[短編小説][心霊][創作] 騙される霊 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

わたしは知り合いの女性から不思議な写真が撮れたからと見せられ

その写真に映りこんだ幽霊を理解し心霊写真と判断した。あまりに鮮

明に映る女から生霊ではないかと考えた。ただ当人家族は毎晩のよ

うに出る霊章に困り果てている模様なので我が家にその霊を越させ

れば知り会い一家にも平和が戻るだろうと思った。だが相手の力量

も知らないで霊を呼び寄せる行為は安易だったかもしれない。

 

そいつはその晩やってきた。霊章のある動画や写真を閲覧したとして

も霊力があまり強くない幽霊ならばわたしと会う前に逃げるか消滅す

る、そのせいか今まであまり幽霊が家へやってきた事は無いのだが

そいつはわたしと出会った。これはわたしと同じ霊力もしくはわたし以

上に霊力を持つ証(あかし)なのである。だがこの日は突然の訪問に

わたしが野獣の如き咆哮を響かせたせいか消えていった。

翌晩のこと、深夜部屋のガラスを断続的に叩く者が現れ窓ガラスに意

識を集中した。またあの女が現れたのかと考えわたしは右手に気を集

め手翳しを行う、その刹那部屋の日本人形から湯気のように立ち上る

煙が白いモヤとなり凝縮し人の形へと形成して幽霊となる。わたしは

昨晩の悪霊が遂に部屋の中まで侵入して来たと考え浄化する為に再

度右手を突きだし手翳しを顧みるとそいつは両手を開きわたしの行為

を制止して欲しいように懇願した。

「何するの?わたしだよマヤだよ」

「突然悪霊が部屋に現れたのかと思ったから、なんだマヤか紛らわしい」

「もう少しで浄化するところだった、危なかったな」

この幽霊はマヤ、わたしのガンで他界した女友達でたまに遊びに来る

霊なのだ。もっとも私の部屋には彼女の他にも居着きがいるのだが。

「わたしの友達がね、居場所がなくなったから何処かないかと相談され

 たんだよ」

マヤの言う友達とはわたしの知り会いを苦悩させた女霊だとわかって

いた。そして浮世離れしたマヤはあまりにも簡単に人いや幽霊を信じ

過ぎて先日も悪い霊に付け込まれたばかりでもある。その時は優しく

マヤを諫めたのであるがそれが甘かったせいか同じ事を繰り返して

しまう。ただわたしとしてはマヤを取りあえずは信用したかった。

仕方なく部屋に招き入れると女はしおらしく泣き続けてしまう。昨晩

現れた時には表情が見えなかったが凶悪な笑みだけは確かに見た

マヤを言いくるめこの部屋に入る手段の為の演技としか思えない。

 

「わたしはただ話し相手が欲しかっただけなのです、大抵の人はわた

 しの話す声が聞こえないのか相手にしてくれません、ですがあの一

 家の人達は霊力があるらしくわたしが呼んだら答えてくれました」

この女はわたしが知り会いの家に居た悪霊の事を一切話していない

のに知っていたのだ。

さらに”聞こえない”そのことを理解している、これは普通の人間には

見えない、聞こえない事がわかっている。そもそも死去し霊体となった

ばかりの霊は相手から自分の話しかける声が聞こえていないと理解

出来ず生者から無視され続けていると考えるものだ。

だが・・・マヤ同情しもらい泣きをしていた。

「あんたわかっている?あんたが人間の傍にいることで人間に霊章が

 及ぶことを。そしてあんたが長く居ればいる程霊章は酷くなるんだ」

「知りませんでした、はじめて聞きました。もう2度と以前の様な事は

 致しませんのでどうぞここへおいて下さりますようにお願い致します」

女霊の言い草になんて白々しい事を言うのかと遺憾を覚えた。

「おじさん、わたしからもお願い。君なら霊の一人や二人増えても大丈

 夫よね」

「まぁ仕方ないか」

マヤにはそう答えた。この部屋には居着きで神格もいるからわたしへの

影響は少なくマヤの言う事も間違ってはいない。だがわたしには悪い予感が拭えはしない。この女霊は知り合いの家へ寄生し貧乏神のように

長い間一家を苦しめた悪霊。マヤとて幽霊であるがマヤの手前、ここで

わたしが女霊に対し事を荒立てるのは出来なく許可するしいかなかった

 

8月中旬のこと世間はお盆でスーパーでは関連商品が陳列する時期

マヤも生きている時の習慣が抜けないのか実家へ帰省している。

マヤがいなくなった途端、そいつは本性を表した。

隅で頭を俯かせて座り込んでいた女は悪辣な表情で嗤いだしたのだ。

「あの愚かな女のお陰でこの部屋に入れたわ、うぬには北海道で邪魔

 された恨みがある。もう少しで皆殺しに出来たというのに・・・」

そこまで言うと女は本来の姿になった。江戸時代の姫君のような風貌

「我は尾張の姫である、信長が倒れたせいで積年の恨みを晴らせず

 この世に留まることになった。この世を悪意で満たしてくれよう」

最近死んだものではないと心霊写真から感じていたがまさか戦国時代

の姫とは考えていなかった、道理で強い訳だ。この者はこの世に俳諧

させてはならないとわたしは思ったが消滅させてはマヤが哀しむとも

思えた。

 

わたしが消滅させなくても安住の地と安堵していた鬼子母神は目覚め

させられ怒りに震えているのがわかっているから征伐するだろう。

そしてわたしを御舘様として尊ぶお岩様からも殺意が放たれている。

二人にとってはいくら強い悪霊だとしても物の数ではない。だからと言

ってここで力を貸して貰うのは筋が違う。この部屋の主はわたしなのだ

わたしが自分の責任に於いて目前の女霊を消去しなければならない。

わたしには霊体を消滅させられる破邪の剣、わたしの指から出た赤き

汁を吸いこませた銀色に輝く短刀があるのだ。たとえマヤが友達を失

い哀しむことになってもやらねばならない。

 

わたしの想いに迷いがあったのかもしれない。女は片腕を失っただけ

で終わった、すぐ消えたので逃げ出したと思われる。だが後悔はなく

わたしはこれで良かったのだろうと考えた。悪霊を消滅させた後でマ

ヤには用事で出かけたと嘘をつくことも出来る、だがマヤに納得させ

られる事はできるだろうが自分に対する猜疑心は残る。相手がどんな

に悪い奴だったとしてもマヤの友人を消した事実は消えないのだ。

どんなに理由をつけても自分を庇護する自己満足で終わるかもしれ

ないがわたしはそれでも構わないと思えた。

 

マヤが帰宅いや結婚してるわけじゃないからその表現は違っている

とにかく戻ってきた。

「あの人は?」

「探していた人が見つかったようで出て行ったよ」

「そうなんだ、折角友達になったばかりなのにな」

残念そうにいうマヤわたしは言葉が詰まってしまう。確かに真実を告げ

る方が本人の為にはなる、それもわたしは理解している。ただマヤは

生前若くして癌と言う病気に発病、人から裏切られたこともあったしマヤ

の病気を知らない人から誹謗中傷を受けたこともわたしは知っている。

そんな彼女に対して死んでからも罵るなどなんで出来るだろうか。

「また友達できるかな」

「ああマヤは明るく性格悪くないから出来ると思うぞ」

「ちっ!性格が良いとは言ってくれないんだ」

「まぁな」

 

またマヤは霊から騙されるかもしれない。だがわたしはどうか傷つかな

いで欲しいと切に願うだけである。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません