[短編小説] 雨降る9月の彼岸 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

誰もこない、誰の姿もみない。

8月はお盆シーズン故に多くの墓では草むしりに墓石は水で

かけ洗われ気持ちが良さそうで羨ましく見ている。引き換えわ

たしの墓は草が自分勝手に伸び拡るでわたしの身体を吹きつ

けようとする風の邪魔をしているようだ。線香は何年前に上げ

て貰っただろうか、灰だけが入っている。思い返せば線香をあ

げて半年くらいにわたしは病院のベッドで息を引き取ったよう

だ。身内のないわたしがどうして墓に埋葬されたのかわから

ない。未婚なので子供はおらず兄弟は兄一人だがわたしより

先に交通事故で死んだし両親は大地震で土石流により家ごと

土に埋まり山深い場所だったせいで掘り起こされたのはひと

月後、絶命してから3週間経過したと告示された。わたしは既

に病と闘い両親だけが見舞いにきてくれる訪問客だった。両

親が絶命した後日は誰も見舞いに来てくれる事がなく孤独だ。

孤独を貫き通し病室でわたしは息を引き取ったわけだ。入院中

死んだら先祖や家族が迎えに来てくれる、そうすれば昔みたい

に賑やかに暮らせると希望を持っていた。しかしそれには葬儀

する必要がありまともに葬儀していないわたしは迎えにくること

が出来ないと言われ肩を落とし消沈した。

 

墓場に埋葬されたせいでわたしは墓場から移動することが出来

ず他人の墓参りを見るしか出来ない。新たに埋葬される人、月

命日ということで線香をあげて貰える幸せな人もいる。それに引

き換え私のように長い間放置される墓もある、家族は生きている

ようだが多忙だからと言い訳し休日を自分の為に使いたいと思う

家族らしく線香さえあげた跡はみえずなんて憐れな人だろうか。

雨が降り夏の照らしつける日光で溜まった熱気を放出させてくれ

久しぶりに幸福だったのもつかの間、雨が降り続くせいで今度は

冷たくなる墓石に温めてくれるものを求める。身内や家族がいな

いわたしには求めてはいけない希望の手。冷たい雨が上がり光

が差し込んでもわたしの冷えた心を癒してくれるものはなく忍ぶ

だけの寂しい毎日が訪れる。秋風に吹かれわたしの墓地には落

ち葉が舞い堆積していずれ土と同化し冬の雪で白く固まる雪化粧

雪が解けて春となるのは毎年の事なので孤独の辛さは消えた。9

月20日はお彼岸の入り、今年も多くの参拝客がくるだろう、わた

しは一人今年も彼らを眺めるだけ、そう考えていた。

 

彼岸の入り、今日は残念にも朝から雨が降る。雨では参拝に来る

人は半分に減る、参拝を心待ちにしていた故人の残念そうな顔を

見ると可哀想になるが喜びで笑顔になるにも見る方としては癪な

ものだ。雨は夕方にあがり空には満月が輝きだす、こんな昏い時

間では人が訪れる事がなく墓地は静寂へと進む。わたしとあの子

が出会ったのはこの日が初めてのこと、黒く艶やかに流れる髪は

草花に囁くように話しかけるだけでも乱れる柔らかな毛そして何も

かも見通せる丸く大きな瞳は茶色に光り琥珀色とも思えた。その

娘は無防備にも柔らかに背を丸くしわたしがいる墓石の前で寝転

んだ。あまりに愛らしい寝顔にわたしは惹かれて毎日娘が来るの

を心待ちするほど娘に恋をした。無縁仏の住人達は死んでなお恋

するなど愚かしいと嗤い馬鹿にする。わたしは周りの声など気にし

ない。娘はわたしの墓石前にいつも寝る、寝顔をみているだけで

癒され心が温まる気がした。墓地は新たに夫婦らしき二人が歩い

てくる。コロナが落ち着いたと思ったばかりなのに今度はカリナと

いう感染病が猛威を振るい墓参りでさえ整理券を配られ時刻指定

さらには慰門時間も指定されるようになった。

 

「おとうさん、寒いわね」

「北西の風が吹きつけるって言ってたな、しかし寒い」

「マッチじゃなかなかお線香に火がつかない」

「だと思ってチャッカマン持ってきたよ」

「あら、雨が降ってきた」

「雨が強くなりそうだから手早くやって帰ろう」

 

9月には珍しい冷たい雨、雨というものはどういう理由か突然大

降することは珍しくはじめは鳥の糞かと思うように人の身体に一

粒の滴を落とす。気持ちよく寝ていた猫も雨が本降りになると身

を起こし翻るようにして走り去ってしまう。四角い墓石は雨に打た

れ艶がなくなったわたしも墓石でさ半艶となり鈍く輝く枯れた花に

も雨水が満たされ活力が漲るようだ。墓の水入れから溜まり過ぎ

た雨水が耐えられなくなりその情景は口から涎を垂れ流すように

見える。黒い雲が空を覆い一瞬で闇に変える、鋭い雷が轟音と

共に闇を切り裂く。雷が光る瞬間には黒い墓石からは影がいくつ

も現れそして消えていく。

 

雨が止み太陽が姿を見せなければ濡れた墓地も渇きが遅い。参

拝にくる人々は淀んだ空に憂鬱を与えられ気持ちが沈んだままに

故人を悔やむ。雨が降らなくなってもあの娘は来ない。闇で光る

銀色のつぶらな瞳が美しい、スマートで柔軟な肉体、意思が別に

あるかのように動く尻尾を上げ腰を振ってあるく姿は魅力的だ。

あの娘の姿をみなくなった26日、彼岸明けを迎えた。

「あの猫、可哀想にね」

「見た人の話だとこの墓地からいきなり走ってきたらしいよ」

参拝に訪れた二人の女性が会話している、話し声が聞こえてくる

わたしはすぐあの娘の話をしていると知った。

 

彼岸が終わりあとは冷たい冬を迎える。肉体はとうの昔に消滅し

たから肉体的に寒くはない、心が寒い。彼岸は秋と夏の引継ぎし

季節の変わり目を意味し彼岸が終われば夜は秋の温度となり気

温低下を感じるそれが寂しさを一段と増してしまう。あの娘が現

れたのはそんな夜が更けた闇の刻、化け猫となりて現れた。

 

「相変わらず独りで寂しそうね、死人にいうのも変だけど元気?」

「会いたかった、またあえて嬉しいよ」

「わたし実は魔女なの、いま手下を探しているんだけどわたしと

 一緒にこない」

 

魔女は黒猫の姿でわたしに近づいた、それが魔女の主レオナー

ドの策略、だがそんなことはどうでもいい彼女と一緒にいられこの

墓から出られ自由になれる。わたしは生前から他人に優しくされ

た記憶はなくそのままに一人死んだ巳、たとえ悪魔と協力し多く

の人間を苦痛にさせ泣き喚かせたとしても良心を痛ませる心は

消えた。戦争は人民に緊迫感や考える心を学ばせるもの、同じ

轍は踏まないと言った信念で戦争を回避し続けた、その結果は

人民に平和過ぎて呆けさせ法律を遵守するあまり柔軟な対応

力を失わせた。これが愚行なる現代社会人の欠点である。

 

わたしは魔女猫にアカトラに変身させられた、まぁ他人の目を欺

く為には仕方ない事だ。猫に一度なってみたいと思っていたから

夢が叶ったようなものだ。人けない寂しいところへ着いたならば彼

女は美しい人の姿、わたしは人の姿になるだるだろう。ところが・・

なんてことだ、わたしは猫の一団に新入りのトラと紹介された。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在する人物

団体とは一切関係ありません