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ダルビッシュが絡んだ2対5の大型トレードは年俸保証額が「60億円対5億円」の一方的なトレード※スポナビコラム三尾圭氏

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球団からの正式な発表はまだだが、シカゴ・カブスのダルビッシュ有がサンディエゴ・パドレスにトレードされることがほぼ決まった。

 

 MLBネットワークは、カブスからはダルビッシュと捕手のビクター・キャラティニがパドレスへ移り、交換相手はザック・デービーズと4人のマイナーリーガーの野手と報道。

 

 2対5の大型トレードは、メジャーリーグ経験が「12対5年」、年俸保証額は「5900万ドル(約60億7700万円)対525万ドル(約5億4075万円)」と10倍以上の差がある一方的なトレードとなる。

 

 このトレードの目玉はもちろん34歳のダルビッシュ。メジャー在籍年数が9年のダルビッシュは、2018年2月にカブスと結んだ6年総額1億2600万ドルの大型契約があと3年残っており、3年間で5900万ドルが保証されている。

 

 カブスではダルビッシュの専属捕手を務めた27歳のキャラティニは、メジャー経験が3年で、2020年の年俸は59万2000ドル(63%の年俸削減前の契約年俸)。21年の年俸はまだ決まっておらず、今オフに初めて調停権を得た。

 

 パドレスからカブスに移る5選手の中で、唯一メジャー契約を持っている27歳のザック・デービーズは、メジャー経験が5年の投手。2020年の年俸は525万ドルで、来季の年俸は未定。21年も1シーズンをメジャーで過ごせば、来オフにはフリーエージェント権を手にするので、来季はシーズン途中にカブスからトレードで放出される可能性は高い。

 

 マイナーリーガーは遊撃手が2人と外野手が2人。

 

 遊撃手は20歳のイエイソン・サンタナ(ドミニカ共和国出身)と17歳のレジナルド・プレシアド(パナマ出身)。

 外野手は今年のドラフト2巡目で指名されたカナダ出身の18歳、オーウェン・ケイシーと、ドミニカ共和国出身の18歳、イシュマエル・メナ。

 

 マイナーの4選手全員が20歳以下と若く、MLB公式サイトの球団内プロスペクト・ランキングによると、プレシアドがパドレスのマイナーで11位、ケイシーが13位、メナが15位で、サンタナは16位。悪い選手ではないが、パドレスのトップ10に入る有望株はおらず、荒削りな若い選手たちなのでギャンブル性が高い。

 

 4人の中で1人でもメジャーのレギュラーに定着してくれれば良いといった感じである。

 最近のメジャーリーグ、いやアメリカのプロスポーツ全体では、チームを再建するときには中途半端ではなく、完全に解体してしまうケースが多い。

 

 数年前のアストロズが良い例で、主力選手との交換でマイナーの有望株を集めて育成していく。チームが弱い間はドラフトでも高順位となるので、そこで将来性が高く、将来のチームの中心を担える選手を指名する。

 

 アストロズは2011年のドラフト1巡目でジョージ・スプリンガー、12年1巡目でカルロス・コレア、15年1巡目でアレックス・ブレグマンを指名。この3人のドラフト1巡目指名選手は、2017年の世界一に大きく貢献した。

 

 2020年に14年ぶりとなるプレイオフ出場を果たしたパドレスも同じで、2016年シーズン途中にオールスター投手のジェームズ・シールズとの交換トレードで、マイナーリーガーだったフェルナンド・タティースを獲得。20年に新人ながら活躍したジェイク・クロネンワースもマイナー時代にトレードで獲得した選手。

 

 タティースが成長するタイミングで、大物FAのマニー・マチャドと契約して勝負に出て、このオフはダルビッシュとスネルをトレードで獲得と、積極的な補強に動いた。

 

 この2つのトレードを可能にしたのも、数年かけてマイナー組織を整備して、充実させたからに他ならない。

 パドレスとカブスのトレードは、今はパドレスが一方的に得したトレードに見えるが、5年後には違った評価がでるかもしれない。

 

 メジャーでチームを再建するには、このくらいの荒治療が必要なのだ。

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ダルビッシュとスネル、キムを手に入れたパドレスの野望は、来年のワールドシリーズ優勝にとどまらない※スポナビコラム宇根夏樹氏

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サンディエゴ・パドレスが、大型補強を行った。立て続けに2件のトレードを成立させ、タンパベイ・レイズからブレイク・スネルを得て、シカゴ・カブスからはダルビッシュ有(と専属捕手のビクター・カラティニ)を獲得した。さらに、韓国のキウム・ヒーローズにいたハソン・キム――ポスティング・システムを利用し、メジャーリーグ移籍をめざしていた――も手に入れた。いずれも公式発表は出ていないものの、まず間違いないだろう。

 

 スネルとダルビッシュは、ディネルソン・ラメットとともに、ローテーションの三本柱を形成する。2018年にア・リーグでサイ・ヤング賞を受賞した左腕と、2020年のサイ・ヤング賞投票でナ・リーグ2位と4位にランクインした右腕2人だ。彼らに続く4番手は、クリス・パダック。最後の1人は、エイドリアン・モアホンかマッケンジー・ゴアとなりそうだ。

 

 一方、キムのポジションは確定していない。内外野を守る、スーパー・ユーティリティとして起用される可能性もある。パドレスの内野は、マニー・マチャドとフェルナンド・タティースJr.が三遊間コンビを組み、一塁にエリック・ホズマー、二塁には2020年の新人王投票2位タイのジェイク・クローネンワースがいる。外野は、左から右へ、トミー・ファム、トレント・グリシャム、ウィル・マイヤーズの3人だ。グリシャムは2020年に、ゴールドグラブを受賞した。

 

 また、クローザーはドルー・ポメランツが務める。正捕手がオースティン・ノラでは少し心許ない気もするが、ルイス・カンプサノもいる。10月にマリファナ所持で逮捕されたことはさておき、カンプサノはプロスペクトだ。USAトゥディのボブ・ナイテンゲールによれば、ダルビッシュの交換要員の一人として、名前が挙がっていたという。

 

 ストーブリーグはまだ終わっていないが、この顔ぶれであれば、ロサンゼルス・ドジャースの地区9連覇を阻み、球団初のワールドシリーズ優勝を狙える。しかも、このなかで来オフにFAとなるのは、ファムしかいない。2022年のオフにFAも1人だけ。マイヤーズのオプションを破棄した場合だけだ。あと3シーズンは、このメンバーが揃う。

 

 今シーズン、14年ぶりにポストシーズン進出を果たしたパドレスは、ここから黄金時代を築こうとしているように思える。

 なお、カブスがダルビッシュを放出した理由については、トレード前にこちらで考察した。

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