スリリングなドタバタで始まった一時帰国ですが、まだまだ続きます。

10月19日、1年振りの夕刻の東京は蒸し暑かったのです。
早速、スーツケースを沖縄へと送り飛ばし(¥5.600也ー宅配屋さん
ありがとう!)ほんの僅かに身軽になって、いざ!東日本橋にあるP楽器に
務める、Sさんを訪ねました。年代物のセルマー/ピッコロトランペットを
調整して頂く為でした。「音はいいんだけれどもねぇ」と他のラッパ吹きの
皆さんの評判どうリ、音色は未だに誰もが憧れる、あのフランスの名手
モーリス・アンドレ氏を彷彿とさせる、輝きのある柔らかい上品な響き。

誰が演奏してもそうであるとは思えませんが、やっぱりここは思い込み/
自己陶酔自己催眠をかけてでも、そうありたいと
願うのは、人情ではないでしょうか?

学生時代に無理をして購入したシルキーの銘器、純金プレートP5-4は
ヨーロッパ留学を目前に、資金調達の為に泣く哭く売却したのでした。

代わりに手に入れて、改造をしまくって色々な苦楽をともにしたヤマハ/
カスタム・ピッコロトランペットは、現在どうしても欲しい方に
”貸し出し中”という事で、ハンブルグにあるヤマハ/アトリエで得た
様々な新しい知識や、これまでの自分の経験の積み重ねを、恥も外聞も無く
お話しして、セルマーをもっと自分なりの演奏が出来るように、
調整して頂くのが、今回の私とS氏のセッションの目的です。

時差と、営業時間もとっくに過ぎた超過勤務で二人揃ってフラフラで
飲み会もキャンセルでしたが、沖縄での2つの演奏会を経て、また新たな
創造意欲をかき立てられる楽器に成長しました。
私も、私の為に家族との貴重な時間を犠牲にしても、プレイヤーの訴えを
心からの欲求を聞いて、その要求を満たすべく丁寧に仕事をされるS氏に
頭が下がる想いです。「有り難うございました」

ドイツへ戻る前日に再び合う約束をして、土砂降りの寒い夜を近くの
小さな手料理屋さんでビールを傾け、美味しいお料理に舌鼓をうちながら
とりとめもない話・・・

また来年の約束をして、逢うのを楽しみにできる数少ない盟友の1人です。

お互いの近い将来の夢も、すっかり語らってしまって今思い返すと
恥ずかしい気もしますが、それもまた佳い思い出となりました。

Sさん、またお逢いできる日を心から楽しみにしております。

トランペット奏者
具志 優