幕no内弁当! -8ページ目

幕no内弁当!

秋葉原で「なんでも屋」を営む桐嶋快斗の日常を、台本形式でお届け!
 
この物語はフィクションです。登場する人物/団体/名称等は全て架空であり、実在するものとは一切関係ありません。
※許可のない転載は厳禁です

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【8:03】◆ 快斗の部屋いつものように朝食をとっている快斗。    しかし、アスカはソファに寝っ転がってスマホをいじっている。仰向けで足を組み、左肘を頭の上で折り枕代わり    にしている。右手は絶えずタッチ操作に追われているアスカ  「イケ! ソコだ! そうそうそうそうソウ、今だ! ヨシ!」スマホ画面にタッチするたびにゲシッ! ゲシゲシゲシゲシ! ゲシッ!という音が聞こえてくる快斗   「・・・・・。」        快斗は一人黙々と箸をクチに運んでいるスカ  「イーぞイーぞ! 今度こそ絶対倒してやるからな!」箸を置く快斗斗   「ごちそうさま」食器をキッチンへ持っていく快斗アスカ  「お、そこら辺に置いといてくれ。……こうか! こうか! だったらコレでどうだ!」相変わらずスマホに夢中なアスカ快斗   「ずっとやってたの?」キッチンから声をかける快斗アスカ  「だってこのスマホがアタシに訴えるんだもん。『淋しいの、かまってかまって~』って」快斗   「そんな、加藤さん2号じゃないんだから」加藤さん 「私ハそんなに薄っペラくありまセン」と、ベランダから機械音声が聞こえる快斗   「うわぁ! ビックリしたぁ……」球状の物体に、七三に見える髪のような何かが装飾されている。中央にはヒトツ眼のようにレンズがついている。人間で言うと首の付け根に当たる部分は、金属製のアームで、小峯の部屋から伸びてきている加藤さん 「モ、申し訳ありません…、ズットここにいたんですが…」   「アスカの暇つぶしに付き合わされてたんだね? お気の毒に」加藤さん 「ィェィェ、それはドーデモいいんです、私ハ寝ませんから。ソレよりも……」快斗   「ん、なに?」加藤さん 「昨夜(ゆうべ)3時頃からココにいまして、快斗サマがリビングに来られたときもモチロンここにいたわけですが……」快斗   「ぅ、うん」加藤さん 「気ヅかれてないことに気ヅきませんでした…。イマ感じるこのアルゴリズムの乱れが『ショック』というモノなのですね」快斗   「ご、ごめん……」加藤さん 「一句、読んでもいいですか?」快斗   「ど、どうぞ」加藤さん 「『居たんだヨ 気ヅいてないと 気ヅかずに これがショックと  言うモノなのネ』」快斗   「・・・。」加藤さん 「お粗末サマデス」アスカ  「そのまんまじゃねーか。もうアレだ、一句禁止」加藤さん 「そ、そんな!?」快斗   「ちょっとアスカ…」アスカ  「センスがナイ」快斗   「なにもそこまで…」加藤さん 「コレが私の唯一の趣味だというのに~」何故かレンズがウルウルアスカ  「こいつずっとこんな調子なんだぜ、鬱陶しい。昨日から一体何句作ったんだよ」加藤さん 「ざっと6320句ホド」快斗   「・・・。」アスカ  「・・・。」加藤さん 「・・・よかったら発表しましょうか?」快斗   「ぃ、いや大丈夫、俺もう行かなきゃいけないから  」ピッピッ!  ピッピッ!アスカ  「ヤベッ、バッテリーが無ぇ! 充電器充電器ー!!」寝室に駆け込むアスカ快斗   「いつまで続けるんだか……」    ふと、視線を感じる快斗。確実に、ものすっごく見つめられているが、あえて触れないようにしてみる快斗   「・・・。」加藤さん 快斗   「・・・・・・・・・・。」加藤さん 「・・・・・・・・・・。」快斗   「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」咳払いをする快斗快斗   「そう言えば、声が滑らかになったね?」加藤さん 「気付いていただけましたか!! アプリケーションがアップデートされたんです! ミク姉のオカゲです」快斗   「それはよかった……」加藤さん 「「話は変わりますが、厳選した57句を……」快斗   「行ってきまーす!」ベランダに取り残される加藤さん2号。11階の高さから、遥か地上を見下ろす【10:37】◆ 雑貨店 『ニコニコショップ』電気街から1つ裏に入った雑貨ショップ。店主がコミケに行くため、快斗は店番の依頼を受けていたのである。店頭には、買い取ったクレーンゲームの景品に値段がつけてある。奥にはコアなエロDVDが、これでもかと言うほど並んでいる。そんなショップである。会計を済ませた客が、商品の入ったビニール袋を手に店を出る快斗   「ありがとうございましたー! ……ふぅ、結構繁盛してんのね、この店。そりゃそうか、ゲーセンで取りにくいモノばっかりだもんな」キャップを深くかぶった男が入ってくる。襟を立てて汗をかいている快斗   「いらっしゃいませー」しばらくプライズを見ていたが、どうやらチラチラ快斗に目をやっている快斗   「……何かお探しですか?」キャップの男は周りを気にしながら、といってもすでに店内にいる客はそれぞれ自分の捜し物に夢中になっているため、他の客など気にもかけていないのだが、それでもキャップの男は挙動不審に快斗に近づきキャップ男「あ、あの・・・rorimonoは・・・」快斗   「?????…あ、ロリ物??」キャップの男は、更に下を向き、快斗からは後頭部しか見えていない。一気に身長が15センチは低くなった感じだ快斗   「右手の奥にありますよ」キャップ男「どぅも。」快斗   ャップ男「いや僕はただ友達に頼まれただけで、そのぉ……」快斗   「でも、法に触れるものはありませんので……」キャップ男「・・・はい」暖簾をくぐり、奥へと消えるキャップの男快斗   「てか、そんなことは当たり前か  」続いて、ブラッド・ベリックのような巨漢が堂々と、ノッシノッシと入ってくる   「ここ、スカトロ物あったっけ?」快斗   「・・・ぇぇ、奥の左側に  」巨漢   「ども~」奥に消えていく巨漢快斗   「・・・そうだよな、別に恥ずかしいことは無いんだよな。趣味は人それぞれだし。それに、そうやって解消しないと犯罪も増えちゃうんだろうしね、うん」妙に納得し、自己解決する快斗。すると店先から、商品の箱がいくつも落ちる音快斗   「ん? なんだ!?」慌てて出て行く快斗。するとそこには、必死に商品棚を掴み、もう一方の手は腹を押さえ、尋常ではない冷や汗を垂れ流してゾンビのように目を丸くした山田がいた棚は、ものすごく小刻みに揺れている快斗   「なにしてんだよ山田!カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ山田   「…トイ…レ…貸し…貸してく…さい………っあ!…」一瞬、遠い目をする山田快斗   「!?」山田   「……oh、危なかった…」快斗   「ほら、レジの裏にあるから行けよ」山田   「ありがとうございます!! (ioi)」とんでもなく緊急事態なのは見てわかるが、駆け込む余裕がないのか、1歩1歩、踏みしめるようにトイレに向かっている山田山田   「…はぁぁは……ははっぁは………はぁあっは……はふはふはぁ……」山田が落とした商品を元に戻す快斗快斗   「きっといろんな店でトイレ断られたんだな、アイツ。それにしても小峯ちゃんがいなくてよかったよ。」しゃがんで作業をする快斗    落ちている箱を拾おうとすると、視界に違和感を感じる。見ると、小さな足がそこにある。顔を上げ、その足の主を見ると、小学生の女の子いずみ  「迷子になっちゃった。」【10:43】 『ニコニコショップ』店内話を聞いている快斗快斗   「森川いずみちゃんかぁ。かわいい名前だね。今日は一人で来たんだ?」ずみ  「うん」快斗   「偉いねぇ。秋葉原にはよく来るの?」首を横に振る女の子いずみ  「お母さんとたまに」快斗   「それじゃぁ淋しかったね。今日は何か用事があったのかな?」いずみ  「うん。ちょっと行くところがあったんだけど、メモしておいた紙、落としちゃったから」快斗   「そうかぁ。じゃぁ紙はお兄ちゃんが探してあげるから、とりあえずここから移動しようか  」いずみ  「うん」荷物をまとめると、トイレをノックして快斗   「山田ぁ!」山田   「は、はーい…。」快斗   「オレ、ちょっと部屋に戻るから店番よろしくな!」山田   「そ、そんな! ちょっと待ってくださいよ!」快斗   「トイレ貸したんだから、それくらいは返してくれてもいいだろ、」山田   「まだ借り終わってませんけどぉ!」快斗   「緊急事態なんだよ」山田   「僕だって今、緊急事態真っ最中ですよ!?」快斗   「じゃ、頼んだぞ」山田   「ちょっと先輩! 僕にもいろいろ予定があるんですよ! このあと駅の向こうの……」快斗   「さ、行こうか」快斗、山田の声は耳に入れず快斗   「お腹空いてる?」  「うん!」【11:12】◆ 快斗の部屋快斗がいずみを連れてやってくる快斗   「あれ、アスカいないのか……」快斗、ケバブのテイクアウト紙袋をテーブルに置くと、家の電話が鳴る快斗   「はい、桐嶋です」酒井   「よかったぁ~、探してたんだよ快斗くん!」アニメショップ『アニメイズ』の店長の酒井快斗   「どーしたんです酒井さん? 急ぎならケータイに連絡くれれば……」酒井   「全然繋がらなかったからさ、」快斗、服のポケットを探す快斗   「あ、ホントだ、ケータイ忘れてきたみたいです、すみません。で、どうしたんですか?」酒井   「行方不明なんだよ!」快斗   「ゆ、行方不明……誰酒井   「川村さつきちゃんが!」快斗   「川村……ぁぁ、あの女子高生声優アイドルの、」酒井   「よく覚えててくれたね、そーだよ、その子!」快斗   「(……ある意味忘れられない日ですから  )」酒井   「今日、石角電気のイベントホールでLIVEとサイン会があるんだけど、まだ到着してないんだよ!」快斗   「事務所に確認は?」酒井   「もちろんしたよ! そしたらとっくに着いてるはずだって。頼むよ快斗くん、なんとか見つけてくれないだろうか!?」快斗   「わ、分かりました、とにかく、今から紗那弥さんとこ行くんで、酒井さんも向かってください」酒井   「わかった!」酒井との電話を切り。再度受話器を上げて紗那弥に連絡快斗   「あ、もしもし紗那弥さん? 実は・・・」【11:20】◆ 小峯の部屋の前快斗がインターホンを押す小峯   「はーい。」ガチャ小峯   「あら、快斗さん。 ん? もう子供できたの?」快斗   「違うよ…。ちょっと頼みがあるんだけど…」小峯   「私は引き取らないわよ?」快斗   「そうじゃなくて。少しの間、この子を預かってくれないかな?」小峯   「ほーらやっぱり! 私はまだ家族を持つつもりないんだってば~。」快斗   「だからそうじゃなくて……迷子なんだ。」小峯   「マイゴ? 男の子みたいな名前ねぇ、マイコーがマイケルだから、正確にはマイゲル君かしら? 苗字はズコフィールド?」快斗   「道に迷った子の『迷子』。」小峯   「わかってるわよ、私だって日本人歴長いんだから。」快斗   「・・・。」小峯   「あの女は?」快斗   「部屋にいないんだよ。今から紗那弥さんのとこ行ってくるから、ちょっとだけ一緒にいてもらえないかな?」小峯   「ならしょうがないわね、これもお隣さんの務め、いーわよ。」小峯、腰を曲げて頭の位置を低くする小峯   「カワイイお姫さまねぇ。私は小峯恵梨香。あなたのお名前は?」いずみ  「森川いずみ。」小峯   「いずみちゃん♪ まぁかわいらしい! さぁ、私のお城へようこそ~!」小峯、いずみを中に促す快斗   「助かるよ。お腹空いてるって言ってたからこれ、ケバブ」『フレッシュ・ケバブ』の紙袋を渡す快斗   「それじゃよろしくね」小峯   「はいは~い!」エレベーターホールに向かう快斗いずみは靴を脱いで部屋の中を見てるいずみ  「うわぁ、すごーい!」小峯   「ささ、どうぞどうぞー♪」小峯の部屋の中パソコンのディスプレイがいくつもあり、勝手に改造したのか、自動ドアまである小峯   「どうぞ、好きなところでくつろいで~。」加藤さん 「いらっしゃいマセ」いずみ  「きゃ!」加藤さん 「驚かせて申し訳ありません、ワタクシ、スーパーAIの『加藤さん2号』と申します。どうぞヨロシク。」いずみ  「これ、ロボット?」小峯   「ん~、ロボットとはちょっと違うけど、ま、わかりやすく言うとそうね。」いずみ  「へぇ~」小峯   「こちらは快斗さんからお預かりした大切な客様の、いずみchan。」加藤さん 「快斗サマからですか。おイクツで?」いずみ  「10歳」加藤さん 「じゅ、10歳!? そ、そーですか、10歳でツか・・・ぁ、た、立っているのもナンなんで、よ、よかったらココに座ってください!」デスクに置いてあるキーボードやマウスや工具などを、アームでどかし、ガッシャンガッシャン床に落とす加藤さん2号小峯   「ちょ、ちょっとアンタ何やってんのよ!?」加藤さん 「ヨ、ヨロシければ、お茶でも……」ビーカーや薬品などの入っている保冷庫を開け、球体の両サイドに取り付けてある腕のようなハンドユニットで缶ジュースを掴んで取り出し、いずみに差し出すいずみ  「あ、ありがとう」いずみ、その缶を受け取ろうとジュースを挟んでいるハンドユニットに触れる加藤さん 「FOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」加藤さん、突然そのジュースを勢いよく上下に振り始める小峯   「バ、バカ! やめなさいって!!」球体自体がどんどん熱を持ち始める加藤さん2号小峯   「な、なんなのよいったい…。」プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!プルトップが内圧に耐えきれず、中身のジュースが部屋に吹き出す小峯   「お、お姫chan、ちょっと散歩にでも行こうか…?」いずみ  「ぅ、うん」小峯   「ちゃんと掃除しとくのよ!!」部屋を出る小峯といずみ一人残された加藤さん2号破裂した缶を握りしめたまま加藤さん  「・・・・・・・・・・oh・・・・・・・・・・」【11:41】◆ 秋葉原署紗那弥  「手配書は?」部下   「できました。いま、署員に配布中です」酒井が持ってきた川村さつきのチラシを元に作成した手配書である。署内では私服姿の刑事たちが多少慌ただしく動き回っている快斗   「紗那弥さん、これは?」紗那弥  「人気声優が行方不明。しかもその子は女子高生。場所はこの秋葉原よ? 大人とはいえ、相手が相手だから動かないわけにはいかないでしょ。ま、SATを出動させる程でもないってのが心残りだけどね」酒井   「頼むよ快斗くん、さつきちゃん探すの手伝ってくれよ」快斗   「でも、いま家には迷子の子が……」紗那弥  「それって、もう保護されてるってことよね?」快斗  「いや、まぁそうなんですけど、どこに行くか書いた紙を落としちゃったって言うんで……」紗那弥  「わかった。それもコッチで手配する」紗那弥、無線を手に取り紗那弥  「本部より連絡。捜索範囲、それぞれの担当エリアはブリーフィング通りで変更なし」署員達から応答の声応答   「了解!」紗那弥  「追加案件よ。快斗くん、説明して」快斗   「ぁ、は快斗、紗那弥から無線を受け取る快斗   「すいません、快斗です」署員達から応答の声応答1  「やぁ快斗くん!」応答2  「今日はどうしたの?」応答3  「紗那弥さんに呼び出されたんでしょ」応答4  「またクロスワードに付き合わされてるの!?」応答1  「いいかげんビシッっと言った方がいーよー?」応答3  「『僕で遊ぶのやめてください!』って」応答達  「ワハハハハハハハハ応答2  「そうだ、俺から仕事を依頼するよ。篠原さんの結婚相手、探してやってくんないかな?」応答4  「お! それいーねー!」応答1  「乗った!」応答2  「俺も!」応答3  「俺も!」・・・・・・・・・・・・・。応答4  「もしかして・・・」紗那弥  「ここにいるわよ。」 ・・・・・・・・・・・・・。応答4  「快斗くん、早く用件を言いたまえ」応答2  「私たちも暇じゃないんだよ」応答3  「行方不明になって欲しいのは篠原さんの方だなんてコレッポッチも思ったりしてないんだから」応答1  「篠原さんはいい人だよ」応答2  「しっかりちゃんと伝えておいてくれたまえ」紗那弥  「アンタタチ、イイカゲンニ……」快斗   「じ、実はですねぇ!」牙を剥き、目を血走らせながら無線に向かっていこうとする紗那弥。後ろにいる2人の署員に止められている。ムギギギギギ! シャーーー! シャーーー! と音をたてている快斗   「10歳の女の子が迷子になっていたので保護しまして、いま小峯ちゃんとこに居るんです。用事があって秋葉原に来たんですけど、その用事をメモした紙を落としちゃったらしいんです」紗那弥、快斗の持っている無線を荒々しく引ったくり、文字通り牙を剥いて紗那弥  「アンタたち! その紙、絶対に探し出しなさいよ!!」快斗   「うわぁ!」    無線を落とす快斗。署員2人を投げ飛ばし、無線に向かって更に牙を剥く紗那弥  「見つかるまで今日は返さないわよー!!」応答達  「りょ、了解しましたぁー! 」ゼェゼェと肩で息をする紗那弥快斗   「なんかオレ、悪いコトしちゃったなぁ…… 」【12:17】◆ 『 STAY BACKS COFFEE 』秋葉原駅・中央改札側「ビシバシカメラAKIBA館」近くの建物。1階にレジと禁煙席があり、2階の客席は喫煙席になっている。通りに面した一面ガラス張りのカウンター席。アスカは2階のそのカウンター席の真ん中に座り、相変わらずスマホでゲームをしているアスカ  「イケ! ソコだ! ヤレ! ヤレ!・・・ヤアーレッつってんだよ!」当然、周りの客は迷惑そうな顔をしているスマホからゲームオーバー音アスカ  「クソッ! またコイツかよ! どーやったら倒せんだ!?」    急に店内側に振り向くアスカ。迷惑そうにアスカに視線を送っていた客(全ての客)が一斉に目を伏せるアスカ  「オイ、誰か知らねーか? このスウィートエルフってヤツの倒し方~」一斉に静まりかえる2階店内のBGMさえも止まったような気になるアスカ  「言わなきゃ1人ずつ胸ぐら掴んでくぞ」一斉に目配せを始めるステバの2階徐々に声が聞こえてくる彼女1  「あんた知らないの? よくケータイでゲームして」じゃない」彼氏1  「俺ケータイ会社《ForYou》だもん、あのゲームはわかんねえって」また別の場所では1   「お前《WillyCome》だろ、調べろって!」男2   「なんで俺だけ!? お前らもやれよ!」男3   「ダメだよ俺《HardBANK》だぞ、ネットやったらいくらかかると思ってんだよ!」男1   「やんねーとケータイ代払う前に俺ら殺されるぞ!」男2   「誰か《dokodemo》使ってるヤツいねえのかよ!」すると、学生   「ぁ、ぁのぉ……」静まり返る店内学生   「倒せないと思うんですけど……」アスカ  「ん??」隅っこの方で、メガネをかけた大学生っぽい男が手を挙げている全員、問いかけるような顔をその男に向けているアスカ  「オマエ!!」一斉にビクつくお客さん達。熱帯魚のようにアスカに振り向くアスカ  「そこのメガネ学生!」学生   「はひぃっ 」アスカ  「詳しく説明しろ」学生   「えーっと、あのぅ、……そのスイートエルフってのは倒せないと思うんです」アスカ  「なんでだ?」学生   「だってそれ・・・」一同    ゴクリ店内全員が、メガネ学生に注目。固唾を呑んで見守っている学生   「・・・味方ですから。」・・・・・・・・・・。学生   「攻撃しちゃ、ダメですよ・・・」客達   「・・・。」学生  「ってゆーか、」客一同    ゴクリ店内に緊張が走る学生   「なんで戦えてるんですか?」ざわつく店内アスカ  「知らねーよ! コイツが先に攻撃してきたんだよ!!」学生   「そんなわけないじゃないですか!?」アスカ  「おいメガネ!!」ビクッ! とする学生再び静寂。何人かは、まるで審判を待っているかのように眉間にしわを寄せ、目を堅くつぶっている。それ以外の人は、十字を切ったり、指を組んだり、ぞれぞれの方法で祈りを捧げているアスカ  「座って良し」突然、全員が起立し、全員   「ありがとうございます!!」アスカに頭を下げ、また着席するアスカ  「うむ」ウィンドウに向かって座り直すアスカアスカ  「チッ、またやり直しだよ」と、手元に目を移すと、スマホの先、路上に見覚えのある人間が歩道を歩いている。軽くゴシックの入った服。なのに何故か違和感のないVENSの厚底スニーカー。中学生にしか見えない背の小ささ。しかも、アスカ  「子供!?」ガラスに顔を押しつけ、眼ん球さえもガラスにくっつきそうな勢いだ客1   「今のうちに!」客2   「そ、そうですね!」アスカの隣に座っていた客が席を立つアスカ  「??・・・コミネ??」 STAY BACKS COFFEE 前小峯   「しっかしビックリしたわ。加藤さん2号がロリコンだったなんて。ゴメンね、ビックリさせちゃって。」いずみ  「ぅうぅん、大丈夫。ちょっと楽しかった」小峯   「そう言ってもらえると助かるわ。そだ、ケバブも置いてきちゃったし、お詫びにオゴルわよん♪」いずみ  「やったー!」小峯   「何が食べたい?? 好きなモノ言っていーわよ。」いずみ  「座れるトコなら何でもいい」小峯   「ん? 座れるとこ? ぁそっか、迷ってずっと歩いてたんだもんね。それじゃぁ……」辺りを見回す小峯。たくさんの人がぞろぞろと走り出てくる店が目に止まる。小峯   「何かしら??」    何気なく『 STAY BACKS COFFEE 』を見る小峯   「うわぁ!」2階の窓ガラスにはムギュゥ!っと、吸盤が張り付いた内側のような顔でアスカが小峯を見ている◆ STAY BACKS COFFEE 店内窓側のカウンターに並んで座っている3人アスカ  「知らなかったぜ、お前に子供がいたなんて」小峯   「違うわよ、快斗さんに預かってるアスカ  「なにぃ!? カイトに子供がいたのか!?」小峯   「あのね、」アスカ  「そんな大事なことを同居人であるこのアタシに黙っていたなんて!? 名前はなんだ? カイ子か? ケイトか?」小峯   「だから違うって言ってんでしょうが! この子は迷子になってたの! アンタが部屋にいなかったから私が預かってる! ただそれだけ! カイ子でもケイトでもない! ましてや快斗さんの子供なんかじゃないの!」アスカ  「そんな大声出さなくたって聞こえてるしわかってるよさっき聞いたんだから」小峯   「ゼェゼェゼェ……」ピザ屋  「お待たせしましたー」    『 Lovely Pizza 』の店員がやってくる。向かいのビルに入っている、イートIN・テイクOUT・デリバリーのできる、人気のピザ屋であるピザ屋  「はい、『 Caf-Punch 』2つですねぇ」小峯   「どーもー。」    と、カウンターに置かれたのは、DOUBLE GULPサイズのドリンクのカップ。      つまり、1,8L入りのプラッチックカップ。言っておくが、ここはSTAY BACKS COFFEEの店内であるアスカ  「向かいの店からデリバリーさせるか普通」小峯   「いーじゃない『エリア内ならどこへもスグにお届け』って言ってんだから。」アスカ  「だからってよぉ、」ピザ屋  「仕方ないんです、確かにチラシに書いてありますから。まさかこんなところから注文する人がいるなんてオーナーも思ってなかったみたいで…。まぁ、バイクのガソリン代はかからないんでそこは助かりますけど」   「お花見の時期に路上や公園からオーダーするよりは全然マシでよねぇ?」  「その通りです」アスカ  「なるほどねぇ……」ピザ屋  「では、失礼しまーす」小峯   「どーもねー。」ピザ屋  「毎度~」アスカ  「ダッ! チックッショッなぁんでこーなるかなぁ!」スマホをいじりながら「Caf-Panch」と取ろうと    するアスカ小峯   「ダーメーよ、これはお姫ちゃんのなの。欲しけりゃ自分で買ってきなさい。」アスカ  「ケチくせーこと言うなよぉー、」小峯   「だーめ。ほら、お店は目と鼻のスグ先よ」文字通り、「 STAY BACKS COFFEE 」の2階からは、細い道を挟んだ向かいのビルの2階の、「 Lovely pizza 」の店内が見渡せているアスカ  「でもよ、ピザ屋のイートINてどうなんだ? 回転率悪すぎだろう。ファストフードのピザとはワケが違うんだからよ」小峯   「確かにWAIT時間は長いわよね。でもその分ドリンクやサイドメニューが出るんじゃない?」アスカ  「どんなヤツが入るんだ? 出かけてて『お腹空いたね、ピザでも食べよっか?』とはならないだろ」いずみ  「家で食べるといろんなとこが汚れるからお店に来るとか?」小峯   「でも結局食べきれないで残して、」アスカ  「クリスティー・ドーナッツみてーなデケェ箱でテイクアウト、か」いずみ  「あれ、スッゴイ邪魔なのよね、持ったまま電車とか乗るのホントやめて欲しい」アスカ  「確かにな。特にオメーみてーなガキにゃ迷惑な話だな」いずみ  「ガキじゃないもん」Punchを啜るいずみ小峯   「あらまぁ、やっと会話できたわねぇ。」「ん?」 と、お互いを見る2人アスカ  「・・・。」いずみ  「・・・。」アスカはスマホいずみはPunchに向き直る小峯   「あんたたち似てるわねぇ。」2人   「似てない!」否定したはいいが、またしても「似てる」と言われる原因を自ら作ってしまった2人   「ふんっ!」そっぽを向く2人またしても小峯   「そのまましばらく仲良くしててちょうだい、ちょっとトイレ行ってくるから。」アスカ  「お、おい! オレ達2人っきりにさす気かよ!?」小峯   「3分くらいなんとかしなさいよ、元々はアンタが預かるはずだったんだし。」アスカ  「コ~ミ~ネ~!」、かまわずその場を去る。アスカといずみ、お互いチラッと目が合ったがふんっ!!アスカはゲームに、いずみはCaf-Panchに夢中になっているピィーッピィ! ピィーッピィ! という電子音アスカ  「なにぃ!? オイ待て、もうちょっとでまたアイツにたどり着くってのに! ああ~!!」ピィー・・・・・・小峯   「なに大声出してんのよ。」アスカ  「バ、バッテリーが・・・」いずみ  「もうトイレ終わったの?」小峯   「誰か使ってて入れなかったのよ。コーヒーショップなのにトイレが1つしかないってどうなのかしら。」アスカ  「おいコミネ、ケータイ貸せ!」小峯   「私の《ForYou》だからそのゲームは入ってないわよ。」アスカ  「そのくらい気合いでなんとかする」小峯   「そういうことじゃないの。貸したくないからそう言ってるの。」小峯、バッグを触らせないよう抱え込む。すると、バッグの中からBiiii!  Biiii!小峯   「あ! いっけなーい! 円心分離機かけてたの忘れてたわ。」取り出したスマホ画面には、    『 Separation Completed 』 の文字小峯   「私戻るわね。」アスカ  「そのケータイは!?」小峯   「持って帰るに決まってんでしょ。このPunchあげるから、お姫ちゃんのことちゃんと見てるのよ!」アスカ  「なんだって!?」小峯   「お姫ちゃん、何かあったらこのオバチャン、警察に突き出すのよ。」アスカ  「OBA!?」いずみ  「うん」アスカ  「『うん』じゃねー!」小峯   「じゃぁねー!」走って帰る小峯アスカ  「誰が飲むかよ、こんなパンチ! アタシにゃコーヒーが・・・」ズズズズズズアスカ  「クソ、なくなったか……」横目でいずみを見るアスカいずみは足をブラブラさせ、外を見ながらPunch啜っているアスカ  「はぁ・・・」ため息をつき、うなだれるアスカアスカ  「わーったよ」    小峯のPunchを取り、すする窓際のカウンターに並んで座り、そろってPunchストローを咥えている2人小峯   「あらまぁ、お似合いじゃな~い♪」離れたところから双眼鏡で覗く小峯。ニヤリと笑い、スキップでマンションに向かう(第5話『行方が不明でオマエかい!?』 は、まだ続きます!)