ワインボトルのラベルの絵に気になるものが幾つもあります。生産者のそれぞれの思いを込めてデザインされたものに違いありません。

その中で一つ、ラ・スピネッタ(La Spinetta)社バルバレスコの大きな犀の絵のラベル、何故犀なのか興味を持ちました。 
ラ・スピネッタ社のwebsiteを見ると、この手の質問が多いらしく、詳しい説明がありました。 ということは、既にご存知の方が多いと思いますが、一応要約します。

「ラ・スピネッタ社とこの犀とは直接の関係は無い。 この犀の絵は、ドイツのアルブレヒト・デューラ(Albrecht Dürer)の有名な版画で、スピネッタ社の3兄弟の一人ジョルジョ・リヴェッティ(Giorgio Rivetti)がいつもこの絵を賞賛していたという単純なことである。 1515年に、生きている犀がポルトガルインド総督からポルトガル王に贈られた。 この犀が象と争って勝ったといういわくつきである。 この種の動物は、ヨーロッパで初めて見られるものであった。 この犀の記述がスケッチと共に、ドイツにも直ぐ届き、デューラーが、実際に犀を見ないで版画にしたものである。
その後、300年にもわたり、生きている犀を実際に見ることができるようになっても、このデューラーの作品を画家達は模写していた。 
同じスピネッタ社のバローロ・カンペ(Barolo Campé)のラベルのライオンの絵もデューラーの鉛筆画で、バローロはイタリア赤ワインの王様として知られているので、動物の王ライオンがラベルとしてふさわしいと思った。」

さて、これをきっかけに、いろいろ調べてみました。 
(1) 犀ってインドにいるのかな?。 いました、いました。 世界にはインド犀以外にも、ジャワ犀、アフリカのクロ犀、シロ犀、スマトラ犀など絶滅の危機に瀕していますが4属5種いるそうです。

(2) ポルトガルのインド: ポルトガル王マノエル1世大王(1495~1521)がポルトガルの黄金時代で、初代インド総督アルメイダ(在任1505~1509)、2代目総督アルブケルケ(在任1509~1515)でした。この頃のポルトガルのインド洋制海やアジア交易の話もほんのかじっただけでしたが面白いものでした。 ワイン教本に出てくるエンリケ航海王(1394~1460ジョアン1世国王の王子)時代のマデイラ島発見が1419年、ポルトガル人の種子島漂着が1543年、フランシスコ・ザビエル種子島入港、薩摩藩島津貴久にチンタ(Tinta、珍陀酒)献上が1549年といえば、その時代がもう少し理解できそうです。

(3) アルブレヒト・デューラー:(1471~1528) ニュールンベルク出身の、ドイツ・ルネッサンス期に活躍したドイツ美術史上最大の画家。 動物だけでなく宗教画など繊細なタッチで描かれていて、絵画オンチの私にもその偉大さが感じられました。

(4) この犀の話は、デューラーの紹介記事によく出ています。 デューラーの絵では、奇妙なことに実物の犀には無い身体の班点や背中の一本の角が描かれています。 (この雑記のラベル写真の上でクリックして写真を大きくすると判別できます) デューラーが実物の犀を見ないでポルトガルからのスケッチをもとに描いたためで、この犀がインドから10ヶ月もの船底での長旅の間にできた皮膚病の跡が班点になっていたとか、角状の腫れ物が背中にあったとか説明されています。 以後このデューラーの絵が他の画家に模写され続けたために、この間違いが伝播してしまったとのこと。 この犀の末期は悲しい話です。 犀の名前は‘ガンダ’。マヌエル大王がローマ法王に献上しようとローマに船で送る途中、船が難破してジェノヴァ沖で水死してしまったそうです。

ということで、一つのワインのラベルから、歴史、美術まで話が広がっていきました。 ワイン文化は本当に面白いですね。