良い子が不登校になってしまうワケ
今や中学生の35人に1人が「不登校」
「不登校」という言葉は、悲しいことながら今や耳慣れた印象すらありますが、実際に統計上数字に反映されるのは、病気や経済的な理由以外で学校を年間30日以上欠席した場合に限られます。
2008年度、中学生における不登校の人数は、前年度より約千人少ない10万4153人で、全生徒に対する割合は2.9%。これはおよそ35人に1人の割合になるので、およそ1クラスに1人は不登校の生徒がいる計算になります。
不登校の初期には、学校に行こうとすると実際に頭痛や腹痛が起きるといった身体症状が出ることもあるので、病医院とかかわりを持つ子どもも少なくないかもしれません。
「不登校」の意外な理由とは
では子どもたちの不登校は、どんなことが原因となっているのでしょうか。おもな原因としてあげられるものには、いじめ、友人関係でのトラブル、学業上の問題、進学に伴う環境の変化、家庭内の環境変化などがあります。とくに「いじめ」などは、不登校の原因として誰もが思い浮かべがちですが、実は統計上は、いじめに起因する不登校は全体の2.9%に過ぎず、半数近い41.2%がなんらかの原因による「本人にかかわる問題」だという結果が出ています。
では、本人にかかわる問題とはなにかといえば、実際には原因がよくわからないものの総称のようなもので、実は当人である子ども自身にも、その理由がなにかわからない場合も少なくないようです。そのため実は学校に“行きたくない”というよりは、むしろ学校に“行くことができない”ケースが相当数あるといわれています。
ある一例をご紹介しましょう。彼は小学校4年生から不登校が始まり、その後学校に行けるようになった時期もあったのですが、中学入学後は一度も通学できないでいます。
その子の母親が分析する不登校の原因は、一口に言って「電池切れ」だといいます。その子が小学校1年生の時に妹が生まれたのですが、そうなると周囲はなんの気なしに折々の場面で「あなたはお兄ちゃんなのだから」という言葉掛けをしてしまいます。親の言うことなど聞いちゃいないような性格だったらよかったのでしょうが、彼は真面目な性格な分、「良いお兄ちゃんであらねば。しっかりせねば」と、誰に求められるでもなく、本人もおそらくは無意識のうちに「理想のお兄ちゃん像」に向かってがんばり過ぎてしまったようなのです。
しかも真面目な彼は学校においても、こちらもおそらく無意識のうちに「理想の児童」になろうとして勉強をがんばり、クラスではリーダーシップを発揮し、しかも周囲にユーモアをふりまくことも忘れない、典型的な「良い子」を演じていたようです。
学校でも、家庭でも、「良い子」を演じていては、心も体も休まる時がありません。そして彼は小学校4年生の夏休み明けに、とうとう心と体が「電池切れ」を起して、学校に行けなくなってしまったというのです。薬や注射でも“心の充電”をすることは難しいもの。しかも体の疲れと違ってたっぷり寝れば翌朝には疲れがとれているというものでもないだけに、対処が難しいところです。
ここにも「格差」の影が
そしてもう一つ、最近注目されている原因として、実は『貧困』があります。
東京都板橋区の調査によると、生活保護を受給している世帯の子どもが不登校になる割合は、中学生の場合生活保護を受けていない世帯の子どもに比べて5倍近いという結果が出たそうで、こんなところにも“格差”という大人社会の問題が、子どもの世界にも暗い影を落としているようです。