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ハマらない「栗山マジック」。もう一度、気持ちをつくり直そう【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#108】※ベースボールチャンネル

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オールスター明けから好調だったファイターズが、8月に入り黒星街道まっしぐらだ。

この悪い流れを断ち切るためにはどうするべきか?

 

中田離脱で4番打者不在

 驚いている。ファイターズはお盆の東京ドーム3連戦を全敗し、何と9連敗だ。8月の通算成績は実に1勝12敗(8月16日現在)と黒星街道まっしぐらである。7月31日の時点で首位ソフトバンクに0.5差と肉薄したにもかかわらず、わずか半月の間に借金2の5位転落。「5割復帰」「Aクラス確保」が当面の目標になってしまった。

 

 7月が絶好調で猛烈な追い上げを見せていただけにすっかり拍子抜けだ。ファイターズの地力はこんなにもろいものだったんだなぁと考えさせられる。今回のコラムは「緊急特集」のイメージだ。8月大失速の原因を考え、僕なりの処方箋を書きたい。とにかくAクラスさえ確保すればCSでワンチャンあるのだ。明日につながる戦いができる。凹んでいてもしょうがないだろう。前向きに考えてみよう。

 

 と、第一に挙がるのが「レアード流出の手当て」という問題だ。直近の東京ドーム3連戦がロッテ戦であったから、なおさらその感が強いのだが、もし今、レアードがいたら(もしくは30本ホームランを打つ新外国人がいたら)どんなに助かったか。今季のロースターを見ると、外国人選手の補強は王柏融を唯一の例外として全員、ピッチャーだ。レアード流出の穴は清宮幸太郎の成長、王柏融の加入で補えるという判断だった。が、清宮も王もケガでフル稼働できなかった。特に清宮は大誤算だった。ケガ明けの急仕上げで絶不調をかこっている。王はよく日本野球にアジャストしているのだが、不運なことに負傷が続いている。

 

 そして中田翔が手首を痛めてしまった。バットが強く振れない状態だという。4番の重責は近藤健介と清宮が担うことになった。つまり、打線にホームランバッターがいないのだ。まぁ、清宮、横尾俊建はそのタイプだが、揃って不調である。それに近いのは大田泰示、渡邉諒だが、純粋なホームランバッターではない。近藤、王は好打者であることは折紙付きだけど、ドカンと試合をひっくり返す迫力はない。つまり、レアードが果たしていた役割、「下位打線でランナーをおいて、たまにガツンとまとめてくれる」「中田に何かあれば4番を務める」をこなせる選手がいない。

 

 これは危機管理的にぬかりがあったと言われてもしょうがない。王は中距離砲、清宮は2年目なのだ。もちろん、レアードの代わりに獲る新外国人が働いた保証はないのだけど、やることをやった上でアテが外れるのとやらないのとじゃ大きな違いだ。

 

 まぁ、そのくらい8月のファイターズは打てない。1点がほしくて2塁走者をギャンブル気味に本塁突入させてあえなくアウトになったりしている。1点2点を取るのが本当に大変なのだ。点差をつけられると追いつける気がしない。渡邉諒がいちばん期待できる存在だ。下位にレアードがいればなぁ。四球の走者が出たらゴツンと点差を詰めてくれるのに。

 

深刻な先発駒不足

 一方、投手陣に目を転じると、第二に「試合をつくれる先発の駒不足」を指摘せざるを得ない。そんな頼れる先発は現状、有原航平ただ一人だ。まぁ、上沢直之のケガがここでも影を落としている。ケガに祟られるシーズンだ。シーズン当初はマルティネス(右前腕屈筋損傷)が戦列復帰する夏場をスパートの時期と胸算用していただろう。上沢有原マルティネスの3本柱に、オープナーをうまく組み合わせ、投手力のチームをつくる発想だ。それが上沢の離脱、マルティネスの遅れ(ようやく復帰のメドが立ってきた)で思うにまかせない。

 

 オープナー、ショートスターターの比重が必然的に高まり、(僕個人は新しい試みとして面白いと考えるけれど)野球が落ち着かなくなった。どんどん目先を変えて、対応される前に継投してしまう戦法だけど、何人も出すうちに誰か一人は調子落ちしてる投手を使うことになる。打線が湿ってるときにはビシッと抑えて、耐えてもらいたいものだが、それが叶わない。ポロポロと先に失点する。繰り返すうちに何となくチームのテンションが下がっているのだ。大胆シフトもそうだけど、何でやってるのかわからなくなってくる。勝ちに結びつかない「新しい試み」のつらいところだ。手段の目的化。勝つためにやってるんじゃなくて、やるためにやってる(?)感じがしてくる。

 

 僕はオープナー、ショートスターター導入、新シフト導入が栗山英樹監督の意向なのか、球団方針ありきなのか知りたい。ていうか、まぁ正攻法で訊いたら「そこは合致している」以外の答えが出るわけないのだが、そのニュアンスが知りたい。興味津々だ。まぁ、栗山さんは三原脩を尊敬している人だから新しいアイデアが大好きだ。日本で大リーグ式の新機軸を実施するなら栗山ファイターズだと僕も思う。が、今、もしかしたら栗山さんのなかで「オーソドックスな野球スタイルに戻したい」と「いや、始めたことはやり切らなきゃ意味がない」が戦ってるんじゃないかと想像する。それくらい苦しいということだ。

 

もう一度気持ちのつくり直しを

 そのテンションの下がり方という話でいくと、第三に「栗山マジックのインフレーション」という問題も見えてくる。栗山さんはストーリー立てが上手だ。チームに物語をつくり、それをエネルギーに変える。まぁそれは「大谷翔平の二刀流」を代表作として、ファンなら思い当たることがいくつもあるだろう。基本スタイルは「こうなったら盛り上がるなぁ」というキャスティングをすることだ。2軍から上げた選手はすぐスタメン起用する。移籍してきた選手は古巣にぶつける。選手の出身地などをチェックして「ご当地起用」する。プロデューサー感覚なのだ。このお盆シリーズは高校野球シーズンと重なり、去年、甲子園で活躍した吉田輝星や万波中正を大抜擢した。うまくハマって活躍したら新聞の大見出しになるところだ。

 

 それがハマらない。チーム状態が悪いときに高卒ルーキー起用は当然、リスクだ。そんなの百も承知で出してるんだが、結果は散々だった。で、散々でもいいという考え方もあるのだ。その失敗からワカゾーは学ぶ。どうせ連敗してるんだからワカゾーに経験を与えよう。

 

 だがもちろんのこと、ワカゾーに経験を与えてる場合かというツッコミも飛んでくる。先に連敗を止めろ。いや、冷静に考えて選手層が薄いところにケガ人が出てしまったのだ。将としては用兵に苦しむ。そこで「天命がある」と清宮を4番に据え、「神様が決めたことをこちらが逃がさないように」と万波ををスタメン起用した。で、うまくいけばドラマだけど、うまくいかなかった。「栗山マジック」のインフレだ。

 

 僕はチームに同じ方向を向かせることだと思う。ホームランのないチームは気持ちでつないで勝つしかない。その気持ちの部分だ。僕はオープナーも新シフトもいいと思う。「栗山マジック」も好きだ。だけどチームに納得させて、魂を入れなきゃやっぱりダメなんだと思う。今はテンションが下がっている。それは見ているファンの側も。

 

 投打とも選手が足りず苦しむチーム。足りないなら補い合ってチームワークで戦うしかないだろう。同じ方向を向く。「方向を向く」は畳語かもしれないが、まぁいいじゃないか。お盆シリーズのファイターズは本当に元気のないチームだった。あんな元気のないチームは勝てないよ。だけど、1勝12敗ってほど弱いチームでもないだろう。もう一度気持ちをつくり直そう。ここから先、雑になったら何にも残らない。チームワークで戦って、そのブレイクスルーを若手に教えよう。

 

えのきどいちろう

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大谷翔平、適時内野安打で50打点到達も…69打席本塁打なし、エ軍は連勝止まる※フルカウント

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■Wソックス 7-2 エンゼルス(日本時間17日・アナハイム)

 

 エンゼルスの大谷翔平投手は16日(日本時間17日)、本拠地ホワイトソックス戦に「3番・DH」で8試合連続スタメン出場し、4打数1安打1打点だった。3回の第2打席で適時内野安打を放ち、今季50打点に到達。しかし、エンゼルスは2-7で敗れ、連勝は「2」で止まった。大谷は自己最長の69打席連続本塁打なしとなった。

 

 大谷は初回、無死一、二塁の好機で打席に立ったが、先発右腕ジオリートの前に空振り三振。しかし、2点を追う3回1死三塁ではチェンジアップを二遊間に転がし、快足を飛ばしてセーフ。三塁走者のフレッチャーが生還して二塁への適時内野安打となり、エンゼルスが1点差に迫った。

 

 5回1死走者なしの第3打席は左飛に倒れた大谷は、7回無死一塁ではニゴロ。すると、エンゼルスは8回に4点を失い、5点ビハインドとされる。そのまま敗れ、連勝は2で止まった。

 

 大谷は7月27日(同28日)のオリオールズ戦の第2打席で15号ソロを放って以来、69打席連続で本塁打なしに。前日まで3試合連続マルチ安打、6試合で5度目のマルチ安打としていたが、この日は1安打に終わった。

 

 大谷の今季通算成績は85試合出場で打率.295、15本塁打、50打点となった。

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