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【8:00】◆ 快斗の部屋リビングの片隅、フローリングフロアから膝上程度に一段高い畳エリア。卓袱(ちゃぶ)台には料理が並び、向かい合って朝食を取っているのはこの2人である。食べている快斗。卓袱台に両ヒジをつき、開いた掌にアゴを乗せ、快斗の顔を伺っているアスカ。食事に集中できない快斗箸を口に運びつつ、……チラッ……チラッ……チラッとアスカを見やる快斗 「なんだよ」アスカ 「……どうした??」快斗 「へ??」アスカ 「だ、か、ら、どうした??」快斗 「……」アスカ 「カイト、なんか最近オカシイぞ??」快斗 「別になにもおかしくないよ。俺、いつもこんなんだろ」アスカ 「そうだよ?」快斗 「だろ?」アスカ 「だからだよ」快斗 「??……ぇ??」アスカ 「なんで??」快斗 「なにが」アスカ 「なんでいっつも同じなワケ??」快斗 「言ってる意味がよくわからないんだけど……」アスカ 「オトコとオンナがこーして1つ屋根の下で暮らして、アタシが毎日朝食を作って出す」快斗 「居候だからね」アスカ 「それをオマエは毎朝食べる。何でだ??」快斗 「……?? 家主だから」アスカ 「どーして何も変わらない??」快斗 「ぃゃそんなこと言われても、勝手に転がり込まれた身としてはさぁ……」
アスカ 「しかも! しかもだぞ!? 目の前にいるそのオンナってのが、こぉーんなイイオンナなワケじゃんか? どーして何も変わらない??」快斗 「イイ……女……」アスカ 「イイオンナだろーがー」快斗 「あのなアスカ、『イイ女~』とか『美人~』とか、そういうのは自分で言うことじゃなくてさ」アスカ 「だったらこれを見てもらおうか!」 アスカ、雑誌「ZPA!」を開く快斗 「『一般男性に聞いた、理想的なイイ女の条件』??」アスカ 「このページによるとだな、『清楚・おしとやか・上品・落ち着きがある・包容力がある・機転が利く・料理上手』とある。そこでアタシは思った」カイト 「……」アスカ 「このページに載ってることって、アタシそのものじゃんか、って」快斗 「……;」アスカ 「ま、仕方ないか、まだ日も浅いし。アタシはただ、イイオンナってだけだもんな」快斗 「……あのさ、たとえ万が一にも、ここに載ってることが全部当てハマったとして……俺がアスカのことを……」アスカ 「大丈夫、心配すんな」アスカ、ページをめくりアスカ 「趣味も増やしていく予定だ」快斗 「ん、『イイ女はやっている! これぞ、男殺しの趣味一覧』? 茶道・華道・書道・乗馬・美術鑑賞・音楽鑑賞・バイオリンやフルートなどの楽器演奏……」
アスカ 「とは言え、だ。そんなモンやってたら金かかってしゃーねーからな、それは目標ってことにして、まずはコッチを極めようと思う」いろいろなパンフレットを取り出すアスカ 「コーヒーメーカーで入れるおいしいコーヒー」「お花屋さんでの裏技」アイキャン・ペン字講座」 「競馬場の歩き方」「世界の違法な落書き」「パンクの聴き方」「オカリナ入門」 「・・・あのさ。」アスカ 「ん、なんか文句でもあっか?」快斗 「その言葉がもう『おしとやか』からはずれてるんだけどさ、」アスカ 「これくらいはご愛嬌だろ」快斗 「まぁそれはいいとしてさ」 斗、ページを捲って快斗 「この『イイ女なら作れて当然! 手料理メニュー一覧』っていう次のページが切り取られてるのはなんで?」アスカ 「そんなページは知ら快斗 「てか、ずっと気になってたんだけどさ」アスカ 「なんだ一般男性」快斗 「アスカの作る料理ってさ、」アスカ 「礼はいらん、気にするな」快斗 「毎日同じだよね」アスカ 「それがどうした」快斗 「……いや、別に」アスカ 「クチに合わなかったか? 調味料なら山ほどあるぞ、ホラ」快斗 「そういうことじゃなくてさ、別に不味いわけじゃないんだけど、」アスカ 「…けど? …ナニ? オイシイ以外、料理にナニが必要だっつんだ」快斗 「…ぃゃ不味いワケじゃないし、アスカの料理が(本当はもっと)ウマイ(んだろうな)ってのは認めるけどさ」アスカ 「けど?・・・ケ・・・ド・・・? けどナニ!?」快斗 「だから、その…」アスカ 「アタシの料理に不満がある。と。」快斗 「いや、作ってくれるのはすごく助かるっちゃ助かるんだけど…」アスカ 「『助かる』? 『嬉しい』じゃなくて『助かる』!?しかも『助かるっちゃ助かる』?? なんだその『どちらかというと』みたいな、『強いて言えば』みたいな感じは。アタシがムリヤリ言わせてるみたいじゃんか」快斗 「とりあえず今は『そんなことないよ』って言っとくけどさ、」アスカ 「じゃあなんだ。『けど』なんなんだ」快斗 「だから、毎日毎日朝昼晩、同じメニューなのは、ちょっと…」アスカ 「あ~あ言っちゃったぁ。スゴイコト言っちゃった~。ドコゾの飢餓の国では満足にご飯を食べられない人達がたっくさんいるっていうのに、こうやって3食きっちり食べてる人が、言っちゃいけないこと言っちゃったねぇー。あの白いリストバンドや、キッチンにためてあるペットボトルのキャップはいったいなんなんだろうねー」快斗 「その通りだよ。確かにアスカの言ったことは間違ってないし、申し訳ないと思うけどさ、……アスカそんなこと絶対思ってないでしょ。」アスカ 「思うわけないじゃん! アタシは今、世界有数の消費国・日本に住んでるんだぞ? 消費するのが国民の義務でしょ。そんなキレイゴトはね、国連ナントカとか、支持率を気にする政治家とか、キリストのおっさんとか、子供を教育する母親に任せておけばいーの」快斗 「…。」アスカ 「ハハオヤ! いやん! ヨキ響き♪ いつかはこのアタシも、人の親に……」快斗 「アスカ、もしかしてさ、」アスカ 「なにかしらん?」快斗 「これしか作り方知らないんじゃない?」アスカ 「・・・・・・・・・・・・・。」快斗 「・・・・・・・・・・・・・。」アスカ 「・・・・・・・・・・・・・。」快斗 「・・・・・・・・・・・・・」荷物片手に部屋から飛び出すカイト椅子やら鍋やらが、部屋の中から飛んでくる快斗 「行ってきまーす!」アスカ 「同居生活だぞ! 言っていいことと悪いことがあるだろーがー!!」快斗 「勝手に転がり込んできたんじゃないかー!!」◆ 外廊下必死でエレベーターに駆け込む快斗閉ッ!閉ッ!閉ッ!閉ッ!閉ッ!閉ッ!ドアが閉まる寸前、隙間から矢のように箸が飛ん できて快斗の目の前をかすめる快斗 「ヒィッ!」 の瞬間、玄関にあったはずのシューズラックが 飛んでくる ギリギリ閉まったドアにぶつかり大破。エレベーター前に靴が散乱する快斗 「うわぁ!」 下がっていくエレベーター 床に消えてゆく快斗の顔 そして部屋のドアの前に裸足で仁王立ちのアスカアスカ 「みてろカイト。絶対ギャフンって言わしてやるぅー!!」◆ AKIBAタワー1階 スーパー「ビーコック」 買い物中のアスカアスカ 「とは言うものの、いったい何を買ってどーすればどんな食いモンができるんだ。昨日みたドラマの再放送だと、スーパーの袋からフランスパンと長ネギが出てたけどなぁ…。ん~、わからん。とりあえず、片っ端から物色するか。」10:47】 ◆ 電気街 1本裏に入った細道のパーツショップ『 ユアセルフ 』 店のエプロンをつけた快斗が、棚卸しをしている 「あらカイトさん、今日はここで棚卸しなんだ?」小峯 「そ、この店 意外とコアなモン置いてっからねー。」快斗 「で、今は何の発明してるの?」小峯 「ヒ・ミ・ツ。ま、ヒントとして、コレが完成したら日本はおしまいっとだけ言っとくわ。」快斗 「一体どんなモン作ってんの!?」小峯 「それは言えないわよー。情報が漏れて、私のインスピレーションを元に似たようなモンをアメリカなんかに先に作られちゃったら、それこそ日本は大変なことになっちゃうもん。」快斗 「そ、そぉ……。で、今日はその発明の部品を・・・」小峯 「そんなことよりさ、うまくいってんの?」快斗 「ん? なにが?」小峯 「とぼけないでよー、同棲生活!」快斗 「同居!? っていうか居候!」小峯 「一緒一緒~。そんなのはオバマとノッチくらい変わらないって~」快斗 「全然違うじゃないか!」小峯 「今朝も1波乱あったんでしょ?」快斗 「ぁぁ、聞こえてた?…よね。」小峯 「ケンカするほどナントカって言う快斗 「違うってば! あれは…」小峯 「みなまで言うなみなまで言うな。お姉さんは全てお見通しです。これからも楽しみにしてる からね~♪ 昼ドラより面白いんだもん!」快斗 「小峯ちゃん!」小峯 「店長~、『23』のDVD、続き貸して~。」 店の奥へ入っていく小峯快斗 「まったく、年下なのにオバちゃんなんだから」 作業に戻る快斗 「あれ、先輩じゃないですか?」快斗 「おう山田。お前もDVDか?」山田 「DVD? なに言ってんすか??」快斗 「ごめん、なんでもないよ。」山田 「僕は人間ですよ。」快斗 「そういうことじゃなくてさ……いや、いいや。で、パーツショップなんかで何やってんの?」山田 「いやだな~、パーツ見に来たに決まってんじゃないですか。ご飯食べに来るわけないでしょ?」快斗 「お前こういうの詳しかったっけ? てっきりDVDを借りに……」山田 「パーツショップってのはこの秋葉原ではある意味”神聖”な場所なんですよ。素人には立ち入れないと言うか、入っても結局ワケわかんないというか、そーゆー店に、ただ店長の持ってる海外ドラマのDVDを借りるためなんかに来るわけないじゃないですか!?」快斗 「悪かったってば」山田 「毎週来るんですよ、木曜日に。ちょっと特別な日なんでね~」快斗 「特別?」山田 「先輩はお仕事ですか?」快斗 「見ての通り。午前中だけだけどね」山田 「乱暴に扱わないでくださいよー、ちゃんとソーッと並べてください。僕らみたいなオタクっていう人種はですねぇ……」小峯 「じゃ店長さんまた来るねー。快斗さん、それじゃ~。ん、山田だ、ここでなにしてんの?」山田 「『山田だ。』じゃなくて『山田さん』だろ! どう見たってオレの方が年上じゃんか!」小峯 「確かに。どー見ても快斗さんより10は上だよね、髪の具合は」山田 「先輩よりは下だ! 髪のことは言うな! だいたいお前は普段から…」小峯 「お前に『お前』なんて言われる筋合いないんだけどー」山田 「なんだとぉ~! 」快斗 「で、小峯ちゃん何借りたの?」小峯 「ぁぁ、『23』の第31シーズンの最終回」山田 「え!? それ、今日オレが借りるハズのヤツだぞ!」小峯 「知らないわよそんなこと」山田 「返せ、返せよ!」小峯 「お前んじゃねーし、だいたいお前が来んの遅ぇーからだろうが。自業自得だこのハゲ」山田 「ハゲてねーよまだ!」小峯 「とにかく、これは私が借りたの。わかった? それじゃぁ」山田 「ダメだ、俺が借りるんだ! 早くそいつを渡せ! それと謝れ! ハゲって言ったこと謝れ!」小峯 「もー、うっさいわねえ」小峯、斜め掛けしたゴシック系バッグから、太マ ジック程度の筒を取り出し山田に向ける カチッ ッポン!山田 「ぐぉふっ!!」一瞬にして足元に、まるで洗濯物のようにたたみ落ちる山田山田 「キッサッマ~」小峯 「いい加減負けを認めなさいよ大人げない」山田 「この卑怯者めぇ・・・」快斗 「小峯ちゃん、何それ?」山田 「先輩、僕の心配はぁ・・・(゚∇゚;)」小峯 「簡単に言っちゃうと空気砲ね。まだ試作段階だけど」快斗 「スゴイ威力だね。流石に痕が残っちゃうんじゃ……」山田 「先輩ぃ……」小峯 「当たり所が悪きゃ骨も折れるくらいのパワーはあるわね。でもピストルみたいに実弾が飛んでくわけじゃないから、通常なら直接命に関わる危険は無いわ。動きを止めることが目的だから」山田 「ぅぅ、もし肋骨折れてたら訴えてやる、、、」小峯 「どうぞご自由に。その場合は破壊してゴミに出しちゃえばNO問題。誰も知らない武器だからどんなに優秀な捜査機関であろうと凶器に辿り着くことはない。被告はか弱い女の子、男の腹にはメジャーリーガーのフルスイング並みの強烈なアザ。よって、私は無実。裁判費用はお前持ち」山田 「なにぃ!?」小峯 「わかったらおとなしく寝てろ」山田 「オイ! 待てって!」小峯 「5m以内に近づいたら、この『110番直電機能付き警報ブザー』鳴らすからね! 言っとくけど、何かあったときのためにお前のモンタージュは作成済みだから。じゃあ。」山田 「ちょっと待てって、おい! いろんな意味でちょっと待てってー!」追いかける山田快斗 「よく歩けるな、あいつ……」 山田、走って戻ってきて、山田 「店長! カレー、あとで食べに来ますんで! 待て、小峯ー!」小峯 「5m!」 2人を見送るカイト快斗 「木曜はカレーの日なんだ……何でもあるなここ。ってか、スゲェなあいつ」 作業に戻る快斗 落ち着きを取り戻した店内段ボールに詰め込まれたパーツをひとつひとつ陳列する手元から何かが落ち快斗 「ん? なんだろコレ。……鍵?」普通の鍵ではない。ギザギザではなく、オートロックのように半球状の凹みがいくつか刻んであり、その中心(軸)には、根元から小さな試験管のように透明な筒が埋め込んである。 筒内には光の当たり具合でグリーンやブルーに変化する液体が入っていて、握り手部分には、バイオハザードのような、(とは言え、見たとのない)マーク快斗 「あとで紗那弥さんに相談してみるか。」とりあえず、店のロゴの入ったエプロンのポケットに入れ、作業に戻る快斗。すると、携帯が鳴る快斗 「はい。」憂希 「ぁ、もしもし快斗くん?」快斗 「憂希ちゃん、どうしたの?」憂希 「事務所のパソコンが調子悪くってさ、本部のサーバに繋がらなくなっちゃったのよ。作業しようと思ってもフォーマットが落とせないからどうしようもなくって」快斗 「わかったよ、2~3時間くらい待ってもらえたら行くから、それまでに再起動させておいてもらえるかな。」憂希 「ありがとう、助かるわ。業者に連絡したら夜になるって言うから困っちゃってたのよ」快斗 「この時期はしょうがないよね」憂希 「おいしいお茶入れて待ってるからね、ヨロシク! じゃねー」 切電快斗 「いつもいつも、ホントよくあんなに元気でいられるよなぁ。早めに連絡入れたら、ぬっるぅーいお茶出されるかな……? ぃゃ、あり得るからやめとこう……。」◆ 快斗の部屋どっさりと食材を買い込んできたアスカ
アスカ 「さーてと、それではそれでは。・・・何をしたらいーんだ?? ぁ、そーだ! まずメニューを決めよう!」 料理本をノールックでめくりながら 「それでは、第1回チキチキ、アスカのアスカによるカイトのためのNEW晩ご飯メニューは~!?」 ペラペラペラペラペラアスカ 「これ!! ん、カレー!? つまんないなぁ、もっかい!」 ペラペラペラペラペラアスカ 「これ! シチュー!? 同じようなモンじゃんか! もっとこう、手が込んでると思われるメニューはないのかよ、もっかいもっかい!」 ペラペラペラペラペラ 「えい! かに玉ぁ!? カニなんか買ってきてねーよ! 次ぃー!」 ペラペラペラペラペラアスカ 「えい!! マカロニなんか無い! 次!」 ペラペラペラペラペラアスカ 「えい!! 手巻き寿司じゃアタシが作ったことにはならないじゃんか!? もぉ~、つぎ次ツギTSUGIー!!」【13:16】 パーツショップ 『ユアセルフ』快斗、棚卸しが終わる 快斗 「よし、コレで終了っと。ぁ、そうだ、この鍵……。」 携帯をかける快斗 「あ、もしもし、紗那弥さん、今大丈夫ですか?」紗那弥 「ええ、取り込んでるっちゃ取り込んでるけど、どーしたの?」快斗 「電気街で鍵を拾ったんですけど、ちょっと珍しい鍵なんで警察に届けた方がいいかなと……」◆ 警察署内 クロスワードと睨めっこをしている紗那弥 「鍵かぁ。ま、届けてくれるのはありがたいけど、ほとんど持ち主には返らないのよねぇ。明日にでも来てくれれば預かるけど。」快斗 「そーですか、それじゃ明日持っていきます。」紗那弥 「ぁ待って快斗君!」快斗 「はい。」紗那弥 「前に行けって言うと後ろに行くし、右に行けって言うと左に行く車ってなにかしら……??」快斗 「……機関車。」紗那弥 「きかんしゃ・・・ぁ、そっか。なるほど~。ありがとねー。じゃ!(切る)」
快斗 「またクロスワードやってるな……。さてと、デイジーに行くか。」 【13:39】 ◆ AKIBAタワー内 デイジースポーツクラブ2階のメインスタジオでは、主婦たちがヨガのクラスを受けている 3階 シャワー室でシャワーを浴びているアスカシャワーから上がり、首にかけたバスタオルで髪拭きながら廊下を歩いている フロントのある2階に向かう階段を下りているアスカ 「ふぅ~、やっぱい~ね~、行き詰まったらシャワーに限るわー。さ~て、戻ったら何作るかなぁ~。 ん?」 階段を下りると、その正面の壁にはいろいろなフィットネスグッズの広告が張ってあるアスカ 「食べてやせる? ……ダイエット食品か。こんなもん信じて何人が失敗してるんだかまったく」憂希 「お疲れさまでーす。」アスカ 「!? あ、ど、どーもー」憂希 「お帰りですかぁ?」アスカ 「ぇ、ええ、まぁ……」憂希 「最近入会された方ですアスカ 「ぇ、ええ、まぁ……」憂希 「私、インストラクターの水野憂希(ゆうき)です。今度私のクラスにも出てくださいね!」アスカ 「ぇ、ええ、、はい……き、機会があれば…。そ、それじゃぁ…」憂希 「あ、フロントはこちらですよ?」アスカ 「ぁコンタクト!」憂希 「は?」アスカ 「コンタクト……落としちゃったぁ~!取りに戻らなきゃ~……」憂希 「・・・。」アスカ 「・・・。」憂希 「では、私も探すの手伝います……」アスカ 「大丈夫です!」憂希 「でも……」アスカ 「自分で歩いてきた道たどればスーグ見つかりますから~! ではでは~。」 フロントとは反対の、契約制の個人ロッカーへ向かうどんなに目が悪くても見えるであろう壁にわざとぶつかりながら、「コンタクト~コンタクト~」と言いながら歩くアスカ憂希 「……なんだろ、今の人」振り返り、フロントに向かう憂希◆ 個人ロッカー室アスカ 「危ねえ危ねえ、ったく、誰が高い会費払ってシャワー浴びに来るかっつんだよ」ロッカーの上に 「よっと!」 と登り、通気口に入っていくアスカアスカ 「部屋に戻ったらまずキッチン片づけないとな……」◆ フロント裏の事務所憂希 「お待たせー」快斗 「憂希ちゃん、お疲れさま。先に作業させて貰ってるよ」デスクの裏側の配線などを確認しているカイト 「ケーブルがジャックから外れてるのかも。たぶん、すぐ復旧すると思うよ。」憂希 「助かるわ、今日中に作成しておきたいデータがあったのよ。」快斗 「インストラクターも大変だね。」憂希 「本当よ、事務作業多いしさ、勤務してないときは新しいメニュー覚えて練習しなきゃいけないし、ライセンス更新のために講習会にも出なきゃいけないしね」快斗 「利用者はそんなことお構いなしだもんね」憂希 「もちろん! ある意味、夢を売る商売ですから~」快斗 「確かに」 フロントの内線が鳴る憂希 「はいフロントです。……大変申し訳ありません。スグに向かいますので、少々お待ちくださいませ」快斗 「トラブル?」憂希 「床にたくさんホコリが落ちてるから掃除しろって。ちょっと個人ロッカー行ってくる。終わったらお茶入れるから声かけてね、じゃ!」快斗 「グチを言うのは、好きな証拠……か。」◆ 快斗の部屋 粉まみれになっているアスカアスカ 「・・・小さじって・・・なんだ・・・」【14:08】 ◆ 快斗の隣の部屋のドアの前 呼び鈴を押すアスカ 「はーい」と声が聞こえ、ドアが開き顔を出す小峯小峯 「アラ、お隣さん。」アスカ 小峯 「どうかしたの?」アスカ 「・・・。」小峯 「……粉まみれてるわよ。」アスカ 「・・・ぁぁ。」小峯 「……なによ。」アスカ 「・・・小さじってなんだ。」【15:21】
◆ 秋葉原署いつになく慌ただしく人が動き回っている 無線を片手に、モニターに向かう紗那弥 大量に並べられたモニターには、秋葉原の各所に設置されているカメラの映像紗那弥 「状況は?」線の声 「通行人は避難完了、ターゲットも危害を加える様子はありませんでした」モニターは1台のバイクを追っているDUCATI・MONSTER 「引き続き道路を封鎖し、秋葉原エリアか出さないように!」無線の声 「了解」 思考を巡らす紗那弥 何かを決意し、ヘルメット片手に司令室を出る◆ 小峯の部屋『23』第31シーズン 最終話を見ている2人小峯と、粉まみれのアスカアスカ 「なぁ、アタシもそのソファーに座らせてくれよ」小峯 「ダメ、粉がつくから立ってて」アスカ 「チッ」小峯 「落とさないでよ! 粉!」ケータイの着信音TVを見ながら出る小峯小峯 「はい。」 バイクに乗ってヘッドセットで話す紗那弥紗那弥 「小峯ちゃん、今モニター見られる?」小峯 「見れるわよ、チャンネルは?」紗那弥 「ブラボー・イレブン。」小峯 「ちょっと待ってね~。」 小峯、ケータイをヘッドセットに接続し、キーボードを叩きTVに街頭カメラの映像を出す 「オイ、何すんだよコミネ! 今いーとこだろーが!?」小峯 「そぉーっと動いて! 小さじ教えないわよ!」アスカ 「ぅ……」小峯 「紗那弥さんから電話なのアスカ 「サナミ? なんでまた?」画面には、人気のない秋葉原の街を失踪するバイク 「ん? なんだコレ? 衝撃映像番組か?」紗那弥 「バイクが1台暴走してるの。通行止めしてるからこの付近に閉じこめたのはいいんだけど、」アスカ 「転けろ! コケろー!」 峯、キーボードを操作して画面のバイクをズームする
小峯 「リアシートのBOXが原因で手が出せない、と。」紗那弥 「そうなのよ、バイオハザードみたいなマークがついてるでしょ?」 他の角度からのズーム 「この鍵穴ね。」紗那弥 「微生物研究センターの盗難届と一致するわ」小峯 「『微生物研究センター』かぁ。舎弟がいるから詳細はあとで聞き出してみるけど、一応、今わかってることだけでも教えて。中身は?」紗那弥 「不明よ。」小峯 「不明?」アスカ 「大ざっぱな研究所だなぁ……」小峯 「警察に言えないような中身か。ワクワクするじゃな~い紗那弥 「今そっちに向かってるんだけど、なにかナイスな手はないかしら」小峯 「ナイスかどうかは分からないけど、衝撃を与えずにバイクを止める方法ならあるわよん。」紗那弥 「ありがと。もうすぐ着くから、ベランダから渡して貰ってもいいかしら」小峯 「了解~、お待ちしてマース。」アスカはTVに釘付け 「すげーなこりゃ。いったい何がしたいんだコイツは?」 棚をアチコチあさっている小峯 「えーっと、確かここら辺にぃ……ぁ、あったコレだわ。」 取り出したのは、銃ではなく、弾の入ったカートリッジ、いわゆるマガジンである 窓の外から、かすかにバイクの音が聞こえるスピーカーから紗那弥サン、アト、27秒デ到着シマス。」という機械音アスカ 「なんだコイツは??」ふと見ると、いつの間にか “ よくあるデスクライトの巨大版 “ みたいなアームが、小峯のサイドに伸びている。先端はライトでなく、ソフトボール程度の球体が装着されていて、中央には高性能レンズが埋め込まれている小峯 「あ、コレ? 私が発明したスーパーAIの加藤さん2号よ。」加藤さん 「ドウモ。」球体の左右に取り付けられた腕のようなパーツが 動き、後頭部を掻くような仕草に見えるアスカ 「ずいぶんサラッと言うなぁ。ってか、AIとかって民間で造っていいのか?」 「いんじゃない? 何も言われてないし。」小峯、また別の装置にマガジンをセットしているアスカ 「で、オマエは何をやってんだ?」小峯 「紗那弥さんの乗ったバイクが近いてくる音を検知したから、渡す物をセットしてんの。こうしておけば、紗那弥さんとの距離・スピード・天気・風向きとかを計算して、ベランダから放り投げてくれるワケ。」 と、説明しつつベランダに移動しながら、ヘッドセットをケータイから無線に付け替え、チャネルをR(ロメオ)・2に合わせる加藤さん 「CountDownニ入リマス。対象物放出マデ、アト、8秒。」アスカ 「ずいぶん中途半端な数字から始まるなぁ。」小峯 「いいじゃない、加藤さんの勝手でしょ」 黒塗りのVFR800Fが近づいてくる。黒いアサルトスーツに防弾ベストの紗那弥小峯 「もうすぐ落ちまーす。」紗那弥 「了解」加藤さん 「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・ホイ。」 小峯の部屋のベランダから車道に向けて放り出されるマガジン。こに向かって走り込むVFR800F。 紗那弥、マガジンをキャッチする。小峯の声 「ナイスキャッチ!」紗那弥 「説明は走りながら聞くわ。」 受け取ったマガジンをしまい込む小峯 「そのマガジンの弾はNH4NO3つまり硝酸アンモニウムよ。被弾すれば一緒に入ってる粘着物でまとわりついて、水で化学反応を起こす。そーすると急冷却。」紗那弥 「了解」◆ デイジースポーツクラブ 事務所快斗 「終わったー。あとは再起動を待つだけ。これで本部のサーバーに繋がるはずだよ」憂希 「ありがとう。ラブリー・ピザにデリバリー頼んであるからちょっと待っててね」快斗 「そんな、なにもデリバリー頼むことないのに」憂希 「私からのほんの気持ちデス!」快斗 「ありがとうございます」憂希 「いえいえ、どういたしまして。そだ、届くまでTVでも見ててよ」憂希、リモコンでTVをつけるキャスター「この時間は、番組を変更してニュースをお送りしています。」憂希 「えー! プリズンブレイカーの再放送はー!? 見たかったのにー!」キャスター「警察によりますと、このリアボックスの中身を確認するまでは手の打ちようがないと・・・リアボックスが画面に映る快斗 「あ!」 快斗、ポケットから例の鍵を取り出すと、そこに は同じマークキャスター「専門家に寄よると、このボックスの鍵は通常のモノとは異なり、内包されている特殊な液体の濃度を認識することで開錠されるとのことで・・・」快斗 「憂希ちゃんごめん、ちょっと行ってくる!」 ケータイをかけるカイト憂希 「え、もうすぐピザ届くけど、」快斗 「もしもし小峯ちゃん? ちょっとお願いがあるんだけど……」急いで出て行く快斗憂希 「あとで待ってるからね~!」快斗 「今から行くから、うん、ヨロシク、」憂希 「行ちゃった……」(第4話『 Tragedy of teaspoon 』は、まだ続きます!)








