殺人未遂じゃないのか? | las macas

殺人未遂じゃないのか?

首を絞められたことがある。行きずりの、通り魔に。
これで私、死んじゃうのかな?
と思った。
死ぬことがそんなに怖くはない自分に驚いた。
常々
いつ死んでもいいとは思っていたけれど
本当に死んでもかまわないと思う自分に驚いた。

そうか、私、死んでもかまわないんだ
そう思った。
死んじゃうのはいいけど、ここでこうして死ぬのは困る
と思った。
世間体が悪いから。
私はいいんだけど、残された人たちが困るだろう。
それに、ここでこんな風に殺されてしまったら、友人達はどう思うだろう
そう思った。

その内、締められている間息を止めていれば、
そう苦しくないことに気付いた。
ときどき緩められる手の力に、
この人、私を殺す気はないのだ
そう思った。

力が緩められた瞬間
思い切り息を吸って
思い切り叫ぶ
殺されると困るから。

殺されることはないとわかりながら
殺されると困ると思うのはおかしい。
でも、間違って殺されてしまうこともあるし、
そうなる前に
誰かが気付いて
この人を追っ払ってくれるといいと思った。

この時間が
早く終わるといいと思った。

どのくらい時間が経ったのかはわからない。
気付いた人がやってきて、
首を絞めていた人は逃げていった。

あの人は私の首を絞めて
何をしたかったのだろう?
腹いせ?

道すがら、
ずっと口説きまくって
最後に
私が
どうして?
と聞いたとき
目の色が変わった

口説きまくっている間の言葉
それまでに全て語り尽くしたのに
どうして?
と訊いたのがいけなかったのだろうか?

未だにわからないよ。
誰でも良かったのだろうに
口説く相手は。

ほんの数分間
語った言葉を
受け入れなかった私。

それだけのことで。