本日、米国メジャーリーグの2021年シーズン最優秀選手(MVP)が発表。アメリカン・リーグのMVPは、大方の予想どおり大谷翔平が選ばれた。最大の焦点となっていた投票数は、30名の記者全員が大谷に1位投票する「満票」での受賞となった。日本人の受賞は、2001年のイチロー氏以来、20年ぶり2人目の快挙だ。
記念すべき一日の出来事を、関係者の言葉を中心に記録に残しておきたいと思った。
今回の発表は、米国のメジャーリーグ・ベースボール専門チャンネルである、MLBネットワーク番組内で行われた。日本国内では、NHK BS1のメジャーリーグ専門番組『ワースポMLB』のスペシャル番組内や午前8時からの各局ワイドショー内(テレビ朝日系『グッド・モーニング』は確認済み)等で、発表の瞬間が見守られた。自分はインスタグラムでフォローしている、エンゼルス専門メディア『ÅngelsTopPlays』のライヴ配信で見守った。
番組は3名の司会者で進行された。
グレッグ・アムシンガー氏(Greg Amsinger)
スポーツキャスター
※番組スタジオホスト
トム・バードゥッチ氏(Tom Verducci)
スポーツライター
※番組レポーター兼コメンテーター
ハロルド・レイノルズ氏(Harold Reynolds)
元メジャーリーガー
※マリナーズ、オリオールズ、エンゼルス等
はじめにナショナル・リーグのMVPから発表がスタート。プレゼンテーターは、MVP受賞歴3回のマイク・シュミット氏。ブライス・ハーパー(フィリーズ)、ファン・ソト(ナショナルズ)、フェルナンド・タティースJr の3選手の中からハーパーがMVPに選ばれた。ここでは詳しくは割愛するが、受賞後のハーパーの涙が印象的だった。2回目の受賞にも関わらず、今季は開幕直後に顔面に死球を受けるアクシデントを乗り越えての栄冠。スーパースターでも苦悩から這い上がった一年だったのだろう。
午前8時28分過ぎから、ようやくアメリカン・リーグの部がスタート。はじめにファイナリスト3人の選手紹介。ブラディミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ)、大谷翔平、マーカス・シミエン(ブルージェイズ)の順番に主な戦績をVTRを使い紹介される。
その後、生中継で繋がれた各地で待機する3選手のインタビューに入った。
そこに現れたゲレーロは、ずっと無表情なのが印象的だった。そりゃそうだろうと思った。ナショナル・リーグは混戦だったが、アメリカン・リーグは100%に近い確率で大谷のMVPが決まっている状況なのだから無理もない。
インタビューは、シミエンから始まり、その次に大谷の出番が回ってきた。
――あなたには、とにかく驚きました。(中略)あなたが今季やったことで最も誇りに思うことは何ですか(バードゥッチ氏)
「まあ、たくさんの試合に出れたということが一番かなと思うので、トレーナーのやつもそうですし、いっぱい支えてもらったので、そこが一番かなと思います」
たくさんの関係者のサポートがあったから、試合にたくさん出続けられたことが一番良かったということを言いたかったのだろう。ただ、後半のトレーナー云々の言葉が少し聞き取り難かったが、そういうことだと自分は捉えた。
その後、ゲレーロのインタビューに移るが、まだ無表情。いつも柔和な愛くるしい笑顔が印象的な選手だけに、特にそう感じたのかもしれない。
再びシミエン、ゲレーロと質問が繰り返された後、大谷に戻ってきた。
――あなたがしたことは歴史的な事です。あなたは素晴らしい打者の二人の間に座っています。あなたがゲレーロと対戦するとき、シミエンと対戦するときに、どんな心境になりますか(バードゥッチ氏)
「まあ、まずはできるだけ対戦したく無いなということと(笑)んーまあ、あの僕としては見てる選手なので、なるべくストライクゾーンの中で打った打たれた結果が出る楽しみの中で、それによって自分が成長できることを楽しみにしています」
大谷らしい志向。ハードなチャレンジ案件でも楽しもうとすること、その経験が成長につながるということ、おまけに冒頭で(笑)をとるコメントがすんなりでるあたり、非凡なセンスがうかがえる。
事前質問が終わり、長めのCMを挟み発表へ。
午前8時46分頃。いよいよ発表のプログラムに移り、バードゥッチ氏の紹介で、プレゼンテーターのフランク・トーマス氏が紹介される。元ホワイトソックス等で活躍したトーマス氏は、1993年から2年連続のMVP受賞歴を持つ、自分も良く知っているレジェンドだ。90年代に野茂英雄氏の旋風でメジャーリーグを見出したときに大活躍されていた。
トーマス氏は、過去に満票でMVPを受賞した時の感想を述べた後、発表へ。
フランク・トーマス氏(Frank Thomas):
「2021年 アメリカ・ンリーグMVP ショウヘイ・オオタニ!満票です」
念願の満票受賞だった!その瞬間の大谷はほとんど表情を変えず冷静だった。
そのまま受賞インタビューへ。
――受賞したことの意味をどう感じますか(バードゥッチ氏)
「すごく嬉しい。まずは投票してくれた記者の皆さん、チームメート、コーチ、ファンの皆さん、トレーナーと僕の手術をしてくれたお医者さん、支えてくれた皆さんに感謝します」
――今季一番印象に残っていることは何ですか(アムシンガー氏)
「オールスターはいい経験。本当にテレビでみている選手とやらせてもらえるとなってすごくいい経験になった」
――二刀流としてメジャーでやるという強い意思で来て、MVPをとることは想像していましたか(レイノルズ氏)
「取りたいなと勿論、思っていた。日本で最初やるとなったときよりはアメリカに来た時の方が受け入れられる雰囲気があった。それは感謝している。アメリカ全体のファン、チームだったり感謝している」
最後にレイノルズ氏が質問するときに、「だから、俺はあなたが獲ると言っただろう・・・」といったニュアンスのオーバージェスチャーで話をはじめたときに、はじめて大谷に笑みがこぼれた。
番組終了。
すぐさま、お祝いコメントが流れはじめた。
マイク・トラウト選手:
「チームメイトとして君が成し遂げてきたことを目撃できたことは何か特別なものを感じた。君は自分のシーズンをまとめあげた。本当に値するよ」
Mike Trout@MikeTrout
It’s been something special to witness what you’ve accomplished as a teammate. You have put together a season of yo… https://t.co/bslC6AFjc9
2021年11月19日 08:54
CC・サバシア氏:
「ショウヘイ!!! 私が見た中で1番のプレーヤーだ!!!」
CC Sabathia@CC_Sabathia
You guys didn’t want to hear the truth!! Shohei is one of one 🗣🗣🗣 @R2C2 https://t.co/X3MDx6IHxt
2021年11月19日 10:34
ロサンゼルス・エンゼルス公式:
「大谷翔平選手は、満場一致でアメリカンリーグの最優秀選手に選ばれました!」
「”ヘイ・アット・エンジェルズ、MVPとはどのようなものか?”」とコメント。
アナハイムの本拠地エンゼルスタジアムでは祝福ムードを演出。日本のテレビ各局も取材に駆け付けたようだ。受賞が決まると、球場正面の広告は「SHOHEI OHTANI MVP」との表示に変化。駐車場内の巨大スクリーンは大谷が投打の「二刀流」でプレーする姿をMVPの文字とともに映し出した。売店では早速、記念のTシャツやピンバッジなど関連グッズの販売が始まった。
アシックス社:
「2021年シーズンにおける米国MLBアメリカン・リーグのMVP受賞、誠におめでとうございます。選手の役割が明確な近大野球において、最高峰のレベルの中で投げて打つ姿は、世界を魅了し、はかりしれない夢と希望を与えてくれました。驚異的なパフォーマンスはもちろん、野球に真摯に向き合いながらも楽しんでいる姿は特に印象的で、我々もスポーツが持つ力や可能性を改めて感じています。今回の受賞は、このような大谷選手の親しみやすい人柄も評価に含まれたのではないかと考えています。スポーツメーカーとして大谷選手を長年サポートさせていただき誇りに思います。今後も大谷選手らしいご活躍を期待しています」
日本コカ・コーラ「アクエリアス」公式:
「栄えあるシーズンMVPへの選出、おめでとうございます! 二刀流でシーズンを闘い抜いたオオタニサン、感動をありがとうございました」
ツイッターでも関連ワードが急上昇、以下のワードなどがトレンド入り。
#MVP
#大谷MVP
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#大谷翔平MVP
#満場一致
岸田文雄首相は19日午前、大谷が、MVPに満票で選出されたことを受けて、「大変な偉業であり、国民として大変誇らしく思う」と述べ官邸で記者団の質問に応じる。首相は大谷選手に国民栄誉賞を授与する可能性に関し、「祝いの気持ちをどのような形で示すのかについてはこれから考えてみたい」と語る。
川崎宗則氏:
「非常にうれしいこと。世界中の野球ファンだけでなく、いろいろな人たち、日本の人たちに勇気を与えてくれました。翔平さんのおかげで、たくさんお仕事もいただけています(笑)。MVPを取ってくれて、ものすごく感謝しております(笑)僕らが見ていても、翔平さんみたいになりたいと思わせる。40歳のちょっと年老いたおじさん選手である自分が、また野球がやりたいと思えるようなキラキラしたものをプレゼントしてくれました。本当に感謝しかない。アメリカの選手たちも、翔平さんについては見ていて楽しいと言うんですよ。見ていてワクワクすると。ファンにそう思わせるような選手たちが、そういうことを言うんですからね。それはとてつもないことですよ。日本にいる時よりも、相手チームの選手と話していますよね。こういうのは、日本の教育にはない。基本的には相手としゃべっちゃいけない、サインを見ろ、と言われますからね。でも、それは違う。相手とリスペクトし合って、勝負する時は真剣に。それを翔平さんが証明してくれましたし、本人も向いていると思いますよ。自分が楽しめるにはどうすればいいかを考えていると思います」
球団を通じて、
ジョー・マドン監督:
「この賞はこれまで達成した偉業を更に上回る活躍をするため、彼にとってモチベーションの役目を果たすだろう。そういう人間だというのは理解している。シーズン最後の試合を戦い、そしてその試合に勝利する。我々をその目標へ向かってどのように後押ししてくれるのだろうかと、私は心待ちにしている。この特別な栄誉を手にしたショウヘイと彼の家族を祝福したい」
ペリー・ミナシアンGM:
「ショウヘイは傑出したシーズンを送った。常日頃からフィールド上でのプレー、そして本気で才能を磨き上げる姿を目にすることができたのは、栄誉なこと。素晴らしいチームメートであり、野球のあらゆる側面において信じられないほど一生懸命に取り組んでいる。この賞は彼に十分に値するものだ」
大谷は、日本時間午前10時ごろからは、全米野球記者協会(BBWAA)の電話会見にも応じた。
――今年は制限なしでプレーした。
「難しさはありましたけど、やりがいもあったと思います。試合に使ってもらって期待に応えたいと思って毎日頑張れた。そこはやりがいを持って1試合1試合出来ました」
――オフに取り組みは。
「時間はあったのでしっかり休めた。もうしっかり動き始めているので。ここからキャンプに向けて。また来年勝てるように頑張りたいなと思います」
――二刀流を続けるラストチャンスという危機感があったからできたか。
「100%歓迎されていたという雰囲気は去年に入ってからなかったので。去年そういうこともありましたけど、自分がここで頑張りたいなと思って、ここに来たので。反骨心みたいのはなかったですし、自分が純粋にどこまで上手くなれるのか。頑張れたのが良かったかなと思います」
――満票で受賞した。
「取ること自体が初めてで特別。1位に入れてくれた評価がすごく嬉しくて。また来年頑張ろうという気持ちにさせてくれるかなと思います」
――トラウトから祝福の声もあった。
「一緒にやることで勉強になったりとか、打撃に関してはずっと勉強させられっぱなしのところがあるので。本当にずっと見てきたから、いろいろ対応できたところはあると思います。一緒のチームで良かったと思っているので。来年また頑張れれば、もっと強いチームになるかなと思います」
――子どもたちにメッセージを。
「僕はイチローさんのMVPを取った時を見てきました。そういうのを見てメジャーリーグに憧れるようになってきたので。思ってくれるように、また頑張りたいと。そういう選手が出てくるのを楽しみにしていますし、一緒に出来る日が将来くるのも楽しみにしています」
――今夜のお祝いは。
「特にない。家族で、というか母親が来ているので。夜は特には。また明日もあるので、早めに寝るかなと思います」
――エンゼルスとの契約延長の話はあるか。
「そういった話はあまりできないので。ただエンゼルスも好きですし、長くやりたいなと思っているので。まずは来年勝つことだけを考えて過ごしたいなと思っています」
――MVPの発表を待っていた心境は。
「やることは特に変わっていなかった。個人的には切り替えて、勝つことだけを考えてやりたいと思っていたので。ただ楽しみにはしていたし、本当に取れて嬉しい。来年につながる、モチベーションになったかなと思います」
――二刀流が評価された。27歳で取ったことの意味について。
「満票で取れたのはすごく嬉しいですし。怪我もいろいろあったので順調に来ていたわけではなかったですけど、いろんな人に助けてもらって、27歳で取れたので。選手としてここからピークを迎える5から7年がもっともっと勝負だと思うので。もっともっと頑張れるように日々頑張りたいと思います」
――「一番の選手になりたい」と常々言ってきた。目標は達成したことにならないか。
「なってはないですね。自分でそう思う日はおそらく来ないと思うので。目標としてはアバウトというか、そういう目標ですけど。ゴールがない分、常に頑張れる。確実にステップアップしていると思うし、今回の賞がその1つだと思うので、本当に今後のモチベーションになりました」
――二刀流はプロ野球で無理だと言われてきた。大きな怪我もあったが、それも乗り越えた。
「怪我なく1年間できたのが一番良かったです。このパフォーマンスをどれだけ続けられるか誰にも分からないので、毎年毎年そういうチャレンジが続くと」
――イチロー氏が「無理はできる間にしかできない」とコメントしていた。「無理」の意味をどう捉えているか。
「ピークとしていられるうちに、いい状態を保てる時期はそう長くはないので。時間の制約、タイムリミットは毎年毎年近づいてきていますし、自分の能力を伸ばせる時間は多くはないので。そういう時間を大事にしながらやりたい。そういう意味だと捉えて頑張っている」
――ナ・リーグでMVPとなったハーパー選手が泣いて喜んでいたのに対して、冷静に見えたが。
「泣くというより、すごく嬉しかった。満票だったのでびっくりというか、良かったなという気持ちが強い。ハーパー選手は2回目だったので、そういう意味では心境の違いがあっただろうし。いつか対戦できる機会があれば嬉しいかなと思います」
――マドン監督が「制限をつけないと伝えた時に大谷選手が笑った」と話していた。この提案をどう受け止めたか。
「プラスな部分、ポジティブな部分もあると思いますし、それに対して頑張りたい気持ちも出てきたのももちろんあるんですけど。どちらかというと、ある程度、形にならなかったらこの先、(二刀流を続けることを)考える必要があるのではというニュアンスもあったので。それは五分五分という感じですかね」
日本人では2001年イチロー氏(マリナーズ)以来20年ぶり、史上2人目の快挙にMLB公式ツイッターも「素晴らしい」と祝福し、2ショット写真を公開。
エンスカイ社より、「大谷翔平MVP受賞記念 プレミアムフレーム切手セット」の商品発売が告知された。大谷の躍動感ある姿が、フレーム切手シート(84円×5枚)のほか、付随するプレミアム箔(はく)押しホルダー、大型ポストカード(8枚)、フェイスタオルに収められている。またフレーム切手シートは「郵便局版」と「ローソン版」の2種類があり、価格は1個5500円(税込み)+送料他600円。明日20日から郵便局のネットショップほか、全国のローソン、HMV&BOOKSオンライン、HMV店舗で予約受付がはじまるとか。
ライバル選手の球団からも祝福を受けた。まずはエンゼルス公式ツイッターが大谷の偉業を速報。金色でMVPと書かれた画像を公開すると、ブルージェイズの公式アカウントも反応。ゲレーロと大谷の2ショット付きで返信。塁上で2人が笑みを浮かべているシーンとともに、「1年中、素晴らしいレースだった。おめでとう、ショウヘイ」とコメント。
高校時代の恩師、花巻東・佐々木洋監督は、東京・町田市内でコメント。明治神宮野球大会の初戦(20日)の国学院久我山戦に備えた練習を終えた後に対応。
「野球の技術、人としての人格、非常識な発想を常識に変えた影響力。総合的に、数字や率ではなく、全体をみて評価していただいたんじゃないかな。そういうMVPだったんじゃないかと。非常にうれしく思います」
――高校時代に今の姿を想像できたか
「メジャーで活躍するとか、160キロ出すとか、目標として2人で描きながらきたんですけど、MVP取るとか、かすんで、私には見えていなかった。本人が書き残していたものに、目標ではなくて決意だったと思うんですけど、「世界最高のプレーヤーになる。この道の開拓者になる」と書いていた紙がありまして。彼自身は狙ったところに、新人王も経由しながら、自分が描いたところに行ったのかなと、あらためて思いました」
――MVPは世界一に値するのでは
「数字や率ではない評価なので、別な形で非常にうれしい賞だと思います。高校3年間、多くの高校の中、本校を選んでもらって、何もできなかったんですけど、花巻東に入ってくれて、今、感謝の気持ちでいっぱいです」
――高校時代の印象は
「もともと自分でアップデートしながらレベルが上がっていく選手ですので。環境さえ与えてですね、邪魔しなければ、どんどん伸びていく選手でした。私は目標を与えて、邪魔せず見守って、経験さえ積ませれば上がる。そういうのは、プロ行ってからも、アメリカ行ってからも変わらない感じがします。もともとご両親から授かった考え方、生き方を持っていたんじゃないかと思います」
――菊池(雄星)選手もいる。教育する上で、大切にしていることは
「2人とも、私が教えたとは思ってませんけども、本人たちや、選手たちに伝えているのは「2つの目」と、いつも話しています。目的と目標をしっかり持つことが大事だと。何事にも」
――大谷選手から連絡は
「こっち来てから、本人も隔離期間が明けてから会う時間はありましたので、話はしました」
――大谷選手にかける言葉は
「『おめでとう』とかじゃなくて、『ありがとう』と。それだけですね」
――岩手から素晴らしい選手が出ていることは
「非常に素晴らしい素材を持った選手が、岩手に限らず、東北に非常に多いと思います。大谷も世界で活躍してもらって、岩手の子どもたちにも夢を与えて引っ張ってくれるように。また模範となる生き方をして、いい影響を教育界にも与えてくれたらなと思います」
――高校時代から成長したと思う部分と変わらない部分は
「テレビ越しに見てると、私なんか手の及ばないすごい存在だと思います。いざ会ってみると、昔のままというか、変わらず。接し方とか偉ぶることないですし、そういった人としての考え方、生き方はぶれてない。野球に対する考え方とか、サイズアップとかは、やはりこのあいだ、会って、一回り大きくなったなと感じました」
――今後、どのような存在になって欲しいか
「教育現場にいますので、数と記録だけじゃなく、生き方でも模範となるような。もともと、そういうものを持っている人間ですので、子どもたちに野球の姿だけじゃないところでも、いい影響を及ぼしてくれればと思います。記録とか、あまりこだわってないような感じもします。誰か歴代のメジャー選手とか(もこだわっていない)。とにかく、自分との闘いで、昨日の自分を超えるんだという気持ちで今も過ごしていると思う。変わらぬ姿勢で、日本人、岩手の選手のすごさを世界に響かせてくれたらいいなと思います」
――満票、あらためて
「世界が認めた。数とか、本数とか、率じゃないところで総合的な評価。大谷らしい。人格とか、取り組み方、野球界の常識を変えた影響力を含めて評価されたのなら、非常にうれしいと思います」
――MVPは予想していたか
「本人に会ったときは意識していなかったけど、周りからの話では高い確率だと聞いていたので。ただ、本人がそんなに意識しているようにも感じなかったので、まだ旅の途中じゃないかと思ってました。次、どうするかしか考えていなかった。誰かを超えるじゃなくて、常に前の日の自分を超えると考えて過ごしていました」
――「世界最高のプレーヤーになる」と書いたのは
「決意表明で書いてました。私の方が驚いているというか。たまたまMVP、歩いてたら取ったのではなく、目指していたら取った。必然だったのかなと。彼の力はすごいと、あらためて思いました。提出した紙に書いてました。あれを見て、私も目標を持つのは大事だけど、高すぎるというか、ぶっとんでいる(と思った)。あまり意識して目にとどめてなかったですけど、あらためて見て、驚きました。描けない世界を描いていた。私は「160キロ出せるから書け」と言ったんですけど、あいつ自身「163キロ」と私の上を書いていた。我々の見えない景色を見て歩いてたんだと思います。たまたま歩いてたらアメリカに渡ったわけじゃないですし、たまたま(MVPを)取ったんじゃない。全てが描いた通りに、自分があと、行動を起こして、夢をつかんでいるんじゃないかと思います。本当にすごい選手だと思います」
――今の花巻東のチームに大谷先輩がいる影響は
「指導者として一番幸せだと思っているのですが、大谷に限らず、菊池雄星もそう。野球選手としてだけじゃなく素晴らしかった。私が現場にいて、指導しやすいです。例えば、大谷は勉強も全教科、評定が85点ぐらいでした。「大谷は野球がすごかっただけじゃないよ。勉強もすごかったよ。寮の掃除もしてたんだ。書き物もそうだし、提出物も」(と言える)。生き方自体が素晴らしいので。野球だけがこうだと、野球だけ子どもたちも目指すものがあると思う。(大谷は)重箱をつついても(悪い点が)出てこなかったです。正直、あれだけの選手ですから、チームを締めるとき、あれぐらいの存在の選手を締めた方がパッと締まるときもあるのですが、あら探しをしても全く出てこないというのが、高校時代の大谷翔平選手でしたね。勉強も、普通の生活もそうでした。教えることが何もなくて。今、思えば、よく私のところに来てくれた。感謝しかないです」
――監督がいたから花巻東を選んだのでは
「そういって自慢して生きていきたいところですが(笑い)。残念ながら、育てるとか何もなくて。本当に、もう自分でアップデートするタイプなので。考え方だけ、しっかり話をしながら、環境さえ与えればどんどん伸びていく。今は自分で器を変えていって、日本からアメリカとステージを変えながら、すごいレベルに来ている。育てるとかはなかったです」
――高校時代に「世界最高のプレーヤーになる」と書いたときに、どう声をかけた
「当時、メジャーに行くだけですごかった。高校生がメジャーを目指すのは非常識。160キロを目指すのも非常識。当時、日本では(160キロを出したのは)クルーンだけでした。私は行けると思ったんですが。菊池雄星が体重、筋力を付けたら、これぐらいになったという参考を見て、必ず出るよと言ったんですけど。その辺までは目指してやっていたんですけど、はるか向こうの。何を彼は考えていたのか。いろんな非常識を変えていっているのがすごいなと思います。子どもたちの夢は、我々の頃はプロ野球選手でしたけど、多分、子どもたちの作文を変えたんじゃないかな。メジャーの選手とか。イチロー選手も(MVPを)取っていたから、道しるべがあったのかも知れませんけど。将来、MVPを取ると作文に書いてくれる子どもたちが増えると、子どもたちの可能性が増えていくと思う。本当に素晴らしいことをしてくれたと思います」
――大谷選手はメジャーで愛されている
「書いていること、やってるだけじゃないかと思います。感謝するとか、ごみ拾いするとか。審判に態度で出さないとか。自分でそうなろうと思って、そうなったんじゃないかなと思います。指導したなんて恐ろしくて言えないぐらい、勉強も、人間的にも立派な生徒でした」
――彼を3年間、預かったことで気付かされたことは
「全てを野球に投資していたと思います。当時、日本でも免許を取らなかったりとか。特に大きい買い物をするわけでもないですし。食事のことも、今もこだわり、すごかったですけど。体重のこと、トレーニングのこと、そういう取り組む姿は、私自身も勉強させられた。教えてもらうことの方が多かった気がします」
――神宮大会への追い風か
「いい影響というか。今回、MVPにも選ばれて、ホームラン王の争いもあって、雄星も(オールスターに)選ばれて。後輩たちも刺激になったというか。岩手の選手でも、ああやって世界でオールスターに選ばれたり、ホームラン王を争うとか。私も想像できなかった。率や、投手で活躍することはあるかもしれませんけど。ホームランで、あの体格のアメリカの選手と競っている日本人が出てきたということは、ちょっと想像を超えてました。ただ、このことで、次に日本人でまた向こうで争う選手が必ず出てくると思います」
――神宮大会に向けて、大谷選手から言葉は
「うらやましいというか、本人も出られなかったので。『うらやましいです。ぜひ、頑張ってほしい』ということは話をされました」
――監督としての目標は
「彼、世界で一番になりましたので。私も監督になって、日本一になりたいという気持ちで指導にあたっているので、なんとか岩手中心の選手で、大谷から刺激をもらいながら目指したいなと思います。無理じゃないかとか、できないんじゃないかとか、そういう自己限定をする気持ち(を持たないこと)を彼から教えられたので。子どもたちや私自身にもいい影響を及ぼしてくれたので。日本一になれるように、負けないように頑張りたいと思います」
通訳を務める水原一平さんも、自身のインスタグラムで大谷の快挙を祝福。大谷がバッターボックスに立つ写真を掲載し、「ここまですごい旅だったな。おめでとう、my man!!!まだ始まったばかりだよ!次はリングを取りに行こう!!!この素晴らしい旅を共にさせてくれてありがとう」と英語でつづり、「#2021ALMVP」とハッシュタグを付けた。
TBS系「ひるおび!」では、コメンテーターとして出演した里崎智也氏が、大谷の人柄について「持論なんですが、プロのアスリートは変な人が多い。そうじゃないとトップに立てないと思っていたが、彼は本当にいい子。それが驚き」と述べた。これにはタレントの三田寛子も同意し、「どうしたらあんないい子に育つのか。お母さまに教えていただきたい」。また、投手・打者とほぼ休みなく活躍したことに里崎氏は「彼にとっては野球が息抜きなんです。全てが野球につながっている。だから疲労も少ない。しかもケガを恐れない。全力でプレーする。でも、(大谷が活躍した)映像を見ると野球が簡単に見える、でもそんなことは絶対ない」と苦笑。
競泳女子東京五輪日本代表の池江璃花子もコメント。19日に都内で開催された大会に出場。レース後に取材に応じ「野球は全然詳しくなくて、ルールもろくに分からない素人ですが、イチローさん以来2人目の快挙は素晴しいと思う。人間力も大切にされている。そういう選手が一流、もっと上にいけるんだなと思いました」と語った。
日本法人MLBジャパンより、大谷翔平の2つの偉業がギネス世界記録に認定されたことが発表された。1つが、「投手として100投球回、100奪三振をマークし打者として安打、打点、得点で100超えをマークした初の選手(クインティプル100)」。もう1つが、「オールスター戦で投打の二刀流で先発出場した初の選手」。またア・リーグMVP受賞を祝し、今季ハイライト特別映像を、今日から配信することもあわせて発表された。
シーズン途中、レッド・ソックスへ移籍したホセ・イグレシアスも、祝福メッセージを自身のインスタグラムで更新。「おめでとう、マイフレンド。今季一緒にプレーできて、君の試合を観ることができて楽しかったよ。グラウンド内ではすばらしいプレーヤーであるように、グラウンド外ではさらにすばらしい人間だから」と、大谷とハイタッチする自身のエンゼルス時代の写真を3枚投稿。
大谷の出身地、岩手県からも祝福の声が上がった。生まれ育った岩手県の広聴広報課の公式ツイッターは大谷のMVP受賞が決まると「オオタニサーーーーーーーーーン!! MVPおめでとう!」と祝福のツイート。さらに、岩手県庁にはMVP受賞を祝した横断幕が掲示され、その横断幕が掲げられる様子を写真で紹介していた。
ソフトバンク王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー:
秋季キャンプ地の宮崎・生目の杜で快挙をたたえた。
「なるだろうとは思っていたけど、まさか満票とはね。アメリカの人もちゃんと見るところは見ててくれたんだなと思って、良かったなと思っています。それだけ彼の今年の活躍はすごかった。やっぱりアメリカは野球と言えばホームランの国ですから。そこであれだけ盛り上げて、見るたびにどんどんホームラン打っていましたからね。あれだけアメリカの野球ファンを沸かしたという点でも、価値がありますよね。投手としてもあれだけ頑張ってくれましたしね。ぼくが思うのは、ベーブ・ルースという名前がね、もう出てこないかなと思っていたら、こんなにはっきり出てきて、ベーブ・ルースも喜んでいるだろうと、そう思いますよね。来年は大変な年になると思いますけど、そこを乗り越えて頑張っている姿を見せてほしいですよね」
岩手県の地元紙「岩手日報社」(盛岡市)は、記念の特別号外を計約5万部発行し、東京や岩手県内で配布。号外は見開き2面を使い、「大谷MVP」の見出しと投球する写真を大きく掲載。今季の登板成績や46本塁打の相手投手や飛距離など詳細なデータも載せた。東京のJR新橋駅前では、同社の東根千万億社長らが号外を配布。
17時17分には、東京タワーがエンゼルスカラーにライトアップされた。メインデッキ南面には「祝 17」という祝福のメッセージも灯った。
2016年4月から大谷をブランドのイメージキャラクターとして起用している高級腕時計のSEIKOは、来月、MVP受賞を記念した「二刀流ボブルヘッドノベルティキャンペーン」を実施すると発表。一部の腕時計購入者に限定の大谷選手のボブルヘッド人形を渡すとしている。高さ約11cm。横幅は約10cm。“二刀流”のボブルヘッド人形の塗装は手作業で製作されたそう。製作期間はおよそ3ヶ月。
鈴木誠也外野手:
マツダスタジアムでトレーニング後、コメント。
「すごいことです。当たり前じゃないですか、僕が言わなくてもみんな分かっている。能力が高いことはみんな分かっている。僕は、1年間けがなくプレーをしたことが信じられないです。時差や長距離の移動がある中、野手の練習と投手として必要なことをすべてやっている。食事や睡眠を含めて、生活のすべてを野球に注がないとできることではないです。まず僕がメジャーに行けるかどうか分からないけど、もし対戦できればバットには当てたい。日本で対戦した時は全然だめでした」
エンゼルス地元紙「オレンジカウンティ・レジスター」では、大谷が一面を占拠。シニアエディターであるトッド・ハーモンソン氏は、「ショウヘイ・オオタニがア・リーグのMVPに満票選出された後のオレンジカウンティ・レジスターのフロントページと南カリフォルニアニュースグループエディションのスポーツカバーを先駆けて見てみよう」とツイッターで写真を公開。大谷がメインに据えられている「オレンジカウンティ・レジスター」の一面とスポーツ面を紹介。
2020年3月からアンバサダーとして大谷を起用しているスーツブランド「ヒューゴ ボス」には、受賞会見直後から「大谷さんが着ていた洋服、一式でありますか」という問い合わせが増えたそう。担当者によると、きょう着用したのは、ボス定番の現代的なシングルブレストジャケットで、天然のストレッチが効いたバージンウールのアイテムだということ。アンバサダー就任時の採寸に立ち会っていた担当者によると、大谷は着用するスーツの色やデザインについて大きなこだわりは見せなかったという。
MVP投票権利をもった記者の方々のコメントも、一部のみ拾ってみた。
ピート・アブラハム記者:
ボストン・グローブ紙
「選択は全く難しくなかった。彼は誰もやったことがないような、歴史的なシーズンを送った。トップクラスの投手、打者として、シーズンを通して活躍した。最も感服したのは、健康体で試合に出続けていたことだ。それは、体力的に想像を超える困難なことだと思う。2桁勝利にあと1つ届かなかったことも、本塁打王のタイトルを逃したことも、全く懸念材料にはならなかった」
ロブ・ブラッドフォード記者:
WEEI.COM
「ゲレロや他の候補者も素晴らしいシーズンだったが、大谷は凌駕していた。チーム成績を問う意見もあるが、野球というスポーツは1人の選手だけで勝つには限界がある。僅差の選択でチーム成績が加味されることもあるが、大谷は突出していた。MVP(Most Valuable Player)とは、最も価値ある選手。所属球団にとっての価値を考えれば、大谷がフィールドの内外でもたらす価値は計り知れない。仮に年俸が5000万ドル(57億円)でも、それだけの意味がある存在だと思う」
グレゴア・チザム記者:
トロント・スター紙