「レジェンド&バタフライ」は織田信長の物語を帰蝶(濃姫)の視点から描いた斬新なドラマで、綾瀬はるかの毅然とした演技が光る。
(C)2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
信長の史実はあくまでもサイドストーリーでダイジェスト版というところだ。この辺の描き方は八犬伝に似ている。主人公は綾瀬はるか演じる帰蝶。木村拓哉演じる織田信長は帰蝶を引き立たせる脇役。桶狭間の戦いに挑む弱気な信長を叱咤激励する強気な帰蝶。信長公記にも記述がある、織田信長の中島砦での演説の草案を帰蝶が考えたという視点の描かれ方が斬新で良い。
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「各よくよく承り候へ。あの武者、宵に兵粮つかひて、夜もすがら来なり、大高へ兵粮を入れ、鷲津、丸根にて手を砕き、辛労して、つかれたる武者なり。こなたは新手なり。其の上、小軍なりとも大敵を怖るゝなかれ。『運は天にあり』。此の語は知らざるや。懸らぱひけ、しりぞかば引き付くべし。是に於いては、ひ稠(ね)り倒し、追い崩すべき事、案の内なり。分捕なすべからず。打ち捨てになすべし。軍に勝ちぬれば、此の場へ乗りたる者は、家の面日、末代の高名たるべし。只励むべし」(太田牛一『信長公記』)
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気象庁の前身の中央気象台職員だった作家の新田次郎さんに「梅雨将軍信長」という短編時代小説がある。朝廷の天文所に出仕したことがあり、小鼓の音色で大気の変化がわかるという平手左京亮が主人公である。桶狭間の戦いは永禄3(1560)年の梅雨の時期だった。今川義元の大軍に敗色濃厚の織田信長に、小鼓で気をうかがっていた左京亮が「おそらく今日の午後は大豪雨になります」と進言する。視界を遮る激しい雨の中、奇襲をかけた信長軍は義元を討ち取る。本作品では美濃から輿入れして来た帰蝶の付き人である中谷美紀演じる各務野が平手左京亮の役を担い、気象予報士バリの的中率らしく、大雨となる。
ラストの本能寺から南蛮寺への抜け穴の存在は、加藤廣原作の「信長の棺」のオマージュらしく、帰蝶が若いころ興味を持っていた異国まで南蛮船でヨーロッパヘ旅立つという展開は素晴らしかったが、あそこまで突き抜けたんだから、本能寺に戻らずそのまま生存説で貫き通した方が潔くて好感を持てた気がする。
実は織田信長=ジョルダーノ・ブルーノ説を想起させる大胆な仮説が根強く信じられており、両者には驚くべき共通点がある:
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宗教権力との対立: 信長の仏教勢力弾圧とブルーノのカトリック教会批判
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革新的思想: 信長の自由経済政策・キリスト教庇護とブルーノの宇宙無限説
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最期の謎: 信長の遺体不明の謎とブルーノの火刑
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言葉の暗号: "Giordano Bruno"の中に"oda nobunaga"の文字が隠れている
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顔が似ている: 当時のイタリアの修道士の名簿には「ODA」の記載がある
本作は最終的に信長の生存と脱出を描きながらも、西洋での第二の人生(ブルーノとしての活動)までは踏み込まなかった。もし「本能寺の変は自作自演、1582年から1600年までの18年間、信長はブルーノとして活動した」という壮大な歴史ロマンを全面展開していれば、さらに印象的な作品になったかもしれないが、最終的には「もしも信長が生き延びて...」という仮説の可能性を視聴者に残す結末は、歴史の空白を想像力で埋める楽しさを提供している。
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2021年7月22日にkindleで出版した 「信玄の巫女〜ミシャグチ篇〜」
武田信玄は諏訪大明神が古層の神ミシャグチと同体であることに着目し、諏訪神社神事の再興などを餌に諏訪地方への侵略を企んでいた。 姉の禰々が諏訪頼重に嫁いだばかりなので、信玄は村上氏と諏訪氏と協調してして佐久小県の攻略に矛先を変えた。 中ッ原に住む謎の巫女初音、諏訪大社上社神長官守矢氏の娘彩芽、韃靼人の血を引く鷹匠の娘鏡音が武田信玄に取り入り、矢沢、禰津、望月などの滋野一族の調略を行う様を描く。彩芽はミシャグチと同体の異形の神を出現させることに成功するが。




















