第一容疑者 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

やけに評判のいいイギリスのテレビシリーズなのだが、正直、この程度でいいのか、シリアルキラーものの未来はこの程度が定めてしまうのか。

ヘレン・ミレン扮する女性警部が男性社会にあって孤軍奮闘する様やその私生活、ダークで現代的なテーマをリアルに描くのがいい、と聞いていたのだが、前者のフェミニンな部分がまるで紋切り型なのにがっかりした。
アメリカンならば、そのへんの紋切り型でもって大いに盛り上げてくれるのだが、この作品、どーも、社会派でござる的な真面目なアプローチをしているようで、いかにも頭が悪い。
最後は女警部頑張ったね部下の鬼刑事たちがしゃんしゃんしゃんで拍手しちゃうというベタさ。ベタならベタで、アメリカンにどんと盛り上げてみんかいと思うのだが、所詮は「フル・モンティ」レベルの国の出来事なのか。

ミステリ的にも、○○のありかを発見することに捜査のすべてが収斂されたり、ミッシングリンクをいとも簡単に見いだすあたりもつまらない。付け爪、という美味しいネタを折角引っ張ってんのに、一体、三時間かけて何やってんだと。

と、大批判ムードなんだが、かなりなシリアルキラーネタをドライに、仰々しい絵を作らずに描いているのは好感が持てる。死体写真が無造作に登場するのもいいし、最初に「第一容疑者」を設定するあたりも新機軸。尋問で「落とす」のをクライマックスに設けているのも「絞殺魔」みたいでかっこいいし、落ちた後の犯人が途端にシリアルキラー然とした表情を浮かべるのが凄くいい。

と、ああこれが3時間じゃなくって、1時間半でタイトにまとまってたら、と思うんだが、テレビシリーズの儚さだね。しかし、うむ、これはちょっとシリーズを観てみよう。



ハピネット
第一容疑者 1