話題に事欠かない、2021年の大谷翔平

 

今朝、日本時間5時10分から行われたエンゼルスとヒューストン・アストロズの4連戦第3戦。マイク・トラウトとアンソニー・レンドンの豪打2枚看板を欠いたエンゼルスは、課題となる投手陣がアストロズ打線に滅多打ちにあい18安打16失点と大敗。

 

2番DHで出場した大谷翔平は2回の第2打席に、この試合に急遽登板となった左腕ケント・エマニュエルの真ん中に入ってきた148キロのシンカーをしっかり捉えた。ボールはセンター左の黄色ラインを越えるフェンス柱に直撃する第6号ホームラン。打った大谷は、ホームランとわからず3塁ベースをまわるまで全速力でかけ抜けるハッスルプレーをみせてくれた。大量リードされた8回には、野手が不足する中、なんとDHを解除し急遽レフトの守備にも入る、「見せ場」までつくった。

 

チームは4連敗と今季はじめて借金1と苦しい戦いを続けているが、メジャー4年目の大谷は、打って走って投げて、今日は守って、「二刀流」全快で毎日試合に出場し続けて、我々ファンに楽しみを提供してくれている。

 

 

昨年の今日、4月25日といえば、新型コロナウィルスの影響により、日米ともにシーズンは開幕しておらず、このブログの大谷ネタ探しに苦心していたものだ。ちなみに、昨年同日は、データを使って野球の「未来」を発信していくというウェブサイト『Baseball Geeks(ベースボールギークス)』より発信された記事「大谷翔平の2019年シーズンをデータで評価!今季活躍の鍵は打球角度?!」をブログに取り上げていた。

 

この記事には、開幕を迎える前の2020年打者大谷の課題は、前年とデビューイヤーを比較し打球角度をあげて「OPS」を伸ばすことだと提言されていた。この課題、2020年は既知の通りクリアできなかったが、今季本日終了時点の進捗では、デビューイヤーのOPS .925を上回るOPS .982を記録している。しかも、本人が常々語る通り、序盤は比較的スロー・スターターのタイプだが、今季はスプリング・トレーニングから好調を維持している。

 

打者大谷は、順調なシーズンを迎えているが、投手大谷は2度先発して、奪三振14個、防御率こそ1.04と得点は失っていないが、四死球12個と制球に苦しんでおり球数が増える関係で、まだ8回2/3しか投げていない。スプリング・トレーニング時に裂傷したマメの影響を受けていることは間違いないが、打者大谷と比べると順調とは言えない状況。

 

そんな今の投手大谷のピッチングについて、日米のレジェンド投手二人が、ストレートに辛口コメントを出した。

 

ペドロ・マルチネス

 

 

メジャー通算219勝と3154奪三振を記録し、2015年には殿堂入りも果たしたレジェンド。自分が記憶に残っているのは、マルチネス氏のレッドソックスやフィリーズ時代に、松井秀喜氏と演じた数々の名勝負。中でも2009年のワールドシリーズ第6戦で松井氏に打たれた、ライトへの先制ホームランは何度もみた。

 

そんなマルチネス氏が、米国時間4月21日に放送されたMLB公式番組『MLB Network』で、投手大谷について辛口コメントを出した。

 

「私の経験をふまえて見ていると、彼は何かを欠いている」

 

「能力が足りないというわけではない。彼は持っているものの、使い方を間違っている。球種の正しい使い方をしていないんだ。本来使うべきやり方とは完全に逆の使い方をしている」

 

「100マイルを超えるストレートと落差の大きいスプリットを軸にし、さらにスライダーやカーブなどを投じる大谷の投球術は間違っている」

 

「本来ストライク1、2と先行させるべきで、願わくばバッターにそのどちらかを打たせて、早い段階で打ち取る方がいい。もし、深いカウントになってしまったら、そこで速球の球速もあげて、カーブやスライダー、スプリットと、とにかく自分の持っているものを使うべきだ」

 

 「ただ、今のオオタニがやっていることは正反対だ。変化球でボール、また変化球でボール、そこで速球を投げて振ってもらえるかどうかみたいにね。それは正しいピッチングの組み立てじゃない。彼はコントロールが悪いというよりは、自分が持っている球種の使い方を間違っているんだ」

 

「ストライクを取ることに苦労しているとは思わない」

 

 

出典:THE DIGEST正しい球種の使い方をしていない」大谷翔平の“制球難”をMLB通算3154奪三振のP・マルティネスが分析!

 

マルチネス氏が言わんとしていることは、「理解」はできる。

 

斎藤隆

 

 

横浜ベイスターズからメジャーリーグに挑戦し、強豪ドジャースやレッドソックス等7年に渡り5球団で活躍。国内に復帰してからも楽天で3年プレーし引退した、日米プロ通算23年間現役を続けたレジェンド。

 

この斎藤氏は、大谷が今季2度目の先発登板を果たした4月21日の対レンジャーズ戦で、NHK BSのMLB中継の解説を担当していた。そんな斎藤氏が、昨日朝、ベースボール専門メディア『フルカウント』が配信した取材記事上で、投手大谷について辛口コメントを出した。

 

「ピッチャーとしての若さ、幼さを感じた」

 

「例えば、プロ1年目、2年目の投手が成長過程で見せたマウンドだったら分かるけれど、大谷翔平くらいの投手があの内容だと、幼い感じがしますね。三振かフォアボールか。クローザーが4イニング投げたようなピッチングでは、先発としては厳しい評価になりますね」

 

「初回の制球の乱れから2回に少し建て直したところは評価すべきところではありますが……投手は誰でもゲームの作り方を何パターンか持っている。全ての持ち球の調子がいい時は、何本かヒットを打たれることがあっても無失点に抑えることに苦労はしません。投手が持つ資質が試されるのは、ストライクが上手く入らない時にどうやってゲームを作るか。そういう試合を勝ちに結びつけたり、負けずに終われたりできる投手が、結果として2桁勝利を挙げて、5敗、6敗で堪えられる先発投手になる。大谷選手は右肘を手術したので、メジャーで投手としての経験が少ないことも影響しているとは思いますが、フォアボールを出すのは日米共通してやってはいけないことですね」

 

「誰もが知らない領域。もしかしたら打撃で下半身が疲れている可能性もあるし、そもそも2way(二刀流)の選手にそこまで求めてもいいのかという疑問もある」

 

「レンジャーズ戦で投げ終えた後、大谷選手の表情が冴えなかった。ああいう姿を見ると、本人が求めていたのは『マメができた後で4回無事に投げられてよかった』という部分ではなかったというのが分かりますね。あの冴えない表情から、大谷選手自身がただ投打の両方をやっているだけではなく、投手としても打者としても本気で勝負しているのが分かる。だからこそ、こちらも投手として厳しい目で見たいし、ファンの皆さんにもしっかりした評価を知ってほしいと思います」

 

「投手としては実質、メジャー2年目、3年目。まだまだ経験として学ぶことは多いし、調子の良し悪しは必ずあります。調子が悪い時にどういうピッチングができるか。その基礎となる部分を、今は一生懸命に、嫌というほど叩き込むべきでしょう。レンジャーズ戦でも7四死球を与えながら、結果はゼロに抑えた。これは評価すべき点ですよね。投手・大谷翔平がこの先どこまで進化するのか。そのためにも、今年は重要なシーズンになると思います」

 

 

出典:Full-Count投手・大谷翔平に見えた「若さ、幼さ」 元メジャー右腕が敢えて送る辛口エール

 

試合当日の中継解説で、斎藤氏はこんな辛口トークを展開しなかった。(と思う)こちらの斎藤氏が言わんとしていることも、「理解」はできる。

 

大谷翔平の好む、ピッチング「スタイル」

 

両レジェンドの指摘する内容は、「球種の使い方の間違い」も「調子が悪いときのピッチング」も、素人の自分でも理解できる内容だ。

 

勉強熱心で、「自身の課題」と定めたことならばコーチに積極的な助言を求めることも厭わない大谷が、指摘された二つの考え方や課題解決策を知らないはずはない。そして、やろうと思えば、再現性高くやってみせるのが、大谷の強みの一つだ。

 

たまたま昨日、試合後のジョー・マドン監督も、ダルビッシュ有とともに大谷の再現能力の高さを認めている。

 

「ショウヘイは試合前のブルペンで感覚のいいボールを投げられたとしたら、それを試合に持ち込んで実践できる。ダルビッシュもそうだった。ボールをリリースする時の投球、異なる球種を投げられる能力、私は同じように見ている。試合前に新しい球種をブルペンで投げてみて感覚がよかったら、その試合ですぐ投げられる才能がショーヘイにもある」

 

米国メディアや選手間での大谷は、野球選手としての「能力の高さ」は、メジャーリーガー随一だとしばしば論じられている。しかしそれは、「能力の高さ」であって、未だ怪我で故障が多くシーズンを通して「結果」を残していないとの指摘も必ず加えられる。

 

この指摘も「理解」できる。

 

そう、大谷は「能力が高い」ので、やろうと思えば、「再現性」能力を遺憾なく発揮すれば、レジェンド指摘の課題改善策をできなく無いはずだ。それでも大谷は、レジェンドの指南を試みようとはしない。(はずだ)

 

両レジェンドが指摘する課題改善策は、「結果」を追求する際に、一般的な投手が取り入れる改善策であることに間違いないと思う。しかしながら、大谷はこれまでも「結果」だけを追求してきていない選手。

 

大谷が追求しているのは、自身が好む「スタイル」をもって、「結果」にたどり着こうとしている点だ。

 

最たるものは、大谷の代名詞ともいえる「二刀流」という「スタイル」。今年は「二刀流」という「スタイル」を進化させることにもチャレンジしている。

 

それが、投手と打者両方で出場する「リアル二刀流」であったり、登板前後の休養日を返上して数多く試合に出場し、「二刀流」の価値を最大限発揮して、投打両方で「結果」にたどり着こうとチャレンジしている点だ。

 

少し話が逸れたが、自分が言わんとするのは、大谷は常に「結果」だけではなく、自身の好む「スタイル」も追求しているということだ。

 

投手大谷の追求する「スタイル」とは、四球を恐れない豪速球と落差の大きい変化球(スプリットやスライダー)で、打者を圧倒する「スタイル」。以前に、大谷が四球を出すことを厭わないという類のコメントを何かの記事で読んだ記憶があるが、今見つけられなかった。

 

例えでいえば、日本人メジャーリーガーの開拓者であるレジェンド、野茂英雄氏のような「スタイル」に似ているのではないかと自分は思っている。四球をたくさん出しても、己のアイデンティティである豪速球とお化けフォークでとことん打者を封じ込もうとする、あの「スタイル」だ。

 

 

あの「スタイル」は、極めないと認められないし、極めてしまえば、怖いもの無しだ。投手大谷は、そんな「スタイル」を極めようと、試行錯誤しているのではないか。好む「スタイル」を決めたら、「絶対あきらめない」大谷は、これからも己の道に邁進していくだろう。

 

己の道に励む、そのワクワクする日々にチャレンジしていくことこそが、大谷にとって、最高にハッピーな野球道だから。