■試合データ

米国時間:2021年5月16日

日本時間:2021年5月17日(月曜日)

ロサンゼルス・エンゼルス対ボストン・レッドソックス

@フェンウェイ・パーク

 

 

エンゼルスは、2回6番テイラー・ウォードの先制適時打と8番フィル・ゴスリン、9番ドリュー・ビュテラの下位打線にもタイムリーが飛び出し4点を先行。しかし、5回先発ホセ・キンタナがレッドソックスの8番ケビン・プラウェッキにソロ本塁打で2点目を失い降板。継投2番手のアーロン・スレイガーズも猛攻を食い止められず2番ラファエル・ディバースに2ラン本塁打を浴び逆転を許す。9回2死から不調の2番マイク・トラウトがライト前にテキサス安打、続く3番大谷翔平が初球を起死回生の逆転2ラン本塁打を放ち接戦を制した。勝ち星は9回を抑えたマイク・メイヤーズにつき、チームは4連敗でストップ。

 

 

■今日の大谷翔平

【打者】3番DH

5打数 1安打 2打点 1得点 1三振 1本塁打(第12号)

今季通算打率.262

 

第1打席:セカンドゴロ

(状況)1回2死/走者無し

(投手)ネーサン・イオバルディ/右

(カウント)1S

※真ん中高めカットボール

 

第2打席:空振り三振

(状況)2回2死/走者1、2塁

(投手)ネーサン・イオバルディ/右

(カウント)2S

※内角真ん中、96・6マイル(約155・5キロ)の直球

 

第3打席:サードゴロ/失策出塁

(状況)5回1死/走者無し

(投手)ネーサン・イオバルディ/右

(カウント)1B

※内角低め98・6マイル(約158・7キロ)の直球、3塁ゴロだったが慌てたディバースは1塁へワンバウンド送球、ダルベックは捕球できず。大谷の足も速かったので内野安打を期待したが記録は失策

※2死後、ウォルシュの左中間二塁打で生還を狙ったが、本塁タッチアウトとなった

 

 

第4打席:ライトフライ

(状況)7回2死/走者無し

(投手)ジョシュ・テイラー/左

(カウント)初球

※真ん中高め94・5マイル(約152キロ)の直球を捉え、いい角度であがったので、一瞬本塁打を期待したがフェンス手前で失速した

 

第5打席:ホームラン(2ラン)

(状況)9回2死/走者1塁

(投手)マット・バーンズ/右

(カウント)初球

※96・6マイル(約155・5キロ)の内角真ん中あたりの直球を捉え、右翼ポール際へ運んだ。打球速度97マイル(約156.1キロ)、飛距離372フィート(約113.4メートル)、角度36度

※シーズン12本塁打はブレーブス・アクーニャJr.、マリナーズ・ハニガー、ヤンキース・ジャッジに並んでメジャートップタイ

※米メディア『The Athletic』ブレント・マグワイア記者「どの球場も苦手にしないなんて、やっぱり君は異常だ」とツイート

※中継局BSウエストのマーク・グビザ解説者は、大谷のアーチ直前にトラウトがポテンヒットでつないだ際、「得てして、こういう一打が試合の流れを変えるんです。カウントによってですが、これで大谷にきっちりスイングさせられます」と予告めいたコメント。相方のサットン・アナウンサーは、これに「ハッハッハ」と、気のない愛想笑いで応えたが、大谷の一発で豹変した。「何てことだ! やったぞ! 翔平がチームにリードをもたらしました。やりおった、ワオ!」。グビザ解説者は「だから、大谷にスイングさせろと言ったんです! 金を取れる男が、右翼ポール際へ。ありがとう。(敵地)フェンウェイパークで(大谷の愛称)ショータイムだ!」と、鼻高々にかぶせ、打たれた右腕バーンズが打球を見つつファウル方向へ手を振るしぐさが抜かれると「残念ながらファウルではないよ、ミスター・バーンズ」と続けた。

 

 

 

試合後コメント:

――メジャーで一番重要な場面での本塁打になったか。

「そうだと思いますね。(右翼ポール際への打球で)自分では見ていたので、切れないで欲しいな、(フェアゾーンに)残ってほしいなと思って見ていました」

 

――チームにとっても大きい勝利となった。

「昨日、一昨日と負けているので。負け方もそんなに良くなかった。でも、こういう試合を勝てるということは力があると思っているので。ここから波に乗っていけるように頑張りたいなと思います」

 

――トラウトが2番に入り、3番スタメンだった。

「どっちにいても良さがあると思っているので。後ろにいることの良さもありますし、前にいてくれることによっての良さもあるので。どっちにしろ後ろにレンドン選手がいますし、そんなにやることは変わらないかなと思います」

 

――打球が切れなかった。手応えは。

「どうですかね。スピンの効いた打球ではなかったですけど、タイミング、(手の)返しが早かったので。フック気味の打球かなと思います。そこまで(バットの)先ではないですけど、当たり方がそういう感じかなと思います」

 

――逆転2ラン。感情的には。

「すごく大きいと思いますね。今日負けるか、負けないかのはだいぶ大きい。ウチとしてもリリーフでエースクラスを切っているので、なんとか勝てたのは大きいかなと思います」

 

――本塁打争いをしている。

「まだ10本ちょっと。期間もそんなにないですし。打撃の調子もすごく絶好調というわけではない。微調整を繰り返しながら、もっともっと上げていけるように頑張りたいと思います」

 

 

その他情報:

・エンゼルスは大谷翔平の次回登板が日本時間5月20日のインディアンス戦(エンゼル・スタジアム)に決定したことを発表。この試合は3連戦の最終戦で、日本時間午前9時7分プレーボール予定。初戦にはパトリック・サンドバルが今季初先発し、翌19日の2戦目には大谷と順番を入れ替えてアンドリュー・ヒーニーが中5日で先発。大谷は日本時間5月12日のアストロズ戦から中7日での先発ということになる。

 

・大谷は今季初の「3番・DH」でスタメン出場。今季は2番に大谷、3番にマイク・トラウトが入る形が基本となっていたが、ジョー・マドン監督は今季39試合目にしてこの2人の打順を入れ替えた。

 

・大谷は、メジャー最多本塁打のボンズは1本も記録のない“敗戦まであと1死”からの逆転アーチをやってのけた。日本人ではマリナーズ時代のイチローが03年、09年と2度記録。09年9月18日のヤンキース戦でマリアノ・リベラからマークしたイチロー弾以来、日本人2人目となる起死回生の一撃で5連敗を阻止し、自然と感情があふれ出した。

 

・試合後、フェンウェイパークで観戦していたファンや子供たちから受け取ったボールに大谷がサインをする光景があった。翌日に本拠地アナハイムで試合を控えており、チームの移動で時間に余裕がない中でのファンサービスだった。この模様はNHKBS1のMLB中継内でも放映されていた。

 

 

■試合情報

ジョー・マドン監督:

(試合前)

「(登板間隔を空けたのは)今年、200イニングを投げさせようとは思っていない。強い腕の状態をキープする。それがおそらく、彼の力を最大限に生かすことにつながるだろう。(2番トラウトと3番大谷を入れ替えたのは)左打者が続くことを避けたかった」

 

(試合後)

「(今日の勝利は)非常に大きな意味がある。厳しい敵地での戦いだった。勝つべき試合で勝てなかった時もあった。シリーズで勝ち越すことも考えられたが、そうならなかった。今日の戦いぶりに満足している。(大谷の右翼ポール際への打球は)フェアだと思った。(ベンチ内の様子は)誰もが想像する通りだったと思う。火山のように感情が爆発していた。何と言うべきか、とにかく素晴らしかった」

 

アレックス・コーラ監督:

「(右翼の)ペスキー・ポールへの飛球が本塁打になるのは、ここ(フェンウェイ・パーク)でプレーする美点だ。こういうことも起きる」

 

マット・バーンズ投手:

「かつて見た選手の中で、誰よりもフィジカルな才能に恵まれていると思う。100マイルの球を投げて、600フィートの打球を飛ばす人間は他に誰もいない。彼は特別な選手。信じられないほどの才能があり、けがなく長いキャリアを送って欲しい(比類な才能をたたえた)」

 

■メディア

上原浩治氏:

「あそこの場面で打つぅ?? マジ凄いんだけど...ペスキーズポールへ...あの辺りは打球が戻ってくるんだよなぁ。しかも、最短で80メートルちょっと。でも飛距離は問題なかったね ほんまに今年、飛ばないボールになってんの?彼の打球は全く関係ないよね」

 

小早川毅彦氏:

NHKBS1「ワースポMLB」今日の解説担当

「大谷は準備ができていた。決して甘いボールでは無かった。3連戦初戦に変化球をミートしただけでホームランにされたレッドソックスは、2戦目以降昨日今日と、内側へ速球中心で攻めてきて、大谷は討ち取られていた。そんなプロセスを踏まえた大谷は内側への速いボールに対応する準備ができていた」

 

米月刊誌リーズン/ウェルチ編集者:

「大谷は現時点でシーズン50本塁打、120打点、25盗塁、42二塁打、8三塁打、116得点ペース」

 

米著名記者ピーター・ギャモンズ氏:

「これは野球再生の歴史だ。ブラックソックス事件の後にベーブ・ルース、1995年のストライキとワールドシリーズ中止の後にカル・リプケン。そして、パンデミックシーズンの後は、信じられない大谷だ」

 

斎藤庸裕記者:

日刊スポーツ(署名入り記事)

大谷翔平12号逆転2ラン「土壇場力」を生み出した二刀流の好リズム

 

フジテレビ「S-PARK」:

大谷翔平が試合前に必ず投げるカラーボールの秘密。“魔球”を支える2つの存在(FNNプライムオンライン)

 

■note

深夜2時過ぎからの試合。寝惚け眼で最後まで観ていた甲斐があった!9回2死からの逆転本塁打。ゲームセットまでハラハラドキドキの緊迫感あるゲームで見応えがあった。後で録画中継で放送されたNHKBS1のMLB中継を見直した際、試合後に大谷がファンサービスしているシーンをみつけた。「getty images」の写真ライブラリーにも複数の同シーンが入っていた。レッドソックス・ファンかエンゼルス・ファンかわからないが、この日、劇的な逆転弾を観戦体感した後に、お宝をGETできた子供たちは、一生忘れることない思い出になるんだろうなあと思った。大谷は、こういうときのファン心理がわかる男だと、自分は思っている。逆転弾も最高にエキサイトさせてもらったが、このファンサービスにも最高に気持ちいい気分にさせてもらった。また、早く春の聖地テンピに行きたいぞ!

 

大谷翔平12号逆転2ラン「土壇場力」を生み出した二刀流の好リズム※日刊スポーツ

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劇的な幕切れに導いたのは、大谷の土壇場力だった。9回2死、2番トラウトが高々とポップフライを打ち上げた。試合終了か…。だが、これが右翼手、二塁手、中堅手の間に落ちるポテンヒット。奇跡的に巡ってきた打席だった。大谷は直後の初球を仕留めた。「すごい大きいと思いますね。今日負けるか、負けないかでは、だいぶ(違いが)大きい」。今後の戦いにも影響を与える局面で、チームを救った。

 

これまでは決して“土壇場に強い”とは言えなかった。打者に専念した2年前の19年「悔しいのが大きい」と、ふがいなさを痛感した。7月25日からのオリオールズとタイガースとの6連戦で2勝4敗。大谷は24打数5安打の打率2割8厘、1本塁打、2打点。勝負どころで空回りし、これを機にプレーオフ進出への勢いがしぼんだ。20年も同じだった。登板2試合で前腕を故障後に打者専念も、不振に陥った。「悔しさの方が大きかった」。唇をかむ時が続いた。

 

しかし、今季は違う。4月8日のブルージェイズ戦で7回2死三塁から同点打。4月25日のアストロズ戦では8回に決勝弾を放つなど、終盤で勝ちに直結する打撃を重ねる。肉体の成長、技術の充実と並行して精神的なたくましさが際立つ。挫折を乗り越えた者に宿る強さ。それがあるから、結果で示せる。

 

起用法が、大谷を後押ししてくれている面もある。過去2年とは「打者大谷」と「二刀流大谷」の違いがある。かつて、打者のみで出場を続けると「余計な修正をしたりというのが多くなってしまう」と話したことがある。一方で、登板の時は「打者のスイッチを切る。投手を挟むと、次に打者で出るときに何を直せばいいかが分かったりする」。この切り替えのリズムこそ、好循環を生み出す。

 

この日は今季初の3番で期待され、第4打席まで凡退。つまずきながら、最後の最後で実を結んだ。「昨日、一昨日と負けている。こういう試合を勝てるということは力があると思っているので、ここからいい波が来るように頑張りたい」。起死回生のアーチに、ダイヤモンドを回りながら両手を2度たたいて喜びを表現した。出迎えたトラウトとは、声を上げながら強く腕をぶつけた。メジャー59本の中で最高の価値の1本。土壇場で強くなった二刀流大谷の底力だった。

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大谷翔平が試合前に必ず投げるカラーボールの秘密。“魔球”を支える2つの存在※FNNプライムオンライン

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先週も大活躍の一週間だったエンゼルス・大谷翔平。

 

現地時間11日(日本時間12日)には今シーズン3度目のリアル二刀流で先発すると、7回10個の三振の内、6つをスプリットで取る。相手バッターを今、最も苦しめている“魔球”スプリットが非常に冴えたピッチングを見せた。

 

(関連記事:「“ピッチングニンジャ”が語る大谷翔平の凄さ。「メジャーで最も優れたアスリート」の魔球の正体」)

 

そんな大谷をサポートするのは「ベテラン捕手」と「カラーボール」。大谷の“魔球”の凄さと、それを支えるトレーニングに迫った。

 

大谷のスプリットは予測不可能!

「翔平は静かでおとなしい男です。でも一度彼を殻から出すと、本当に面白い人間にあるんですよ」

 

そう語るのは大谷とバッテリーを組む、ベテランキャッチャーの日系アメリカ人・カートスズキだ。

 

そして大谷のスプリットについて、「彼のスプリットを捕るのは非常に難しい。打つのも捕るのも」と驚く。

 

一般的にスプリットは、縦に急激に落ちるフォークと似た球種で、フォークよりも落差は小さく、スピードが速いと言われている。

 

しかし大谷のスプリットは、落ちる以外にも、左右どちらかに曲がったり、真っ直ぐになったり、多彩な変化を見せるため、相棒でさえも“予測不可能”だという。

 

カートスズキは「相手は我々がスプリットを投げることを知っていると思います。が、それでも打てません。だから凄いんです」と絶賛した。

 

その“凄い”スプリットは、今季40奪三振の内、28三振と冴え渡っている。

 

重さの違うボールを投げることで投球の質をUP

チーム唯一の全試合出場を続けながら、全米を驚かせている大谷。そんな過密日程の中でも試合前に必ず投げているのが「カラーボール」だ。

 

これは大谷がオフシーズンに通った、ワシントン州シアトルにあるトレーニング施設「ドライブラインベースボール」で開発されたもの。ハイテク機器で能力を数値化するトレーニング施設でもあり、大谷をはじめ、年間約500人が来場している。

 

2キロ、1キロ、450グラム、225グラム、150グラム、100グラムと重さの違う6種類のボールがあり、約142グラムのMLB公式球よりも重いボールが大半を占める。

 

大谷は練習の際、背後のフェンスに向かって2キロのボールを投げ、次に1キロのボール、その後フェンスと向かい合って450グラム、225グラムと徐々に軽いボールへと交換して投げていく。

 

「ドライブラインベースボール」でトレーニング機器の研究開発を行う研究開発ディレクターのジョセフ・マーシュさん。

 

重いボールを投げた後に軽いボールを投げることで生まれる効果について、「公式球ではごまかされてしまいますが、重いボールを投げると、最も効率的に腕が振れるようになります。逆に軽いボールは腕と体を速く動かせるので、より強く投げられます」と明かす。

 

重いボールで無駄をなくし、軽いボールで力強く腕を振る。この2つの要素を組み合わせることでさまざまな効果が生まれるというのだ。

 

メジャー1年目と比べると、今シーズンの大谷はボールの回転数が2164回転から2385回転と、10%近くアップ。バッターの手元で浮き上がるようなボールを投げている。

 

「年間を通して自分が思い通りに動くような体調管理とメカニック練習が必要かなと思うので、必ず好調・不調があると思いますけど、なるべくその差を少なくしたいと思います」

 

こう締めくくった大谷。ベテラン捕手とカラーボール、この2つの存在が活躍を後押ししていた。

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