「野原」
"Das Feld"
 by ローベルト・ゼーターラー



ゼーターラーの本は

これまで2冊読んでいる

いずれも良かった


「ある一生」は

タイトルの単純さを

はるかに凌駕する内容だった

こちら


きっと今回もまた

同じようなシンプルなタイトルで

来たのだと思う



オーストリアの小さな町の

野原と呼ばれる墓所

そこで呟かれる

29人の人生


読んでいて

私は少しどんよりした

だってみんな

死者の話


ああ、私もこうやって

近い?遠い?将来

いなくなる


どうせいなくなる…

なんて考えてしまうから


けれども

彼らは生き生きと生きていた

家族のことや

自分の生まれたこと

恋愛

すれ違い


どんな人の生にもある

似たような

そして

全く違うその人だけの生



「基本的には

私は愛のことなんて

何も知らないし、

人生のことでわかっているのは

とにかくその人生を

生きるしかない」



人生はスッキリしない

きっと永遠に澱を抱えたまま

死に向かって

突き進むのだろう


長編ではなく

29人のいろんな場面、

いろんな思いを

淡々と描いた短編のような

ゼーターラーならではの

作品だった



2022. 10 初版発行

シュピーゲル誌のベストセラー一位

ラインガウ文学賞受賞