[短編小説] 除菌の女 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

鉄の階段で2楷に上がり共同の洗濯機が2階の端にある安アパ

ート、TVドラマで昔はよくあるアパートだったが最近ドラマでも見

る事がない事故物件或いは廃墟並みのアパートは今でも実在し

ていた。この腐ったアパートに住むのは低所得の貧しい夫婦と

身寄りがない老人、仕事が無い怪しい外国人達である。

 

貧しいがありきたりな夫婦ではなかった、昭和のはじめならば飲

んだくれの何もしない夫とこきつかわれる妻はどこにでもいるあ

たりまえの夫婦事情。昭和が終わり平成を迎えると夫婦関係も

変化が現れ弱かった妻も法改正、女性の自立、社会的な女性の

地位向上などにより告訴される夫も増え同時に怠惰な妻も増え

つつあった。そして時代は令和になり女性は以前にも増して強靭

になった。

 

「ちょっと、あんた、玄関の雑巾がけは終わったの?まさか使った

 雑巾は洗っただけじゃないでしょうね」

「え?きちんと洗いましたけど」

「殺菌しなさいって言ってるじゃない、お茶椀も洗ってから塩素洗

 剤でしばらく漬けておきなさい」

「幸子さんそこまでしなくても・・・」

居間などない、あるのは6畳の部屋で幸子という妻はバラエティ

を見て下品な高笑いをあげている。夏がこようとこの家は炬

燵を年中テーブルとして使い炬燵のテーブルには焼酎の瓶が置

かれ幸子はコップで焼酎を飲みながら笑っている。

 

家事は夫である佐平が仕事と家事を両立し幸子は何もしない。

1流メーカーの流し台が欲しいと幸子から言われたので買ってみ

たが幸子は卵焼きさえ作る事はせず佐平が料理を作る。勿論

料理を作るので調理器具の片づけるのも佐平、毎回洗剤でしっ

かり洗っているにも関わらず幸子はアルコール消毒を要求する

更に浴槽を洗う時も漂白剤で消毒しろと言うのでいい加減佐平も

うんざりしてきた。トイレの便器どころか液晶テレビの画面やリモ

コンまで消毒しろというので月、漂白剤は6リッターも使いエチル

アルコールは1.8リッターさらに除菌ウェットティッシュは1箱だ。

普段は仕事をし休日には家でゴロゴロ寝ている女をマグロ女と

言った人がいるがそんな生易しい女ではない、この幸子を例える

ならさしずめ”トグロ女”ではあるまいか。部屋でトグロを撒いて夫

が働かないと舌を長く伸ばして威嚇する爬虫類。幸子は元モデル

だっただけに容姿は良い、だが性格は最悪なのだ。

 

佐平はいい加減虐げられる生活への我慢は最高潮に達し幸子に

なんとかして報復できないものかと日々考えるようになっていった。

焼酎の瓶に漂白剤を混ぜてやろうかと考えた事もあるが部屋で吐

血したら飲ませた自分が疑われる、佐平は完全犯罪を目指したい。

報復したいが出来ない理由をこじつけ小心者である自分に言い訳

した。ある時、漂白剤に浸したタオルを手で擦り15分、このくらい

なら手の皮膚に異常は見られないとわかり佐平はある事を思いつ

く。

「風呂沸いてるから入ってきてください」

「下着は出してくれた?」

「はい、今日は特別な入浴剤いれましたので寛げると思いますよ」

 

幸子は嬉しそうに風呂場へ向かいスライドドアを開け入っていった

それを見て佐平の唇は不気味な嗤いを見せていた。家の裏には空

となった漂白剤の青いボトルが100本ビニール袋に詰め込まれて

いる。

”身体の皮膚が溶けるかもしれないな”

そう考えたら呼吸はあらくなり心臓の鼓動は唸り額から汗もでる。

まさに佐平は今犯罪者の心境だった。いまならば辞めろと言えば

幸子は無事に済むかもしれない、だが幸子の爛れた姿を見たい

気もする。30分経過したが幸子は風呂から上がる気配がない。

1時間経過するともしや死んだのではないかと佐平は心配になっ

てきた。ゆっくりと慎重に風呂場へ足を向ける、静かにスライドド

アをゆっくり開けると両手両足を伸ばし浴槽に浮いている幸子

がいた。吐血したのか浴槽の水は真っ赤に染まっている。

 

両目を見開き、半開きの口からは涎を流す幸子。佐平はやって

しまったと思っていた。やってしまったものは仕方ない、次はこの

肢体をどうするか、刻んで風呂に流すかそれとも救急車を呼ぶ

かとも考えたがそれでは病院で検視すれば死因は明らかになる

であれば最初から警察へ自首するか?小心者の佐平はこれか

ら何年も警察も眼を恐れながら生きていくには心臓が弱すぎた。

「もしもし、警察ですか・・・」

殺人を犯したと言う前、背後に人の気配を感じ振り返るとそこに

は真っ白な長い髪を振り乱す幸子が立っていたのだ。

 

「うっうわぁ~、で・でたぁ」

「佐平、く~ん」

小心者である佐平の心臓は止まりそうになるほど佐平は驚いた。

だが髪を上にかき上げ幸子は嬉しそうにしている。

「何いれたの?ハイターの素敵な匂いでもう気持ち良かった」

「ねぇ見て見てプラチナブロンドのような髪、女神様みたいじゃな

 い?」

「え、あっ、そうだね・・・」

 

生きていたことに驚きはあった、それよりも女神様と言った幸子

を見て佐平はホルマリンに漬けられ足を延ばし瓶の中で揺らぐ

エルとしか思えなかったがそれは伏せておくことにしようと頭

中で考えていたのを幸子は気づかなかった。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません