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■試合データ

米国時間:2021年8月28日

日本時間:2021年8月29日(日曜日)10時08分開始

ロサンゼルス・エンゼルス対サンディエゴ・パドレス

@エンゼルスタジアム

 

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エンゼルスは、2回5番ジャレッド・ウォルシュのソロ本塁打で先制。3回、8番ブランドン・マーシュのヒットの後、9番ジャック・メイフィールドの2ラン本塁打で2点を追加。しかし4回、先発ホセ・スアレスは5番エリク・ホスマーと7番オースティン・ノラにタイムリーを打たれ2点を失い1点差に詰め寄られる。その裏、5番ウォルシュのタイムリーと7番カート・スズキの犠牲フライで2点を追加し3点差に引き離す。5回には4番に入ったジョー・アデルのタイムリーと6番ジャスティン・アップトンの犠牲フライで2点を追加。6回にも3番フィル・ゴスリンの2点タイムリーと5番ウォルシュのタイムリーで3点を追加し勝負を決める。先発スアレスは3回途中で降板したが、以降継投ブルペンの4投手は無失点で試合を締めた。

 

 

■今日の大谷翔平

【打者】先発2番DH

4打数 0安打 2得点 1四球 2三振 1盗塁(20個目)

通算打率.264

 

第1打席:空振り三振

(状況)1回無死/走者1塁

(投手)ライアン・ウェザース/左

(カウント)2S

(コース)内角高め

※内野安打で出塁したフレッチャーを一塁に置いて迎えた1回の第1打席は空振りの三振に倒れた。しかし、パドレスの先発・ウェザースが投じたインハイの真っすぐが右手首を直撃し、大谷は苦悶の表情を浮かべ、死球かと思われたシーンに場内からは大ブーイングが起こり一時騒然となった。3球ファウルで2ストライクと追い込まれた4球目、93マイル(約150キロ)の真っすぐはインハイへ。このボールに対してスイング気味に始動した大谷は、避けきれずに右手首付近を直撃した。その瞬間、大谷の声と思われる声がスタジアムに響き、死球と思ったファンからはものすごいブーイングが起こった。

 

 

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第2打席:ショートフライ

(状況)3回1死/走者無し

(投手)ライアン・ウェザース/左

(カウント)フルカウント

(コース)外角低め

※患部の状態が心配されたが、大谷は出場を継続し3回は一死無走者の場面で再びウェザーズと対峙。最後はフルカウント後のスライダーを打たされ遊飛に倒れたが、追い込まれたあとファウルで粘るなど、この打席で計5度スイングした。

 

第3打席:四球

(状況)5回1死/走者無し

(投手)オースティン・アダムズ/右

(カウント)フルカウント

(コース)外角低め

※5-2とリードして迎えた五回、1死走者なしの場面で四球で出塁。次打者のゴスリンの2球目で好スタートから悠々と2盗に成功した。これで40本塁打20盗塁はマイク・トラウトも達成できなかった球団史上初の快挙。ア・リーグでは11年にカーティス・グランダーソン(ヤンキース)が達成して以来10年ぶり。また、日本選手の20盗塁は13年のイチロー(ヤンキース)と青木(ブルワーズ)以来、8年ぶりとなった。初めて4番で起用されたアデルの適時打で生還した。

 

 

 

第4打席:ピッチャーゴロ

(状況)6回無死/走者満塁

(投手)ティム・ヒル/左

(カウント)1B2S

(コース)外角高め

※5点リードの六回無死満塁の絶好機。5番手左腕ヒルに対し、カウント1-2から外角のボール球を打って投ゴロに倒れた(結果は本塁封殺)。ゴセリンの中前打で二塁に進み、ウォルシュの適時中前打でこの日2度目のホームを踏んだ。

 

 

第5打席:空振り三振

(状況)8回無死/走者無し

(投手)ナビル・クリスマト/右

(カウント)フルカウント

(コース)真ん中低め

※八回の打席は空振り三振。カウント3-1から自信を持って見送った低めのチェンジアップをストライクと判定された。五回の打席でも明らかなボール球をストライクと判定されている大谷はフルカウントから低めのチェンジアップにバットは空を切った。

 

その他情報:

・大谷は試合前にはUFCのスターと対面し、2ショットを撮影した。球団公式ツイッターが実際の写真を投稿。最強二刀流が“人類最強の男”とコラボした。大谷と肩を並べているのは、UFCの世界ヘビー級王者のフランシス・ガヌーだ。エンゼルスのユニホーム姿のガヌーは大谷の肩に手をまわして、ファイティングポーズ。一方の大谷はガヌーのUFCのベルトを手にし、笑顔を浮かべている。UFCの最重量級で頂点に君臨するガヌー。“ザ・プレデター”の異名を取る193センチ、119キロの怪物ファイターだが、肩を並べる大谷も体格に遜色がない。

 

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米サンディエゴの地元紙『San Diego Union-Tribune』は8月28日、「ショウヘイ・オオタニが、いかにフランツ・カフカ、ポール・ロブスン、ヘディ・ラマーのような存在であるか」と題したコラムを掲載。記者のクリス・リード氏が、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)を競技外のさまざまな人物になぞらえて表現している。今季の活躍を受けてリード氏は、記事内で「オオタニは常にベーブ・ルースと比較されてきたが、ルースは最高の打者であると同時に最高の投手だった、と言えるようなシーズンは一度もなかった。また、開幕時に20か国256人の外国人選手がいる現在のMLBとは異なり、白人だけのスポーツでプレーしていたのだ。オオタニと類似する人物は野球から離れたところにあり、すべての人に教訓を与えるものだ。複数のスキルセットを持つ『ポリマス』と呼ばれる人々が、前例のないことを成し遂げられる」という、ノースウェスタン大の教授を務めるブライアン・ウッツィ氏の研究内容を紹介。その中で、特に同記者が新たな比較対象として主張するのは、20世紀の文学を代表する小説家のフランツ・カフカ。「疎外感、罪悪感、実存的不安といった『カフカ的』テーマを奇抜なプロットで展開し、保険会社でも働いていた」といい、工事現場で使用される安全ヘルメットを発明するなど、大谷と同じく“二刀流”として活躍していたようだ。

 

 

・米野球サイトによると、近代野球で最多盗塁投手はボブ・ギブソンの13個。投手と野手掛け持ちが普通だった19世紀をチェックすると、アメリカン・アソシエーションのシンシナティに所属し通算284勝で左右両投げをやったことでも知られるトニー・マレーンが、野手としても出場しながら1886、87、89年の3シーズンで20盗塁以上をマークしている。

 

 

・「40本塁打・20盗塁」は現地メディアでも大きくクローズアップされている。MLBのあらゆるデータを取り扱っている『Stats By STATS』は、9月までに同記録を達成したのが、2007年のアレックス・ロドリゲスと1999年のケン・グリフィーJr.以来の快挙だと紹介。さらにメジャーリーグの外国人選手でもホセ・カンセコ、ラリー・ウォーカー、アルフォンソ・ソリアーノ、ロナルド・アクーニャJr.に次ぐ史上5人目の記録達成者であるとしている。

 

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■試合情報

ジョー・マドン監督:

(試合前)

「(大谷は18試合ぶりの2番スタメンとなる。10日のブルージェイズとのダブルヘッダー第2試合から1番・大谷、2番には高打率のフレッチャーを置いてきた。しかし、フレッチャーはここ15試合で打率.188と状態を落としていた)ショウヘイと勝負してもらいたいから(2番先発と)違う起用をしていた。しばらくうまくいっていたが、フレッチが自分を犠牲にしすぎているように感じたので、また自分のために打ってほしいと思った。ショウヘイは戦うことができるし、グース(ゴセリン)もフレッチが今している役割を果たせるだろうと思った。アデルも調子が上がってきている。いつかその役割を果たすことができるかもしれない。(すでにレンドンは今季絶望となったが、トラウトは今季中の戦列復帰を目指している。もし、その強打者2人がいたら……)ショウヘイは、2番がいいと思っている。早く2人に帰ってきてもらいたい」

 

(試合後

「彼は大丈夫だ。(試合中)X線をとって確認したが、患部の状態は良好だった。明日はオフだし、今日の試合も、その後出場し続けていたので、今のところ登板が変わる予定はないが、月曜に様子を見てみる」

 

(40本塁打&20盗塁は球団史上初、ア・リーグでは11年のカーティス・グランダーソン以来、10年ぶりの偉業)見事だ。これからシーズン最後まで毎日のように注目すべき、すごいことが起こるだろう」

 

 

ジャレッド・ウォルシュ内野手:

「(大谷の40-20の快挙に)ショウヘイと一緒の夜は、いつだって何か違うんだ。(アデル、マーシュらの活躍に)未来は本当に明るいよ。ファンは彼らがプレーするのを見るのを長年楽しめると思うよ」

 

ジェイス・ティングラー監督:

(試合前)

「(大谷について)とてもユニークだ。50年に1度、100年に1度というようなユニークな才能の持ち主だ。ピッチング、パワーあふれる打撃、走塁、全てが揃っている。(パドレスは2017年オフの大谷争奪戦で最終面談に進んだ球団の1つだった。前夜はノーヒッター右腕・マスグローブが4打数無安打に封じ込めたが、当然高い評価は揺るがない)何となら比較できるか正直分からない。本当にユニークだ。球界のみんなが注目しているよ。選手たちもね」

 

「(タティスJr.がナ・リーグMVPの有力候補に挙がる活躍を見せている)2人ともスーパーなアスリートで、ユニークで、彼らはいろんなことができる。打席では爆発的だ。ゴロアウトでさえも、彼らが走っている様を見れば……。彼らはユニークなアスリートだよ」

 

 

■関連情報

サルバドール・ペレス捕手:

・ロイヤルズのペレス捕手が28日(日本時間29日)、敵地のマリナーズ戦の5回に4試合連続となる37号2ランを放って、ゲレロ(ブルージェイズ)を抜き大谷翔平(エンゼルス)に4本差と迫った。ペレスはオールスター戦前夜祭のホームラン競争にも出場したが、オールスター戦明けで16本目と量産。27日には史上25人目の2試合連続の満塁アーチ。この日の2ランを含めて打点も92まで伸ばし大谷(89)を一気に抜き去っている。

 

 

前田健太投手:

・右肘の手術を受けることになったツインズ前田健太投手が28日(日本時間29日)、本拠地ミネアポリスからオンライン会見に応じ、決断にいたるまでの経緯と現在の心境などを語った。

 

――診断を受けた時の気持ちは。

「悲しい気持ちになった。肘の状態が良くなく、しんどいシーズンだったが、まさか手術とは思わず、休めば治ると思っていた。子供の頃から大きな怪我もなく、どこかで、自分は怪我をしないという思いもあった。これまでは、我慢して投げていれば、どこかで治ったりしていたが、今年はしんどいと思うことがあった」

 

――PRP治療などではなく、手術に踏み切った決断について

「(靭帯は)断裂した訳ではなく、手術せず、炎症を取って投げ続けることもできたが、これから先の野球人生をより長く続けるために、手術を選択した。このまま、ごまかしながら投げていても今年のようなピッチングになるし、逆にキャリアを早く終わらせることもになる。しっかり治して本来のピッチングを取り戻せば、1年間休む期間になるかもしれないが、逆にキャリアが伸びる可能性がある。今40歳を過ぎていれば、手術しないと思うけど、これから先長くやりたい。今はすっきりした前向きな気持ちになっている」

 

――トミー・ジョン手術になる覚悟か。

「そうですね。靭帯の状態によっては(リハビリ期間の)短い手術で済む可能性もあるが、そこに期待するより、T・Jと思って、来年、投げられない覚悟で手術を受ける」

 

――肘の状態について

「4月末から5月にかけて(痛みが)スタートして、前回の登板(21日対ヤンキース)まで(痛みが)ゼロになることはなかった。直球の球速が落ち、投げるのがしんどかった。日常生活で、シャンプー(の容器)を押す時や髪を洗うのが、しんどい時もあれば、問題ない時もあった。試合でも初回キツくて、後半良くなって行く時もあれば、逆も。ずっと何も感じない時はなかった」

 

――選手からのアドバイスは。

「ダルビッシュさん(2015年にメイスター医師の執刀でT・J手術を受けた)が心配して一番最初に連絡をくれた。手術を勧めるとかではなく、経験からメリットとデメリットなど総合的に話してくれた。最終的な決断は僕がしたが、その後のリハビリの時のサプリメントや食事のアドバイスも貰ったので取り入れたい」

 

――33歳でのT・J手術。

「最初は、手術しないと思っていたが、セカンドオピニオンなど色々な話を聞き、自分の目標をもう1度考えた時、やった方がいいと。我慢して投げれば今年のような成績になる。クビになったら、終わり。自分の中では(日米通算)200勝(現在156勝)の目標がある。しっかり治していい状態でキャリアを続ける方が自分の目標に近づくと考えた。年齢は色々な人が気にするし、僕もどうかなと思っていたが、先生に聞いたら、年齢ではなく、自分の投げるスピードが大事ということだった。僕は100マイルのボールを投げる投手ではないし、年齢関係なく戻れるという言葉を貰った。それに、僕は普通の33歳より若いので大丈夫。来年、シングルAからバッターとしてやっていこうかな(笑)」

 

――2023年までツインズとの契約がある。

「それもプラスに働いているかもしれない。僕にとっていいタイミングで、この時を迎えったのかなとも思う。契約があと1年なら、リハビリで終わって、契約してくれる所がないこともある。逆にキャリアを重ねて、ある程度自分を分かってもらえた上で手術を受けることができる。僕の中で色々な引き出しがある中での手術なので」

 

――ファンへのメッセージを。

「今まで以上に強くなって戻れると思う。手術せずにやっていくより、逆にキャリアが伸びるかもしれない。もしかしたら10年後も投げられる可能性もある。また皆さんの前で素晴らしいピッチングができるようにパワーアップして帰ってきたい」

 

今後は、9月1日(日本時間2日)にテキサス州ダラスで手術を受け、その後、同地でのリハビリに移行する予定。今季の前田は開幕投手に選ばれるなど、21試合に先発し、6勝5敗、防御率4・66の成績だった。

 

 

■メディア

米放送局『CBS Sports』:

大谷翔平50本塁打の可能性は?米ライター陣の意見は対立「明らかに疲労の兆候」「再び勢いづけばありうる」(THE DIGEST)

 

間淳氏:

大谷翔平を支える重さ6.9グラムの“秘密兵器” 最新鋭機器「パルス」の正体は?(フルカウント)

 

越智正典氏:

大谷翔平の恩師・佐々木洋監督と横浜隼人・水谷哲也監督との〝縁〟(東スポ)

 

小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト):

「大谷翔平」大活躍のウラで急成長!100万ドルの賞金も稼げる米国「ファンタジースポーツ」事情(現代ビジネス)

 

■NOTE

大谷の第1打席、初球の93マイルの直球をファールしたスイングをみて、今日の試合で42号弾が飛び出すことを期待した。素人目に、「身体にキレがある」スイングにみえたからだ。

 

 

しかし直後の4球目、あの右手首に投球が当たるアクシデントがあり、勝手な願望プランが暗礁に乗りあげた。次の打席に立ってくれただけで安堵したが、今度は「自打球後に打つホームランのジンクス」を持ち出し期待した。しかし事は、そう簡単に起こらなかった。6回の無死満塁の絶好機に、大谷本人は打ちたかっただろうな。それでも、今季20個目の盗塁を決めてみせ、「40&20クラブ」入りを達成させてみせたことには、あっぱれだった!試合後のレントゲン検査で骨に異常は見つからなかったようでまた安堵。予定通り週明け日本時間火曜日のヤンキース戦に、先発登板をみせてくれると思うが、痛みが完全にひいていることを祈るばかりだ。

 

試合自体は、ウォルシュが再び固め打ちし、マーシュの打撃は好調を継続できているし、アデルの捕殺もあったし、ブルペン投手陣は無失点で好投したし、チームとしていい試合だったと思う。特にアデルの守備が、昨季に比べて格段に良くなった印象だ。自信を持ってプレーしているように見える。オフに、相当練習したんだろうなあ。未来のエンゼルスに明るい材料だ。

 

さあ、来週は絶好調のヤンキースと3連戦!がっつり叩いてポストシーズン争いを面白くしてやろう。

 

エンゼルス大勝 大谷翔平は4打数0安打も球団史上初の「40-20」達成※MLB.JP

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エンゼルスは完封負けを喫した前日と打って変わって打線がつながり、2回裏から6回裏まで5イニング連続得点。今季13度目の2ケタ得点を記録し、パドレスに10対2で大勝して連敗を3でストップした。ワイルドカード争いでレッズを追うパドレスは、レッズとのゲーム差を縮めるチャンスだったが、投打に精彩を欠いて大敗。レッズとの2ゲーム差は変わらず、背後からはカージナルスが1.5ゲーム差で迫っている。

 

 2回裏にジャレッド・ウォルシュが24号ソロ、3回裏にジャック・メイフィールドが8号2ランを放って3点を先行したエンゼルスは、先発のホゼ・スアレスが4回表に2点を失って降板。しかし、4回裏にウォルシュのタイムリー二塁打などで2点、5回裏にジョー・アデルのタイムリー二塁打などで2点、6回裏にはフィル・ゴスリンとウォルシュのタイムリーで3点を追加し、2ケタ得点に到達した。5回裏に犠飛を放ったジャスティン・アップトンは通算1000打点を達成。ウォルシュは3打数3安打3打点の大活躍だった。

 

 エンゼルスの大谷翔平は「2番・DH」でスタメン出場したが、空振り三振、ショートフライ、四球、ピッチャーゴロ、空振り三振で4打数0安打1四球(打率.264、OPS.986)。しかし、5回裏の第3打席で四球を選んだあと、今季20個目の盗塁を決め、球団史上初となる「40-20」(シーズン40本塁打&20盗塁)を達成した。ア・リーグでは2011年のカーティス・グランダーソン(ヤンキース)以来10年ぶりの快挙。アメリカ国外出身選手では5人目(7度目)となった。

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大谷翔平50本塁打の可能性は?米ライター陣の意見は対立「明らかに疲労の兆候」「再び勢いづけばありうる」※THE DIGEST

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現在ア・リーグ1位の41本塁打を放っているエンジェルス・大谷翔平。数々の記録を打ち立てた今シーズンの結末を、米メディアが予想している。

 

 米放送局『CBS Sports』は「オオタニは50本塁打を達成できるか」というテーマで特集を掲載。4人のライターがそれぞれ独自の見解を発表した。

 

 達成を可能、不可能と考えるライターがそれぞれ一人ずつ。残る2名は明言を避け、見守る姿勢を見せた。

 

 明確に否定的な立場を示したのはデイン・ペリー氏。7月から8月にかけて本塁打数が減少したというデータを示し、このペースでは届かないとの持論を展開した。

 

 その他にも、「シーズンが進むとともに、明らかに疲労の兆候を見せている」(マット・スナイダー氏)、「チームは疲労を心配し、プレーオフを逃したら休養を増やすかもしれない」(R.J.アンダーソン氏)といった慎重な意見も。二刀流による疲れと出場機会の減少が大台到達の障壁になるのでは、との指摘が続いた。

 

 一方で、スナイダー氏は大谷のポテンシャルを評価し、「6月には81打席で13発放っているだけに、再び勢いづくことがあれば到達はありうる」と、最盛期のペースに戻せば可能性が出てくるとした。

 

 唯一、達成可能と断言したのがマイク・アクシーサ氏だ。その理由として、「エンジェルスは疲労回復のために投手の仕事量を減らすだろう」と打者として出場を継続できると予想した。また、エンジェルス戦の被本塁打が多いレンジャーズとの対戦を6試合残しているという日程面も、達成を後押しすると述べている。

 

 有識者の間でも意見が分かれる本塁打数の行方。大谷は数々の否定的な声を覆してきた実績があるだけに、今回も再びバットを燃え上がらせ、ぜひとも大台に乗せて欲しいところだ。

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大谷翔平を支える重さ6.9グラムの“秘密兵器” 最新鋭機器「パルス」の正体は?※フルカウント

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国を越え、時を越えた存在となっているエンゼルスの大谷翔平投手。今シーズン二刀流として完全復活できた要因のひとつに、右肘へかかる負荷の管理を細かくしたことにある。それは、重さ7グラムにも満たない「パルススロー(以下、パルス)」と呼ばれる精密機器。黒のバンドを巻いている大谷の姿を見たファンも多いのではないだろうか。その“正体”に迫る。【間 淳】

 

 2018年10月に右肘を手術した大谷は今シーズン、本格的な二刀流復活を遂げた。その活躍を支えているのが、長さ3.8センチ、幅2.5センチ、高さ1センチの四角い機器。重さは、わずか6.9グラムだ。身長193センチ、体重95キロと大柄な大谷に欠かせない小さな秘密兵器なのだ。

 

 このバンドの中に入っているのが秘密兵器の「パルス」。肘にかかる負荷を数値化している。米国のモータス社が開発したものだが、昨年1月にシアトルを拠点にデータ解析をする野球トレーニング施設「ドライブラインベースボール」が買収し、motusBASEBALL専用アプリケーションから「パルス」に変更した。この施設ではメジャーリーガーや、日本のプロ野球選手もトレーニングしている。

 

肘にかかる負荷を数値化し、練習強度の参考にできる

 

 パルスの使い方は簡単だ。身長や体重、年齢などをアプリに入力し、バンドをつけて投球。すると、センサーが測った数値がアプリに表示される。腕を振るスピードや球をリリースする角度、そして肘にかかる負荷が「見える化」される。商品を扱うオンサイドワールドのゼネラルマネジャー八木一成さんは「パフォーマンスを上げるだけではなく、パフォーマンスを出し続ける体をつくってほしい」と語る。

 

 普段から練習で身に付けることでデータが蓄積されていく。投球練習だけはなく、キャッチボールや守備練習でも肘には疲労がたまる。その状態を数字で把握しておけば、けがを未然に防ぐことができる。「モータス」から「パルス」への変更に伴い、新たな機能も加わった。

 

 その1つが、1日の推奨投球トレーニング量の数値化だ。選手によって違う1球ごとの負荷に対応し、その日の投球トレーニングで、どのくらいの投球量や強度がベストなのかが示される。投球トレーニング量が多すぎれば肘の故障につながり、少なすぎれば鍛えられない。八木さんは「客観的な数字をもとに、けがをせず肘の強度を上げるギリギリのラインで練習できる」と説明する。

 

肘に負担がかかりにくい投球フォームを知ることも可能

 

 この数値を確認しながら練習することで自主トレからシーズンインや、けがからの復帰といった中・長期の計画を立てる際は、休みを入れながら段階的に強度を上げていくことができる。肘の強度を構築できたフェーズでは、それを落とさず維持できるように、体の仕上がりや状態に合わせて最適な投球トレーニング量をフィードバックしてくれる。

 

 1球1球リリースの角度と肘への負荷が数字で分かるため、肘に負担がかかりにくい投球フォームを知ることができる。また、全ての投球のうち、強度の高い投球の割合も表示される。この数字を活かせば、翌日の練習はブルペンよりも強度の低い遠投を増やすなど、最適なトレーニングメニューを組むことが可能となる。自主トレからシーズンインや、けがからの復帰といった中・長期の計画を立てる際は、休みを入れながら段階的に強度を上げていく。

 

 データを分析する八木さんが強調することがある。「投球フォームが悪いから肘に負担がかかってけがをするわけではなく、どんなフォームでも負担はかかる。疲労がたまっているのに、無理をした結果けがをすると考えられる。負荷のかかりにくいフォームを完成させても、肘に蓄積された負荷量を見なければけがをしてしまう」。けがを防ぐには疲労度を把握して、練習の量と質を考える必要があると説く。

 

 大谷は今シーズン、登板間隔や球数を緻密に管理しながら二刀流で活躍している。その背景には球団や監督らの理解がある。けがの予防はスタートライン。パルスの目的は大谷のように高いパフォーマンスの維持にある。

 

間淳 / Jun Aida

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大谷翔平の恩師・佐々木洋監督と横浜隼人・水谷哲也監督との〝縁〟※東スポ

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【越智正典 ネット裏】エンゼルスの大谷翔平の先生、現花巻東の監督、当時国士舘大学のキャッチャー、佐々木洋が横浜隼人の監督水谷哲也を慕って、ぜひ横浜隼人で教育実習を…とやって来たのは1997年である。教育実習――。実際に教壇に立って授業を受け持つ。

 

 前拓殖大学監督、元亜細亜大学監督、内田俊雄は教員志望の教え子が教育実習をさせてもらうと、それは感謝し、時間を作り、山形中央高校や高知の明徳義塾など各校を訪れ挨拶し、お礼を述べている。内田が名将といわれる所以である。教育実習はそれほどに大切なのである。この教育実習をすませると、大学で取得に必要な単位を取っていれば教職免許を交付されるのである。

 

 もちろん、佐々木洋も水谷に感謝し、卒業後、横浜隼人の先生になり、野球部コーチを務め、多くを学び故郷岩手に帰り花巻東の先生になるのである。

 

 あるとき、水谷がひょいと「スコアボードは監督の通信簿です」と呟いたことがあるが、彼が貫いた野球をとおしての選手教育は内野、外野の連係プレーであった。人と人との友誼と言ってもいいだろうか。

 

 そういえば横浜隼人の校歌はたたえている。

 

「友よ ひたむきに青春を生き抜こう 憂あれば語り合おう」

 

 着任から18年、2009年、横浜隼人は神奈川大会決勝で桐蔭学園を6対5で破って第91回の夏の甲子園大会出場を決めた。水谷哲也は「18年間は長かったとも、あっという間だったとも思いませんでした。毎日毎日が無我夢中でした」。

 

 横浜隼人の神奈川大会の成績は全7試合、逆転勝ち5試合、1点差勝利4試合、サヨナラ勝ち3試合である。横浜隼人の夏の県大会初出場は79年、1回戦で1対5で寒川高校に負けている。それを思うと見事な戦いであった。

 

 この91回大会に花巻東が岩手代表でやって来た。大会8日目第4試合、横浜隼人と花巻東が2回戦でぶつかった。1回戦は花巻東8対5長崎日大。横浜隼人6対2伊万里農林。感激の対戦だった。花巻東4対1横浜隼人。

 

 それから9年、水谷は佐々木にすべてを託し、令息水谷公省を花巻東に修行に送り出した。親許を離れた1年生のときには淋しいときもあったろうが、逞しく成長し、21年卒業、明治大学に入学入部した。

 

 明治大学野球部では、監督、兵庫県の舞子高校、84年明大卒、田中武宏と助監督、明大中野高校、87年明大卒、高校野球甲子園大会の名審判、戸塚俊美が相談し、選手を実家に帰すより合宿所で部活動を続けたほうが感染対策にいい…と判断して、東京府中若松町の内海・島岡ボールパークのなかの合宿所明和寮で、みんなでこの困難な時代と戦っている。激励に訪れた駿台倶楽部役員理事、元機動力野球の千葉敬愛高校監督、佐倉在住の村山忠三郎が驚嘆している。

 

「水谷公省のバッティングはピカイチです。“御大”(人間力の島岡吉郎監督)に見せたかったなあー」

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「大谷翔平」大活躍のウラで急成長!100万ドルの賞金も稼げる米国「ファンタジースポーツ」事情※現代ビジネス

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今やニュースでその名前を聞かない日がない、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。年間MVPの本命とも言われる彼の活躍は、大リーグの歴史はもちろん、野球のベッティング(賭け)の歴史まで塗り替えつつある。実際のスポーツと連動した「ファンタジースポーツ」において、「二刀流」大谷の登場が想定外だったのだ。

市場が急成長する中で、デイトレードのような楽しみ方も生まれ、旧来のギャンブルとの境界線も曖昧なスポーツベッティングの世界。その最新事情を、米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。

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大谷がMVPの「本命」とブックメーカーも予想

 

 新型コロナウィルスが終焉しない鬱陶しい世の中で、明るい話題が多いのがスポーツだ。先のオリンピックでも日本人選手が大活躍したが、米大リーグ野球で今最も注目される選手は、何と言ってもロサンゼルス・エンゼルスの17番、大谷翔平だ。

 

 今季は8月18日の時点で、打てば110安打、投げては120奪三振に加えて、投球回数でも100イニングスを記録して、歴史的な「トリプル100」を達成した。超一流の「二刀流」は、もはや「日本人だから」と云々されるレベルを超越している。

 

 大谷選手は7、8月と、米大リーグ機構(MLB)のア・リーグで2ヶ月立て続けに月間MVPを獲得したが、マネーの世界はすでに年間MVPも間違いなし、と見ている。なぜならMVPを当てる賭けを主催するブックメーカー(賭け率を提示して勝者に配当する賭け屋、いわゆる「ノミ屋」)のオッズ(配当金)を見れば、8月25日現在、MGMで-3000、ウィリアムヒルでも-2500と、滅多に見られない「マイナス」数字になっているからだ。

 

 つまり、MGMでは100ドルの賞金を当てようと思えば、3000ドルを賭けなくてはならない。この掛け率は、97%の確率で大谷がMVPに輝くと予想しているのだ。大谷に続くトロント・ブルージェイズのブラディミール・ゲレロはプラスの1500ドル(100ドル出して、当たれば賞金1500ドル)だから、こちらは「大穴」扱いとなっている。

 

 8月28日19時現在、大谷選手のホームラン41本はMLB中トップ。長打率(SLG)では2位、長打率と出塁率を合わせたOPSでも4位につけている 。一方、マウンドに登れば防御率は3.00だ。

 

 打撃、走塁、守備、投球などを総合的に評価するWAR (Wins Above Replacement)という指標がある。そのポジションを代わりの選手にやらせた場合と比べて、どれくらい勝利数を上積みさせたかという指標だ。投打合わせた大谷選手のWARは今季8(20日時点)と、こちらもぶっちぎり。

 

 7月のオールスター戦では、MLBが大谷翔平の二刀流「ショー(翔)タイム」を見せたいがために、指名打者(DH)についてのルールまで特別に変更して話題になった。米大リーグ野球の歴史を変えてしまったのだ。

 

 でも、大谷選手がもう一つ歴史を変えてしまった世界がある。それは、野球のベッティング(賭け)だ。

 

オオタニは一人なのか、二人なのか…?

 

 スポーツシーズンになると、米国中のスポーツ好きが熱中するのが、「ファンタジースポーツ」。

 

 これは、自分のお気に入りの選手を集めて架空の「夢のチーム」を作り、その得点を他のプレーヤーと競い合うゲームで、対象は野球のMLB、アメリカンフットボールのNFL、バスケットのNBAのみならず、大学バスケのNCAA(全米大学体育協会)などアマチュアスポーツにまで及ぶ。

 

 米国では圧倒的人気はアメフトで次に野球が続くが、世界を見ればサッカーやテニスにゴルフ、クリケットのファンタジーまである。

 

 スコアリングは異なる方法がいくつもあってかなり複雑だが、ごくシンプルに説明すれば次の通り。自分がファンタジーチームのコミッショナーになったつもりで選手を選び、野球であれば、チームに入れた打者が一塁打を打ったら1点、ホームランなら4点、投手の場合なら勝利投手に4点、などと得点を加算して、他の参加者と総合得点を競い合う。

 

 ところが大谷選手の登場で、「ファンタジー・ベースボール」が大混乱してしまった。運用サイト側が「二刀流」を想定していなかったからだ。大谷翔平を投手、打者のどちらかでカウントするのか、それとも投打ともカウントするのかでは、スコアがまるで違ってしまう。

 

 例えば2017年にヤフースポーツが導入したルールでは、ユーザーは「投手の大谷」か「打者の大谷」のどちらかを選ばなければならない。どうしても投打両方させたければ、「投手の大谷」と「打者の大谷」の二人の大谷をファンタジーチームに入れなければならないのだ。一方、ESPNやCBSスポーツでは、登板がある日には投手、登板がない日には打者としてリストアップして良いことになっている。

 

 どのプラットフォームを使ってプレイするかによって、大谷選手が一人になったり、二人になったりする奇妙な現象が起きているのだ。

 

膨張する「ファンタジースポーツ」市場

 

 米国でのスポーツベッティング(スポーツへの賭け)は、新型コロナによるロックダウンの間に飛躍的に伸びた。 

 

 象徴的だったのが、2月のNFL(ナショナル・フットボールリーグ)の頂上決戦、「スーパーボール」。入場が3割に制限されてスタジアムはガラガラだったのに、ネット上では760万人が43億ドル(約5000億円)を賭け(全米ゲーミング協会)、大盛況となった。前年と比べて6割以上の伸びだ。

 

 その中心が、上記のファンタジースポーツだ。ファンタジースポーツ協会(FSTA)によれば、2017年時点で米国とカナダだけで約6000万人の参加者がいる。新型コロナでリアルのスポーツチームの収入が激減したのを尻目に、ファンタジースポーツゲームの2大大手であるファンデュエルとドラフトキングスの集客は絶好調だ。

 

 公開企業であるドラフトキングス(DKNG)の株価を見ると、ロックダウンの間に250%以上も高騰している(8月25日現在)。最新の四半期売上が前年同期比3倍以上に伸びるなど、事業が急成長していることがその理由だ。

 

「デイリーファンタジースポーツ(DFS)」の登場

 

 ファンタジースポーツは、80年代にニューヨークのレストランに集まったスポーツ雑誌編集者らによって編み出されたとされる。今のようなオンライン形式が一般化する前は、友人ら(圧倒的に男性が多い)が集まって、一人5ドルからせいぜい100ドルくらいを賭ける仲間同士のリクリエーションが多かった。勝った者が賞金を総取りするのが基本だが、賭け金は無しで優勝者にビールを奢るといった、ささやかなゲームもある。

 

 ファンタジーゲームの利点は、それに参加すれば自分の選んだプレーヤーの活躍をつぶさに追うことになるので、スポーツ鑑賞が段違いにエキサイティングになることだ。でも、本来の隠れた動機は仲間とのコミュニケーション。筆者の家人の場合も、遠くに離れた大学時代の旧友らと繋がるのが楽しみでやっている。

 

 ただし、オンライン情報のなかった昔にファンタジーゲームをやろうとすれば、参加者の誰かが全ての試合をモニターし、自分らでスコアをつけなければならなかった。それが今ではESPNやヤフーが無料で統計データを提供して採点までやってくれる。ファンタジーゲームの参加者が2000年以降に爆発的に伸びた理由の一つは、インターネットの普及でゲームが手軽になったことがある。

 

 だが、理由はもう一つある。それは、ギャンブル性の高い「デイリーファンタジースポーツ(DFS)」の登場だ。デイリーファンタジーはシーズンごとの賭けではなく、一回の試合からプレイできて、勝てばすぐに賞金が得られる。2006年に制定された「インターネット・ギャンブル禁止法」の抜け穴に着目してこれを考案したのが上記のファンデュエルというベンチャー企業で、それにもう一社のベンチャー、ドラフトキングスが続いた。

 

 例えば、ドラフトキングスのサイトに行けば、参加料は下は5ドルから上は2500ドルまでいくつか種類があり、最高では100万ドル(約1.1億円)の賞金が出る。

 

 2015年頃までには、新しい財源に飛びつく形で、NBA、NFL、MBAなどメジャーなスポーツ団体がこれらのベンチャーと次々と契約を結んだ。さらに、それまではシーズンごとの「ファンタジースポーツ」を提供していたESPN、ヤフー、CBS、NBCなどの媒体も、オンラインブックメーカーやカジノ企業と提携して、成長盛りの「デイリーファンタジー」事業に進出した。

 

 例えばヤフーとMGMリゾーツ、ESPNとドラフトキングスやシーザーズ・エンターテイメント、NBCユニバーサルとオーストラリアのポイントベッツの提携などがその例だ。資本関係を結んでいるところもある。

 

 世界のファンタジースポーツ市場は、すでに2兆円規模に上ると推測する市場調査もある。こうして今では、テレビでフットボールを見ても、野球を見ても、バスケットを見ても、デイリーファンタジーの広告をやたらと目にすることになった。リアルな試合を見に行っても、競技場スクリーンに何だか以前より多くの数字が並んでいる。デイリーファンタジーをやっている観客向けのサービスだ。

 

スポーツベッティングは「運」?それとも「能力」?

 

 デイリーファンタジーの成長が危ぶまれた時期もある。2015年秋のスキャンダル発生だ。ドラフトキングスの従業員数人が、公開前の内部データ(参加者らがどの選手をどれくらいの確率でチームに入れているかというオッズ)を見た上でライバルのファンデュエルのゲームに参加し、600万ドルの賞金を稼いでいたことが明るみになったのだ。

 

 これを契機に、FBIや州政府の検察当局が捜査に着手した。また依存症となって大金を損した利用者からの集団訴訟も相次いだ。ニューヨークなど、デイリーファンタジーを違法な「賭博(ギャンブル)」として排除する州も出てきた。

 

 だが、今の潮流はデイリーファンタジー主催者に有利な形勢となっている。例えば、昨年のイリノイ州最高裁の判決では、デイリーファンタジーなどのスポーツベッティングはカジノなどの賭博とは異なる、というオペレーター側の主張が認められた。

 

 ここで、あれ? と思われるだろう。金銭を不確実な未来に賭けることでは、スポーツベッティングはカジノと似ている。では、何がどう違うのか? 

 その心は、スポーツベッティングの結果が「偶然 (chance) 」よりも「能力 (skill) 」で決まるから、というものだ。スロットマシーンやサイコロの目なら、参加者のコントロールが効かない偶然だけで結果が決まってしまう。一方、大量のデータを分析するスポーツベッティングでは、参加者が自らの分析能力によって結果を左右することができる、というわけだ。

 

 果たして、たった一回の試合の勝敗を予想するのにほんとに「偶然」より「能力」がモノを言うのかーー。限りなくグレイであり、自治体によっても解釈が異なる。でも、この考え方にも一理ある。何故なら、ファンタジーゲームが偶然任せの賭博なら、株や債券、不動産などへの投資はどうなんだ、という議論が出てくるからだ。

 

 デイトレードをやろうとしているそこの貴方の行為も、運だけに任せた勝負なら、「賭博」として禁止されることになってしまう。

 

 業界にとってとりわけ大きな追い風となったのが、2018年5月の連邦最高裁判決だ。最高裁はスポーツ賭博を禁じたPASPA法について、連邦政府には州を規制する権限はない、と憲法違反の判決を下し、その是非を各州の決定に委ねた。従来はラスベガスのあるネバダ州以外ではスポーツ賭博は認められていなかったから、事実上の解禁だ。

 

 このインパクトは決定的だった。今では別に架空の「ファンタジー」チームなど作らなくても、米国の10以上の州では本物の試合に賭けることができる。デイリーファンタジーの方は、合法化と非犯罪化(事実上の解禁)を合わせると、40以上の州でプレイが可能だ。解禁による経済効果は、業界の推定だと224億ドル(約2.4兆円)に上る。

 

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 実際に、「運」だけではスポーツベッティングに勝ち続けることは出来ないようだ。これで生計を立てる一握りのプロは、過去の対戦実績から天候、選手ごとの成績や怪我など、大量の統計データを駆使して掛け金の振り向け先を決め、常に情報を更新する。フルタイムの「仕事」としてコミットしなければならない。

 

 ブラッドピットが出演した映画に「マネーボール」というのがあったが、データを駆使して常勝チームを作る点では、まさにマネーボールのファンタジー版だ。

 

 日本でもスポーツベッティングがやがて合法化されるかもしれないが、気軽に遊んで勝てるものだと思わない方が良さそうだ。

 

小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト)

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