カラス 大抵の人は集団活動する鳥だと思っている
しかし実際は2匹で行動するものたった一匹でいるもの
人間の世界では一人でいるものを”ボッチ”と呼ぶ。
この物語は一人の人間と一匹のカラスの物語である
平日の朝 自転車を走らせるおっさんがいた。
買い物カゴがついた実用車ともいえる自転車
無駄な装飾がなくギアのチェンジも出来ない
ライトといえば昔ながらダイナモ式ライト
おっさんは風の強い日も大雨注意報が出てる時も
雨具をつけて必死に自転車ペダルをこいで走る。
都会と違い歩道がきちんと整備されていない田舎
おっさんは一人田畑に囲まれた農道を突き進む
たとえ大きな水溜りがあったとしてもおっさんは
両足を上げて水溜りの中央を目指し突っ込んでいく。
晴れた暑い日でもおっさんは長袖を欠かすことはない
田畑にはスズメ、ムクドリ、サギなどの姿も見える
毎日通るおっさんに慣れたのか野鳥達は逃げる事
なく横目でおっさんの通る姿を見送っている。
「ちゅ ちゅん ちゅん」
とおっさんはスズメの鳴きまねをしてみせると
雀たちはまるで喜んでいるかの如く両羽根を
バタつかせて飛び交うのであった。
「ギャッギャッギャッ」とおっさんが叫ぶと
ムクドリは逃げていく素振りをみせたり近くに寄って
きたりと彼等もまた個性的な表現をする。
自転車でいつも通る農道には毎朝一匹のカラス
が寂しそうに畑の真ん中で地面をついばんでいる
カラスの生態などおっさんには興味なく知ってもいない
カラスのいる場所は農道から離れていたので特別
そのカラスに興味を持つことはなかった。
ただそのカラスも毎朝みるおっさんに安心して
警戒しなくなったのだろうかおっさんの通る農道
近くにもやってくるようになったので
「カァ カァ カァ」
とおっさんはカラスに向かって叫んでみた。
カラスは驚いたのか20メートルほど飛んでみたが
それ以上は飛ばず畑に降りてこちらを見ていた
どうやらカラスのほうもおっさんの存在が気になって
いるようだ。
おっさんとカラスは毎朝コミュニケーションをする
表現方法は人間とカラスで違うがお互い通じ合う
ものがあるのだろう。
最初に出会ってから何日経ったのだろうか
季節は初夏になろうとした午後6時おっさんは
いつものように家を目指し農道を自転車で走って
いるといつものカラスが飛んでいるのを見つけた。
どこへ降りるのかとカラスを目で追ってみるとカラスは
まだ実っていないトウモロコシ畑の陰から見ていた。
まるで片思いの男子に告白できずただ見つめている
だけの純情な女子学生のように
「さようなら~」
おっさんは自転車を走らせながらそう言葉を発して
走り去っていく、そんなおっさんの後姿をいつまでも
カラスは見ていた。
カラスのおっさんに対する想いは日々募っていく
だがもうすぐ田んぼでは田植えがはじまってしまう
そうなるとカラスはこの場所にいることは出来ない
残りの時間が少ないおっさんとカラス
翌日の朝おっさんが農道を走っていると
用水路脇に設置されたフェンスにあのカラスが
とまっていた。
「おはよう カァ子」
いつもはそれでしばしの別れとなるのだったが
今日は違った。おっさんが走り去っていくとカラス
は飛び立ちおっさんを追いかけ始めたのである。
「ガァー ガァーー」と叫びながら飛ぶカラス
なぜ追われるのかわからないままおっさんは逃げた
自転車を必死にこいで農道を激走する。
逃げるおっさん、追うカラス
だがおっさんの思いも空しくカラスは追いついてしまう
両足の鋭い爪を大きく開き獲物を狙う猛禽類の如き
黒き悪魔の落とし子その名はカラス
カラスがおっさんの肩に着地した刹那
おっさんの両肩には衝撃が走った。
同時におっさんはカラスが攻撃に転じる覚悟をする
”もうだめだ”
頭をくちばしで突かれ頭が真っ赤に染まるイメージ
自転車を止めて手で追い払うことも考えてはみたが
必死にこいだせいで自転車はスピードに乗っていた
ましてここは土と砂利の農道である為、片手運転
だと転倒してしまう危険性もある。
おっさんはカラスから殺気を感じていた
”悪 即 斬”
「う わぁああ」
だが頭が痛くはない、変だ。
確かにカラスには頭を突かれてはいる
”コツ コツ コツ”
カラスはどうやら悪戯をしたのだと気がついた。
「痛て 痛てて」と苦笑いするおっさんと
嬉しそうに鳴くカラス、頭をつつかれ走る自転車
自転車をこぐおっさんの頭には松坂慶子が歌う
”愛の水中花”が流れていた。
「あ・れ・も 愛 これも愛、、、」と
この物語はフィクションであり実在の
人物、団体には一切関係ありません