最近巷で話題に昇る廃墟が静岡県に存在すると心霊マニアの間で
囁かれ静岡県を訪れる者は多い。夜10時から深夜にかけて車で
来るものだから地元住民は迷惑に思っていたが歓迎し喜ぶのはガ
ソリンスタンドだ、ガソリン代が高騰し過疎地のような人口が少ない
村のガソリンスタンドは燃料節約する住民が増えたお陰で経営が行き詰まってたので経営者からみれば廃墟は救世主と思えたようだ。
心霊スポットは日本国中いくらでもある、近年は伝染病流行で死者
が多く心霊スポットは増加する一方。そのような状況でなぜその廃
墟だけが注目されるのか理由は行けば必ず霊をみることができる、
誰でもみることが出来ると噂が流れたからである。ただ心霊マニア
に最近変化がみられ若い女性、女子大生やOL、看護師が好奇心
から怪談イベントへ参加したり心霊スポットへ訪れる事が増え女性
だけで行くようになった。女同士で訪れる、そんな話を耳にした活気
な若い男達は心霊スポットに興味がなくてもナンパという目的のた
めに動く。
「なんか車の中で燃料が漏れてるんじゃない、ガソリン臭いよ」
「ヤダ本当?止まった方がいいかもね」
3人乗せた黒いコンパクトカーは街灯がない幹線道路の路肩に停止
した。
「カナ!顔から何か流れているわ、熱があるの?」
「あつい、身体が燃えるように熱い、あつくて・・・」
派手な花柄のブラウスを着た大学生の身体から煙があがりはじめ、
煙に気づいた運転していた小顔の女性も身体が熱くなっているの
を感じ始めたが湯気立っている腕を見て驚愕した。後部座席に座
るポニーテールをした女性も熱かったようで着ていたピンクのブラ
ウスを脱いだ。コンパクトカーが突如ガソリン爆発し若い女性達は
室内で黒く変色しながらも激しく燃える炎と乱舞する煙に包まれた。
山奥に廃墟を置くこの村では不審火による車の炎上が今年になり
増えていた、1週間前には山を越えた山道で男女二人が乗るセダ
ンが燃え山火事を起こしたばかりだった。不思議な事に警察や消
防が見に行くとどういうわけか車のナンバーだけは燃えた痕跡さえ
なく消防隊員の頭を悩ませた。
「こんちわ、今日はハイオク入れてよ」
「はいよ、ハイオク満タン」
「ハイオクは高いけどいいのかい」
「今ハイオクはリッターいくら?」
「135円もするよ」
旧式のガソリンスタンドで燃料を給油する前に給油機につけられた
ハンドルを手で廻さなければならず30リッター入れるだけで給油に
30分は掛かり表示も旧型スロットルマシンのようにドラムが回転し
数字を現すアナログの機械だった。どこのスタンドへ訪れてもスタン
ドの給油設備は使用限度年数が決められデジタル化した給油機が
装備された都会のガソリンスタンドでは見られなくなった。そのような
理由から経営状態を圧迫され倒産したスタンドも少なくない。
経営を少しでも続けるためにセルフ化したスタンドが増える現代にあってはスタンドの従業員が車の窓ガラスを拭く作業は珍しい、いや懐かしく思える行為だがこの老夫婦が営むスタンドではいつもの事だ。
運転席の窓ガラスを拭きながら店主の老人は声をかけた。
「祐太郎くん、幽霊って信じるかい?」
「一応ね、でもなんでさ」
「最近夜になると都会から来る若い者が多くてよ、幽霊を見たいって」
「ああ知っているよ、迷惑な話だよね」
「寝ていると煩くてよ、夜中だっていうのに道を教えろって来る」
「鐘井さんは幽霊を信じているの?」
「あっはは馬鹿言っちゃいかん、あんなものいやしない」
「祐ちゃんはお化けを探しにいっちゃいかんよ」
「おかみさん、そんな暇おれには無いって」
給油が終わり印字する小型印刷機が音を立て乍ら請求書兼領主書を少しづつ機械から放出させていった。このスタンドは旧式のためスマホどころかクレジットカードも使えない、支払いは現金払いしか出
来ない。生憎と千円札がなかった為祐太郎は1万円札を渡した。
「一億円ね、6150万円のお釣りだね」
「はは、ここに来ると金持ちになった気分になれるよ、おばちゃん」
「今大きいのがなくてね、板垣さんばかり悪いがお金だからさ」
「ああいいよ」
祐太郎を乗せた三菱ジープがスタンドを後にする。老夫婦は笑顔で
見送り手を振り続けるが車の姿が見えなくなると夫婦の表情は笑顔
が消え真顔となると同時に姿は足元から霧が立つように消えた。
そしてガソリンスタンドは姿を変え老築化した事務所、錆びれた給油機など以前ガソリンスタンドがあった痕跡を見せる。
ネットに噂の廃墟で撮影された2枚の写真が投稿された。1枚は廃墟
で最近撮影されたものらしく廃墟の中で老人二人が憎悪に満ちた顔で怒りを現している。そしてもう一枚は廃墟にまだ人が住んでいた頃
の写真で老人夫婦が笑顔で食事する写真だった。そうスタンドで祐太郎が会っている鐘井夫婦にそっくりだった。
祐太郎は自宅で夕食をとりながら白菜の漬物を食べると1週間前に
出かけた山腹の家へ呼ばれたことが脳裏を過った、老夫婦が住む
家で野菜が取れ過ぎて困ったから食べに来て欲しいと頼まれた日の
ことであった。
「あの白菜、うまかったなぁ」
その時、老夫婦から記念に撮影して欲しいと鐘井からカメラを渡され
5回シャッターボタンを押して撮影した。
山腹にある壁が剥がれ屋根も崩落しかけている2階建ての廃墟。
玄関から入ると居間、居間から廊下を通り左にある部屋に入ると
荒されたらしく本が散乱し本棚には数冊の本しかない、どうやら
昔は書斎として使われていたようだ。本棚から1冊の厚い本が床
に落ちると風に吹かれてページが捲られていく。ページには写真
ばかり貼られアルバムだと認識できる本だ。そして捲るのが止ま
ると写真が1枚だけ貼ってある、3人とも笑顔の微笑ましい写真
そしてその写真だけタイトルが書かれていた。
”友人に撮影して貰った”
おわり
この物語はフィクションであり実在の人物
地域などには一切関係ありません