今日、家に帰ってポストを見たら、
お向かいさんの郵便受けに白いテープ貼られてて、受け口が閉鎖されてた。
そうだ、引っ越したんだったと思い出した。
お向かいのはまさんが引っ越した。
2月最後。さいごのさいごの日に。
お向かいさんには仲良く親切にして頂いていたので、ちょっと寂しい。
向かいのドアのポストにも同じく白いテープが貼られてた。
テープが蛍光灯の光にあたるさまに、その頼りなさに、
つい、くうどうの部屋の中を思ってしまう。
もう誰もいないはずの、これからしばらくはいないはずの部屋の中を想像してみる。
家具ももう全部ない、からっぽのはずの部屋。
晴れたり曇ったり太陽の光が床に落ちたり真っ暗だったりして、
でも誰もいない部屋。寒かったり暑かったり、
私の家のドアがバタンとしまる音が響いたりして。誰もいない部屋に。
くうどうの部屋はなにを思うんだろう。はまさんが過ごした部屋。
はまさんの前に住んでいた女の子が過ごした部屋は。
入ったこともないのだけどそんな向かいの部屋のことを思うと
ちょっと寂しいような不思議な気持ち。
人よりも物の方が、残された物のことの方がなんか悲しい。
ひとつのかたちの完全なる終止符をうった、という証明みたい。
昔実家が近所のアパートに引っ越すことに決まったとき、
引っ越し前の家にまだ住みつつ、新しい家の中にも入れる状態が一瞬あって、
歩いて5分くらいの場所やったから、そんな時ひとりで新しい部屋に上がっては
ぼんやり外眺めたり、部屋の何もなさや光の入り具合をたどったり、思いを巡らせたり本を読んでたりした。そんなこと思い出した。
あのころは何月だったっけ。
梅の花が咲くころに、やはり出会いと別れがあるのやね。
そう、春だわ。
エマル