2012年ベルギーグランプリ

予選で小林選手が2位、フロントローを獲得して大いに期待した決勝・・・
結果はポールスタートのバトンが危なげなく優勝。
小林選手は残念ながら下位に沈んでしまいました。

2012年第12戦ドライバーコメント決勝
http://ja.espnf1.com/belgium/motorsport/story/87612.html

久しぶりにテレビでF1レースを観戦しましたが、久しぶりだったせいかいくつか気づいたことがありました。

まず、優勝したバトン選手
とにかくタイヤの使い方がうまく、冷静さを保ったままハイペースで走るセンスは相変わらずで、本当に見事でした。デグラデーションが酷くてあれだけタイヤに厳しいスパで、タイヤ交換1回だけ!それでもコンスタントに速くて後続に迫られることなく優勝・・・すごい。
昔バトンが鈴鹿のカート世界選手権で走ったのをビデオで観ましたが、世界のトップクラスが居並ぶ中で、ただ一人、するすると前のマシンを抜き続けた別格の速さに驚きました。
雨のレースで安定して速いのも彼の特徴でしょう。それだけ、タイヤからの情報を感知するレベルが高いから、雨で速く、タイヤにも優しいということですね。見習いたいものです。

スタート直後の1コーナー多重クラッシュ・・・
アロンソがレース後のコメントで語っていますが、長い決勝レースで、もっともリスクが高い1周目1コーナーであそこまで無理する必要があるのか・・・とにかくジュニア・フォーミュラ、というより僕はむしろジュニアカート時点から、もっとレースの競技委員長は必要以上にアグレッシブで危険なドライバーへは罰則を適用するなどして指導が必要だと思います。
闘争心や積極性は大切ですが、一歩間違えば死亡事故にもなるモータースポーツでは、果敢と無謀の境界線、そしてそこを自分でコントロールするスポーツマン精神は、体験を通じて覚えるしかないからです。

マルドラード(ウィリアムス)のフライングスタート
本人はレース後に「クラッチを操作する指がすべってしまった・・・」とまったく悪びれた様子がありませんね。多分、罰則適用が軽減されるように「故意で無かった」ことを印象付けようとしたコメントだと思います。
過去にもスタートでのフライングは何度もありますが、うっかりミスによるフライングで、且つ、スポーツマンシップを身につけたレーサー達は、早めに飛び出した後にごくわずかにアクセルを戻すなどして、フライングで得たマージンを返す操作をよくします。
マルドナードはまったくそういう素振りを見せず、むしろ狙ったスタートのように大きくマシンを振って前走車を抜き去って行きました。
こういう態度も、ジュニア時代からの指導が足りなかったからだと思います。

多重クラッシュの原因となったグロージャン
彼のマシンの車載カメラ映像を何度も観ましたが、レース後のコメントの通り、故意ではなかったと思います。本人もコメントで自分のミスを認めて謝罪していますし、次戦の出場停止と罰金(約500万円)を受けています。
ミスは起こしてしまうことはあるので、その後の態度もレーサーには必要なマナーだと思います。

小林可夢偉
本当に残念でした・・・ミスや不運がなければ、優勝だって可能性があったといえるだけに。実際はあれだけバトンが盤石のレース運びだったので、カムイがあのまま2位でスタートできたとしても優勝は難しかったと思いますが、3位のライコネン以下はマシンがベストな状況ではなかっただけに表彰台の絶好のチャンスを逃したのは惜しい!
カムイ自身もミスがあったと思います。スタートで出遅れた件です。遅れた理由の真相は外から見ていてもわかりませんが、動き出しのタイミングはそれほど遅れたように見えなかったので多分リアタイヤのスピン量が多すぎたのではないか・・・
もともとカムイはスタートはうまい方だと思います。だから、いつも通りにスタートしたのに、リヤホイールスピンが多かったようでクルマが前に出なかった・・・と感じているのでは。
スタート直前にカムイのフロントタイヤあたりから白いスモークがかなり出ていました。多分、1周目からトップに食らいつこう、遅れないようにと、フォーメーションラップ終盤に過度にブレーキに熱を入れすぎた気がします。その操作により、もしかしたらリヤタイヤのコンディションも普段のスタート前と温度が変わっていたとか、もしくはわずかなフラットスポットを作ってしまった・・・そんな小さな変化が、いつものスタートができなかった原因のような気がします。
もちろん、ザウバーのマシン自体の問題かもしれませんが・・・何れにせよ、スタートで出遅れていなければ、あのクラッシュにも巻き込まれなかったでしょう(3位スタートのライコネンまで影響がなかったので)。
いつもと同じようにできなかったのが、F1で優勝経験のないカムイの課題かもしれません。

今シーズンのポイントリーダー、アロンソ
自身にミスもなくリタイヤに追い込まれてしまい、23戦(だったと思う)連続入賞の記録が途絶えてしまいました。もちろん、今年のチャンピオンシップでもノーポイントで終えたレースが残念に決まっています。・・・が、大人の対応をしていましたね。
クラッシュ後、出火によるガスでうまく呼吸ができなかったようです。軽い頚椎捻挫ですんだようでよかったです。

3位表彰台、ライコネン
これで3戦連続表彰台なのはさすがです。
ロータスのタイヤグリップが良くなくて、そのぶんウィングを立てざるを得なかったそうです。高速サーキットのスパでこれは致命的です。
それにもかかわらず、3位獲得はやはり彼ならではのギフト(才能)だと思います。
3位を決定づけたのは終盤、オールージュの入口でシューマッハをパスしたことでしょう。他のマシンよりも、シューマッハのメルセデスよりも、最高速が20キロ遅いだけに、どこで仕掛けて、どこを耐えるかは絶対的な重要ポイント。あの混戦エリアにとどまれば、更にうしろのベッテルやヒュンケルベルグらとの関係で5~6位まで落ちるリスクもありました。
スパを特徴づけるオールージュ・・・あそこでは多くのレーサーが事故で亡くなっています。ものすごい勇気と、300キロ超で正確な判断・操作ができる自信が、ライコネンと、抜かれるシューマッハにあったから実現できたバトルだと思います。まさにチャンピオン同士のバトルで、僕にとってこのバトルだけで今年のベルギーGPを観る価値がありました。

・・・

他にもいろいろ気づいた事がありました。久しぶりのF1観戦だったので、ルールもマシンも変わっていたからかもしれません。

自分のレース観
レベルは全然違っても、自分がやっているカートレースにも活かせるシーンはたくさんありました。だって、レベルが違うといっても、そのレースでバトルしているドライバー全員が、各自の限界近辺で競争しあっているから。
全力で逃げようとしているドライバーを、同じクラスのマシンにのる自分が追いつき、抜きさるってのはとても難しいです。理論上、最速で走るマシンが前にいたとすると、後ろから走るマシンに抜き去る可能性はありません。
ところが・・・マシンは人間がドライブしています。だから僅かなムラや、体調、クセによる差が生じます。その差を見極めながら、その差を活かすべきポイントを見出し、そのわずかなチャンスを結果に結びつけるために、抜き去る瞬間から逆算して、スピード・距離・タイミングを調整。さらには演技までしてライバルに自分の意図を探らせない心理戦まで・・・

レース映像は、レースに出られるほどうまいドライバーが走っているので、とてもスムーズに見えます。そのせいでとても簡単に思われてしまいますが、実は本当に難しいことをしていて、人間とマシンが最高レベルで調和してこそ生まれる芸術のようなものなんです。

テレビの解説だけでは、F1の実像やそのおもしろさを伝えきれないと思います。今日リンクを貼った、ドライバーのコメントなども、大好きな1人だけ・・・でなく、全員のコメントに目を通して見えてくるレースの全体観もあります。
ぜひ、テレビ観戦だけでなく、ドライバーやチームのコメントもご覧いただけたら、更にレース観戦がおもしろくなると思います。(*^_^*)