お仕事ブログですので悪しからず。
(だいぶ専門的=オタクなお話です。)

カンマーアカデミーポツダムは元々あった3つの団体を1つにしたものです。

理由は色々ありますが、経済的な事が主です。
2008年までにドイツ各地にあったオーケストラは統廃合が進み、
60以上のオーケストラの団員が、長年努めたオーケストラでの
演奏家としての職を失いました。
経済危機の昨今、これからも楽観を許さない状況にあります。

KAPもそんなオーケストラの1つで、元々ポツダム市内にあった
3つのオーケストラの音楽家達を救済する苦肉の策として始められました。

1つは、ポツダムにあったオーケストラとして
ブランデンブルグ州/ポツダム・フィルハーモ二ーという名称の
オーケストラが1999年頃迄あった

2つめは、ベルリンに本拠地のある“アンサンブル・オリオール”
という主に弦楽器を中心にした現代作品演奏を得意とするグループ
(オリオールとしての活動は継続)

3つめは、通称デファと呼ばれる(DEFA)映画音楽録音とダンス音楽専門の
オーケストラがあった。このオーケストラは主にポツダム市内の劇場での
公演・レヴューなども担っていた。

これら3つの団体が発展的解消、あるいは無駄を削ぎ落として
オーケストラの機能と質を極限まで嵩めたのが通称
KAP=カンマーアカデミーポツダムといえると思います。
現在は、ポツダム市の目抜き道リである東西統一広場近くにある
ニコライホールとフランチャイズ契約を結び,ポツダム市内及び
ヨーロッパ各国での演奏活動を盛んに行っています。

演奏曲目は、バラエティに富んだプログラムが特色と
云えると思います。
伝統を踏まえ、しっかりとした骨組みの中にも、斬新で
しなやかな試みが見受けられる演奏は、高い評価を得て
各界に広く受け入れられているようです。

特筆できる事は、バロック期の作品を演奏する時には
必要に応じて、古楽器あるいはそれを基に現代の高い演奏要求に
耐えられる様に再現、開発された楽器を使用している事です。
例えば、トランペットはピストン・バルブ無しの
バロックトランペットを使用しています。
木管楽器は、バロック期の楽器をコピー、改良したものが
使われています。

弦楽器は、現代の楽器の様に弦を強く張る事が出来ない為
調律(基音)が約半音程度低くなります。
これらの楽器を使って、サンスーシ宮殿内の劇場で公演・演奏される
モーツアルトのオペラなどは特に評価が高いです。

また,ドイツ・ヨーロッパのクラシック・ロマン派作品は
2006年就任の音楽監督、ミヒャエル・ザンダリング氏の明確で的確な
指揮のもと、小編成ならではのフットワークの良さを活かして
切れの良い、上質な音楽に仕上がっています。
ーこれらの演奏曲目は勿論、通常使われているドイツの楽器で演奏します。
例えばトランペットは、ロータリートランペットを使用しています。

不思議な事に、古楽器の演奏法に慣れてくるほどに、現代の楽器での
表現方法やその幅が、演奏する音楽全般にわたって一回り大きく
拡がる様な気がします。

私個人的には、実は未だに憧れの対象でもある1970~80年代の
ベルリンフィル/カラヤン指揮のベートヴェンの交響曲全集があります。
これと同じ位大好きな録音に80年代のクリーヴランド管弦楽団/
マゼール指揮の同じ全集があります。
この二つの全集は、同じ曲の解釈にしても一見(一聴)全く正反対の
感じすら受ける事があります。
明るい木管楽器群、暗く重々しい金管楽器群、荘厳な弦楽器群から
醸し出される大編成のドイツのオーケストラの重厚な響き。
一方繊細で、軽やか。何処までもしなやかな切れの良い透明感あふれる
演奏のアメリカのオーケストラと、とても印象深いのです。
アメリカに留学し、更にドイツで研鑽を積む事が出来た私には
この録音はとても意味が深いのです。

”アメリカンテクニック/ヨーロピアンハート”が私の目指す
演奏上の理想であるとっても良いかも知れません。

現在、練習から演奏会までの過程を数回、このKAPオーケストラと一緒に
経験してみて感じる事なのですが、いろいろな国から集まった
比較的若い優秀なメンバー達の音楽的経験の上に成り立つ
オーケストラ演奏の妙味を経験できていると思います。

ここ、ベルリン/ポツダムでドイツ音楽のもつ普遍的な流れ
その根底にあるもの、バッハから、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェン
を経てシューベルト、そしてメンデルスゾーンまでと連綿と受け継がれ、
あるいは壊され、再構築されてきた生きた「伝統」を
強く感じる事が出来ます。

演奏者一人一人の音楽的な経験・成長の過程をも伺える様な
見事にブレンドされ、新しく私たち音楽家の手で再構築された音楽。
そんな音楽をコンサートで聴衆の皆さんへお届けできれば嬉しいです。

興味のある方、参考までにどうぞ。

http://www.kammerakademie-potsdam.de/

今週は、ケルンのフィルハーモニーとデユッセルドルフでのゲストコンサート
来週は、ヴィスマールでのテレビ中継もあり、緊張の中にも素晴らしい音楽を
お届けできるか、と待ちどうしいような気持ちもします。
興味のある方,お時間のある方どうぞいらしてください。

これから、ハイライトを迎えて行くドイツ音楽シーズン。
是非、ポツダムにも一度いらしてください。

トランペット奏者
具志 優