◎瑕疵ある行政行為
行政行為には、適法性と公益性が要求されます。しかし中には内容や手続きに法律違反があったり、公益に反していたりといった欠陥を抱えた行政行為もあります。この欠陥のことを瑕疵といい、欠陥を抱えた行政行為を瑕疵ある行政行為といいます。
民法の意思表示の瑕疵に関する規定は適用されず、原則として外観主義によって判断されます。したがって、行政庁の錯誤による行政行為であっても、内容が客観的に適法であれば、無効とはなりません。
◎瑕疵ある行政行為の種類
違法な行政行為と不当な行政行為があります。
☆違法な行政行為
法秩序に照らして許されない行政行為のことをいいます。
・取り消し得べき行政行為
法律に違反した行政行為は、不服申立ての対象となり、取消しの対象となります。瑕疵を争う場合は、行政庁に対する不服申立てか裁判による取消訴訟を提起することになります。正当な権限を有する機関の判断が必要ということです。
取消されるまでは公定力により有効なものとして扱われます。
処分庁は、取消訴訟が係争中であっても、職権により取消すことができます。この場合、原告は訴えの利益を失うため、棄却判決がなされますが、訴訟費用の負担は、行政側の負担となります。もっとも、不可変更力の対象となる行政行為は、職権により取消すことはできません。
・無効な行政行為
違法な行政行為の中でも「重大かつ明白な瑕疵」がある場合には、初めから法的効力が発生していなかったものとして扱われます。公定力はありません。不可争力による期間の制約も受けません。正当な権限を有する機関の判断がなくても当然に無効となります。
☆不当な行政行為
法律に違反していないが、裁量権行使が適正でない行政行為。法律違反ではないので、司法審査によって取消されることはありません。行政庁自らが職権で取消すか、不服審査法等の不服申立てによって取消すことになります。
◎違法性の承継
先行する行政行為に違法性がある場合、それを前提とする後続の行政行為が違法性を継承することをいいます。これを違法性の継承といいます。
先行行為が後続行為の前提条件となるような場合です。
原則は、先行行為の違法性は後続の行政行為には影響を及ぼしません。それぞれ独立した行政行為である以上、その行政行為ごとに是正されるべきだからです。
要件
・先行行為と後続行為との目的が共通していること
・先行行為と後続行為とが結合して一つの法的効果を生じる場合
◎瑕疵の治癒と違法行為の転換
たとえ瑕疵ある行政行為であっても、実質的にその瑕疵を無視することが可能で、そのほうが都合がいいという場合もあります。
・瑕疵の治癒
行政行為の瑕疵が軽微である場合、その瑕疵がその後修復された場合に、当該行政行為を有効なものとして扱うこと。
最初の処分を取消すことによって第三者の既存の利益を害する場合には、瑕疵の治癒は認められません。
相手方の了承は必要ありません。
瑕疵が軽微な場合であり、重度の瑕疵の場合は無効な行為であるため、瑕疵の治癒によって有効とはなりません。
・違法行為の転換
ある行政行為に違法性がある場合、それを別の行政行為としてみたときは適法である場合は、別の行政行為とみなして、適法として扱うこと。
裁判所の宣言は、不要です。