戦に勝ち越したエンゼルスは、今日から敵地シアトルでマリナーズとの3連戦がスタート。その初戦は9回表無死2・3塁という絶好のチャンスを生かせなかったものの、延長11回までもつれた熱戦の末、8対5で勝利して連勝を3に伸ばした。エンゼルス4番手のホセ・マルテがセーブ失敗もメジャー初勝利をマーク。5番手のジミー・ハーゲットが今季初セーブを挙げ、マリナーズ5番手のトレント・ソーントンは2敗目(0勝)を喫した。

 

 エンゼルスがリード・デトマーズ、マリナーズがローガン・ギルバートの先発で始まった一戦は、初回にマリナーズがテオスカー・ヘルナンデスの犠飛とカル・ローリーの28号2ランで3点を先制。しかし、デトマーズは2回以降立ち直り、マリナーズ打線に追加点を与えなかった。

 

 エンゼルスはローガン・オホッピーが2回表に9号2ラン、4回表に2打席連発の10号ソロを放ち、3対3の同点に。3対3のまま迎えた9回表には連打で無死2・3塁の大チャンスを作ったが、後続が凡退して勝ち越し点を奪えなかった。

 

 9回裏は3番手のアーロン・ループが無死満塁の大ピンチを背負ったが、後続3人を打ち取って無失点。すると、10回表二死2塁からブランドン・ドルーリーに21号勝ち越し2ランが飛び出し、5対3とリードを奪った。

 

 ところが、10回裏一死2塁の場面で登板した4番手のマルテがフリオ・ロドリゲスに30号同点2ランを被弾。ロドリゲスはこれで球団史上2人目の「30-30」達成となり、22歳以下のシーズンでの達成はメジャー史上4人目の快挙となった。

 

 試合は5対5の同点で11回表に突入し、エンゼルスはランドール・グリチックとノーラン・シャニュエルのタイムリーなどで3点を勝ち越し。11回裏を5番手のハーゲットが抑え、8対5で3連戦の初戦を制した。

 

 なお、右脇腹を痛めているエンゼルスの大谷翔平は当初、スタメンに名を連ねていたが、試合開始の2時間半前に出場を回避。これで8試合連続の欠場となった。フィル・ネビン監督によると、試合前に打撃練習を行ったあと、大谷自身が「100%の状態ではない」と判断したようだ。「(戦列復帰は)明日になるかもしれないし、明後日かもしれない」とネビン監督。明日こそは大谷の元気な姿を見られるだろうか。

 

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 ■ 今日の大谷翔平

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【スタメン】

ベンチスタート(8試合連続)

 

【出場成績/打者】

試合出場なし

 

【コメント】

なし

 

【その他情報】

◯ 右脇腹を痛めている大谷は8試合連続で欠場。「2番・DH」で8試合ぶりに先発メンバーに一度は名を連ねたが、約1時間後に取り消された。ネビン監督によれば、大谷がケージでスイングしたら100%大丈夫だと思えなかったという。先発出場するつもりで打撃ケージで打球を打ったが、フルスイングするには不安が残ったようだ。

 

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 ■ 試合情報

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【コメント】

フィル・ネビン監督:

(試合前)

――大谷が急きょスタメンメンバーから外れた。何が起こったのか。

「ここ数日間の我々の会話、特に昨日、彼は本当に状態は良かった。彼はここに来て、ウォームアップをし、治療を施し、今日は大丈夫だろうという確信があった。ケージで何回かスイングをしてみたが100%の感触ではなかった。彼は私のところに来て今日はダメだと言った。彼はプレーしない」

 

――シーズンシャットダウンもしくは負傷者リスト入りはあるのか。

「今の時点ではない。木曜日は休みか。今日も同じことを言いたい。ここ数日、我々の会話は彼はとても(復帰は)近いと感じていた。ただ今日はうまくいかなかった。もしかしたら明日か水曜日になるかもしれない。これを乗り切ればそういうことが会話の中で出てくるかもしれない。もうそこまで来ている。彼はいつだって自信がある。彼はプレーしたいんだ。それが鍵だ」

 

――ケージではドライスイングだったのか、ボールを打ったのか。

「彼はケージでスイングした。(ボールを打った)」

 

――これは後退なのか。

「必ずしも後退だとは思わない。まだボールを打った時に痛みが残っている。今日そうなるとは思わなかったが彼がケージに入ってそうなった。明日のポイントが何になるのかはわからない。彼がここに来てまた同じことをするのかはわからない。彼と話し合うことになる。昨日も言ったように彼は今日プレーするに十分な体調だと確信していた」

 

――代打は可能か。

「もし彼が全力でスイングできないのであれば出場はできないということだ」

 

(試合後)

「(相手)チームが乗っていて、ここでプレーすることについて、試合前に(選手たちに)話した。数週間前にホームで4連戦を戦ったときは、ボコボコにされた。ベンチの雰囲気はよかったし、最後の数イニングは歩かせたりしたけど、戦う姿勢は素晴らしかった」

 

 

【メディア他情報】

AKI猪瀬氏:

◯ 毎試合のように「出る出る詐欺」になっていることに対してAKI猪瀬氏は、「ネビン監督が何も把握できていないというのが正直なところですね。記者に煙幕を張るわけではなく、監督として言葉を発しなければいけないなか、持っている情報がほとんどないんだと思いますね」と見解を示した。

 

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 ■ 球界情報

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藤浪晋太郎投手:

◯ オリオールズ藤浪は、1回1安打無失点1四球1奪三振と好投し、5試合連続無失点となった。11-5と6点をリードした9回から6番手として救援。4番アレナドを左飛、代打パラシオスをフルカウントから速球で空振り三振に打ち取った。6番バールソンに左前打、7番ウォーカーに12試合ぶりとなる四球を与えたものの、最後は8番エドマンを三ゴロに仕留め、無失点で試合を締めくくった。防御率は7・05。オリオールズは、打線が11得点を挙げて逆転勝ちを収め、地区首位の座を堅持した。

 

マット・オルソン内野手:

◯ ブレーブスのオルソンが1試合2発で今季50本塁打に到達した。あと1本で、アンドリュー・ジョーンズ外野手(元楽天)の持つ球団最多記録に並ぶ。フィリーズとのダブルヘッダー第2試合に「4番一塁」で出場し、0-4の3回2死一、二塁で相手先発ロレンゼンから内角低めのスライダーをすくい上げ右翼スタンドへ放り込む今季49号3ラン。さらに3-7と4点を追う6回先頭ではフルカウントで同じくロレンゼンから高めチェンジアップを逆方向の左翼スタンドへ50号ソロを放った。ナ・リーグ本塁打王争いでは、2位で43本のメッツのアロンソ内野手とフィリーズのシュワバー外野手を7本差と引き離しトップ。両リーグでは44本のエンゼルス大谷に6本差をつけた。

 

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 ■ 注目記事&コラム

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◆ 陽気に聞こえた大谷翔平の鼻歌と口笛 試合後には談笑も…急転スタメン外の裏側

小谷真弥氏/情報:Full-Count)

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 エンゼルスの大谷翔平投手は11日(日本時間12日)、敵地で行われたマリナーズ戦の先発メンバーから外れ、そのまま出場機会はなかった。これで8試合連続の欠場。当初、「2番・指名打者」でオーダーに名を連ねていたが、室内での打撃練習で患部の状態を確認。右脇腹はまだ万全ではなかったようだ。フィル・ネビン監督は「全力で振ると、まだ少し痛みがある」と明かした。

 

 エンゼルスのロッカールームからケージにつながる通路。赤の練習着を着た大谷が革手袋をした手にバットを持って現れた。報道陣からの挨拶に「おっす」と短く返答。その10分ほど前に「2番・指名打者」で8試合ぶりに先発復帰することが発表されていた。臨戦態勢に見えた。

 

 通路を行ったり来たりする二刀流から鼻歌に口笛。なんのメロディかは判別つかなかったが、間違いなく気分は悪くなかったはずだ。だが、スタメン発表から1時間後。アダム・チョズコ広報部長が口を真一文字に結んで報道陣に近づいてきた。「ショウヘイは先発メンバーから外れた」。

 

 その30分後。ネビン監督の囲み取材が予定から10分遅れて始まった。「昨日話した後に『今日なら大丈夫』と自信を持っていたが、今日、治療を受けてケージで何度かスイングしたら100%ではないと感じた。私のところに来て、今日ではないと伝えてきた」と舞台裏を明かした。

 

 これまでにUSAトゥデイ紙のボブ・ナイチンゲール記者は3日(同4日)から10日以内に打者としても今季を終えて右肘の再建手術を受ける可能性があると伝えている。その報道による“リミット”は13日(同14日)の敵地・マリナーズ戦となるが……。

 

 この日の延長戦勝利後。大谷はロッカールーム内で先発右腕グリフィンと談笑。黒のBOSSパーカーに身を包み、報道陣に「お疲れ様でした」と明るい声で挨拶した。大谷の復帰戦はそう遠くはなさそうだ。

 

小谷真弥 / Masaya Kotani

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◆ 出場回避の大谷翔平は試合後、同僚と談笑し球場を後に…残り17試合、彼の笑顔はグラウンドで見られるのか

阿部太郎氏/情報:中日スポーツ)

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 「ムース、ムース」。エンゼルスのネビン監督が慌ただしく、クラブハウスで子供とまったりしていたムスタカスを呼んだ。スタメンを外れていた左打者を呼んだのには、訳があった。その後、スタメン表に名前があった大谷翔平の名前が消え、代わりにムスタカスが指名打者に入った。

 

 大谷は4日に右脇腹を痛めてから1週間、試合に出られていない。この日のマリナーズ戦、先発に名を連ねていたが、試合の2時間半前に出場を回避。指揮官は「まだ痛みがある」と認めた上で、「本人はまだ出場に自信を持っているし、出たいと思っている。それが鍵だ」。プレーオフが絶望的な状況で、脇腹を痛めながら今季の扉を閉じないのは、大谷に強い出場意欲があるからだ。

 

 試合後のクラブハウス。大谷はシャワーを浴びて、着替える時はロッカーの近いキャニングと談笑し、にこやかな表情を見せた。テレビに映っていたドジャース―パドレス戦も少し見ていた。そして、いつものように肘の超音波治療器を左手に持って帰路に着いた。残り17試合。刻々と近づく今季終了までに、大谷がグラウンドで再び笑顔を見せることはあるのか。(阿部太郎)

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◆ エンゼルス・大谷翔平、スタメン発表1時間後に急転欠場 ネビン監督「100%大丈夫という確信得られず」

丹羽政善氏/情報:サンスポ)

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【シアトル(米ワシントン州)11日(日本時間12日)=丹羽政善通信員】右脇腹を痛めている米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平投手(29)はマリナーズ戦で「2番・DH」として一度は先発に名を連ねたが、約1時間後にメンバーを外れ、8試合連続の欠場となった。試合開始前のドタバタ劇について、フィル・ネビン監督(52)は、大谷から「無理だ」とストップがかかったことを明かした。今後も状況を見て出場可否を判断する考えを示した。

 

「SHOHEI OHTANI」。マリナーズのクラブハウスが公開された現地時間の午後3時、右脇腹を痛めている大谷がマリナーズ戦の先発メンバーに「2番・DH」で名を連ねた。ところが、約1時間後にメンバーを外れた。

 

「本人が『無理だ』と伝えにきた」

 

ネビン監督が大谷とのやりとりを明かした。本拠地アナハイムでの7連戦を終え、敵地に舞台を移した一戦。4日(日本時間5日)の打撃練習中に右脇腹を痛めた大谷について、10日(同11日)のガーディアンズ戦後、指揮官は「明日の復帰が現実的だろう」と、スタメン復帰を示唆していた。この日がスタメン復帰の〝Xデー〟と思われていたが一転、欠場となった。

 

「昨日は状態がよくて、本人もきょうは大丈夫だという自信もあったようだ。しかし、体を動かし、治療を受け、いざ室内練習場で打撃練習を始めたものの、100%大丈夫という確信を得られなかったようだ」

 

大谷はこの日、グラウンドに現れることはなかったが、ミーティングに向かう際に笑顔でチームメートとあいさつを交わす姿があった。右脇腹は回復に向かっており、大谷も試合前には出場への意欲を持っていたという。

 

室内練習場ではティー打撃とコーチが投げる球を打っているが、スイングの強度は不明。痛みが残っており、万全を期すことになった。指揮官は「悪化したわけではない。まだ(スイングをすると)痛みを感じているよう」と説明した。現時点で負傷者リスト(IL)入りする予定はない。

 

大谷は8試合連続の欠場となったが、チームは延長十一回の末、8-5で競り勝った。残り17試合。大谷はリーグトップの44本塁打で、2位のロベルト(ホワイトソックス)に9本差をつける。

 

「復帰が近いことは間違いない。それは明日かもしれないし、明後日かもしれない。まもなく戻れると彼は感じている」とネビン監督。右肘の靱帯(じんたい)損傷のため、今季の登板はなくなったが、打者・大谷は日本選手初の本塁打王へ復帰のタイミングを慎重に見極める。

 

■小早川毅彦氏の見解

 

大谷は「いける」と判断して一時はスタメンに名を連ねたのだろうが、実際に試合前の練習に臨んでみたところ、イメージしていた感触と違ったのだろう。

 

大谷のスイングはバットを下から上に振り上げる形だけに、インパクトの瞬間は右脇腹がよく伸びる。人並み外れた出力で負担は大きい。

 

私が心配なのは、出場するつもりでいた試合にコンディションの問題で出られなくなったことで、大谷自身がもう無理して出場する必要はないんじゃないか、と考えてしまうことだ。

 

残り試合も20試合を切り、チームのプレーオフ進出の可能性もほぼ絶望的。程度は分からないが、脇腹は痛みが再発しやすい〝やっかいな箇所〟だけに、私個人としては、治療に専念して完治させた方がいいのではないかと思う。

 

ファンは大谷がプレーする姿を待ち望んでいるし、彼もその思いを受け止めており、難しい立場に置かれている。(サンケイスポーツ専属評論家)

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◆ 大谷翔平「3つの手術」の選択肢とは? スポーツ整形外科の“名医”が断言「トミー・ジョン手術を採用すると思う」納得の理由

笹田幸嗣氏/情報:NumberWEB)

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 大谷翔平は右肘に再びメスを入れるのか。決断のときが、刻一刻と近づいている。最短で9月14日(日本時間15日)もしくは15日(同16日)に判断を下す可能性がある。もちろん、シーズン終了後ということもあり得る。仮に決断即手術となれば、11日(同12日)から始まるシアトルでのマリナーズ3連戦が大谷にとっては今季最後のプレーとなる。

 

 大谷の代理人を務めるネズ・バレロ氏が右肘の状況について報道陣に説明したのは4日のことだった。およそ25分間に及んだ答弁のポイントを要約すると以下のようになる。

 

A:18年に右肘再建手術を受けた部位は無傷。前回は上部で一番奥の方だったが、今回は別の部位で骨に近い最下端。

 

B:何らかの処置は必要であり、今後10、11日くらいで判断を下す。

 

C:来年開幕の打者出場には問題がないと考えている。

 

D:今後も今まで同様に長く二刀流継続を目指す。

 

 シアトル3連戦で今季終了の可能性があると考える理由は『B』にある。3連戦は13日で終了。代理人の言う10日目は14日のオフデー、11日目の15日は本拠地でのタイガース戦初戦にあたる。そこで決断即手術という判断を下した場合は、マリナーズ戦が最後になる。

 

「3つの手術」の選択肢がある

 バレロ発言を受け、日米のメディアは医療専門家へ取材を行った。その情報を整理すると処置には3つの選択肢がある。それが共通見解だ。

 

1:インターナル・ブレース

 

2:トミー・ジョン手術

 

3:ハイブリッド手術

 

 右肘にメスを入れる選択肢ばかりだ。ここで『C』が大きなポイントとなってくる。術後から復帰までそれぞれどの程度の時間を要するのか。一般的に論じられているデータは以下の通りになる。

 

インターナル・ブレース 最短約6カ月

 

トミー・ジョン手術 約18カ月~24カ月

 

ハイブリッド手術 約14カ月~24カ月

 

 来季、開幕に間に合うのは「インターナル・ブレースしかない」。だが、これはあくまでも投手復帰としての指標だ。打者としてはどうなのか。格好のサンプルがあった。

 

トミー・ジョン手術でも、来季に間に合う?

 フィリーズのブライス・ハーパー外野手は昨年11月23日に「トミー・ジョン手術」を受けた。そして、今季DHとして復帰するまでに要した時間は23週弱だった。年齢も30歳で29歳の大谷とほぼ変わらない。

 

 仮に大谷が15日にトミー・ジョン手術を受けるとしよう。23週後は24年2月23日。来春のキャンプインには試合出場が可能な状態という計算だ。だが、ひとつ考慮しなければならないのは、大谷にとっては同手術が2度目という事実だ。投手としての復帰例では1度目より時間がかかるとされている。それでも来季開幕まで28週を残す。トミー・ジョンを選択したとしても十分間に合う可能性がある。

 

 3つの選択肢はいずれも来季開幕の打者出場を可能とする。ここにバレロ代理人が自信を持って語った根拠があると推測する。

 

人工靭帯か、トミー・ジョンか?

 では、3つの選択肢のどれを選ぶのか。この道で日本で最も著名な横浜南共済病院スポーツ整形外科部長の山崎哲也ドクターにお話を伺った。まずは「インターナル・ブレース」について。

 

「この術法はポリエチレン製の人工靭帯を使用するもので、最近米国を中心に多く行われている術式です。『人工靭帯+靭帯修復術』を一緒にするのが主流となっています。欠点は術後の長期成績が不明なこと。他の関節では否定された人工靭帯を使用すること。膝前十字靭帯に対する人工靭帯は現在まったく使われなくなりました」

 

「トミー・ジョン手術」についてはファンの方々でもある程度の知識をお持ちであろう。自身が持つ別の部位の腱を移植して損傷した靭帯を再建する術法で大谷も18年10月に受けた。

 

 最後に「ハイブリッド手術」となるが、山崎先生の説明はシンプルだった。

 

「これはインターナル・ブレースとトミー・ジョン手術を同時に行うものとして理解していただければいいかと思います」

 

 最近では同手術をレイズのタイラー・グラスノーが受け、術後14カ月で復帰を果たした。ツインズの前田健太は21年9月に受け、約19カ月後の今季開幕で復帰を果たした。そんななか、メジャーリーグの打者としてのサンプルは見当たらない。

 

山崎医師の判断は「トミー・ジョン手術を採用すると思う」

 山崎先生は先述の要点『A』『B』『C』『D』のすべてを考慮した上で次のように解説した。

 

「私の考えとしては、一番重要なのは、詳細な診断・評価で、現在彼の靭帯機能がどの程度失われているか、すなわち外反動揺性(内側不安定性)の定量的評価で、同じ外反ストレスを加え、健側と比較することが必須と考えます。患健差が2-3mm以上あるようなら靭帯機能不全が存在することとなり手術が必要で、私の場合、インターナル・ブレースは前記した欠点より使用経験がないため、トミー・ジョン手術(再再建術)を採用すると思います」

 

 最も多くの成功範例を残し、信頼がおけるのが「トミー・ジョン手術」。人工靭帯を使用する「インターナル・ブレース」も「ハイブリッド手術」も信頼に足らず、長く二刀流を継続するための範例がないということだろう。

 

山崎医師が明かす、驚きのデータ

 最後に山崎先生はこんなデータもあると教えてくれた。

 

「米国の論文では、メジャーリーグの投手でトミー・ジョン手術を受けた選手の約10%が、再再建術を初回手術後平均で5年程で受けているデータがあります。術後の成績は初回手術後の80-90%より劣り、50%弱となっています」

 

 果たして、大谷翔平はどのような判断を下すのか。決断と発表のときが近づいている。

 

(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)

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 ■ NOTE