あなたの身近に急に身辺整理をはじめたり過去の清算を始めた人はいないだろうか?霊が見える、予知できるといったものだけが特異能力ではなく自分の寿命がわかる人間が5000人に一人の確率で存在している。特別変わった能力ではなく猫は自分の死が近づくと姿を
隠すと言う周知の事だし象の墓場の存在も余命を知っているから出来ることで生物が持っている天性の力であろう。
「おい知ってるか退職した松永さん、脳梗塞で亡くなったそうだぞ」
「うそだろ?退職するまでの数日間、普通に仕事していたよ」
「本当だって、アパートの大家さんが前日自治会費の徴収に部屋に伺った時、明日の朝にして欲しいと言われたんで松永さんの住むアパートを行ったら寝たまま死んでたらしいんだ」
「松永さんて独り身で家族いないよな、葬儀はどうするんだ?」
「わからない、でもお線香あげに行かないか」
「そうだな、おれも行きたいよ。礼服着て行こう」
松永の務めていた会社の有志数人で松永のアパートを訪れると奇妙な事にテレビなどの電化製品は一切なく生活必需品と言われる炊飯ジャーや電子レンジさえもない。6畳一間とダイニングだけの二間のアパートだがすっきり片づけられまるで引越しする直前の部屋にも見えた。
「まるで引越しを考えていたようだな」
「それはおかしい、冷蔵庫もないなんて変だよ」
「松永さんて料理が好きでお弁当作って来社してたんだよ、一度松永さんがトン汁作って貰ったんだけどとてもおいしかったのを覚えてるんだ」
男女3人で話していると割と親しかった女性が窓ガラスを指で擦った
「明香さん、掃除の荒さがしはやめたほうがいいと思うよ」
「違うわよ、窓ガラスって汚れが溜まりやすいの。ところがやけにガラスが綺麗なの、これっておかしいよ」
「そういや壁も床も汚れひとつない、まるで掃除をしたみたいだ」
明香(あすか)の大きな瞳から涙がひとつ、ふたつと落ちた。
涙が腕につけられたパワーストーンのバンドに落ちると輝きをみせる
「あれ明香(あすか)先輩ってそういう類のバンドしてましたっけ」
「ひっく、こ、これね、松永さんが退社の日にくれたの」
「申請用紙のお礼だって言ってね」
社内申請用紙は誰でも記入できるように社員番号と氏名だけは空欄となっているが松永が提出した用紙だけはパソコンで打ち込んで書かれていたのであった。松永は社内でパソコンを使用したことは一度もないのになぜか書類は氏名さえも印刷されていた。
屈みこんで座り泣いている明香の肩を後輩の女性社員は抱いた。
「良かったね、気持ちは届いていたんだね」
明香の涙は一層激しく流れ我慢していた鳴き声も遂に発した。
会社の仲間だった彼等は松永が自分の死期を感じっ部屋の整理と掃除そして会社を去ったのだと思うと感慨深い、そこに明香の泣きじゃくる姿、誰もが涙を流した。
”もういいかい?時間だ”
”1週間までは戻ってこれるから、”
”いいえ別れの挨拶はいりません”
おわり
この物語はフィクションであり実在の
人物団体には一切関係ありません