これまでの議論でスポークの曲げを利用する組み方をする場合には、ハブのフランジ穴とスポーク、リムとニップルというスポーク端を保持する箇所が完全固定に近いほうが有利であろうという説を展開してきました。

 そしてフランジ側では首曲げスポークは穴にはめ込まれて主に摩擦力で保持されているので、通常の状態では滑りを生じる可能性があるでしょう。
 リム側では穴にニップルが嵌め込まれて噛み合うように固定されますので、張力が十分に作用していれば固定力も大きく、滑りが生じる可能性は小さいのではないかと考えています。



 ですのでホイールを考えるとき、リムとスポークは固定されているものとして取り扱うとよいのではないでしょうか。
 リムとスポークが一体化された部品であり、そこから伸びたスポークがフランジ穴に引っかかってホイールを構成しています。
 フランジが回転するにつれてスポークに駆動力が作用しはじめ、スポークに並行な方向成分が張力となり、垂直方向の成分がスポークを曲げます。

 後に記事にしますがスポークの結線も、このようにリム側から観察していったほうが理解しやすいのではないか、そのような印象があります。


 スポークをフランジ穴に固定する要因となるものは (1)摩擦力 (2)凹み の2つを挙げています。

(1)摩擦力 は、スポークとフランジ穴間に働く摩擦力です。
 鉄橋のようなトラス構造において復数の部材を金属の丸棒(ピン)で連結し、溶接などの一体化はなされません。ですので部材に作用する荷重を計算するとき連結部におけるモーメントはゼロであると見なし計算式をつくります。
 しかしながら部材とピンの間には摩擦を低減するような仕組みはなく、組立時にグリースなどの潤滑剤を使用することは想定されますが、通常は金属同士が擦れ合う摩擦力が存在しています。
 通常のトラスでは、この摩擦は無視して計算を行いますので「ホイールはトラスである」説でも同様にフランジ穴とスポークの摩擦は無視してきました。
 しかしながら実際のホイールを観察したり、張力が作用するスポークの曲げ試験をしても、スポークの頭が実験開始の角度から変化している様子は確認できませんでした。
 そのため、ホイールの場合は摩擦を無視することはできないと結論づけています。

 摩擦力は摩擦係数と荷重の積で決定されます (F=μN)
 アルミーステンレス(鉄)間の静止摩擦係数はおおよそ0.6程度と言われてます。
 動摩擦係数はこれよりも低い値となりますが、具体的な値は実験をしなければわかりません。というのも動摩擦状態は大変不安定な状態であり滑り速度や摩擦面の状態、荷重状態の影響が大変大きく、代表値を求めることが困難であるからです。ここでは仮に動摩擦係数 μ’=0.4としましょう。

 そもそも、理想状態(表面に汚れや液体が存在しないとき)の値ですので、そのまま現実の環境に当てはめることはできませんが、仮に適用するのであれば100kgfの張力が作用している場合の摩擦力は60kgfになります。滑りが生じたときは動摩擦となり40kgfとなります。
 この値が上限値となり、実際の状況で何kgfの摩擦力が作用していると述べることはできませんが、それなりの大きさの摩擦力が存在していると推測できます。
 ですのでスポークに曲げが作用しているとき、その摩擦力の上限は60kgf、下限が40kgfとなって、その間で変化すると考えてよい。


(2)凹み は、スポークがフランジ穴に食い込むことで発生する機械的な拘束を示しています。
 近年のハブは胴体がアルミ合金で作られていることが多く、フランジにスポークが食い込んだあとが見られます。このフランジにできた凹みはスポークの首を拘束し、自由に回転することを妨げます。回転するためには、凹みの縁を乗り越えなければならず、それが拘束力となって作用します。

 もし凹みが充分に形成されない場合(フランジが鉄製など)は、この拘束が成立せず、摩擦力のみに頼ることになります。



【検証が必要な仮説】
 ※以下は妄想を含んだ仮説の羅列になります。話3割でお願いします。

 記したようにフランジの穴にスポークが食い込んで機械的な拘束を作り出すことで、曲げによる伝達を強化できる可能性を示しました。
 アルミ合金製の場合は素材が柔らかいので食い込みが発生しやすい。鉄製のハブの場合はアルミ製ほど大きな食い込みが発生せず、機械的な拘束も弱い。
 

 故に、スポークの回転を押し止める為の工夫が必要となり、その一つが結線である。
 

 結線を施すことにより、摩擦力と凹み拘束以外に拘束が生まれ、曲げ伝達に変化が生じる。(伝達を強化するか、弱化するかを含めて検討の余地あり)

 アルミ製のハブ・フランジについても、食い込みが発生した後に、そこからスポークが抜け出そうとする動きを阻害する(片持ち梁状態になりにくい)可能性がある。検証の必要性があります。

 

 つまり、スポークが交差するところでお互いに接触させていない場合、荷重が作用するとスポークが外側に膨らむように変形します。すると、フランジ外側にあるスポークは自身がフランジに付けた凹みから外れるように移動します。

 それによって固定が解除され、自由に動けるようになってしまう。

 

 

 これを防ぐために何ができるかを考えると、交差する箇所で接触させることが一つ、考えられます

 

 ただし接触させているだけでは、滑ってズレてしまう。

 より結合を強固にするためには、どうするべきか。

 何らかの方法で剛接合してしまおう、というのが"結線"と呼ばれる作業ではないでしょうか。なんとなくですが「結線は昔の技術」という話と、「近年は鉄製ではなくアルミ製のハブが主流」という話が繋がっているような気がします。鉄のフランジにはスポークが強く食い込まない。よって固定が弱いので結線によって結合を強化していた。アルミ製フランジにはスポークが食い込んで、そもそもの固定が強いために結線をする必要がない。

 考えすぎでしょうか。