男の家は古く築50年の旧家で男は一人で住んでいる。
両親が生きていたころは農業を営んでいたせいもあり家屋や庭は大きく納屋もある。齢(よわい)65になる現在は農業はせず作物は
何も作っておらず年金暮らしだ。収入は年を重ねる度に低くなり年金を貰う以前にはアルバイトをして安定した収入を得ていた為インターネットをしていたが年金だけの生活ではプロバイダーを脱退し
回線を撤去。持ち家では税金のほか自治会費や募金、生産組合費などの出費がかさむのでネットを辞めざる得なかったがパソコンだけは残っていた。
”ガリガリガリ”
電気を消すとネズミたちが動き出し押し入れの中で巣作りに励む。
夜11時に寝ようと思うと押し入れの中から音を立てるネズミたち
ねずみが出した木のくずは巣作りの為で木の屑〈おがくず)は掃除したが押し入れの中には掃除できないばしょが残っていて奴らはそこにおがくずを蓄える。
猫は飼っているが高齢のため歯が抜け落ちネズミを捕る気はなく外で寝るようだ。数年前まで毎年のように屋根裏には蛇の抜け殻あり大きな抜け殻だと2メートルの長い殻を誇ったものだったが食べ物がなく共食いでネズミたちは姿を消しそのせいで蛇も姿を消したみたいだ。蛇が現れなくなって数年の月日が流れ今はネズミたちの天下のように家の中で大運動会をするに至る。
”タタタタ”
駆ける音
”ガチャガチャ”
戸棚のガラスが揺れる音
”ガリガリガリ”
戸棚の柱を削る音
夜中に騒音を立てるものだから男は眠りにつけず午前4時にやっと眠れるのだった。
部屋の中に袋を開けたままの菓子をうっかり置いておくとネズミたちはチャンス到来とばかり袋から菓子をベッドの下に運び保管する
そんなことが繰り返され、眠りにつけず睡眠不足の毎日で2週間の
歳月が流れたある日の事だった。
台所(キッチン、ダイニング)を通りトイレに行こうとしていた時だった、台所の天井近い場所に柱があり柱の横の壁に棒状のものが見えた。なんだろと台所の蛍光灯をつけると壁の穴に頭をひっ掛け
身動きが取れなくなったネズミがぶら下がっていた。
「馬鹿でえ こいつ」
しかし棒でねずみをつつくと身動きはせずぶらり下がった間々。
変だと思い反対側の風呂場へ回ると蛇の鱗が見えた。要約事態を悟った男は蛇に感謝した。
トイレから戻り再び蛇を見ることにしたら先程見たネズミのように肢体がだらりと身体が伸びていて蛇が一旦ネズミを吐き出し再度食べるのだと感じた。
部屋に戻り眠るためにベッドで横たわると押し入れからネズミの立てる音がどうしても気になる。
眠れない
押し入れから出たいのかと思い押し入れを少し開けると掛ける音がするので再び押し入れを閉める。何回か繰り返すうちに眠れなくなる。
”そういえばネズミを食べた蛇はどうしたのか”
さっきは食べている途中だったので30分程度たったくらいではまだいる筈だ、見たくなる気持ちが抑えられなくなってくる。
ベッドから起きてネズミを見に行くと蛇はいなかった。青タイショウ、いや青ダイショウに限らず自分の身体より太い獲物を食べれば
暫くはその場所から動かず消化されるのを待つ筈、ネズミは小さくなく体長15センチほどの中堅ねずみだったからだ。
いると思っていた蛇が消えたのは予想外だった。
ベッドに戻ると部屋の押し入れからネズミ木を立てるかみ砕く音はしない、まぁこれでゆっくり眠れるというものだが。
深夜2時わたしは顔に冷たく感じるなにかで目が覚めた、生物のようであるがその皮膚はなめらかではなく紙やすりの150番でも触るように”ガサガサ”していた。半分夢心地だったため胴体らしきものに抱き着くと50センチはありそうだ。
片目をあけてみるとそれは大蛇アナコンダくらいの青ダイショウ。
「ヒっギャア~」
どうやら大蛇青ダイショウは男のとなりでトグロ巻いて寝ていたようで驚いて奇声をあげると首をもたげて立つ。
先が二股になる舌で男の顔を舐めると大蛇の額は裂け始めた。
大蛇の胴体まで縦に避けると中から全裸の女が現れたのには驚いた
ぼんキュッボンのナイスボディだがうなぎのような粘液でどろどろ
しかも生臭く一緒に眠る気にはなれない。
早朝5時に目覚めると昨夜のことが夢だったのかと思ったがベッドに残るヌメっとした粘液があったことが気になる。
あれは7月のことだったが今ほどネズミが騒がしくなく小さいハツカネズミのような大きさのねずみが部屋の中を走り回っていた時の
事だろうか、就眠していると顔に何かぶつかってくる。
寝ている時にはあまり気にしなかったが朝起きてベッドに直径1.5センチほどの穴が開いていることに気がついた。視力があまりよくなく老眼のせいもあってあまり穴の中が良く見えない。
次の日の夜7時、テレビを見ていると大きなハエが蛍光灯にぶつかってくる、目を凝らしてよく見てみるとその虫を見て驚愕した。
「ヒッエ」
「大きなハエかと思っていたら・・・」
「でかいスズメバチじゃないか」
ハエ叩きで応戦したりキンチョールなどの殺虫剤で反撃してみるがヒラリとかわし向かってくるが殺意は感じず一定の距離までしか近づかないのには疑門を感じた。
どこかから声が聞こえてきた。
”敵意はありませんから攻撃するのはやめてください”
”私たちはあなたと共存したいのです”
”食料となる甘いお菓子だけで良いのです、見返りとして侵入者は完膚なまでに叩き潰します”
「巣はどこに」
”ベッドのクッションの中に”
寝ている最中スズメバチに攻撃を受けないかなどの不安要素はあるがミツバチは全滅させず養殖する方針だというのでわたしにもメリットがある、日本では純粋な日本ミツバチが絶滅の危機で養蜂する
人は年々減少している。純粋な日本ミツバチの蜂蜜は高価で取引されているのだ。
毎年夏になると女王バチは巣作りの場所に飛び回り秋には巣を巡り人間との抗争になり毎年巣は撤去される。業を煮やした女王は人間との共生を考え始めた。
今年の夏は前例がないほど気温が上がり昆虫にとっても40度近い
温度では生命の維持さえ危ぶまれる温度であった、そこで女王は日陰を求め巣作りを決めた。
昆虫に睡眠は不必要だが気温が下がると勝手に寝てしまう、生まれる以前の前世が人であるならばその傾向は尚更強い。男の元へ現れたスズメバチの女王の前世は20代後半で他界した女性だった。
ベッドで男が寝付くとスズメバチの女王は人型となり男の隣で布団に入る、男の方へ体の向きを変えると男の顔を凝視するのだった。
「あなた、会いたかった」
男の顔を見続けていると瞳から大粒の涙が流れていく。
夜中3時尿意に目覚めた男は隣で寝ている裸女に驚いた、それも人間ではなくハチ女とでもいうべき容姿だったので異形の存在にも思えた。
しかも男の両手両足には無数にスズメバチがいる、パジャマを着ているとはいえ手でハチたちを払うのは勇気が必要だった。野生の動物は攻撃する意思がない場合でも不可抗力として友人に傷をつける場合がありしかも相手は一撃で人を殺す場合もあるスズメバチ。
スズメバチとの初夜は結局トイレに行くことが出来ず何十年ぶりにお漏らしをしてしまいおむつの購入を考えなければいけないと思った。