沖縄に移住してもう19年経ちました。この間に、カート仲間もできてレースも再開できたし、南国ライフを楽しんでいます。ですがレースも2012年に大きな病気してしまい、泣く泣く引退・・・病名が判明するまで10日ほどかかり、そこから緊急入院しましたが、最初の2週間で20kgも一気にやせ細り、それまで維持してきた筋肉がほとんど落ちてしまい、特にカートレースは首周りの筋肉がプロレスラー並みに強くないと首を支えられずにまともに走れません。これで大好きだったレースを諦めざるを得なくなり、2ヶ月入院、その後も3ヶ月ちょっとは自宅療養で、ウォーキングなどできる自主的にリハビリ始めました。

レース現役時代からトレーニングは習慣化しているので、リハビリ自体は辛くはなく、今もその時々のコンディションや自己目標に沿ってメニューを工夫しながらトレーニングは続けています。

 

で・も・ね・・・

 

自分にとってレースだけが、レースでお互いマシンの限界目一杯のところで、心理戦、マシンのバランスや特性、戦術、そういうすべてを尽くしてバトルしている刹那の自己開放といういうか自己集中の時間を失ってしまい、トレーニングも目標や動機を失いがちになりかけた数年前から音楽趣味を20年ぶりに再開したんです。
 

居住地の沖縄には、周りに誰一人として音楽仲間はいません。それで自分で演奏を打ち込み、ギターとベース、弾けるものは弾いて、歌とコーラスはもともと大好きでしたから、とにかくたった一人でできる、DTM・宅録を始めました。

 

しかし一人で宅録やってるだけって、寂しいわけですよ。自分以外誰も聴いてくれないし、誰かと一緒に歌ったり演奏したりする楽しさや臨場感が、音楽を演る側にとっての最大の醍醐味だと思うのですが、それが充たされない。

 

それでOK Musicという音楽SNSが当時ありまして、そこに一人多重録音で、カーペンターズとかGAROとか、好きな曲を歌ってハモって公開し始めました。

 

今回の主役、Tropfennotizさんは、男女2人のユニットで、2人とも作詞作曲しますし、演奏もやります。そのTropfennotizさんの楽曲はどれもクォリティがすごくて、なんでメジャー・デビュー、でないとしても、各種フェスでそれなりの名声があって然るべきでしょって、実力派でした。だから彼らのオリジナル曲が公開される度、必然的に(お気に入りアーティストに登録するから)毎回聴いて、聴くと感動したりびっくりしたりで感想を書き込んだりしてるうちに、お互いの曲公開でコメントのやりとりをさせていただくようになった方たちです。

今でも僕は沖縄で一人で音楽やってるので、ここ何年かいろんな方とコラボさせていただけるようになりましたが、すべて県外の方ですから、ネット経由の友達というわけです。

 

しかしTropfennotiz(以後、トロフェンさんと略称にさせていただきますね)のお二人は、僕が急に帰省することになり、そしたらたまたま別の音楽SNS友達の方のCD発売記念ライブで5曲ステージで歌う機会をいただきまして、なんとそのライブに足を運んでくれた3人のうちの2人なんです。

 

ネットで、タイピングされた文字のやりとりと、歌声しか知らなかったのに、初めてお会いできて最初の一言目から、全く初めて会った気がしない・・・そんな貴重なご縁のあるお二人です。

 

これまでに何枚もアルバムを出されていましたが、先日最新作を購入できました!それがまた素晴らしい出来で(僕ごときが偉そうに言うか・・・(-.-;)、届いてからリピートして聴き込んでいるのが今、現状です♪

 

ちなみに、視聴もできるので、ぜひ聴いてみてください。
僕が絶賛しているのもご理解いただけるかと思います。

 

 

 

今回のニューアルバム、実はちょっと驚きながら聴いています。というのも、今までのトロフェンさんのアルバムは、それぞれテーマ性もあるし、曲のバリエーションもよく工夫されていましたが、常に「この音がトロフェンです!私達の音楽です!」って基本というか土台が同じスタンスにあったように感じていました。う~ん、抽象的でこれじゃわかりませんね。
例えていうと、ZARDやEvery Little Thingのような、ロックをベースに女性ヴォーカルがドラマティックに歌う。そして例えにあげたZARDやELTはヴォーカルがどこか日本人好みを意識してなのかたまたまなのか、ちょっとアイドルチック、よく言えば可愛いらしさ、逆にいえば芯の強さが声に足りてない・・・そういうイメージを持ってます。あ、僕は、似たようなスタイルの洋楽と比較しているので(洋楽も邦楽も僕は同じスタンスで聴いているから)、ZARDやELTの歌がパワー不足って言うつもりはないです。むしろどちらもファンでした。
しかしですね、トロフェンのヴォーカル、グラアクさんの歌声は、芯が強く、深く正確なヴィブラートの使い分ける歌唱力という点で、メジャーの2組の歌姫より個人的にはもっとうまいって思っているので、こまかくしつこく書いちゃったわけです。

 

そんなイメージが僕の中で定着するほど、グラアクさんの歌はブレずに、トロフェンの歌姫、フロントレディってイメージが確立してたんですよ。

 

楽曲のサウンド作り、そしてストラト遣いである相方のインテリ先生がまた、ほんとは何でもできる方なんですが、トロフェンのオリジナリティを確立して突き詰めていくんだ・・・(って僕が勝手に曲作りから想像してるだけで、御本人はそこまで頑固?じゃないかもですが)てな感じで、ギターアレンジやソロフレーズはほんとに幅ひろいんだけど、それでもアルバムの中の曲では、明確にトロフェンスタイルというのを意図されていると、常々受け止めていました。

 

それが今回のニューアルバムでは・・・

 

1曲目の曼珠沙華、これが今まで僕が持ってたトロフェンのイメージに忠実な曲。これまで聴いてきたトロフェンのスタイルからスムーズに新しいアルバムに入れる。

曲の特徴としては、和楽器バンドにも通ずるとこもある、ドラマティックで派手目なロック・サウンドに太棹の三味線の音(グラアクさんの演奏だと思います)がはいる、和ロックのミドルテンポ曲

 

2曲目「私らしく」ここからいきなり意外なイントロ。タツローさんやCharさんのようなキレがよく軽いテイストのカッティングからのJ-Popテイスト。強さより可愛らしさが感じられる歌メロと歌声。間奏も通常メタル・ハードロックテイストのギターソロが多いハズだったんですけど、軽めのソプラノSAX?っぽいソロ。ここで「今回のアルバムはこれまでとちょっと違うかも」って。もちろん後半のギター・ソロはインテリ先生らしいガツンとロックテイストのが入ってますが

 

3曲目「制御不能」

この曲は80年前後の洋楽・邦楽のロックのコード展開、サウンドメイクにとても通ずるところがあって、今までのトロフェンさんのアルバムでは敢えてこういう「◯◯風」みたいな作りをしないみたいな(良い意味で)プライド?意地?によるものなのか、なかったんですよね、こういうなにかの曲を連想する構成の曲つくりが。キャッチーなサビの繰り返しで、カラオケがあったらここで合唱になりそうな曲でした。

 

4曲目「藤色図鑑」

単発先行で聴かせていただいたとき、季節に合わせて藤の花をイメージされてたと書かれていたような記憶がある曲。

パワーバラードはこれまでもアルバムでいくつか入っていましたが、この曲では今までよりも空間系のエフェクトを深めに使って、ちょっとレトロな響きを感じるバラードに仕上がってます。以前のアルバムだったら、多分もっとドライなエレピになっていそうなんだけど、この残響の中で響くグラアクさんの歌声が、強さだけじゃないんだって奥行き出してるようで、曲はむしろオーソドックスなスタイルなんだけど、それをトロフェンのサウンドに落とし込んでいるところが新鮮でした。

 

5曲目「Ready or not」

これもイントロですぐびっくり!Deep Purpleの「Speed King」を連想しちゃいました。ギターのサウンド、ハモンドっぽいオルガン、重たいバスドラの音・・・「Speed King」を知ってる人なら、あの雰囲気に日本の女性ヴォーカルが自由にそのサウンドの上で歌ったらこんなにイカしてるんだ!って感心するんじゃないでしょうか。
少なくとも僕だったら原曲のイメージに引きずられてこんなに自由に歌えないです。何より、トロフェンは他と違うってとこだけ尖らせるのでなく、いろんな背景も知り尽くした上で自分たちのトロフェンの楽曲にしてみせるって気概を感じる1曲でした。ちなみにギターソロも、リッチー先生を彷彿させる奏法ですので、Deep Purpleファンにも聴いてほしいなぁ

 

6曲目「夏空、海月雲」

最初にLPレコードプレイヤーのスクラッチノイズから入る、こういうSEを使うのもトロフェンさんの今までのアルバムにはなかったような気がします。

今回、ダウンロード販売だけにされる予定だったのを、僕が歌詞カードやアルバム・ジャケット見ながら聴くのが好き、なんてわがままいったせいか?届いたCDはタイトル写真のようにLPレコードのようにデザインされてました。

アナログ盤時代の邦楽ロックっぽいアレンジ、サウンド。そこだけ聴いていると違和感まったくないんですけど、以前のトロフェンさんのアルバムだと、例えスローテンポ、ミドルテンポの曲でもどこか疾走感やハードロックなスピリットが強く前に感じる曲作りだと(勝手に)思ってたんです。が、この曲で、それだけじゃないのよ、やりゃできるんだからって一発くらった感じでした

ちなみにグラアクさんの歌声には、パワーというか芯があると書きましたが、それを活かす意図もあってか、だいたいハモリも上下ハモリメインで、あまり3声4声で、ナイアガラコーラスやドゥワップみたいな多人数コーラス使ってこなかったんです。この曲でもそういう個性を活かすというとこはブレてなくて、がっつり歌っている間は歌に、ギター・ソロではギターに、自然に耳を持っていかれるという、二人の惹きの強さを改めて感じるバラードになってます。

 

 

7曲目「Butterfly Effect」

ピッキングハーモニクスをバリバリ使ったインテリ先生らしいギターリフから始まる疾走感たっぷりの曲。1曲め同様、このアルバムより前のトロフェンサウンドらしさ全開の曲。

バッキングコーラスで「バタフライ」ってリフレインしてるんですけど、そのハモリコーラスでもヴィブラートは一糸乱れず深さもテンポもシンクロさせてて、歌の上手さを感じられる、さすがのアレンジ。

歌詞の譜割りでは今まで字数を無理に詰め込む作詞・曲つくりはされてこなかった印象があるんですけど、この曲では珍しく「何かが違うと」のとこで今風に「ちが」を1音にまとめてるのも、おっって感じたとこでした。

 

8曲目「Life goes on」ここでもクルマのエンジンをかけるSEから入る、6曲目のように、今までのトロフェンサウンド・曲作りを更に間口広くした感じで始まります。そして曲がまた良い・・・ちょっとシャッフルしてるリズムにギターのリフもいつものメタル系じゃなく、カントリー風なお茶目で軽い音色。アコギのストラミングもこの曲調を自然な感じにしていて、曲名のLife goes on・・・まさに無理して作らず、生きるままに、そのときのアイデアを曲にしたという作風。こういうのも以前のアルバムにはなかったスタイルだなと。

 

9曲目「コレット・ミラー」

これも新しいトロフェンさんって感じたイントロでした。ブルースじゃんって。歌に入るとしっとりしたバラードでPOPなテイストからの、得意の転調、そこから元のVerseへの戻り方が、戻るタイミングのちょい前のコードとテンポの入れ方からしてカッコいいんですわ・・・味わい深い1曲。

間奏のツインリードはしっかりインテリ先生のロックギター。そこから一瞬のストリングスだけのバックにグラアクさんの歌で静かな世界に引き戻してからの、終盤へという、手練れの構成。歌メロ、かっこいいなぁ。

 

10曲目「サーカスが来た! (feat. akari)」

グラアクさんの掛け声がめっちゃチャーミングで、名曲「フ・ト・モ・モ」同様ライブうけするだろうなぁって曲。

僕もサーカスがテーマの曲をカバーしたことがありますが、僕のは昭和の古くちょっと寂れたサーカスだけど、こっちはショータイムの始まりに、初っ端から盛り上げるぞ!って。シンプルで重たいベースにギターのリフがいかにもロックなんだけど、しっかりサーカス・ショータイムというイベントに反逆・矛盾してない。

聞き所は多いけど、個人的にはグラアクさんの掛け声、合いの手が可愛くて推し!

 

11曲目「Travelogue (feat. Cocoon)」

ストラト遣いのインテリ先生らしい、ストラト~~って感じのギターから始まる曲。ギターに続いて絡むSAXもかっこいいです。曲名通り、旅をイメージさせるバックのアレンジ。そこに、これまた存在感・個性がひときわ強いCocoonのArikaさんの歌声も入ってくるのがまた効果的。僕は自分の歌が没個性というか、淡白になりがちなので、こういう個性にはいつも憧れがあるので、こんなキャラの違う仲間との旅の記録として聴いてみるととても羨ましさを感じる曲。

 

12曲目「antI Digital (feat. GULI菜月 & akari)」

バックに他の方もいるので当然かもですけど、この曲も以前のトロフェンサウンドから一歩殻を破った音色感じます。

「生きてる意味はない~」の最後のハモリの和声がめちゃ好み・・・僕もこういう曲やるなら、ここはそれまでのコードじゃなくてこうしたいって感じで和声の余韻を残した中ではいるギターのリフレインがまたいいんですわ。重たいリフもかっこいいけど、こういう中音域のリフの使い方のお手本!って感じ・・・ちょっとチクタク音がするアナログ時計のリズミカルな音を連想しました。アンチ・デジタルだからかな。

途中、グラアクさんの英語のverseがあるんですが、普段英語曲あまり聴いたことがなかったので、ここもカッコよくて聞き所でした。

 

以上、12曲、たっぷりの充実度がこんなお値段で購入できていいんだろうか・・・

 

今回の新作アルバムは、これまでのかなり的を狭めたトロフェンから、Deep Purple、スタイル・カウンシル、いろんな他の曲の良いエッセンスを借用するのでなく、消化して使いこなして見せる! これまでの実績・実力を証明してきたからこそ、次のステップでトロフェンの音楽的要素の幅を広げて行くんだって、意気込みと自信を感じるアルバムでした。

トロフェンさんも、次のフェーズに移行したんだなって。


今はストリーミング、DL販売、動画サイト、メディアが分散してかつてのように全国民が同じように特定のミュージシャンに熱中する時代じゃないとはいえ、オリジナル曲だけでここまでできるトロフェンさん、個人的にもっと全国区になってるはずって、自分のことじゃないのに妙に悔しくて、今回は友達のアルバム話しを長々と書かせていただきました。