映画化されたのは知っていますが、ドラマ化もされたんですね。

八日目の蝉 (中公文庫)
八日目の蝉 (中公文庫) 角田光代

中央公論新社 2011-01-25
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希和子は不倫相手の子供(恵理菜)を衝動的に連れ去り、そのまま逃亡。

希和子はその赤ちゃんが愛おしくて、密かに育てようと逃避行を続けるが、4年後に警察に捕まる。

4歳になった恵理菜は実母の元に返されるが、実母は恵理菜をうまく愛することができない。

恵理菜も実母に対し不信感を抱くようになり、好きになれず、大学の合格を機に一人暮らしを始めるが、妻と子供がいる男性の子供をみごもってしまう…。


原作は時の流れ通りに話が展開していきますので、理解しやすいです。

難しい表現もないので読みやすかったです。


小説を読んでから映画を見てみましたが・・・


小説より映画のほうが面白いというか感情を揺さぶられました…。


すごく意外でした。


小説の恵里菜の両親は非常に醜い人間です。


母親は自分も不倫してるくせに、旦那の不倫相手希和子を執拗にいじめるんです。

父親も希和子が妊娠したら下ろせと言いました。 妻に知られるとますます離婚できなくなると説明していましたが、妻の方が大事だよって言ってるように聞こえて希和子がなんかもてあそばれてるみたいで…。

悲劇の末に無事に恵理菜が戻ってきたというのに、両親揃って育児放棄というか、言動も行動も身勝手な部分が多く、希薄な夫婦でがっかりしました。

恵里菜を見るたびに希和子に対する憎しみがわくのはわかるけど、恵里菜に罪はないわけですし、母親がもう少し大人にならなきゃ。


映画の方はそのあたりがあまり深く掘り下げられず、さらっと流されてました。


あんまり家族がドロドロしてたり、両親が希薄で醜いと、恵里菜の感情を理解しようとするときに難しくなります。


恵里菜が気に入らないのは、だらしない両親のことではなく、自分をさらった希和子という女性。


恵里菜の人生は誘拐されたことにより、世間から注目され、両親はバッシングを受け、辛い生活を強いられてきたので、人生をめちゃくちゃにされたことに怒りを覚えているのです。


でも捕まるまでの4年間、嫌な思いも辛い思いもしていない。


恵里菜は、希和子という存在が憎いけど憎みきれない…考えるほど嫌になる存在…。


だから過去から逃げてたんですね。


千草という女性に再会したことにより、過去と向き合うわけですが、写真館に残されていた希和子と幼少時の自分の姿が映った家族写真を見て、純粋に子供を愛する母親像がそこにあり、自分も母親になると決心できたわけです。


と私は勝手に解釈しました。


お腹を痛めた子供でもないのに、純粋に恵里菜を愛した「愛のカタチ」


いろんな愛のカタチがあるのは当然だとは思うんだけど、どうしてもやりきれないですね…


恵里菜は希和子のことを許すことが出来たんだろうか?


井上真央さんの表情からは読み取ることができませんでしたので、そこは見る人に感じてもらいたかったかもしれませんね。


映画で胸が苦しくなって切なくなったのは久しぶりでした。